婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

第６０話

バハムス視点

　翌日――俺は早朝から、ジトアの屋敷に向かっていた。

　ジトアが学園に登校する時間は予想ができていて、それより早く屋敷に到着する。

　応接室で、学園に行く直前のジトアが俺を眺めて尋ねた。

「バハムスよ。話したいことがあるようだが、教室でよかったのではないか？」

「教室で話せないこともある……メリタを調べていたのは、どういうことだ？」

　メリタの指示通り話すと、ジトアの返答も予想通りだった。

　婚約者を奪うつもりなのかと理由をつけると、ジトアは否定する。

　行動を警戒していたとは言えないようで、俺は婚約者を守るためと理由をつけて追及していた。

　メリタがジトアを異性として一切みていないと、俺は確信することができている。

　これは時間を稼ぐためで――時計を眺めて、俺はジトアに話す。

「そろそろ行かないと間に合わないか……今日の放課後、貴様の部屋で話の続きをしようではないか」

「俺はメリタを貶めようとして、行動を調べたわけではない」

「それなら部屋を調査してもいいだろう。貴様の個室を調べない限り、俺は納得できない」

　これでジトアを個室から出さなければ、メリタがルーミエを従わせるだろう。

　この時の俺は勝利を確信して――予想外の出来事が、起きようとしていた。