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第2話
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結婚式がはじまり、私は安堵していた。
バハムス王子が夫になったことで、メリタもそこまで迫ろうとしないはず。
今まで幼馴染だから止められなかったけど、妻と立場を理由に止めることができそうだ。
そう考えて――式の途中で、外の警備をしていた兵士がやって来る。
慌てている様子で、兵士が式場にいる人達に叫んだ。
「ドラゴンの襲撃がありました! ルーミエ様のお力が必要です!」
「わ、わかりました!」
ドラゴンは世界で最も危険とされる生物で、国を襲うことがあるらしい。
幾つも国が滅ぼされているから、ルゴアス国もかなり危険な状況だった。
私は他の魔法使いと協力して、ドラゴンの撃退に成功する。
いつも力になってくれる魔法使いのジトアは、式に参加していないから今日はいなかった。
そして――ドラゴンを追い払うことには成功したけど、私は突進による攻撃を受けてしまう。
魔法で治してもらえたけど、魔力が全てなくなってしまったようだ。
■◇■◇■◇■◇■
式が再開されて、治った私はバハムスの元に向かう。
魔力を失ってしまったけど、今までルゴアス国に貢献してきた。
これからは魔法の知識を生かしていこうと考えていると、バハムスが宣言する。
「話は聞いた。ドラゴンを対処したことは褒めてやるが、魔力のない者とは関わりたくない!」
「……バハムス殿下は、何を仰っているのですか?」
「夫になったばかりだが、俺は貴様との縁を切る! 魔法が使えないのだから仕方ないだろう!!」
どうやら本気で言っているようで、私は何も理解できなかった。
今までルゴアス国で起きた様々な問題を解決してきたのに、魔力が使えなくなった途端に切り捨てる?
呆然としていると、メリタがバハムスの元に駆け寄った。
「まさか妻のルーミエ様が魔力を失うだなんて、バハムス殿下の判断は当然です!」
そう言ってメリタはバハムスを抱きしめるけど、私は何も言えないでいた。
ルゴアス国は、魔法を使えない人を見下している人が多い。
さっきまでは魔法で活躍していた私でも、魔力を失えば蔑まれてしまうようだ。
そして結婚式は中止となり、私はバハムスの妻でなくなった。
式で正式に決まるから、バハムスが夫だったのは1時間にも満たない気がする。
城に戻る馬車で、私は正面に座るバハムスとメリタを眺める。
二人の距離が近くて、もう私のことが存在していないように振る舞っていた。
どうしてこうなったのか戸惑っていると、メリタが話す。
「ルーミエ様はこれから大変ですわね。まあ、仕方ないことでしょう」
「おい。メリタ、それ以上は――」
「――私達の目論み通りになりました。まさかドラゴンと戦って生き延びるとは思えませんでしたけど、魔力を失ったのならそれでいいでしょう」
「……メリタ様は、何を言っているの?」
楽しそうに笑い出すメリタに、私は苛立っている。
不愉快だと強く思っていると、メリタの話が続いた。
「もう魔力のない貴方に発言力なんてないから、城から追い出される前に全て話しておきましょう。ルーミエ様はドラゴンの生贄になっていたのです」
ドラゴンの生贄と言われたけど、聞いたことがない。
それでも戦闘の際に、ドラゴンはなぜか私ばかり狙っていた。
何か知っていそうだと考えていると、バハムスが頭を抱えて話す。
「そんなにメリタは言いたかったのか……今のルーミエには発言力もないだろうし、知っても構わないか」
「はい。私はバハムス殿下の妻になるため、邪魔なルーミエ様を消そうと目論んでいました!」
そう言って、ルーミエが今までルゴアス国で起きていた問題について話す。
メリタの家に代々伝わっていた預言書に書かれている災害が起こったようで、私の力が必要とバハムスは考えていた。
私を婚約者にして問題を解決させ、ドラゴンが襲撃する時を結婚式の日時に合わせる。
どうやらあの結婚式は、ドラゴンに生贄を捧げる儀式も兼ねていたようだ。
それを知っているのは結婚式にいた一部の人達だけで、国王や宰相は把握していたらしい。
そこまでメリタが説明して、バハムスが言う。
「ドラゴンを対処できなくても、生贄のルーミエがやられれば帰っていたはずだ。まさか追い返すとは思わなかったが、魔力が使えないのならルーミエは必要ない!」
「バハムス殿下の言うとおりです! 私の計画通りになりました!」
どうやらメリタは、バハムスを奪うつもりだったようだ。
真相を全て知り、私は現状に後悔していた。
