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第三章
レガリアのこと
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「で、レガリアのことなんだがな」
ユリウスが、相変わらずのシミオンのペースに乱されていると、エメレンスが話を本題に戻した。そうだ。エメレンスとその話をしている途中だった。エメレンスは、シミオンにはルカのことは話してあることをユリウスに説明した。
「それで、そのレガリアがルカの話とどう関わってくるんだ?」
ユリウスが聞くと、「ここからは私が話そう」とシミオンが後を引き継いだ。
「そもそもレガリアとは何か。レガリアが、王であることを証明するためのものであることは、ものを知らんユリウスでも知っているだろう」
シミオンはいちいちつっかかる話し方をする。気にしていても始まらないので、そこはあえてスルーだ。
「ではそのレガリアが何であるのか。聖バッケル王国でも、これを知る者は多くはない。よってユリウスが知らずとも問題はない」
「どうも」
ユリウスは肩をすくめた。
「普通レガリアといえば、宝玉で飾った王冠や、剣、指輪。そういった事物を王が継いでいく。しかしな、この国のレガリアは、少々特殊なものなんだ。物として形あるものではない。王となる者の身に、宿るものなんだ」
「ちょっと待て。話がわからん」
ユリウスは早速頭がいたんだ。
「この国のレガリアは、物ではないと言いたいのか?」
しかし確かバッケル王国のレガリアは、聖なる石だったはず。ユリウスがそう聞くと、シミオンは、
「石は石だ。だが、この国のレガリアとなる石は、精霊からいただいた特殊な石だ。その辺に転がっているただの石ころとは違う」
「まぁ、そうなんだろうな」
「しかもその石は、王となる者の身に内在されている。つまり体の中に受け継がれていくものなんだ」
「体の中?」
ユリウスははっとしてエメレンスを見た。
「まさかそのレガリアがルカの中にある、などとは言わんだろうな」
嫌な予感がしてユリウスが聞くと、エメレンスは「そのまさかさ」とユリウスの言を肯定する。
「ルカを取り上げた産婆が、赤ん坊のルカの下腹に青い紋章が浮かんだのを見たんだ。レガリアを継ぐ者の体には、青い紋章が浮かび上がる」
「待ってくれ。ルカの腹にそんな青い紋章はなかったぞ」
拾った日、はからずもルカの裸を見た。背中と大腿は傷でわからないが、他は真っ白な肌だった。少なくともお腹にそんなものはなかった。
「ほう。ルカの裸を見たのか?」
エメレンスが見逃さずついてくる。ユリウスはあえて無視して話を進めた。
「それに、それでは話がおかしい。今のライニール王はレガリアを継ぐ者ではないという話になるぞ」
「まさにそこなんだ」
エメレンスは我が意を得たりとばかりに身を乗り出した。
「ライニール王は、レガリアのない王なのさ。そればかりではない。先王ラドバウトもレガリアがなかったと言われている」
「けれど、ルカに継がれているのなら、ラドバウトはレガリアを持っていたのでないのか?」
そうでなければルカにレガリアが継がれるわけがない。
「そこがこのレガリアの妙な点なのさ」
シミオンは嬉しそうに言を継ぐ。
「普通は親から子へと継がれていくと思うだろう? けれど過去には親子関係にない者へとレガリアが渡ったケースもあれば、子の体から親へと戻ったケースもある。よってレガリアが継がれる法則は私には全くわからん。だからこそ、この不可思議なレガリアを持つ者こそ精霊に認められた王たる資格を有するとみなされてきた」
「しかし、信じられんな。なぜルカにレガリアが? ラドバウトにはエメレンスをはじめ、他にもたくさんの子がいるだろう」
「どれほどたくさんいようが、エメレンスはじめ、みな精霊に認められなかったということさ。ルカだけが精霊に認められた。わかったか? この堅物が」
「シミオン。今の話に堅物は関係なかろう」
ユリウスが言う前に、エメレンスがシミオンをたしなめる。シミオンはふんと鼻を鳴らし、先を続けた。
