幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します

第８７話

バハムス視点

　メリタを妻にして数年後、俺は幸せな日々を送っていた。

　預言書の力とはいえ様々な問題を先読みして対処した功績から、次期国王は間違いとされている。
　そして――俺と妻のメリタは、父である国王に呼び出されていた。

　大広間には宰相と国王だけのようで、話を聞いて驚くこととなる。

「国内で、ドラゴンの目撃情報があった……数年前、式場を襲ったドラゴンのようだ」

「なっっ！？　本当ですか！？」

「本当だ。幾つか村が滅ぼされて……この城に、向かっているらしい」

　ドラゴンが再び、ルゴアス国にやって来ている。
　メリタも予想外だったようで、ルーミエが生贄になって解決しなかったようだ。

　戦力として必要なジトアは、ルーミエと一緒に行方不明となっている。
　預言書には書かれていない内容だから、事前に準備して対処することもできない。

「これから……ルゴアス国は、どうなりますか？」

「ルーミエもジトアも行方不明。今から助けを呼んだとしても、間に合わないだろう」

　国王は、全てを諦めている様子だ。
　ルーミエは膨大な魔法知識があったから、魔力がなくても魔法道具で補えば戦力になった。

　そのことは知っていたのに――魔力がないからと、俺達はルーミエを蔑んだ。
　行方不明になったルーミエを今から探しても、見つかるとは思えない。
　
　そして――ルゴアス国は、これから滅びることとなる。