32 / 92
1章
16
しおりを挟む
異常なほどの喉の乾きで目が覚める。
視界に映るものは、見慣れた景色だった。
「ん、あれ。……おれ、いつのまに帰った……?」
確か昨晩は、騎士団の面々と酒場で飲んでいたはず。ビールを3、4杯程飲み、イーサンが餌付けかの如く、出された食事をせっせと俺の口に運ぶ様子を3人に爆笑されて……それ以降の記憶はない。
ズキッと痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がると、ご丁寧に外出着から部屋着へと俺の服は変わっていた。脱ぎ散らかした様子もない……という事は、思い当たる節はひとつ。
「喉……乾いた」
取り敢えずこのカラカラの喉をどうにかしたくて、足を縺れさせながら辿り着いた冷蔵庫の扉を開く。冷気の溢れる中からいつの間にか最後の1本になった水の瓶を取り出し、一気にそれを飲み干した。
「あぁ…、生き返る」
身体が潤されると、途端に意識もハッキリとしてくる。
そして、それと共に昨日の醜態も、しっかりと思い出しされてしまった。
「まって、……俺、イーサンにとんでもない言葉連発してなかったか……」
『はなれないで』『ずっとおれのそばにいて』
一旦、俺の思考が停止した。
な、ななななな。何言ってんだよ俺……! いくら酔っ払ってたとはいえ!!
顔はいくら火を吹いても足らない。
「も、どんな顔して今後イーサンに会え、と……」
頭を抱えその場に崩れ落ちる俺の耳に、下の階から、ドアを叩かれる音と大きな声が聞こえ「もしやイーサン!?」などと、戦々恐々とした。
「先生、助けてくれ!! 孫が……孫がよ……」
息を切らした白髪混じりの男性が、子供を抱え診療所内に飛び込んできた。腕の中の子供は腕をだらんと垂らし、ぐったりとしている。
「セドリックさんどうした……お孫さん…ルーアくんか! 何があったの」
常連男性のただならぬ様子に、慌てて傍に駆け寄る。
「歩いていたらいきなり、赤いローブに白い仮面を付けた奇妙な奴らに刺されて……血がっっ……」
「……っ酷い……すぐ処置する。悪いけど、中に運んでもらえるかな」
よく見れば男性が着ているベージュの作業着が真っ赤に染まりつつある。「事は一刻を争うかもしれない」と診察室のドアを開けに走り、そこへと誘導する。ベッドの上に少年が置かれた所で、後ろから伸びてきた手が男性の肩がグイッと掴み、驚いた俺と男性はそちらの方に顔を向けた。
「おい、ソイツらどこへ行った」
そこに立っていたのは、いつの間にか現れた軍服姿のイーサンだった。大方、いつもの様にフラリと診療所な現れた所で、これに出会したのだろう。
「わ、分かんねぇけど、多分教会の方に逃げて行った」
肩を掴んだ男が何者か、直ぐに分かったのであろう男性は、開いたままになっていた診療所の入口の方を指さし伝える。それを聞くやいなや、イーサンは診療所から飛び出して行った。
「見付けましたよ団長!! ジェイスさんが探して……」
「キーファか、丁度いい。お前アオの護衛してろ。何かあったらお前の首が飛ぶと思えよ!!」
「は? ちょ、ちょっとどういう事っすか」
入れ違いで診療所を訪れたキーファにそう吐き捨てると、遠くに伸びる尖った屋根の建物に向かい、一目散に駆け出して行った。
「腹部を刺されている。傷の大きさからして恐らくナイフか何かか」
診察ベッドで横になった10歳くらいの子供は、苦しそうに眉を寄せ唸っている。
致命傷はま逃れているが、早く処置しないと……
「魔法か、縫うか」
赤黒く濡れたシャツの前を開け、傷口を確認しそこを消毒しながら、次に自分がすべき行動を思い悩んでいた。
予後を考えると魔法が1番だろうが、これはどの治癒魔法を使うのが適切だろうか……いやもう、それを悩むくらいならば縫ったが早くないか。
相手は子供、体力面の心配もある。ここでうだうだ考えている時間はない。
