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1章
11-2
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「アオ、喉乾いた」
「はぁ。そこにジェイスさんが淹れてくれたコーヒーがありますよ」
テーブルに置かれたコーヒーカップを手に取ると、それを求める男へと差し出す。
「んー、飲ませて」
彼はそれを手に取ろうとはせず、ぐいっと顔を近付けてくる。
「えぇっ。いや、零すから自分で飲んでください」
「口移しで飲めば零れないだろ」
「……はぁぁ!?」
それはそれはご機嫌な顔で、とんでもバカな発言をする男をどうしたらいい……なんだ、この185センチ超えの巨大な犬は。
情事が終わり、服を整えソファで抱き合っていると、暫くして「もう仕事していいですか」とジェイスさんとキーファさんが執務室へと戻ってきた。真っ赤に茹で上がる俺の事なんて何のその。そこから2人は向かいのソファに座り、資料を片手に何やら話し合いをしているが、そんな状態にお構い無しのイーサンは、隣に座っている俺に擦り寄ってくる。
いや、てか、なんでこんな恋人みたいな状態になってんの。
頭を抱える俺を他所に、ゼロ距離ホールドをしているイーサンは、甘い要望を携え迫ってくる。
「アオー、早く。なぁ……飲ませて」
「でっ、出来るわけないだろぉぉ」
「何言ってるんですかアンタは! いきなりバカになりすぎでしょうが!!」
さすがにこの状況に耐えられなくなったのか、俺が言う前に向かいから鋭い声がとんできた。こめかみをピクピクと揺らすジェイスはイーサンを睨みつけ、その横でキーファは引き攣り笑いを浮かべている。
「ほ、ほら。ジェイスさんもああ言ってる事ですし」
イーサンって、血も涙もない鬼の団長だったよな。何故かゲーム内ではその描写が事細かに描かれていたのを、俺は忘れて居ないよ安心して。
「関係ないだろ。アオー、まだ?」
「っ……もぉぉぉっ」
俺の困り果てた姿に、イーサンが声を出して笑い始める。
「仕方ない。ならば今夜帰ったら頼む、な?」
「……っっ! ……ばか」
諦めてコーヒーカップに手を伸ばすイーサンを、俺は真っ赤な顔のままじっとりと睨む。
とは言え此度は、彼ばかりを責めることは出来ない。
――何故なら……1番バカになってんの俺なんだよォォ。
変な魔法を施されはしたよ? にしても、なんだよあの乱れ方。理性は飛んだが、断片的に記憶はしっかりと刻まれている。
あ、コーヒーを飲むイーサン、かっこいいな。
「いや、そうじゃないってぇぇぇ」
変態に成り下がった己を省みた俺は、かち割れそうに痛い頭を庇うかの如く、額を手のひらで抑えた。
「どうした、調子悪いのか?」
それは深い溜め息を吐く俺の顔を、イーサンが眉を落として覗き込んでくる。長い睫毛を携えた綺麗な瞳と視線が交わると、否応にも鼓動が高鳴り始める。
全力でその存在を無視されたジェイスが「聞いてんのかこのバカ団長!!」と今にも暴れだしそうになっているのを、キーファがどうにか取り押さえている姿を横目で確認しながら「いや、大丈夫」と苦笑した。
「おー、なんだ。真面目に仕事やってんじゃんお前ら。えらいえらい」
後ろのドアが開く音と共に、そんな呑気な声が耳に入る。
「ギルバート副団長! 警邏おつかれさまです!!」
いの一番にキーファが元気な声で彼を迎える。まるで「助けてぇもう手に負えないっす」と叫んでいるかのように。
ギルバートは俺の傍に歩みを進めると、手に持っていた銀色の腕輪を目の前に差し出した。
「……何でしょうこれ」
見た事もないアクセサリーに首を傾げつつ、それとギルバートを交互に見遣る。すると、彼も不思議そうな顔でこちらを見返して来た。
「執務室のドアの前に落ちてた。こいつら3人がこんなもの付ける所見た事ないから、アオさんのじゃないのか?」
シンプルな細いバングルに、赤黒い石が3つ嵌められている。記憶の中を辿っても、見覚えはない。一応……と手に取って確認をした瞬間、チカッと石が光を纏い、全身をゾクリと寒気に似た何かが走った。
「っ!! うわっ」
「どうした、アオ」
ビクッと身体が跳ねたのを、俺に抱き着いたイーサンが気付かないはずもない。「いや、別に」と言いかけた所で、自分に施された『呪』の存在を思い出す。まさか、この3人の前で再び痴態を晒す訳にはいかないし、なんならもう俺の身体は限界である。「めんどくさい魔法を掛けられたもんだな」と、いま自分に起きた事をイーサンに告げようと口を開いた。
「それが……」
「失礼します。イーサン団長。天子フタバ様が団長にお会いしたいとお見えです」
俺の言葉が発せられるより先にドアが開かれ、声の主である若い隊士が深々と頭を下げながらそう告げた。
『フタバ』
その名前に、俺の目は大きく開かれる。
――ヒロインが……攻略対象へ会いに来た。
ドクンドクンと、俺の身体の全てが心臓に成り代わったかのように大きく鳴り始めた。
「は? アイツが何の用だよ」
至極煩わしそうな声でイーサンは答えているが、俺の耳には届いていない。
