婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有

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第2話

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 婚約者のアシェル王子は私を部屋に呼び出し「妾になれ」と言い出す。
 呆れ果てている私を見て怒り出すアシェルだけど、怒りたいのは私の方だ。

「アシェル殿下は、私に対して何を言ったかわかっているのですか?」

 命令に従えば――私が全て悪いことにして、次のパーティで自分から「妾になる」と言わなければならない。
 そんなことをすれば私どころか家の評判も落ちるし、アシェルとキアラが喜ぶだけだ。

 自分の都合でどれだけ私に迷惑をかけるのか、まったく考えていないことが信じられない。
 睨んでしまったようで、アシェルは怯んだけどすぐに激怒して叫ぶ。

「王子である俺を睨むとは、不愉快な奴だ!」

「やはり私の方が、アシェル殿下の婚約者に相応しいです」

 アシェルの発言に、キアラが賛同する。
 確かに私よりも、キアラはアシェルと気が合いそうだ。

 妾ではなく婚約破棄なら、私は普通に受け入れている。
 そこまで考えて――今日の出来事を理由に、婚約を破棄できないか考えていた。

「黙るということは悪いと自覚しているようだな! 台本を用意してやるから、エミリーはその通りに行動しろ!」

「アシェル殿下の妾になれるのですから、光栄に思うべきです」

 私に対して怒っているアシェルと、蔑んで笑うキアラ。
 妾にするということは、私を利用したいと考えているからだ。

 もう私は、アシェル達と関わりたくないと考えている。
 椅子から立ち上がり、私は部屋から出て行こうとしていた。

「話は終わりですね――さようなら」

「ああ。台本ができたら城に呼ぶ、パーティではその台本通りに動け!」

 アシェルのふざけた発言を無視して、私は部屋から出ていた。
 
 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄すると決意している。
 全てアシェルとキアラが悪いという真実を、私は貴族の人達に伝えよう。

 屋敷に戻る途中で、馬車の中で1人になっている私は呟く。

「アシェルは罪を捏造して評判を下げると言っていましたから……それが捏造だと判明させるため、協力してくれる人が必要です」

 協力してくれる人は、アシェルの無茶苦茶な提案を信じてくれる人でなければならない。
 それに私を信じてくれる人――私は、1人しか思い浮かばなかった。

「マルクス様なら、わかってくれるはずです」

 アシェルとの婚約が決まった時、マルクスは私に想いを伝えてくれた男性だ。
 私もマルクスのことが好きだったけど、あの時は諦めるしかない。
 マルクスと私が婚約することは不可能になってしまったけど、気持ちに整理をつけたいと言っていた。
 
 今でもマルクスは、誰とも婚約していない辺り……本当に、気持ちに整理がついたのかわからない。
 婚約を破棄した後なら、私はマルクスと婚約できるかもしれない。
 全てマルクスの気持ち次第だけど――私は、マルクスに会うことにしていた。
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