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第3話
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家を追い出されても植物の精霊達が来てくれたから、私は冷静でいられた。
何も持つことができず追い出されたけど、備えていた私は通貨を隠し持っている。
屋敷を出た後は街へ向かい、もう伯爵家の令嬢ではないから新しい服を購入して宿で着替えていた。
精霊達も一緒だけど、街の人達は誰も精霊が見えていない。
複数いたのに数が半分になっているのは、どこかに行っているからだ。
「戻って来るまで、宿で待っていればいいと思いますけど……会話ができないので、合っているかわかりませんね」
呟くと光の球が上下に動き、精霊が頷いていると推測できる。
会話ができないから推測になってしまうけど、待っているのは間違っていないと信じたい。
宿で今後について考えていると、出かけていた半分の精霊達が窓から戻って来た。
数が同じなことに安堵していると、扉をノックする音が聞こえる。
精霊達の動きから、会って欲しい人がいるようだ。
私は扉を開けて――目の前の美少年に、驚くこととなる。
バルラサ国から離れているスピラト国の第三王子、マグリスがいたからだ。
マグリスは短い黒髪の穏やかそうな美少年で、目立たないためか王子とは思えない村人の服を着ていた。
どうしてマグリス王子がいるのだろうかと動揺してしまうと、私を眺めて安堵したようで話してくれる。
「会えてよかった……聖女がザリカに決まった後、エステルと話をしておきたった」
「まず私としては、どうしてここにマグリス様がいるのかが気になります」
マグリスはグーリサ伯爵家の薬草畑に興味があった人で、何度か話したことがある。
それだけの関係だけど……どうして今、ここにいるのかわからなかった。
「すまない、先に話しておくべきだった……精霊に案内されて、ここまで来たんだ」
「マグリス様は精霊が見えるのですか!?」
王子が平民になった私に謝ったことよりも、精霊が見えることに驚いてしまう。
今まで精霊が見える人とは会ったことがなくて尋ねると、マグリスは笑顔で応えてくれる。
「ああ。精霊はエステルにしか見えないけど、エステルの発言を信じる人は見えてくるようだ」
「そうでしたか……」
「俺がエステルの発言を疑っていないから見えているが、反応的に俺以外の者は精霊が見えなかったのか」
「ザリカが活躍していて、私が蔑まれていたからだと思います」
困惑しているマグリス王子だけど、発言が正しいのなら私は精霊がいると私が話しても信じてくれなかったようだ。
私の発言を信じたマグリス王子は精霊が見えるけど、ザリカは精霊を信じないから見えなかったと推測できる。
精霊のことを話したのはマグリスの他には私の家族と、元婚約者のランダ王子だけど……どうやら、マグリス以外は誰も信じていなかったようだ。
「そうか……精霊とは会話ができないから、エステルを探していた俺をここまで案内してくれたのだろう」
「話をしておきたいと言っていましたけど、聖女のザリカではなく私でよろしいのでしょうか?」
他国のマグリス王子が、平民となった私と話すことはないはず。
そんなことを考えてしまうけど、マグリス王子は頷いて言う。
「ああ。聖女がザリカに決まった後に話そうと思っていたが、まさかエステラを家から追い出すとは思わなかった」
「全て私のせいにした後、消えてもらった方が都合がよかったのでしょう」
「そういうことか……エステルが真の聖女と知ったら、間違いなく後悔するだろう」
「……えっ?」
真の聖女というマグリスの発言に、私は困惑してしまう。
どうやら本来、聖女になるのは私だったようだ。
「精霊が見えるのが、聖女の証拠のようなものだ。エステルは妹が聖女で構わないと考えていたから、自らの力を分け与えていたのだろう」
「それは……そうかもしれません」
マグリスの推測を聞き、私は思案する。
蔑まれていたとしても、今までは妹のザリカが聖女になればいいと考えてしまう。
婚約者を奪われて、家を追い出された今は違って――家族やランダは、どうなっても構わないと思っていた。
「もうザリカのことは考えなくていいだろう。そうすれば力が徐々に戻ってくるはずだ」
「はい。薬草畑に毒草が生えるようになったのも、その影響かもしれません」
本来は薬草を育てていると、一緒に毒草が生えてしまうらしい。
私がいた時は薬草しかなかったのは、恐らく聖女の力が関係していそう。
家を追い出すと言われたから、翌日になって薬草畑は本来の状態になっていた。
聖女の力がザリカから私に戻ると、加護の力も移るらしい。