「だがな、ユリウスの言う通り、今のルカに青の紋章はない。普通は産まれたときからあり、途中で消えるなどということはない。だがルカの場合、これまでの当たり前がなぜか通用しない。ライニール王とオーラフ宰相は、ルカの中のレガリアを手に入れようと、毎月体を調べていたようだがな。私に言わせれば無駄な努力だ。レガリアは形があって手に取れるものではないからな。それを見てみぬふりをしていたエメレンスにも責はある」
毎月診察があるとルカは言っていたな。ユリウスはルカの王宮での話に出てきた診察の話を思い出した。拾ったときも診察を怖がっていた。器具を差し込まれ痛いのだと。ではあれは、赤子の時に下腹にあらわれた青の紋章を手がかりに、レガリアを探していたということか。
ユリウスはレガリアをさほど神聖視していないが、国民の大半はレガリアに重きを置いている。精霊に認められた者を王として戴くことに誇りを持っている。もし現王ライニールがレガリアを持っていないとなると、これは大きな問題だ。
オーラフ宰相がルカの診察に立ち会ったのは、レガリアを見逃すまいとしてのことだったのだろう。ライニールのもと権力を手にしたオーラフにとって、ライニールにレガリアがないというのは大きな落とし穴だ。場合によってはライニールは王位を失いかねない事態だ。
しかしシミオンの言うとおりなら、レガリアは手に取れるような実物があるわけではないのだから、その診察は全くの無意味だったことになる。エメレンスもわかっていたなら、止めてやればいいものを。シミオンの言う通り、何もしなかったエメレンスも悪い。
ユリウスがシミオンに同調すると、エメレンスは顔をしかめた。
「二人は気軽に私を責めるがな。私の立場も考えてみろ。先王の血を引いているとはいえ、所詮は妾腹の子。ライニール王と同じ正妃の子らは、ライニールと上手くやってそれなりの要職についているが、他の奴を見てみろ。酷いもんだ。人知れず闇に葬られた者だっているしな。その中で、私が地方官長官にまでのぼりつめたのは、奇跡に近い」
確かにエメレンスは微妙な立場だ。エメレンスの言う通り、妾腹の子らは、ライニールと同じ兄弟とはいえ、中央から遠ざけられている者がほとんどだ。
だからな、とエメレンスは言う。
「ルカのことも気にはなっていたが、表立って何かをしてやることはできなかった。そもそもライニールがレガリアのない王だと言うことは、最重要極秘事項だ。そんなことを私が知っているとわかってみろ。私はとっくに消されているさ。だから私ができることと言えば、こっそりルカに物を教えることくらいだった。無知では身を守れないからな。あとは窮地を救うため、寝室の窓をこっそり開けておいてやる。それくらいのことだ。あとは私自身、せいぜいライニールに目をつけられないよう、有能すぎる自分を押し殺し、馬鹿なふりをするだけさ」
「貴様が有能すぎるかどうかはまた別の議論が必要だがな」
シミオンはエメレンスにも手厳しい。よくこの性格で神秘局の局長にまで登りつめた。神秘局は地方官など実務的な政務局と対をなす局で、星読みや卜占でこの国の暦を定め、年間祭祀の挙行日を決める役所だ。
その内容の特殊性から、神秘局には変わり者が多いと聞く。その最たるものがこのシミオンだ。
「しかしな、しつこいようだがルカにレガリアがあるとは、とても信じられんな」
怖がりで、ユリウスに甘えてくる姿に、王の素質を見ろと言われてもピンとこない。精霊が本当にいるとしたら、とんでもない気まぐれを起したとしか思えない。
「それにな、赤子には青い斑紋が尻や下腹に出ることがあると聞くぞ。それではないのか? だいたいエメレンス。レガリアのことはどこで知ったのだ?」
この秘密を知る者は、おそらくライニールとオーラフ以外にないのではないか。そのライニールとオーラフが他へ漏らすとは考えられない。
「それはシミオンに聞いた」
エメレンスの答えにシミオンを見れば、シミオンはグレーの瞳を眇めた。
シミオンは何でもよく知っている。なぜ、そんな重大なことを知っているのか。ライニール王が、レガリアを継いでいない話など、エメレンスの言うようにトップシークレットだろうに。
ユリウスが疑問をぶつけると、
「王宮で起こることの全ては、神秘局にはお見通しだ」
シミオンは事もなげに答える。一体どんな情報収集能力があるんだ。突き詰めると怖いような気がする。