「一先ず縫合をして、それから魔法で組織の回復をしよう。それで傷口まで治るようならば、即抜糸をすればいいだけの事、別に無駄じゃない」
まず止血もしたい所だが、さすがにここに電メスは無かったよな。チラッと横目で器具の置かれた棚を確認する。
そこには……何故か見覚えのあるコードが何本か付いた四角い箱が置かれていた。
「……なんで、あるんだよ」
おかしい、棚の上には何も置いていなかった。さすがに毎日見ていた光景だ、絶対に見間違いなんかじゃない。
その隣にはご丁寧に、今俺が欲しいと思っている器具や薬品が並んでいる。
「こんなもの、この世界にあるはずがない。……俺が使っていたメーカーの滅菌グローブ、なんて」
まるで脳内で考えていた事が具現化でもしたかのような様子に、背筋がゾクリと震える。
この不気味な現象を考えるのは後回しだ。まずは目の前の患者に専念をしよう。
「ごめんね、ちょっとチクッとするけど……段々痛くなくなるからね。がんばろうね」
へそ辺りの患部。施術部を広く確保し麻酔をする為、ズボンのウエストを少しズラそうとしたとき「カサっ」と音が耳に入った。
そこに手をかけると、1枚の小さなメモが挟まっている。「なんだろう」と疑問に思いながらも、とにかく今は邪魔になると取り除いてベッドの端へ投げ、処置に移ることとした。
視界に映るものは、見慣れた景色だった。
「ん、あれ。……おれ、いつのまに帰った……?」
確か昨晩は、騎士団の面々と酒場で飲んでいたはず。ビールを3、4杯程飲み、イーサンが餌付けかの如く、出された食事をせっせと俺の口に運ぶ様子を3人に爆笑されて……それ以降の記憶はない。
ズキッと痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がると、ご丁寧に外出着から部屋着へと俺の服は変わっていた。脱ぎ散らかした様子もない……という事は、思い当たる節はひとつ。
「喉……乾いた」
取り敢えずこのカラカラの喉をどうにかしたくて、足を縺れさせながら辿り着いた冷蔵庫の扉を開く。冷気の溢れる中からいつの間にか最後の1本になった水の瓶を取り出し、一気にそれを飲み干した。
「あぁ…、生き返る」
身体が潤されると、途端に意識もハッキリとしてくる。
そして、それと共に昨日の醜態も、しっかりと思い出しされてしまった。
「まって、……俺、イーサンにとんでもない言葉連発してなかったか……」
『はなれないで』『ずっとおれのそばにいて』
一旦、俺の思考が停止した。
な、ななななな。何言ってんだよ俺……! いくら酔っ払ってたとはいえ!!
顔はいくら火を吹いても足らない。
「も、どんな顔して今後イーサンに会え、と……」
頭を抱えその場に崩れ落ちる俺の耳に、下の階から、ドアを叩かれる音と大きな声が聞こえ「もしやイーサン!?」などと、戦々恐々とした。
「先生、助けてくれ!! 孫が……孫がよ……」
息を切らした白髪混じりの男性が、子供を抱え診療所内に飛び込んできた。腕の中の子供は腕をだらんと垂らし、ぐったりとしている。
「セドリックさんどうした……お孫さん…ルーアくんか! 何があったの」
常連男性のただならぬ様子に、慌てて傍に駆け寄る。
「歩いていたらいきなり、赤いローブに白い仮面を付けた奇妙な奴らに刺されて……血がっっ……」
「……っ酷い……すぐ処置する。悪いけど、中に運んでもらえるかな」
よく見れば男性が着ているベージュの作業着が真っ赤に染まりつつある。「事は一刻を争うかもしれない」と診察室のドアを開けに走り、そこへと誘導する。ベッドの上に少年が置かれた所で、後ろから伸びてきた手が男性の肩がグイッと掴み、驚いた俺と男性はそちらの方に顔を向けた。
「おい、ソイツらどこへ行った」
そこに立っていたのは、いつの間にか現れた軍服姿のイーサンだった。大方、いつもの様にフラリと診療所な現れた所で、これに出会したのだろう。
「わ、分かんねぇけど、多分教会の方に逃げて行った」
