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1章
27-1
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イーサン達の会議も終わり、再び皆と合流。
仕事が残っているキーファとジェイスさんコンビと別れ、3人で宿舎へと帰還。
「あれ……何か豪華な馬車停まってない?」
本部を出て、次の角を曲がったところにある宿舎の門の前に、見慣れない白い馬車が1台止まっている。
「あー……あの馬車は」
「は? 何の用だよ」
2人の視界にも留まったようで、ギルバートはポリポリと頬を掻き、イーサンの顔はみるみるうちに険しい物へと変わってゆく。
それを不思議そうに眺めて居ると、俺たちに気がついたのか馬車の入口が開き、見覚えのある人物が顔を覗かせた。
「やぁイーサン。それにギル、アオくん、この間ぶり」
そこへ待ち構えていたのは、150点満点の王子スマイルの王子。
歓迎ムードなど欠片もない雰囲気の中、いつの間にか現れた使用人達に案内され、俺たちは庭園の茶会席へと着くことになった。
穏やかな午後の日差しが降り注ぐ庭で爽やかなテーブルに着いたのは、その真っ白さに負けない純白の貴公子。
「……はぁ、なんでライザが」
イーサンはあからさまに嫌悪で歪んだ表情のまま、向かいに座る彼のことを睨む。
「ちょ……イーサン聞こえるからっ」
そんな悪態に、思わず握ったままになっていた手の力を強め「ちゃんとしなよぉ」と涙ながらに訴えた。こ
の前からなんなんだ、仲悪いのか!? 相手は王族だぞ……無礼な態度は勘弁してくれ……俺の心臓が終わりを迎えてしまうだろ。
席に着くと直ぐに紅茶が振る舞われる。メイドが淹れた紅茶は、ふわっとマスカットにも似た香りが立ち、優しい香りに幾分か俺の心が安らいだ。
「馬車で近くを通りかかったんだよ。本当に、イーサンは相変わらずだなぁ。……昔の事、まだ根に持っているのかい?」
目の前に座るライザは、ニコニコと笑顔のままそうイーサンに投げ掛ける。
「昔の……こと?」
彼の言葉に、紅茶を口に含んだ俺は首を傾げた。
「あぁ、アオくんは知らないよね。あれはイーサンが6歳の時だった」
「バカやめろ!!」
金のケーキスタンドからクッキーを取りながら喋るライザの言葉を、イーサンの強い声が牽制する。
だがそんな事もお構い無しの王子様は、俺にある昔話を始めた。
――
『ほんとに? ……にいさま、ここにいるの?』
目の前に立ちはだかるは、大きな木の扉。
屋敷の奥にある物置の前に、幼いライザとギルバートに連れてこられたイーサン(6)は、薄暗いその場の雰囲気に呑まれ、既にうっすら涙を浮かべている。
『あぁそうだ。イーサンに片付けを手伝って欲しいそうだ』
そう言われ、重い扉に手をかける。『ギィ……』と鈍い音を立て開いた先に広がる暗闇。
1寸先も見えない闇の中に、小さな足がおそるおそる踏み込む。
『にい、さま……?』
声は漆黒に吸い込まれ、返ってくる音もない。次の瞬間『バタン!』と音を立てて、背後の扉が閉まった。
――
「……うわぁ……」
「流石にそれは可哀想……」と引き攣った顔でライザと、その隣に座るギルバートへ視線を送る。
「いや、アオちゃん誤解よ!? 直ぐに扉は開けたし、そもそもイーサンの精神訓練の一環だったんだって」
焦ったギルバートが身振り手振りで俺に弁解を述べるが、隣のイーサンがそんな彼に蔑むような視線を送る。
「泣きじゃくる俺を見て、腹を抱えてゲラゲラ笑っていたのはどこのどいつだったか」
「……うわぁ……」
