幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します

天宮有

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第1話

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 公爵令嬢の私ルーミエは、魔法学園の授業が終わり婚約者の席に向かおうとしていた。

 婚約者のバハムスはルゴアス国の王子で、私と同じ教室で授業を受けている。
 明後日には結婚式があるから、そのことについて話をしておきたい。
 そう考えていたけど――バハムスは、隣の席にいる伯爵令嬢のメリタと楽しそうに話していた。

「メリタが今日の授業で扱った魔法は素晴らしかった!」

「ありがとうございます。バハムス殿下の教え方が参考になるからです!」

 発言を聞き、バハムスが微笑みながらメリタの頭を撫でる。
 嬉しそうな声を出しているメリタだけど、私はバハムスの婚約者として言いたいことがあった。

「バハムス殿下、明後日には結婚式があります。今までは婚約者だから気にしませんでしたけど、私が妻になった後でさっきのようなことをすればメリタ様に迷惑がかかるかもしれません」

 私が注意したのは、バハムスとメリタの仲がよかったからだ。

 今日メリタが扱った魔法を見たけど、成長したとしても私の魔法の方が遙かに凄い。
 それでもバハムスはメリタを褒め、私は婚約者に褒められたことが今までなかった。

 そんなことを考えていると、バハムスが話す。 

「昔からこんな感じでメリタが接していたのはルーミエも知っているだろう、何も問題ないはずだ」

「そうですよルーミエ様。明後日になってバハムス殿下の妻になったとしても、私に迷惑がかかることはありません」

「そう……ですか」

 確かにバハムスとメリタの言うとおりだと、私は納得してしまう。
 私とメリタは幼馴染みで、バハムスとも昔から仲がよかった。
 婚約は公爵家で魔法の実力がある私の方がいいと、陛下と私の家族が話し合って決めたようだ。

 そしてメリタは、私を眺めて話す。

「ルーミエ様は膨大な魔力で様々な問題を解決しています。私が敵うわけありません」

「私は、自分にできることをしただけです」

「私にはできないことです。結婚式が終われば、皆は納得するでしょう」

 これに関しては、メリタの言うとおりな気がする。
 妻になったと正式に決まれば、メリタもバハムスとあまり関わらなくなるかもしれない。

 別に関わるのは構わないと思っていたけど、メリタとバハムスは関わる頻度が多い。
 教室が一緒ということもあって、ほぼ毎日話し合っているようだ。

「わかりました。明後日の結婚式が楽しみです」

 そして2日後――結婚式となって、新たな問題が発生する。
 問題を起こしていた元凶がメリタとバハムスだと、この時の私は知らなかった。
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