【ミステリー】一部、いただいちゃいます。

もえこ

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「… … 大事に育てられてる… …か… 」

「… え… ?」

朔也さんの腕枕に頭をあずけて、いつものようにまどろんでいる時間…
不意に、独り言のような口調で彼が呟いた。

「… いや… 最初に貴女に会った時のことを思い出してました…。」

「え… えっと… それって… 」

私は記憶を思い起こす…。
最初に彼に会った日… 夕暮れ時の紅くなりかけた公園…

そうだ… 
まるで、絵に描いたように仲の良さそうな親子が、花壇で話をしていたあの日のこと…?

「… 言ってましたよね… あの、お母さん… 」

「… … … 」

何を…? いまいち、思い出せない…。

あの時、彼女らは何を話していただろうか… 

「ああ…  確か…」

そうだ、確か… 小さな子供が花を摘むのを母親が… 止めていた… 
その時のことを彼は言っているのだろうか… 

ただ、いまいち詳細が思い出せない…。

「…子供が花壇の中の花を摘もうとしたとき…それは、大事に育てられている花だから摘んじゃ駄目と。」

やはり、そのことか… 
私もやっと親子のやり取りを思い出し、静かに頷く…。

「…それで…確か…子供に聞かれて、あのお母さん…花壇の外にあるのは摘んでいいよって…」

「… うん… そんなこと、あったね… 」

私は彼を見る… 
それが…その、親子の些細なやり取りが…どうしたのだろう…?  

「あれって、裏を返せば…花壇の外にある花は…誰かに大事に育てられてないから…自由に摘んでいい…傷付けてもいいって…ことなんですかね…不幸の上塗り…みたいな…?」

「え… … 傷付けて…?上塗り… ?」

「… 何でもないです…すみません、変なこと言いました。もう、一回いい…?亜由美さん…」

「… ええ… 」

彼が再び、私の上に覆いかぶさってくる…。

彼の質問とはいえない質問に…そして、彼が言ったその言葉に答えることができなかった。

今思えば、その彼の発言の中に、
ほんの少し…違和感というか…心の…闇のようなものを感じたが…

その時の私は、
そのことを頭の隅に追いやってしまうほどに、彼に溺れていたのかもしれない…。 


シャー― … 

シャワーを浴びながら…
不思議と…随分前のことを思い出してしまった…。

そろそろ、夫が帰る頃だ…  
  
夫はいまだに気付いていない… 

数年もの間、私が若い男と不倫をしているということに…

私に興味がないのだから仕方ない…私はため息をついて、バスタオルを身にまとった…。
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