本日2度目となるドン引き声に意気消沈したギルバート、ライザに至っては「いい思い出だね」と、クッキーに口を付けていた。
後でイーサンを目一杯抱き締めよう。いまこの瞬間、俺はそう心に誓った。
「イーサン……」
消え入りそうな小さな声が、ライザの右隣から聞こえる。そこにはあの、ミルクティーベージュの美しい髪を靡かせた青年が、ひっそりと存在していた。
「アーク、いたのか。影薄すぎるだろ」
斜め前にいた彼の事を気付きもしないイーサンはそれを隠しもせず、ありのままの言葉をアークに投げ掛ける。「ちょ、イーサンほんと言い方……」とテーブルの下で彼の裾を引っ張るが、アークは全く気にしていないようで、色白の頬をぽっと染めこちらに目線を送っている。
「あ、うん。……その、久し……ぶり」
あ、あれ……? なんか、その顔。
思わず紅茶を持ち上げる手が止まる。
伏し目がちだけれど、何処か嬉しそうに潤む瞳、そして紅潮する頬。
――考えすぎかな……と、止めていたカップを再び口元へと運んだ。
「あぁ、そうだな。たまには日の光浴びろよ」
「う、うん」
素っ気ないイーサンの言葉にすら、照れ笑いを浮かべている。
「ふふ……イーサンに会うと言ったら珍しく自分から行くと言い出してな。どうだ、今度一緒に食事にでも行ってやってくれ」
「……っ」
ライザの言葉が、決定打だった。
……アークって、もしかしなくてもイーサンの事……好き、だよね?
――胸の奥が、チリっと痛む。
「はぁ? ……まぁ、気が向いたらな」
「一緒に、行ってくれるの……?」
品のある、高貴な顔立ちがパッと花を咲かせる。
………間違いない、よね。
スっと筋の通った鼻、長い睫毛に丸い大きな翠の瞳は、1度会ったら忘れない、そんな強い印象が残る美しい顔。透明感のある肌が紅色に染まれば……幼い雰囲気も相俟って庇護欲がそそられる。
「……綺麗で可愛い人、だな」
口の中で呟いた言葉は、誰の耳に留まることもなく消え去る。
弾んだ様子で進む茶会の中俺は1人、その様子を静かに眺めていた。
仕事が残っているキーファとジェイスさんコンビと別れ、3人で宿舎へと帰還。
「あれ……何か豪華な馬車停まってない?」
本部を出て、次の角を曲がったところにある宿舎の門の前に、見慣れない白い馬車が1台止まっている。
「あー……あの馬車は」
「は? 何の用だよ」
2人の視界にも留まったようで、ギルバートはポリポリと頬を掻き、イーサンの顔はみるみるうちに険しい物へと変わってゆく。
それを不思議そうに眺めて居ると、俺たちに気がついたのか馬車の入口が開き、見覚えのある人物が顔を覗かせた。
「やぁイーサン。それにギル、アオくん、この間ぶり」
そこへ待ち構えていたのは、150点満点の王子スマイルの王子。
歓迎ムードなど欠片もない雰囲気の中、いつの間にか現れた使用人達に案内され、俺たちは庭園の茶会席へと着くことになった。
穏やかな午後の日差しが降り注ぐ庭で爽やかなテーブルに着いたのは、その真っ白さに負けない純白の貴公子。
「……はぁ、なんでライザが」
イーサンはあからさまに嫌悪で歪んだ表情のまま、向かいに座る彼のことを睨む。
「ちょ……イーサン聞こえるからっ」
そんな悪態に、思わず握ったままになっていた手の力を強め「ちゃんとしなよぉ」と涙ながらに訴えた。こ
の前からなんなんだ、仲悪いのか!? 相手は王族だぞ……無礼な態度は勘弁してくれ……俺の心臓が終わりを迎えてしまうだろ。
席に着くと直ぐに紅茶が振る舞われる。メイドが淹れた紅茶は、ふわっとマスカットにも似た香りが立ち、優しい香りに幾分か俺の心が安らいだ。
「馬車で近くを通りかかったんだよ。本当に、イーサンは相変わらずだなぁ。……昔の事、まだ根に持っているのかい?」