肩を掴んだ男が何者か、直ぐに分かったのであろう男性は、開いたままになっていた診療所の入口の方を指さし伝える。それを聞くやいなや、イーサンは診療所から飛び出して行った。
「見付けましたよ団長!! ジェイスさんが探して……」
「キーファか、丁度いい。お前アオの護衛してろ。何かあったらお前の首が飛ぶと思えよ!!」
「は? ちょ、ちょっとどういう事っすか」
入れ違いで診療所を訪れたキーファにそう吐き捨てると、遠くに伸びる尖った屋根の建物に向かい、一目散に駆け出して行った。
「腹部を刺されている。傷の大きさからして恐らくナイフか何かか」
診察ベッドで横になった10歳くらいの子供は、苦しそうに眉を寄せ唸っている。
致命傷はま逃れているが、早く処置しないと……
「魔法か、縫うか」
赤黒く濡れたシャツの前を開け、傷口を確認しそこを消毒しながら、次に自分がすべき行動を思い悩んでいた。
予後を考えると魔法が1番だろうが、これはどの治癒魔法を使うのが適切だろうか……いやもう、それを悩むくらいならば縫ったが早くないか。
相手は子供、体力面の心配もある。ここでうだうだ考えている時間はない。
「一先ず縫合をして、それから魔法で組織の回復をしよう。それで傷口まで治るようならば、即抜糸をすればいいだけの事、別に無駄じゃない」
まず止血もしたい所だが、さすがにここに電メスは無かったよな。チラッと横目で器具の置かれた棚を確認する。
そこには……何故か見覚えのあるコードが何本か付いた四角い箱が置かれていた。
「……なんで、あるんだよ」
おかしい、棚の上には何も置いていなかった。さすがに毎日見ていた光景だ、絶対に見間違いなんかじゃない。
その隣にはご丁寧に、今俺が欲しいと思っている器具や薬品が並んでいる。
「こんなもの、この世界にあるはずがない。……俺が使っていたメーカーの滅菌グローブ、なんて」
まるで脳内で考えていた事が具現化でもしたかのような様子に、背筋がゾクリと震える。
この不気味な現象を考えるのは後回しだ。まずは目の前の患者に専念をしよう。
「ごめんね、ちょっとチクッとするけど……段々痛くなくなるからね。がんばろうね」
へそ辺りの患部。施術部を広く確保し麻酔をする為、ズボンのウエストを少しズラそうとしたとき「カサっ」と音が耳に入った。
そこに手をかけると、1枚の小さなメモが挟まっている。「なんだろう」と疑問に思いながらも、とにかく今は邪魔になると取り除いてベッドの端へ投げ、処置に移ることとした。
388
あなたにおすすめの小説
最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!
藤雪たすく
BL
異世界から転移してきた勇者様と聖女様がこの世界に残した大きな功績……魔王討伐?人間族と魔族の和解?いや……【推し】という文化。
【推し】という存在が与えてくれる力は強大で【推し活】の為に転生まで成し遂げた、そんな一人の男の推し活物語。
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
猫になった俺、王子様の飼い猫になる
あまみ
BL
車に轢かれそうになった猫を助けて死んでしまった少年、天音(あまね)は転生したら猫になっていた!?
猫の自分を受け入れるしかないと腹を括ったはいいが、人間とキスをすると人間に戻ってしまう特異体質になってしまった。
転生した先は平和なファンタジーの世界。人間の姿に戻るため方法を模索していくと決めたはいいがこの国の王子に捕まってしまい猫として可愛がられる日々。しかも王子は人間嫌いで──!?
*性描写は※ついています。
*いつも読んでくださりありがとうございます。お気に入り、しおり登録大変励みになっております。
これからも応援していただけると幸いです。
11/6完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる