婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有

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第3話

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 私はアシェルと婚約する前、仲がよかったマルクスと会うことにしていた。

 王子との婚約が決まった後、私のことが好きだったとマルクスは言っている。
 私としてもマルクスのことが好きだったけど、貴族として生まれたから割り切っていた。

 アシェルと婚約破棄した後なら、マルクスと婚約できるかもしれない。
 私はそんなことを考えてしまうけど、今のマルクスを知ってから考えよう。

 とにかく今は、マルクスに協力してもらえないか頼みに行く。
 私はマルクスのいる屋敷に到着して、応接室まで案内される。
 そして応接室に入ると――待っていたマルクスが、私を眺めていた。

 マルクスは短い金髪の、穏やかそうな雰囲気のある美少年だ。
 私を眺めて嬉しそうで、マルクスが話す。

「まさか再び、ここでエミリー様と話せるとは思いませんでした」

「そうですね――マルクス様、私の話を聞いてください」

 そう言って、私は数日前のアシェルとキアラについて話す。
 アシェルは子爵令嬢キアラと愛し合っていて、私に対して「妾になれ」と命令した。

 数週間後のパーティまでに台本を渡し、私を台本通りに動かす。
 捏造された罪を認めて、罰として「妾になる」と宣言するのが私の予定だ。

 城での出来事を話してから、私はここに来た理由をマルクスに話す。

「――次のパーティがはじまる前に、私はアシェルとの婚約を破棄するため動こうと考えています」

 今後の行動は、マルクスが協力してくれるかどうかで変わってしまう。
 私の話を聞いて――マルクスは、唖然としている。
 アシェルから話を聞いた私のような反応だと考えていると、右手で頭を抑えつつマルクスは話した。

「……アシェル殿下は、正気なのでしょうか?」

「本人は正気と言っていましたけど、怪しいものです」

 公爵家の令嬢を妾にして、愛している子爵令嬢を正妻にする。
 私も数日前に同じ反応をして、これが普通の反応だと安堵することができていた。

「こんな無茶苦茶な話を信じてくれるのは、マルクス様しかいないと思っていました」

 私の発言だから、マルクスは信じてくれるはず。
 協力して欲しいと頼みたいけど、相手が王子だから断られても仕方ないと考えてしまう。

 そんな私に対して、マルクスが話す。

「私はエミリー様の発言を信じますけど、他の人に話しても信じようと思わない気がします」

「はい。それで……マルクス様には、頼みたいことがあります」

「わかりました。エミリー様、なんでも仰ってください」

 協力してくれるか不安だったけど、マルクスが即断してくれて嬉しい。
 私はアシェル達の思い通りに動くふりをしながら、パーティ会場で婚約を破棄するつもりでいた。
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