難攻不落の異名を持つ乙女ゲーム攻略対象騎士が選んだのは、モブ医者転生者の俺でした。

一火

文字の大きさ
13 / 92
1章

7

しおりを挟む
 先日、イーサンの右腕を縫合した診察台で、俺は下半身を顕にし彼の膝の上に乗っていた。

「ココが苦しいのか? ……パンパンになってる」

 そう言って自分よりひと回り大きな身体が俺を後ろから抱き締め、勃ち上がった局部をゴツゴツした手がギュッと握った。
 長い指が上下に動かされると堪らず腰が跳ねる。じわっと、身体中に広がった甘い熱が……快楽へと変化を遂げ始めた。
「…ゃっ、……ん、っ……くるし、けど…、ひぁっ……」
 イーサンが俺の、触ってる……気持ち悪くないのかな。
 ただでさえ熱でまともに動かない思考は、彼の手の動きに寄って更に鈍っていく。
 グチュグチュ音を立てながらソレが扱かれると、宙を舞う爪先にキュッと力が入った。

 何だよこれ、気持ち良すぎる……

「大丈夫、出せば落ち着くはずだ」
 そう囁かれると共に吐息が耳を掠めると、ピュッと先漏れの液が飛び出した。
「あっ、…やぁ、……はずかし、…っんふ…ぁっあっ、ぁあっ」
「そうか?随分気持ち良さそうだけど」
 彼の言葉通り、手の中のソレはイーサンから受ける刺激を悦び、もう限界寸前まで猛っている。人差し指の腹で先端の穴をグリグリ擦られ、そのままそれが裏筋をなぞるように動くと、ビクビクッと腰が震えた。
「ぁっ、あっ…だめ、それ……っんんぁ」
 喉の奥から出る、甘い声が止まらない。

 知らないこんな声、こんな自分俺は、知らない。

「すげー唆るな、アオの声。……俺もおかしくなりそう」
 ぴちゃぴちゃ音を立てて耳孔を這う熱い舌が漸く離れたかと思うと、カプっと耳朶を噛まれる。
「っっっ…んんんっぁ、ぁああ……だめ、だめ…イーサンっ……も、イっちゃ、ぅ……んぁあっ」
「イきそうか? なら…俺の手の中に全部出せよ」
 低くて良い声が直接鼓膜を震わせると、俺の身体がビクッとそれまで以上に大きく跳ね上がる。
「っぁあ…ぁっ、あっぁっあ……イっっ、ク…ふぁぁっっ」
 ヌチヌチ音を立てて全体が強く扱かれ、ぎゅっと先端を覆う様に握られれば、堪らず俺の局部は大きく脈打ち、勢いよく白い液を吐き出した。
 荒い息のまま、ふと顔を上げれば……満足そうな笑顔が、涙で歪む俺の視界に映る。

 高まった意識が、そこでプツッと途切れてしまった。


>>>

「……っ、……ん?」

 心地の良いシーツの肌触りに包まれ、目を覚ました。
 ……身体が怠い。
 たしか俺、魔法の練習をしていたはず。
 ズキッと痛む頭で、どうにか数刻前に記憶を巡らせる。
 そうだ、なんだか急に身体が熱くなって……そしたら、イーサンが居て……

 イーサンが、居て!!

 全てを思い出し、いてもたってもいられず飛び起きた。
「……っ、て……」
「動くとまだ頭が痛むと思うぞ」
 信じられない程の頭痛に思わず頭を抑えると、ドアの方からくだんの彼の声が飛んできた。
「っ……イー…サン……」
 とてもじゃないが、あんな痴態をお披露目した後で顔を見る事なんて出来ない。バツが悪そうに俯く俺の目の前に、水の入った真新しい瓶が差し出された。
「飲めるか」
「えっ、……ぁ、うん。…ありが、と」
「ん。飲めるだけしっかり飲んでおけ」
 顔は逸らしたまま瓶を受け取り、喉へと流し込む。
「美味しい……」
 心地よい冷たさが身体中へ広がり、火照りをみるみるうちに潤していく。
「全く、一体どれだけ魔法使ったんだ。魔力は枯渇状態、オマケに催淫系の魔法まで自分に掛けて」
 イーサンが呆れながら零した言葉に、俺は耳を疑った。
「へっ!?」
 あの本、治癒魔法の本じゃなかったんかい! なんだよそのエロ魔法!!
 赤い顔でアタフタしていると、ギシッとベッドの軋む音が耳に入る。反射で音のする方に顔をやると、俺が普段使っているベッドの縁にイーサンが笑顔を携え腰掛けていた。「そういえば」と周りを見回すと、見慣れた居住空間の中が広がっている。身体には丁寧に毛布が掛けられ、汚れた筈の下半身はそこにはなく、替えの服まできっちり着た状態。