そして――これから私は時間が戻り、バハムスとの婚約を破棄していた。
バハムス王子が夫になったことで、メリタもそこまで迫ろうとしないはず。
今まで幼馴染だから止められなかったけど、妻と立場を理由に止めることができそうだ。
そう考えて――式の途中で、外の警備をしていた兵士がやって来る。
慌てている様子で、兵士が式場にいる人達に叫んだ。
「ドラゴンの襲撃がありました! ルーミエ様のお力が必要です!」
「わ、わかりました!」
ドラゴンは世界で最も危険とされる生物で、国を襲うことがあるらしい。
幾つも国が滅ぼされているから、ルゴアス国もかなり危険な状況だった。
私は他の魔法使いと協力して、ドラゴンの撃退に成功する。
いつも力になってくれる魔法使いのジトアは、式に参加していないから今日はいなかった。
そして――ドラゴンを追い払うことには成功したけど、私は突進による攻撃を受けてしまう。
魔法で治してもらえたけど、魔力が全てなくなってしまったようだ。
■◇■◇■◇■◇■
式が再開されて、治った私はバハムスの元に向かう。
魔力を失ってしまったけど、今までルゴアス国に貢献してきた。
これからは魔法の知識を生かしていこうと考えていると、バハムスが宣言する。
「話は聞いた。ドラゴンを対処したことは褒めてやるが、魔力のない者とは関わりたくない!」
「……バハムス殿下は、何を仰っているのですか?」
「夫になったばかりだが、俺は貴様との縁を切る! 魔法が使えないのだから仕方ないだろう!!」
どうやら本気で言っているようで、私は何も理解できなかった。
今までルゴアス国で起きた様々な問題を解決してきたのに、魔力が使えなくなった途端に切り捨てる?
呆然としていると、メリタがバハムスの元に駆け寄った。
「まさか妻のルーミエ様が魔力を失うだなんて、バハムス殿下の判断は当然です!」
そう言ってメリタはバハムスを抱きしめるけど、私は何も言えないでいた。
ルゴアス国は、魔法を使えない人を見下している人が多い。
さっきまでは魔法で活躍していた私でも、魔力を失えば蔑まれてしまうようだ。
そして結婚式は中止となり、私はバハムスの妻でなくなった。
式で正式に決まるから、バハムスが夫だったのは1時間にも満たない気がする。
城に戻る馬車で、私は正面に座るバハムスとメリタを眺める。
二人の距離が近くて、もう私のことが存在していないように振る舞っていた。
どうしてこうなったのか戸惑っていると、メリタが話す。
「ルーミエ様はこれから大変ですわね。まあ、仕方ないことでしょう」
「おい。メリタ、それ以上は――」
「――私達の目論み通りになりました。まさかドラゴンと戦って生き延びるとは思えませんでしたけど、魔力を失ったのならそれでいいでしょう」
「……メリタ様は、何を言っているの?」
楽しそうに笑い出すメリタに、私は苛立っている。
不愉快だと強く思っていると、メリタの話が続いた。
「もう魔力のない貴方に発言力なんてないから、城から追い出される前に全て話しておきましょう。ルーミエ様はドラゴンの生贄になっていたのです」
ドラゴンの生贄と言われたけど、聞いたことがない。
それでも戦闘の際に、ドラゴンはなぜか私ばかり狙っていた。
何か知っていそうだと考えていると、バハムスが頭を抱えて話す。
「そんなにメリタは言いたかったのか……今のルーミエには発言力もないだろうし、知っても構わないか」
「はい。私はバハムス殿下の妻になるため、邪魔なルーミエ様を消そうと目論んでいました!」
そう言って、ルーミエが今までルゴアス国で起きていた問題について話す。
メリタの家に代々伝わっていた預言書に書かれている災害が起こったようで、私の力が必要とバハムスは考えていた。
私を婚約者にして問題を解決させ、ドラゴンが襲撃する時を結婚式の日時に合わせる。
どうやらあの結婚式は、ドラゴンに生贄を捧げる儀式も兼ねていたようだ。
それを知っているのは結婚式にいた一部の人達だけで、国王や宰相は把握していたらしい。
そこまでメリタが説明して、バハムスが言う。
「ドラゴンを対処できなくても、生贄のルーミエがやられれば帰っていたはずだ。まさか追い返すとは思わなかったが、魔力が使えないのならルーミエは必要ない!」
「バハムス殿下の言うとおりです! 私の計画通りになりました!」
どうやらメリタは、バハムスを奪うつもりだったようだ。
真相を全て知り、私は現状に後悔していた。
そして――これから私は時間が戻り、バハムスとの婚約を破棄していた。
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