目の前に座るライザは、ニコニコと笑顔のままそうイーサンに投げ掛ける。
「昔の……こと?」
彼の言葉に、紅茶を口に含んだ俺は首を傾げた。
「あぁ、アオくんは知らないよね。あれはイーサンが6歳の時だった」
「バカやめろ!!」
金のケーキスタンドからクッキーを取りながら喋るライザの言葉を、イーサンの強い声が牽制する。
だがそんな事もお構い無しの王子様は、俺にある昔話を始めた。
――
『ほんとに? ……にいさま、ここにいるの?』
目の前に立ちはだかるは、大きな木の扉。
屋敷の奥にある物置の前に、幼いライザとギルバートに連れてこられたイーサン(6)は、薄暗いその場の雰囲気に呑まれ、既にうっすら涙を浮かべている。
『あぁそうだ。イーサンに片付けを手伝って欲しいそうだ』
そう言われ、重い扉に手をかける。『ギィ……』と鈍い音を立て開いた先に広がる暗闇。
1寸先も見えない闇の中に、小さな足がおそるおそる踏み込む。
『にい、さま……?』
声は漆黒に吸い込まれ、返ってくる音もない。次の瞬間『バタン!』と音を立てて、背後の扉が閉まった。
――
「……うわぁ……」
「流石にそれは可哀想……」と引き攣った顔でライザと、その隣に座るギルバートへ視線を送る。
「いや、アオちゃん誤解よ!? 直ぐに扉は開けたし、そもそもイーサンの精神訓練の一環だったんだって」
焦ったギルバートが身振り手振りで俺に弁解を述べるが、隣のイーサンがそんな彼に蔑むような視線を送る。
「泣きじゃくる俺を見て、腹を抱えてゲラゲラ笑っていたのはどこのどいつだったか」
「……うわぁ……」
本日2度目となるドン引き声に意気消沈したギルバート、ライザに至っては「いい思い出だね」と、クッキーに口を付けていた。
後でイーサンを目一杯抱き締めよう。いまこの瞬間、俺はそう心に誓った。
「イーサン……」
消え入りそうな小さな声が、ライザの右隣から聞こえる。そこにはあの、ミルクティーベージュの美しい髪を靡かせた青年が、ひっそりと存在していた。
「アーク、いたのか。影薄すぎるだろ」
斜め前にいた彼の事を気付きもしないイーサンはそれを隠しもせず、ありのままの言葉をアークに投げ掛ける。「ちょ、イーサンほんと言い方……」とテーブルの下で彼の裾を引っ張るが、アークは全く気にしていないようで、色白の頬をぽっと染めこちらに目線を送っている。
「あ、うん。……その、久し……ぶり」
あ、あれ……? なんか、その顔。
思わず紅茶を持ち上げる手が止まる。
伏し目がちだけれど、何処か嬉しそうに潤む瞳、そして紅潮する頬。
――考えすぎかな……と、止めていたカップを再び口元へと運んだ。
「あぁ、そうだな。たまには日の光浴びろよ」
「う、うん」
素っ気ないイーサンの言葉にすら、照れ笑いを浮かべている。
「ふふ……イーサンに会うと言ったら珍しく自分から行くと言い出してな。どうだ、今度一緒に食事にでも行ってやってくれ」
「……っ」
ライザの言葉が、決定打だった。
……アークって、もしかしなくてもイーサンの事……好き、だよね?
――胸の奥が、チリっと痛む。
「はぁ? ……まぁ、気が向いたらな」
「一緒に、行ってくれるの……?」
品のある、高貴な顔立ちがパッと花を咲かせる。
………間違いない、よね。
スっと筋の通った鼻、長い睫毛に丸い大きな翠の瞳は、1度会ったら忘れない、そんな強い印象が残る美しい顔。透明感のある肌が紅色に染まれば……幼い雰囲気も相俟って庇護欲がそそられる。
「……綺麗で可愛い人、だな」
口の中で呟いた言葉は、誰の耳に留まることもなく消え去る。
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