 ……あの後、ここまで俺を運んでくれたのか。

「……あ、あの、……ありが、と……」

 まだちゃんと顔は見る事が出来ない……でも、なんだか胸の奥がキュッと締め付けらながら蚊の鳴くような声で呟くと、伏したままになっていた俺の頭が、ふわっと優しく撫でられた。

「気にするな……それよりアオ。お前まだ身体が本調子じゃないだろ。今日は俺、ここに泊まるから」
「……え?」
 思いもよらない申し出に、しおれていたはずの俺は勢いよく顔を上げてしまい、再び頭に激痛が走る。
「ほらな。魔力不足を甘く見るなよ、下手すると命に関わるんだからな」
「い、いやでも急だし。それにこんな部屋に、公爵家の方を泊めるなんてそんなんできる訳……」
 何より、俺のメンタルが持たん。ただでさえ、あんな醜態見せた後だぞ!? まともに顔を見る事さえ出来ない状態で1晩共に過ごせ、と。
 しかも相手はイーサン・ガイ・クライヴ。
 途端に活性化した俺の脳みそが絶叫を始める。
 ――無理だろ。
病人お前に決定権はない。じゃ、1回本部仕事に戻ってまた後で来るからな。大人しくしてろよ」
「あ、ちょっと」
 制止も虚しく、彼は1度俺の頭をグリっと撫でると、そのまま部屋を出ていってしまった。

「何も気に、しないのかよ……」

 扉に向かい、呆然とした口から出た言葉が、誰に聞かれるでもなく静かに宙へと舞った。
「……イーサンを、求めた……」
 誰もいなくなった部屋で唇をそっと指で撫でてみる。この口は、確かに彼を欲しがった。

「いや、彼は……かっこよくて、時々見惚れるけど、その……友人、だよね……?」

 指先に伝わる熱の意味を、この時まだ俺は理解し切れていなかった。


>>>

 ドアを閉じるなり、思わずそこにしゃがみ込む。

「はぁぁぁ……」

 出るのは大きな溜め息。まさか自分が、同じ男のアレを扱く日が来ようとは。
 確かに、女に異常な程拒否反応を示す自分は男色だ。
 今までは適当にその辺で引っ掛けた男に性処理をさせていたが、自分からソイツらのモノに触るなんて死んでもお断りだった。手でされようが口でされようが、そいつが自分の尻拡げてナカにぶち込もうが、俺がイければそれでいい。なんなら触りたくもない。俺は何もしない、それ以外有り得なかった。

「……っ、仕方ないだろ」
 あんな顔見せられたら。

 ギルバートに残りの仕事を押し付けた俺の足は、自然とアオの元へと向かっていた。入口から入るやいなや、もの凄い音が奥の診療室から聞こえ、慌てて駆けつけたそこには……アオが荒い息で倒れていた。

『……たすけ、て……イーサン……』

 あの時、真っ赤な顔で瞳を潤ませたままそう告げるアオの姿に、頭の中で何かがブチっと音を立てた。
 自分からキスをするなんて初めてだった。自分から誰かの身体に触るなんて。
 アオの甘い声と息遣いが、もうずっと耳から離れない。
 あの顔と身体を思い出すと、どういう訳か鼓動が跳ね上がる。

 初めて見たアオの笑顔、次に見た乱れた顔。……今度は何がある? もっともっと、お前の色々な顔を見てみたい。
 ――……お前を知りたい。

 「友情」か「恋」か。それはソイツを抱けるかどうかで分けられる。
 つい先日、ギルバートの奴がそんな事を言っていたな。
「はっ……まさかこんなにも自分が単純だったとはな」
 だがしかし、この気持ちを名前を決め付けるのはまだ早い。……色々なお前を見て判断するべきだ。
「そうして恋だと自覚しても、遅くはないだろ?」
 絶えず悲鳴を上げ続ける心臓を、分厚い服の上からグシャッと掴んだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく
BL
異世界から転移してきた勇者様と聖女様がこの世界に残した大きな功績……魔王討伐?人間族と魔族の和解?いや……【推し】という文化。 【推し】という存在が与えてくれる力は強大で【推し活】の為に転生まで成し遂げた、そんな一人の男の推し活物語。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ
BL
 車に轢かれそうになった猫を助けて死んでしまった少年、天音(あまね)は転生したら猫になっていた!?  猫の自分を受け入れるしかないと腹を括ったはいいが、人間とキスをすると人間に戻ってしまう特異体質になってしまった。  転生した先は平和なファンタジーの世界。人間の姿に戻るため方法を模索していくと決めたはいいがこの国の王子に捕まってしまい猫として可愛がられる日々。しかも王子は人間嫌いで──!?   *性描写は※ついています。 *いつも読んでくださりありがとうございます。お気に入り、しおり登録大変励みになっております。 これからも応援していただけると幸いです。 11/6完結しました。

処理中です...