難攻不落の異名を持つ乙女ゲーム攻略対象騎士が選んだのは、モブ医者転生者の俺でした。

一火

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1章

こぼれ話.追い出された3人組

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「副団長のせいで追い出されたんだが。俺はまだ仕事中だったんだよなぁ? 誰かさん達とは違ってなぁ?」
「お前の恋人・書類は手元にあるじゃん~。そんなイーサンみたいな怒り方するなよ。最近似てきたんじゃね? お前、アイツと」
「わ、イーサン団長本気っすね……あれは。今度お祝しましょ!!」


 パタンと閉められた黒いドアの前で、3人は個性溢れる反応を見せる。
 手元の書類を握り潰し「あんな鬼畜生と一緒にするな」今にも殴り掛かりそうなジェイスに、両手を小さく上げ降参のポーズを取るギルバート。そんなジェイスを抑えると見せ掛けて後ろからぎゅっと抱き締め、頭1つ分小さな彼の、サラサラな髪の毛に擦り寄るキーファ。
 この状態は、第2騎士団のお決まりの姿と言えよう。


「いやでも、面白かったろ? お前ら。あんなに1人の人間に必死なイーサンの姿見られてよ」
 ドアの向こうに目線を送り、中で行われている事を想像しニヤつくギルバートを、ペちっとジェイスは軽く書類で叩いた。
「……気持ち悪い顔をしないでください。……まぁ、面白くないと言えば嘘にはなるが……」
「めっちゃ面白いっすよぉー! 団長って、恋人とか絶対出来ないタイプだと思ってました!!」
 どさくさ紛れにジェイスの頬へ自分の頬を擦り付けるキーファは、「お前今何をした」と振り返ったジェイスに物凄い力で首を絞められている。

「だよなぁ? ……せっかくだ、ちょぉっと覗いてみるかぁ」
「止めなさい副団長。悪趣味が過ぎる!!」
 泡を吹き掛けているキーファを投げ捨て、黄金のドアノブに手をかけるギルバートを慌てて止めようと、ジェイスは駆け出したが……

 時すでに遅し。

「……ゃっ、ぁっイーサン、ね、もっ……んぁあっっ」


 そうして扉は再び、静かに閉められた。


「……で、デスヨネェ」
 中から聞こえたよがり声に、慌ててドアを閉めたギルバートは、扉に背を向けて「はは……」と固まった笑顔を作った。
「……だから言っただろぉぉぉ!! 想像出来たよなぁ!? なぁ、ギルバートよォォォ」
 真っ青な顔でジェイスはギルバートの胸ぐら掴む。礼式や肩書を重んじる彼はどこへ行ったのやら。それが吹っ飛ぶ程に慌てているジェイスである。
「いやだって!! ホントにヤってるとは思わないだろおおおお!?」
「アホか。そもそもお前が煽ったんだろ! それであの単細胞バカ団長が何もしない訳ないだろうがよ」
「いやまぁ、それはそうだけどよぉ。あの自己中イーサンが嫉妬心丸出しで面白くて……」
 イーサンに聞かれた日には即打首の台詞をジェイスとギルバートが吐き続ける中、キーファは1人「せめてアオさんの声が漏れぬよう……」と祈りながら執務室に防音壁の魔法をかけていた。


「はー……コレまだまだ掛かるんだろ……俺、警邏外回りしてくるわ」
「サボりに行くんですね」
「ごゆっくりっす。俺たちはー……あ、地下の取調室でも行きましょっ、ジェイスさん」
 堂々サボり宣言をするギルバートを睨み付けるジェイスの腕を、キーファが強く引く。
「は……何でそんなところに……」
「えー? ……だってジェイスさん、さっきのアオさんの声で、ちょっと興奮しちゃったでしょ」
 キーファに耳元でそう囁かれ、ジェイスの顔が分かりやすく真っ赤に染まり上がる。

「じゃっギルバートさん、また後程!!」
 腕の中にガッチリと収まったジェイスは暴れているが、スイッチの入ったキーファはその位のことではびくともしない。爽やかにギルバートに向けて手を振っている。
「おー、程々にしとけよ~」
「ちょ、馬鹿犬離せ!」
 いまだ顔の赤いジェイスを引き摺るキーファに、ギルバートは穏やかな顔で手を振り返した。

「……うん。今日も第2騎士団の風紀は終わってる……と」

 いい笑顔でそう言ったギルバートは、2人の姿が見えなくなるのを確認すると軽く伸びをしながら早速外へと向かう。階段を降りるその途中、軍服の胸ポケットに入れた通信機が「ブブッ」と振動を告げた。

「はい。……アレフ、どうし……あぁ、討伐から帰ったのか。そんで今から部屋に来いって? ……了解」

 通信機での通話を終え、元ある場所にそれを戻すと、ギルバートは思わず苦笑いを浮かべた。

「ほんと、どいつもこいつも……こんな風紀乱れてる奴らが、王都最強の騎士達なんだから、笑っちゃうよなぁ」

 「まぁ、俺もその1人か……」と呟いたギルバートはもう一度伸びをして、外へ向かう階段を降りるのを止め、その足を第1騎士団の執務室へと繋がる渡り廊下に向けたのだった。

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