「それと先程の質問だがな。ユリウスよ。産婆も馬鹿ではない。斑紋と紋章の違いくらいわかる。それに、先王ラドバウトも確認している。その上で、直系男子であるライニールに、そのことを告げているんだ。ああ、ちなみにその産婆は秘密保持のために殺されている」
王族のしそうなことだ。
それにしても、ルカがライニール王の異母妹ならば一つ解せないことがある。
「ライニール王がルカを抱こうとしたのはなぜだ? 実の妹だろう? 兄妹で結婚している例は過去にもあるが、ルカは希少種だ。しかも子を欲しがったと聞くぞ」
実の妹に手を出そうとしたことどけでも胸糞が悪い。その上、子を産ませようなど正気の沙汰ではない。
「それに関しては私が悪い」
珍しくシミオンが深く被ったローブに目を隠した。
「私は古い文献を調べていた。過去にレガリアを継いだ女性がどうなったのか気になったんだ。何人かの記録を見つけた。ケースその一」
シミオンは人差し指を立てた。
「結婚して初夜を終えた後、レガリアが自分の身から消え、夫のもとに移った。ケースその二。産まれた子にレガリアが継がれた。ケースその三。結婚せず自ら女王となった者は二十歳半ばで早世した」
ちなみに、とシミオンは続けた。
「その早世した女王ののち、レガリアは行方不明だ。先王ラドバウトの先々代の話だ。とまぁ、私は文献を読みながらその辺りの情報を無意識にぶつぶつと呟いていたらしい。それを馬鹿な同僚が盗み聞きしていた。そして親切にも世間話のついでにオーラフ宰相にそのことを伝えた。そのせいで、ルカはライニール王に夜伽を命じられた。とまぁそういうわけだ」
「シミオン、おまえなぁ」
ルカが命からがら王宮から逃げる羽目になったのは、全部シミオンのせいではないか。やらかしておいて、よく人のことをとやかく言える。
ユリウスがシミオンを見ると、シミオンはにへらっと笑った。
「知っての通り、私の集中力は何をも凌ぐ」
全く反省の色がない。やはり一度締めておくか。
ユリウスは炎を背にゆらりと立ち上がった。
「まぁまぁユリウス」
エメレンスはそんなユリウスをなだめ、「そこでだ」と驚くべきことを提案してきた。
ユリウスが、相変わらずのシミオンのペースに乱されていると、エメレンスが話を本題に戻した。そうだ。エメレンスとその話をしている途中だった。エメレンスは、シミオンにはルカのことは話してあることをユリウスに説明した。
「それで、そのレガリアがルカの話とどう関わってくるんだ?」
ユリウスが聞くと、「ここからは私が話そう」とシミオンが後を引き継いだ。
「そもそもレガリアとは何か。レガリアが、王であることを証明するためのものであることは、ものを知らんユリウスでも知っているだろう」
シミオンはいちいちつっかかる話し方をする。気にしていても始まらないので、そこはあえてスルーだ。
「ではそのレガリアが何であるのか。聖バッケル王国でも、これを知る者は多くはない。よってユリウスが知らずとも問題はない」
「どうも」
ユリウスは肩をすくめた。
「普通レガリアといえば、宝玉で飾った王冠や、剣、指輪。そういった事物を王が継いでいく。しかしな、この国のレガリアは、少々特殊なものなんだ。物として形あるものではない。王となる者の身に、宿るものなんだ」
「ちょっと待て。話がわからん」
ユリウスは早速頭がいたんだ。
「この国のレガリアは、物ではないと言いたいのか?」
しかし確かバッケル王国のレガリアは、聖なる石だったはず。ユリウスがそう聞くと、シミオンは、
「石は石だ。だが、この国のレガリアとなる石は、精霊からいただいた特殊な石だ。その辺に転がっているただの石ころとは違う」
「まぁ、そうなんだろうな」
「しかもその石は、王となる者の身に内在されている。つまり体の中に受け継がれていくものなんだ」
「体の中?」
ユリウスははっとしてエメレンスを見た。
「まさかそのレガリアがルカの中にある、などとは言わんだろうな」
嫌な予感がしてユリウスが聞くと、エメレンスは「そのまさかさ」とユリウスの言を肯定する。
「ルカを取り上げた産婆が、赤ん坊のルカの下腹に青い紋章が浮かんだのを見たんだ。レガリアを継ぐ者の体には、青い紋章が浮かび上がる」
