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1章
27-2
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宴もたけなわとなり、2人の王子が「また遊びにくるね」と馬車で帰還し、ギルバートも「んじゃ俺、出掛けてくるわ」とその場から消えていった。
残されたイーサンは俺の要望により、薔薇が咲き誇る庭園を、散歩がてら2人で歩いている。
「どうしたんだ?」
背の高い生垣に囲まれた場所へと着くやいなや、心配そうに俺を見るイーサンに思い切り抱き着く。
「……好き……」
彼の首に腕を回し、背伸びをして頭1つ高い場所にある唇を強引に奪う。
「俺も好きだが、本当にどうした?」
俺からのキスを少し目を見開きながら受け入れる、彼の顔が視界に移る。
「……イーサンは、俺のだから…」
角度を変え、もう一度唇を押し付けると、何かを察したようにイーサンの片口角が吊り上がる。
「成程……アークに嫉妬したか」
「……ち、ちが!!」
図星を突かれハッと我に返った俺は、慌てて身体を離そうとするが、既に腰と後頭部に回された手がそれを許さない。
「違わないだろ? どうなんだ」
「……イーサンと喋る時、嬉しそうだった……」
食べられるかのように下唇を甘噛みされ、ゾクッと掴まれた腰が疼く。
「それで妬いた、と」
返事の代わりに自ら彼の口内に舌を捩じ込む。
「……俺以外が、イーサンをあんな目で見ないで欲しい」
スリっと舌を擦り合わせると、悦ぶようそれにザラっとした舌が合わさる。花園の中で抱き合う影の繋がりが、次第に深くなり始める。
「ほう。で、他に思った事は?」
「……っ、は、っ……イーサンの事、こんなに愛してるのは俺だけだから。アーク王子は、凄く綺麗で可愛い人だったけれど、……俺以外、見ないで」
何を言っているんだと、少しだけ残っていた理性が俺に囁く。でも今の俺に、そんなものに耳を傾ける余裕なんてない。
風に運ばれる薔薇の香りが、尚も俺の妬心を助長させる。
『一緒に、行ってくれるの……?』
アークの表情を思い出す度、首へと回した腕に力が入る。俺の非力な腕力は、彼を苦しめる事は無いけれど……それでも気持ちが伝わったのか、絡み合う舌を「キュッ」と強く吸われる。
黄色い花弁が舞う中、長い口付けが漸く終わりを迎えた。
「驚いた。……アオがそんな事言うなんてな」
「あっ、ご、ごめ……俺なんかおかしかった……」
イーサンの言葉で、俺は我に返る。急いで腕を解くが、腰に回された手は微動だにしない。
「謝るな。……ふふ、もっと妬けよ」
「なっ、何言って……! 鬱陶しいでしょ、こんな事言い出す奴とか……」
両方の口角を上げて笑う彼の顔を見ていられなくて、俺は赤い顔を背ける。
……ほんと、何恥ずかしい事言ってんだよ俺。一体どうしたんだよ。自分でも分からないけれど……あの瞬間、頭の中でプツッと小さな音がしたんだ。
「どこが。可愛くていじらしくて、最高の恋人だろ」
目の前に現れたピンク色の頬に、イーサンは「ちゅ、ちゅっ」と音を立て、先程から何度もキスを続けている。
「ぇっ、と……そ、の……」
「残念ながら、俺の視界にはお前以外映らないようになってるんだよ、アオ。だからお前の瞳にも……俺以外映すな」
どこが残念なのか……
けれどそんな擽ったい言葉で、角張った俺の心が丸く絆されていく。
「……映るわけないじゃん、イーサン以外なんて」
そう小さく呟き、綻びきった彼の顔に再び口付けを贈った。
>>>
「随分とイーサンに気持が入ってるじゃないか?」
部屋に戻るやいなや、闇からそんな声が聞こえる。
メイドは既に下がらせた。電気の付いていない部屋に居るのは僕1人のはず。
