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2 裏切り
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「来週にはシュヴァルツヴァルトから迎えがやって来る予定だ。だからそれまでに輿入れの準備を整えておくように」
「来週、ですか?」
嫁入りの準備期間がたったそれだけ……?
それ、いくらなんでも早すぎるでしょうが!?
「なぁに、心配することはない。ドレスや装飾品はもうこちらでひと通り揃えてある。フランツェスカ、お前は身の回りの整理をするだけでいい」
ドレスや装飾品の用意があったとしても、そんな短い期間で他国への嫁入り準備が出来るわけがありません。
いくら耄碌していたとしても、それがわからないはずがありません。
……思惑が透けて見えてきます。
王位継承者に護衛も付けず戦いの最前線へ送り込み。
成人の儀を待たずして、他国への輿入れ。
これはつまり、そういうこと。
「……かしこまりました」
***
「フランツェスカ」
「っ……レナード!?」
重い足取りで謁見の間から出ると、レナードが私を待ち受けていた。
その顔を見た瞬間。
胸倉を掴んで『どの面下げて私の前に出てきた?』と、問い詰めたくなりました。
けれど、次期女王としてこれまで育ってきたせいか……私の理性がその衝動を勝手に抑え込んだ。
「また君に会えるなんて、思っていなかった」
「どういうことか、説明してもらえるかしら? 貴方が私の代わりに王になるとは……どういうことか。それにアリーシアを王妃にって……」
「そのままの意味だよ、フランツェスカ。僕がこの国の……モルゲンロートの王になる」
「どう、して……」
怒りで声が震える。
今すぐそのすかした顔をぶん殴ってやりたい。
どの口がそれを言うのでしょうか。
「君が北の前線に行った後、国王陛下が僕に『王配ではなく、王となって国を治めてみるつもりはないか』と提案してくれたんだ。自分が王になるなんて考えた事もなかったから最初は驚いた。でもすごい機会に恵まれたと思った。それに、僕は……」
「……それに、なにかしら?」
「いつも完璧で一人で生きていける強い君よりも、僕がそばに居て守ってあげなくちゃいけないアリーシアの方が本当は……好きだったんだ」
私との婚約破棄をレナードが受け入れたと聞かされても、心のどこかでこれはなにかの間違いだと期待していた自分がいました。
だけど今この瞬間全て理解しました、私はこの男に裏切られたのだと。
激しい怒りが自分の中で沸き上がるのを感じる。
このまま感情に任せて怒りをぶつけてしまえれば、どんなに楽なことでしょう。
けれどまだ、私の中に王族としての理性はかろうじて残っていて。
「……そう。じゃあ貴方は私を、裏切った……のね?」
「君にそう言われても、仕方ないことをしたと思っているよ。でも……」
なにが『仕方ない』ですか。
自分の欲を叶える為だけに私を裏切ったくせに。
「私が女王になったら王配として隣で支えてくれると……婚約式の日に約束じゃない! なのにどうして、レナード……!」
「フランツェスカ、君ならいつかわかってくれると信じてる。君はとても強い人だから、シュヴァルツヴァルトでもきっとうまくやって……」
「ふざけないで!」
――パンッ!
鈍い音が響く。
気が付いた時にはすでに、私はレナードの頬を打っていた。
「え……?」
そんな自分に少し驚く、けれど。
「あ……すっきり……」
そして私に頬を打たれたレナードは驚いたように、目を大きく見開く。
「フランツェ、スカ……?」
「勝手に私を決めつけないで、私はどこも強くなんてない。戦場でもずっと、ずっと……次は自分が死ぬんじゃないかって怖くて震えてた。でも私は王女だから、弱音なんて吐けなくて……! 一人で歯を食いしばって……泣きそうになるのを必死に耐えて……」
思いがあふれ出して、止まらない。
戦場でも必死に耐えてきた、女王になる為には必要な事なのだと自分に言い聞かせて。
……でもそれも全部、無駄でしかなった。
「ごめん……でも、君は……アリーシアと違って僕がいなくても……」
「……もうなにも、聞きたくありません」
「フランツェスカ……?」
「さよなら、レナード」
これ以上、つまらない言い訳は聞きたくありません。
それにレナードがなにを言ったところで、私を裏切ったことにかわりはない。
そしてこの日。
私は全て失ってしまったのです。
王位も、婚約者も。
これまでの努力も全部。
「来週にはシュヴァルツヴァルトから迎えがやって来る予定だ。だからそれまでに輿入れの準備を整えておくように」
「来週、ですか?」
嫁入りの準備期間がたったそれだけ……?
