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1章
19-2
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その夜は、イーサンと抱き合ったまま眠りに落ちた。
慣れたシーツの感触に包まれながら重い瞼を開く。
カーテンを開けたままだった俺の部屋には、眩しい程の朝日が差し込んでいる。どうやら今日も王都アトランティウムは快晴のようだ。
横向きで俺の身体をしっかりと抱き締める、彼の厚い胸元から顔だけ抜け出し、今だ夢の中に居るイーサンをじっと見つめた。
「……俺の方が先に起きるなんて、珍しいな」
もう毎日のように彼と睡眠を共にしているが、決まって先に起きているのはイーサンの方。
早く起きた彼が何をしているのかといえば、決まって俺の寝顔をじっと眺めている。「恥ずかしいからやめて欲しい」と言っても、彼は聞いてはくれない。
その……目覚めて最初に、華を咲かせた眉目秀麗な男に「おはよう、アオ」と言われる生活も嫌いでは無いのだが。
「綺麗な寝顔だな」
何を食べたらそんなに伸びるのか分からない長い睫毛に、スっと通った鼻筋。薄い唇は、俺の間抜けな寝顔と違って美しい形で閉じられたままだ。そこにフワッと焦げ茶色の髪が掛かり、彼の色気を助長させている。
「……かっこいいな。なんかエロいし」
別に俺は元々、男色とかそういう癖は無い。……だけど今は、この美しい男がギラついた雄になる瞬間こそ、他のどんな性的情景よりも興奮する。
そしてあの彼の大きくて熱い棒で、腹の中をぐちゃぐちゃに掻き回されるのが何よりも堪らない。
昨日の荒々しい行為を思い出し、ズクっと腹部が疼いた気がした。
「俺、女の子じゃないのに……抱かれすぎて、なんか変になったのかな」
まだ目を覚ましそうにない彼の下唇を、そっと指で撫でる。
別に、性的な事象だけで彼が好きという訳では無い。
一見、自己主張の強い俺様に見えるが、その中身は誰よりも真っ直ぐで男らしくて、それでいて純粋で、そして驚く程優しい。
「いつの間にこんなに惚れたんだろう。……ずっとこうして隣で見ていたいな、イーサンの事」
――叶うなら、永遠に
でも俺は、主人公じゃない。
眺めていた視線が煩かったのか、薄く開いた瞼からラピスラズリの瞳が姿を見せる。
「……なんだ、もう起きてたのか」
寝起き特有の掠れ声がまた色っぽい。そんな些細な事にも胸がキュンっとときめき、熱を持ち始める俺の頬を、イーサンの大きな手がスっと撫でた。
「うん、おはよ。よく眠れた?」
「ん、おはようアオ。あぁ……お前が傍に居るとよく眠れる。熟睡し過ぎて困るくらいだ」
フニフニと親指を動かし俺の頬で遊ぶ彼は、そんな台詞を吐く。
「なんだよ、それ。……嬉しい」
彼の言葉がむず痒くて……眉を下げて笑う俺に、イーサンは「今日も朝から可愛いなお前」と幸せそうな笑顔で口付けてくれた。
イーサンが見立ててくれた、ピンクのプルオーバーシャツに袖を通す。だいぶオーバーサイズのそれを着た俺の事を、彼は絶えず「可愛い」と言い続けているが、そんなイーサンはといえば、襟と前立ての部分だけボルドーの黒いシャツ姿で今日も色気をカンストさせている。
手を繋いで診療所に鍵を掛け「ごはん楽しみだね」なんて会話をしながら外に出てみると、なにやら騒がしい。普段から人通りの多い道だけれど、今日は特に溢れ返っていた。
「今日何かあるのかな」
「やけに人が多いな。この辺りの住人全員がこぞって集まって居るようにも見えるが……」
道の中央が大きく空けられ、その縁沿いに人々が並び何やら「今か今か」と待ち構えている。
「何かパレードとか行われる雰囲気だね」
俺のそんな言葉を聞いたイーサンが「あ……」と小さく声をあげた。
「そういえば今日はライザ第1王子の生誕祭だったな」
聞き覚えのある名前に、俺が大きく目を見開いた時だった。
「来たぞ、王子だ!!」
「おめでとうございます王子!」
「今日も見目麗しい……なんて素敵なのかしら」
華美な馬車が遠くから姿を見せると、そこに居た何百という群衆が一斉に沸き立つ。
「生誕パレードって……イーサン行かなくてよかったの?」
「問題ない。王族絡みの仕事は、全部第1騎士団が請け負うからな。基本第2騎士団はノータッチだ。だがまぁ、兄貴が仕事で暇してる非番のギルバートなんかは……駆り出されているかもな」
「どういう事だろう」と首を傾げる俺に向かって「ほら、噂をすれば」と群衆の溢れる1番最前線を指さす。そこには、見慣れた紫髪の彼が「危ないから下がってくださーい!」と両手を広げ、馬車に押し寄せる人々を押さえ込んでいた。
「うわぁ、ギルバートさんお疲れ様です……」
本来しなくていいであろう仕事で揉みくちゃになる彼に、心の中で手を合わせた。
「ちなみに兄貴はあそこだな」
次にイーサンが指さしたのは、馬車の前を優雅に歩く白馬だった。そこに乗っているのは、紛れもないイーサンそっくりの兄。
「わぁ、凄い。あれ騎士団の正装? 綺麗だね」
真っ白なロング丈の軍服を身に纏い、堂々たる出で立ちで馬に乗りこなす気品溢れる姿は様になり過ぎていて、こちらが王子だと言われても異論は無い。
身を乗り出し、キラキラした眼差しでその姿を見つめていると、急に目の前が真っ暗になった。
「……見すぎ」
視界を塞いだものが、頭の後ろから回された彼の大きな手だと気が付いたのは、不貞腐れた声が耳に入った時だった。
「ね、イーサンもあの服持ってるの?」
「あの正装か? もちろんあるぞ。式典の時なんかに着るからな」
「……絶対、かっこいいじゃん」
赤い頬で呟いた言葉は、当然のように彼の耳には届いたようで……目の前が急に明るくなった。
「今度着て見せてやろうか」
ニヤリと意地悪そうに笑う彼の顔を、すぐ側に感じる。「うん!!」と、俺は熱を持つ頬をそのままに、花咲く笑顔を彼に向けた。
白馬に先導されて現れた馬車には、シャンパンゴールドの正装を身に纏い、沿道に立つ市民に向かって手を振る男の姿があった。爽やかを絵に書いた、優美な様子の彼に見覚えしかない。
赤茶色の髪を風に靡かせ、その奥に輝くエメラルドグリーンの瞳。
間違いない……彼もまた、幻想夜想曲攻略対象の1人。
ライザ・ローレンス・レナード第1王子、その人だった。
2人目のメインキャラ……当たり前だけど、イーサンに引け劣らない程の美形。「さすがだよなぁ」と乾いた笑いを浮かべていると、その隣から顔を出した、ミルクティベージュの髪を揺らす青年と目が合った。
ライザと同じ翠色の大きな瞳と視線が交われば、その少し幼さの残る顔がニコりと微笑む。
「わ……可愛い人だな。誰だろう、知らない顔だ……」
歳は16やその辺に見える。ライザと同じく正装を着用しているということは、彼も王族なのだろうか。
ぺこりと会釈を返すと、彼は直ぐに別の方角に顔を遣ってしまった。
慣れたシーツの感触に包まれながら重い瞼を開く。
カーテンを開けたままだった俺の部屋には、眩しい程の朝日が差し込んでいる。どうやら今日も王都アトランティウムは快晴のようだ。
横向きで俺の身体をしっかりと抱き締める、彼の厚い胸元から顔だけ抜け出し、今だ夢の中に居るイーサンをじっと見つめた。
「……俺の方が先に起きるなんて、珍しいな」
もう毎日のように彼と睡眠を共にしているが、決まって先に起きているのはイーサンの方。
早く起きた彼が何をしているのかといえば、決まって俺の寝顔をじっと眺めている。「恥ずかしいからやめて欲しい」と言っても、彼は聞いてはくれない。
その……目覚めて最初に、華を咲かせた眉目秀麗な男に「おはよう、アオ」と言われる生活も嫌いでは無いのだが。
「綺麗な寝顔だな」
何を食べたらそんなに伸びるのか分からない長い睫毛に、スっと通った鼻筋。薄い唇は、俺の間抜けな寝顔と違って美しい形で閉じられたままだ。そこにフワッと焦げ茶色の髪が掛かり、彼の色気を助長させている。
「……かっこいいな。なんかエロいし」
別に俺は元々、男色とかそういう癖は無い。……だけど今は、この美しい男がギラついた雄になる瞬間こそ、他のどんな性的情景よりも興奮する。
そしてあの彼の大きくて熱い棒で、腹の中をぐちゃぐちゃに掻き回されるのが何よりも堪らない。
昨日の荒々しい行為を思い出し、ズクっと腹部が疼いた気がした。
「俺、女の子じゃないのに……抱かれすぎて、なんか変になったのかな」
まだ目を覚ましそうにない彼の下唇を、そっと指で撫でる。
別に、性的な事象だけで彼が好きという訳では無い。
一見、自己主張の強い俺様に見えるが、その中身は誰よりも真っ直ぐで男らしくて、それでいて純粋で、そして驚く程優しい。
「いつの間にこんなに惚れたんだろう。……ずっとこうして隣で見ていたいな、イーサンの事」
――叶うなら、永遠に
でも俺は、主人公じゃない。
眺めていた視線が煩かったのか、薄く開いた瞼からラピスラズリの瞳が姿を見せる。
「……なんだ、もう起きてたのか」
寝起き特有の掠れ声がまた色っぽい。そんな些細な事にも胸がキュンっとときめき、熱を持ち始める俺の頬を、イーサンの大きな手がスっと撫でた。
「うん、おはよ。よく眠れた?」
「ん、おはようアオ。あぁ……お前が傍に居るとよく眠れる。熟睡し過ぎて困るくらいだ」
フニフニと親指を動かし俺の頬で遊ぶ彼は、そんな台詞を吐く。
「なんだよ、それ。……嬉しい」
彼の言葉がむず痒くて……眉を下げて笑う俺に、イーサンは「今日も朝から可愛いなお前」と幸せそうな笑顔で口付けてくれた。
イーサンが見立ててくれた、ピンクのプルオーバーシャツに袖を通す。だいぶオーバーサイズのそれを着た俺の事を、彼は絶えず「可愛い」と言い続けているが、そんなイーサンはといえば、襟と前立ての部分だけボルドーの黒いシャツ姿で今日も色気をカンストさせている。
手を繋いで診療所に鍵を掛け「ごはん楽しみだね」なんて会話をしながら外に出てみると、なにやら騒がしい。普段から人通りの多い道だけれど、今日は特に溢れ返っていた。
「今日何かあるのかな」
「やけに人が多いな。この辺りの住人全員がこぞって集まって居るようにも見えるが……」
道の中央が大きく空けられ、その縁沿いに人々が並び何やら「今か今か」と待ち構えている。
「何かパレードとか行われる雰囲気だね」
俺のそんな言葉を聞いたイーサンが「あ……」と小さく声をあげた。
「そういえば今日はライザ第1王子の生誕祭だったな」
聞き覚えのある名前に、俺が大きく目を見開いた時だった。
「来たぞ、王子だ!!」
「おめでとうございます王子!」
「今日も見目麗しい……なんて素敵なのかしら」
華美な馬車が遠くから姿を見せると、そこに居た何百という群衆が一斉に沸き立つ。
「生誕パレードって……イーサン行かなくてよかったの?」
「問題ない。王族絡みの仕事は、全部第1騎士団が請け負うからな。基本第2騎士団はノータッチだ。だがまぁ、兄貴が仕事で暇してる非番のギルバートなんかは……駆り出されているかもな」
「どういう事だろう」と首を傾げる俺に向かって「ほら、噂をすれば」と群衆の溢れる1番最前線を指さす。そこには、見慣れた紫髪の彼が「危ないから下がってくださーい!」と両手を広げ、馬車に押し寄せる人々を押さえ込んでいた。
「うわぁ、ギルバートさんお疲れ様です……」
本来しなくていいであろう仕事で揉みくちゃになる彼に、心の中で手を合わせた。
「ちなみに兄貴はあそこだな」
次にイーサンが指さしたのは、馬車の前を優雅に歩く白馬だった。そこに乗っているのは、紛れもないイーサンそっくりの兄。
「わぁ、凄い。あれ騎士団の正装? 綺麗だね」
真っ白なロング丈の軍服を身に纏い、堂々たる出で立ちで馬に乗りこなす気品溢れる姿は様になり過ぎていて、こちらが王子だと言われても異論は無い。
身を乗り出し、キラキラした眼差しでその姿を見つめていると、急に目の前が真っ暗になった。
「……見すぎ」
視界を塞いだものが、頭の後ろから回された彼の大きな手だと気が付いたのは、不貞腐れた声が耳に入った時だった。
「ね、イーサンもあの服持ってるの?」
「あの正装か? もちろんあるぞ。式典の時なんかに着るからな」
「……絶対、かっこいいじゃん」
赤い頬で呟いた言葉は、当然のように彼の耳には届いたようで……目の前が急に明るくなった。
「今度着て見せてやろうか」
ニヤリと意地悪そうに笑う彼の顔を、すぐ側に感じる。「うん!!」と、俺は熱を持つ頬をそのままに、花咲く笑顔を彼に向けた。
白馬に先導されて現れた馬車には、シャンパンゴールドの正装を身に纏い、沿道に立つ市民に向かって手を振る男の姿があった。爽やかを絵に書いた、優美な様子の彼に見覚えしかない。
赤茶色の髪を風に靡かせ、その奥に輝くエメラルドグリーンの瞳。
間違いない……彼もまた、幻想夜想曲攻略対象の1人。
ライザ・ローレンス・レナード第1王子、その人だった。
2人目のメインキャラ……当たり前だけど、イーサンに引け劣らない程の美形。「さすがだよなぁ」と乾いた笑いを浮かべていると、その隣から顔を出した、ミルクティベージュの髪を揺らす青年と目が合った。
ライザと同じ翠色の大きな瞳と視線が交われば、その少し幼さの残る顔がニコりと微笑む。
「わ……可愛い人だな。誰だろう、知らない顔だ……」
歳は16やその辺に見える。ライザと同じく正装を着用しているということは、彼も王族なのだろうか。
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