「待ってくれ。ルカの腹にそんな青い紋章はなかったぞ」
拾った日、はからずもルカの裸を見た。背中と大腿は傷でわからないが、他は真っ白な肌だった。少なくともお腹にそんなものはなかった。
「ほう。ルカの裸を見たのか?」
エメレンスが見逃さずついてくる。ユリウスはあえて無視して話を進めた。
「それに、それでは話がおかしい。今のライニール王はレガリアを継ぐ者ではないという話になるぞ」
「まさにそこなんだ」
エメレンスは我が意を得たりとばかりに身を乗り出した。
「ライニール王は、レガリアのない王なのさ。そればかりではない。先王ラドバウトもレガリアがなかったと言われている」
「けれど、ルカに継がれているのなら、ラドバウトはレガリアを持っていたのでないのか?」
そうでなければルカにレガリアが継がれるわけがない。
「そこがこのレガリアの妙な点なのさ」
シミオンは嬉しそうに言を継ぐ。
「普通は親から子へと継がれていくと思うだろう? けれど過去には親子関係にない者へとレガリアが渡ったケースもあれば、子の体から親へと戻ったケースもある。よってレガリアが継がれる法則は私には全くわからん。だからこそ、この不可思議なレガリアを持つ者こそ精霊に認められた王たる資格を有するとみなされてきた」
「しかし、信じられんな。なぜルカにレガリアが? ラドバウトにはエメレンスをはじめ、他にもたくさんの子がいるだろう」
「どれほどたくさんいようが、エメレンスはじめ、みな精霊に認められなかったということさ。ルカだけが精霊に認められた。わかったか? この堅物が」
「シミオン。今の話に堅物は関係なかろう」
ユリウスが言う前に、エメレンスがシミオンをたしなめる。シミオンはふんと鼻を鳴らし、先を続けた。
「だがな、ユリウスの言う通り、今のルカに青の紋章はない。普通は産まれたときからあり、途中で消えるなどということはない。だがルカの場合、これまでの当たり前がなぜか通用しない。ライニール王とオーラフ宰相は、ルカの中のレガリアを手に入れようと、毎月体を調べていたようだがな。私に言わせれば無駄な努力だ。レガリアは形があって手に取れるものではないからな。それを見てみぬふりをしていたエメレンスにも責はある」
毎月診察があるとルカは言っていたな。ユリウスはルカの王宮での話に出てきた診察の話を思い出した。拾ったときも診察を怖がっていた。器具を差し込まれ痛いのだと。ではあれは、赤子の時に下腹にあらわれた青の紋章を手がかりに、レガリアを探していたということか。
ユリウスはレガリアをさほど神聖視していないが、国民の大半はレガリアに重きを置いている。精霊に認められた者を王として戴くことに誇りを持っている。もし現王ライニールがレガリアを持っていないとなると、これは大きな問題だ。
オーラフ宰相がルカの診察に立ち会ったのは、レガリアを見逃すまいとしてのことだったのだろう。ライニールのもと権力を手にしたオーラフにとって、ライニールにレガリアがないというのは大きな落とし穴だ。場合によってはライニールは王位を失いかねない事態だ。
しかしシミオンの言うとおりなら、レガリアは手に取れるような実物があるわけではないのだから、その診察は全くの無意味だったことになる。エメレンスもわかっていたなら、止めてやればいいものを。シミオンの言う通り、何もしなかったエメレンスも悪い。
ユリウスがシミオンに同調すると、エメレンスは顔をしかめた。
「二人は気軽に私を責めるがな。私の立場も考えてみろ。先王の血を引いているとはいえ、所詮は妾腹の子。ライニール王と同じ正妃の子らは、ライニールと上手くやってそれなりの要職についているが、他の奴を見てみろ。酷いもんだ。人知れず闇に葬られた者だっているしな。その中で、私が地方官長官にまでのぼりつめたのは、奇跡に近い」
確かにエメレンスは微妙な立場だ。エメレンスの言う通り、妾腹の子らは、ライニールと同じ兄弟とはいえ、中央から遠ざけられている者がほとんどだ。
だからな、とエメレンスは言う。