それ、いくらなんでも早すぎるでしょうが!?
「なぁに、心配することはない。ドレスや装飾品はもうこちらでひと通り揃えてある。フランツェスカ、お前は身の回りの整理をするだけでいい」
ドレスや装飾品の用意があったとしても、そんな短い期間で他国への嫁入り準備が出来るわけがありません。
いくら耄碌していたとしても、それがわからないはずがありません。
……思惑が透けて見えてきます。
王位継承者に護衛も付けず戦いの最前線へ送り込み。
成人の儀を待たずして、他国への輿入れ。
これはつまり、そういうこと。
「……かしこまりました」
***
「フランツェスカ」
「っ……レナード!?」
重い足取りで謁見の間から出ると、レナードが私を待ち受けていた。
その顔を見た瞬間。
胸倉を掴んで『どの面下げて私の前に出てきた?』と、問い詰めたくなりました。
けれど、次期女王としてこれまで育ってきたせいか……私の理性がその衝動を勝手に抑え込んだ。
「また君に会えるなんて、思っていなかった」
「どういうことか、説明してもらえるかしら? 貴方が私の代わりに王になるとは……どういうことか。それにアリーシアを王妃にって……」
「そのままの意味だよ、フランツェスカ。僕がこの国の……モルゲンロートの王になる」
「どう、して……」
怒りで声が震える。
今すぐそのすかした顔をぶん殴ってやりたい。
どの口がそれを言うのでしょうか。
「君が北の前線に行った後、国王陛下が僕に『王配ではなく、王となって国を治めてみるつもりはないか』と提案してくれたんだ。自分が王になるなんて考えた事もなかったから最初は驚いた。でもすごい機会に恵まれたと思った。それに、僕は……」
「……それに、なにかしら?」
「いつも完璧で一人で生きていける強い君よりも、僕がそばに居て守ってあげなくちゃいけないアリーシアの方が本当は……好きだったんだ」
私との婚約破棄をレナードが受け入れたと聞かされても、心のどこかでこれはなにかの間違いだと期待していた自分がいました。
だけど今この瞬間全て理解しました、私はこの男に裏切られたのだと。
激しい怒りが自分の中で沸き上がるのを感じる。
このまま感情に任せて怒りをぶつけてしまえれば、どんなに楽なことでしょう。
けれどまだ、私の中に王族としての理性はかろうじて残っていて。
「……そう。じゃあ貴方は私を、裏切った……のね?」
「君にそう言われても、仕方ないことをしたと思っているよ。でも……」
なにが『仕方ない』ですか。
自分の欲を叶える為だけに私を裏切ったくせに。
「私が女王になったら王配として隣で支えてくれると……婚約式の日に約束じゃない! なのにどうして、レナード……!」
「フランツェスカ、君ならいつかわかってくれると信じてる。君はとても強い人だから、シュヴァルツヴァルトでもきっとうまくやって……」
「ふざけないで!」
――パンッ!
鈍い音が響く。
気が付いた時にはすでに、私はレナードの頬を打っていた。
「え……?」
そんな自分に少し驚く、けれど。
「あ……すっきり……」
そして私に頬を打たれたレナードは驚いたように、目を大きく見開く。
「フランツェ、スカ……?」
「勝手に私を決めつけないで、私はどこも強くなんてない。戦場でもずっと、ずっと……次は自分が死ぬんじゃないかって怖くて震えてた。でも私は王女だから、弱音なんて吐けなくて……! 一人で歯を食いしばって……泣きそうになるのを必死に耐えて……」
思いがあふれ出して、止まらない。
戦場でも必死に耐えてきた、女王になる為には必要な事なのだと自分に言い聞かせて。
……でもそれも全部、無駄でしかなった。
「ごめん……でも、君は……アリーシアと違って僕がいなくても……」
「……もうなにも、聞きたくありません」
「フランツェスカ……?」
「さよなら、レナード」
これ以上、つまらない言い訳は聞きたくありません。
それにレナードがなにを言ったところで、私を裏切ったことにかわりはない。
そしてこの日。
私は全て失ってしまったのです。
王位も、婚約者も。
これまでの努力も全部。
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