膝の上に置いていた自分の手を、思わずぎゅうっと握り込んだ。
「はぁ。そこにジェイスさんが淹れてくれたコーヒーがありますよ」
テーブルに置かれたコーヒーカップを手に取ると、それを求める男へと差し出す。
「んー、飲ませて」
彼はそれを手に取ろうとはせず、ぐいっと顔を近付けてくる。
「えぇっ。いや、零すから自分で飲んでください」
「口移しで飲めば零れないだろ」
「……はぁぁ!?」
それはそれはご機嫌な顔で、とんでもバカな発言をする男をどうしたらいい……なんだ、この185センチ超えの巨大な犬は。
情事が終わり、服を整えソファで抱き合っていると、暫くして「もう仕事していいですか」とジェイスさんとキーファさんが執務室へと戻ってきた。真っ赤に茹で上がる俺の事なんて何のその。そこから2人は向かいのソファに座り、資料を片手に何やら話し合いをしているが、そんな状態にお構い無しのイーサンは、隣に座っている俺に擦り寄ってくる。
いや、てか、なんでこんな恋人みたいな状態になってんの。
頭を抱える俺を他所に、ゼロ距離ホールドをしているイーサンは、甘い要望を携え迫ってくる。
「アオー、早く。なぁ……飲ませて」
「でっ、出来るわけないだろぉぉ」
「何言ってるんですかアンタは! いきなりバカになりすぎでしょうが!!」
さすがにこの状況に耐えられなくなったのか、俺が言う前に向かいから鋭い声がとんできた。こめかみをピクピクと揺らすジェイスはイーサンを睨みつけ、その横でキーファは引き攣り笑いを浮かべている。
「ほ、ほら。ジェイスさんもああ言ってる事ですし」
イーサンって、血も涙もない鬼の団長だったよな。何故かゲーム内ではその描写が事細かに描かれていたのを、俺は忘れて居ないよ安心して。
「関係ないだろ。アオー、まだ?」
「っ……もぉぉぉっ」
俺の困り果てた姿に、イーサンが声を出して笑い始める。
「仕方ない。ならば今夜帰ったら頼む、な?」
「……っっ! ……ばか」
諦めてコーヒーカップに手を伸ばすイーサンを、俺は真っ赤な顔のままじっとりと睨む。
とは言え此度は、彼ばかりを責めることは出来ない。
――何故なら……1番バカになってんの俺なんだよォォ。
変な魔法を施されはしたよ? にしても、なんだよあの乱れ方。理性は飛んだが、断片的に記憶はしっかりと刻まれている。
あ、コーヒーを飲むイーサン、かっこいいな。
「いや、そうじゃないってぇぇぇ」
変態に成り下がった己を省みた俺は、かち割れそうに痛い頭を庇うかの如く、額を手のひらで抑えた。
「どうした、調子悪いのか?」
それは深い溜め息を吐く俺の顔を、イーサンが眉を落として覗き込んでくる。長い睫毛を携えた綺麗な瞳と視線が交わると、否応にも鼓動が高鳴り始める。
全力でその存在を無視されたジェイスが「聞いてんのかこのバカ団長!!」と今にも暴れだしそうになっているのを、キーファがどうにか取り押さえている姿を横目で確認しながら「いや、大丈夫」と苦笑した。
「おー、なんだ。真面目に仕事やってんじゃんお前ら。えらいえらい」
後ろのドアが開く音と共に、そんな呑気な声が耳に入る。
「ギルバート副団長! 警邏おつかれさまです!!」
いの一番にキーファが元気な声で彼を迎える。まるで「助けてぇもう手に負えないっす」と叫んでいるかのように。
ギルバートは俺の傍に歩みを進めると、手に持っていた銀色の腕輪を目の前に差し出した。
「……何でしょうこれ」
見た事もないアクセサリーに首を傾げつつ、それとギルバートを交互に見遣る。すると、彼も不思議そうな顔でこちらを見返して来た。
「執務室のドアの前に落ちてた。こいつら3人がこんなもの付ける所見た事ないから、アオさんのじゃないのか?」
シンプルな細いバングルに、赤黒い石が3つ嵌められている。記憶の中を辿っても、見覚えはない。一応……と手に取って確認をした瞬間、チカッと石が光を纏い、全身をゾクリと寒気に似た何かが走った。
「っ!! うわっ」
「どうした、アオ」
ビクッと身体が跳ねたのを、俺に抱き着いたイーサンが気付かないはずもない。「いや、別に」と言いかけた所で、自分に施された『呪』の存在を思い出す。まさか、この3人の前で再び痴態を晒す訳にはいかないし、なんならもう俺の身体は限界である。「めんどくさい魔法を掛けられたもんだな」と、いま自分に起きた事をイーサンに告げようと口を開いた。
「それが……」
「失礼します。イーサン団長。天子フタバ様が団長にお会いしたいとお見えです」
俺の言葉が発せられるより先にドアが開かれ、声の主である若い隊士が深々と頭を下げながらそう告げた。
『フタバ』
その名前に、俺の目は大きく開かれる。
――ヒロインが……攻略対象へ会いに来た。
ドクンドクンと、俺の身体の全てが心臓に成り代わったかのように大きく鳴り始めた。
「は? アイツが何の用だよ」
至極煩わしそうな声でイーサンは答えているが、俺の耳には届いていない。
膝の上に置いていた自分の手を、思わずぎゅうっと握り込んだ。
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