「ルカのことも気にはなっていたが、表立って何かをしてやることはできなかった。そもそもライニールがレガリアのない王だと言うことは、最重要極秘事項だ。そんなことを私が知っているとわかってみろ。私はとっくに消されているさ。だから私ができることと言えば、こっそりルカに物を教えることくらいだった。無知では身を守れないからな。あとは窮地を救うため、寝室の窓をこっそり開けておいてやる。それくらいのことだ。あとは私自身、せいぜいライニールに目をつけられないよう、有能すぎる自分を押し殺し、馬鹿なふりをするだけさ」
「貴様が有能すぎるかどうかはまた別の議論が必要だがな」
シミオンはエメレンスにも手厳しい。よくこの性格で神秘局の局長にまで登りつめた。神秘局は地方官など実務的な政務局と対をなす局で、星読みや卜占でこの国の暦を定め、年間祭祀の挙行日を決める役所だ。
その内容の特殊性から、神秘局には変わり者が多いと聞く。その最たるものがこのシミオンだ。
「しかしな、しつこいようだがルカにレガリアがあるとは、とても信じられんな」
怖がりで、ユリウスに甘えてくる姿に、王の素質を見ろと言われてもピンとこない。精霊が本当にいるとしたら、とんでもない気まぐれを起したとしか思えない。
「それにな、赤子には青い斑紋が尻や下腹に出ることがあると聞くぞ。それではないのか? だいたいエメレンス。レガリアのことはどこで知ったのだ?」
この秘密を知る者は、おそらくライニールとオーラフ以外にないのではないか。そのライニールとオーラフが他へ漏らすとは考えられない。
「それはシミオンに聞いた」
エメレンスの答えにシミオンを見れば、シミオンはグレーの瞳を眇めた。
シミオンは何でもよく知っている。なぜ、そんな重大なことを知っているのか。ライニール王が、レガリアを継いでいない話など、エメレンスの言うようにトップシークレットだろうに。
ユリウスが疑問をぶつけると、
「王宮で起こることの全ては、神秘局にはお見通しだ」
シミオンは事もなげに答える。一体どんな情報収集能力があるんだ。突き詰めると怖いような気がする。
「それと先程の質問だがな。ユリウスよ。産婆も馬鹿ではない。斑紋と紋章の違いくらいわかる。それに、先王ラドバウトも確認している。その上で、直系男子であるライニールに、そのことを告げているんだ。ああ、ちなみにその産婆は秘密保持のために殺されている」
王族のしそうなことだ。
それにしても、ルカがライニール王の異母妹ならば一つ解せないことがある。
「ライニール王がルカを抱こうとしたのはなぜだ? 実の妹だろう? 兄妹で結婚している例は過去にもあるが、ルカは希少種だ。しかも子を欲しがったと聞くぞ」
実の妹に手を出そうとしたことどけでも胸糞が悪い。その上、子を産ませようなど正気の沙汰ではない。
「それに関しては私が悪い」
珍しくシミオンが深く被ったローブに目を隠した。
「私は古い文献を調べていた。過去にレガリアを継いだ女性がどうなったのか気になったんだ。何人かの記録を見つけた。ケースその一」
シミオンは人差し指を立てた。
「結婚して初夜を終えた後、レガリアが自分の身から消え、夫のもとに移った。ケースその二。産まれた子にレガリアが継がれた。ケースその三。結婚せず自ら女王となった者は二十歳半ばで早世した」
ちなみに、とシミオンは続けた。
「その早世した女王ののち、レガリアは行方不明だ。先王ラドバウトの先々代の話だ。とまぁ、私は文献を読みながらその辺りの情報を無意識にぶつぶつと呟いていたらしい。それを馬鹿な同僚が盗み聞きしていた。そして親切にも世間話のついでにオーラフ宰相にそのことを伝えた。そのせいで、ルカはライニール王に夜伽を命じられた。とまぁそういうわけだ」
「シミオン、おまえなぁ」
ルカが命からがら王宮から逃げる羽目になったのは、全部シミオンのせいではないか。やらかしておいて、よく人のことをとやかく言える。
ユリウスがシミオンを見ると、シミオンはにへらっと笑った。
「知っての通り、私の集中力は何をも凌ぐ」
全く反省の色がない。やはり一度締めておくか。
ユリウスは炎を背にゆらりと立ち上がった。
「まぁまぁユリウス」
エメレンスはそんなユリウスをなだめ、「そこでだ」と驚くべきことを提案してきた。
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