私の元婚約者は、新しく婚約した妹の酷さを知らなかった

天宮有

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第二話

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 私がジェード様の元婚約者となり、妹クーナスがジェードの新たな婚約者になって数日が経過していた。
 まだクーナスとジェード様の仲は平穏なようで、クーナスは度々私に自慢してくる。

 早朝、忙しいお父様が珍しくいてくれる食卓で、クーナスが楽しそうに語る。

「お姉様は新たな婚約者を探す必要がある……私との差があるせいですが、申し訳ないですわ」

「そうね。確かに貴方と私には差があるわ」

「はい。ジェード様が私を選ぶのも仕方のないことです」

 今まで何をしてきたのか私にはわかっているのに、クーナスはとぼけている様子だ。
 私の方が遙かに上という意味なのに、クーナスは魔法の力が私と同じだと思っていそう。
 
 このままいけば、二人の関係はそこまで長く続かないと私は推測している。
 今まで私が陰で力になっていたからこそ、ジェード様は優秀な公爵貴族と呼ばれていた。
 私の真似事を先にしていただけの妹クーナスでは、今後何もできないでしょう。

 何か手を打つのだろうかと思っていたけど、クーナスは何も考えていなさそう。
 これは、本当に私とクーナスの差はそこまでないと思い込み、なんとかなると考えているに違いない。

「憐れね」

 思わず本音が零れると、クーナスが私を鼻で笑う。

「自分を卑下するのもわかりますけど、私を恨むのだけは止めてくださいね~」

 勝ち誇りながら宣言するクーナスは、お父様に自分の凄さをアピールしている。
 そんなクーナスの発言を聞き、お父様が私達を眺めて話す。

「私が家を出ている間にそんなことがあったとはな……クーナスよ。そこまで心配することはない」

「ど、どういうことですか!?」

 今まで忙しくて留守にしていたお父様の発言に、クーナスが驚いている。
 婚約者を私に戻そうと動くのではないかと危機感を抱いている様子だけど、私に目を向けてお父様が話す。

「アイリスよ……伯爵家のレイン様が会いたいらしい」

「レイン様ですか……」

「確かに悪い噂を聞くが、昔は仲がよかっただろう?」

「はい。ただ……レイン様が、他人に関心を持っていたことが意外でした」

 ノーチウス伯爵家のレイン様は、魔法の腕が凄いことで有名だ。
 伯爵貴族だけど、魔法の腕によって立場が上の貴族と対等に扱われていると聞いたことがある。

 そしてそれの噂を聞いて、求婚が後を絶えないらしい。
 レイン様本人の人間性に問題があって誰も婚約者になることができず、求婚した人達から不評で悪名高くなっている。

「あのレイン様が会いたいと仰るだなんて、お姉様はどんな目に合ってしまうのでしょうか」

 そうクーナスが楽しそうに話すけど、何か問題が起きて私の評判が下がって欲しそうだ。

 私はレイン様と会うことが決まり……その後レイン様が、私の婚約者になろうとしていた。
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