マグリスの発言が正しければ――ザリカや元婚約者のランダは、これから後悔しそうだ。
何も持つことができず追い出されたけど、備えていた私は通貨を隠し持っている。
屋敷を出た後は街へ向かい、もう伯爵家の令嬢ではないから新しい服を購入して宿で着替えていた。
精霊達も一緒だけど、街の人達は誰も精霊が見えていない。
複数いたのに数が半分になっているのは、どこかに行っているからだ。
「戻って来るまで、宿で待っていればいいと思いますけど……会話ができないので、合っているかわかりませんね」
呟くと光の球が上下に動き、精霊が頷いていると推測できる。
会話ができないから推測になってしまうけど、待っているのは間違っていないと信じたい。
宿で今後について考えていると、出かけていた半分の精霊達が窓から戻って来た。
数が同じなことに安堵していると、扉をノックする音が聞こえる。
精霊達の動きから、会って欲しい人がいるようだ。
私は扉を開けて――目の前の美少年に、驚くこととなる。
バルラサ国から離れているスピラト国の第三王子、マグリスがいたからだ。
マグリスは短い黒髪の穏やかそうな美少年で、目立たないためか王子とは思えない村人の服を着ていた。
どうしてマグリス王子がいるのだろうかと動揺してしまうと、私を眺めて安堵したようで話してくれる。
「会えてよかった……聖女がザリカに決まった後、エステルと話をしておきたった」
「まず私としては、どうしてここにマグリス様がいるのかが気になります」
マグリスはグーリサ伯爵家の薬草畑に興味があった人で、何度か話したことがある。
それだけの関係だけど……どうして今、ここにいるのかわからなかった。
「すまない、先に話しておくべきだった……精霊に案内されて、ここまで来たんだ」
「マグリス様は精霊が見えるのですか!?」
王子が平民になった私に謝ったことよりも、精霊が見えることに驚いてしまう。
今まで精霊が見える人とは会ったことがなくて尋ねると、マグリスは笑顔で応えてくれる。
「ああ。精霊はエステルにしか見えないけど、エステルの発言を信じる人は見えてくるようだ」
「そうでしたか……」
「俺がエステルの発言を疑っていないから見えているが、反応的に俺以外の者は精霊が見えなかったのか」
「ザリカが活躍していて、私が蔑まれていたからだと思います」
困惑しているマグリス王子だけど、発言が正しいのなら私は精霊がいると私が話しても信じてくれなかったようだ。
私の発言を信じたマグリス王子は精霊が見えるけど、ザリカは精霊を信じないから見えなかったと推測できる。
精霊のことを話したのはマグリスの他には私の家族と、元婚約者のランダ王子だけど……どうやら、マグリス以外は誰も信じていなかったようだ。
「そうか……精霊とは会話ができないから、エステルを探していた俺をここまで案内してくれたのだろう」
「話をしておきたいと言っていましたけど、聖女のザリカではなく私でよろしいのでしょうか?」
他国のマグリス王子が、平民となった私と話すことはないはず。
そんなことを考えてしまうけど、マグリス王子は頷いて言う。
「ああ。聖女がザリカに決まった後に話そうと思っていたが、まさかエステラを家から追い出すとは思わなかった」
「全て私のせいにした後、消えてもらった方が都合がよかったのでしょう」
「そういうことか……エステルが真の聖女と知ったら、間違いなく後悔するだろう」
「……えっ?」
真の聖女というマグリスの発言に、私は困惑してしまう。
どうやら本来、聖女になるのは私だったようだ。
「精霊が見えるのが、聖女の証拠のようなものだ。エステルは妹が聖女で構わないと考えていたから、自らの力を分け与えていたのだろう」
「それは……そうかもしれません」
マグリスの推測を聞き、私は思案する。
蔑まれていたとしても、今までは妹のザリカが聖女になればいいと考えてしまう。
婚約者を奪われて、家を追い出された今は違って――家族やランダは、どうなっても構わないと思っていた。
「もうザリカのことは考えなくていいだろう。そうすれば力が徐々に戻ってくるはずだ」
「はい。薬草畑に毒草が生えるようになったのも、その影響かもしれません」
本来は薬草を育てていると、一緒に毒草が生えてしまうらしい。
私がいた時は薬草しかなかったのは、恐らく聖女の力が関係していそう。
家を追い出すと言われたから、翌日になって薬草畑は本来の状態になっていた。
聖女の力がザリカから私に戻ると、加護の力も移るらしい。
マグリスの発言が正しければ――ザリカや元婚約者のランダは、これから後悔しそうだ。
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