「まさか。取引材料は多い方が良いだろう、彼はその道具に過ぎない。僕がイーサンの事を好きだと思わせておいたほうが、アオからあれを奪うのも楽だろ? あいつはもう、イーサンの事以外まるで見えていないんだから」
上着をソファに掛けると、闇に向かって腕を伸ばす。直ぐにミルクティーベージュの髪は、這い出た腕に囲われた。
「……君のあんな顔、見るのは俺だけだと思ってたのに。妬けるなぁ」
「ふぅん、嫉妬させられるほどとは。名演技じゃないか」
慰めるよう、肩口に埋まった頭を「よしよし」と撫でる。
「……嫌だよ。……俺以外、愛さないで……アーク」
「当然だよ、レオン。僕には君だけだ」
「それならいいけど……」
重なった唇がゆっくりと離れ、ふと、窓から差し込む青白い月の光に視線を移す。
「……イーサンなんて興味の欠片もない。寧ろ……俺の興味はお前だよ……あお」
歪む表情のまま、縋るように僕に抱き着く彼の背中に、ゆっくりと腕を回した。
残されたイーサンは俺の要望により、薔薇が咲き誇る庭園を、散歩がてら2人で歩いている。
「どうしたんだ?」
背の高い生垣に囲まれた場所へと着くやいなや、心配そうに俺を見るイーサンに思い切り抱き着く。
「……好き……」
彼の首に腕を回し、背伸びをして頭1つ高い場所にある唇を強引に奪う。
「俺も好きだが、本当にどうした?」
俺からのキスを少し目を見開きながら受け入れる、彼の顔が視界に移る。
「……イーサンは、俺のだから…」
角度を変え、もう一度唇を押し付けると、何かを察したようにイーサンの片口角が吊り上がる。
「成程……アークに嫉妬したか」
「……ち、ちが!!」
図星を突かれハッと我に返った俺は、慌てて身体を離そうとするが、既に腰と後頭部に回された手がそれを許さない。
「違わないだろ? どうなんだ」
「……イーサンと喋る時、嬉しそうだった……」
食べられるかのように下唇を甘噛みされ、ゾクッと掴まれた腰が疼く。
「それで妬いた、と」
返事の代わりに自ら彼の口内に舌を捩じ込む。
「……俺以外が、イーサンをあんな目で見ないで欲しい」
スリっと舌を擦り合わせると、悦ぶようそれにザラっとした舌が合わさる。花園の中で抱き合う影の繋がりが、次第に深くなり始める。
「ほう。で、他に思った事は?」
「……っ、は、っ……イーサンの事、こんなに愛してるのは俺だけだから。アーク王子は、凄く綺麗で可愛い人だったけれど、……俺以外、見ないで」
何を言っているんだと、少しだけ残っていた理性が俺に囁く。でも今の俺に、そんなものに耳を傾ける余裕なんてない。
風に運ばれる薔薇の香りが、尚も俺の妬心を助長させる。
『一緒に、行ってくれるの……?』
アークの表情を思い出す度、首へと回した腕に力が入る。俺の非力な腕力は、彼を苦しめる事は無いけれど……それでも気持ちが伝わったのか、絡み合う舌を「キュッ」と強く吸われる。
黄色い花弁が舞う中、長い口付けが漸く終わりを迎えた。
「驚いた。……アオがそんな事言うなんてな」
「あっ、ご、ごめ……俺なんかおかしかった……」
イーサンの言葉で、俺は我に返る。急いで腕を解くが、腰に回された手は微動だにしない。
「謝るな。……ふふ、もっと妬けよ」
「なっ、何言って……! 鬱陶しいでしょ、こんな事言い出す奴とか……」
両方の口角を上げて笑う彼の顔を見ていられなくて、俺は赤い顔を背ける。
……ほんと、何恥ずかしい事言ってんだよ俺。一体どうしたんだよ。自分でも分からないけれど……あの瞬間、頭の中でプツッと小さな音がしたんだ。
「どこが。可愛くていじらしくて、最高の恋人だろ」
目の前に現れたピンク色の頬に、イーサンは「ちゅ、ちゅっ」と音を立て、先程から何度もキスを続けている。
「ぇっ、と……そ、の……」
「残念ながら、俺の視界にはお前以外映らないようになってるんだよ、アオ。だからお前の瞳にも……俺以外映すな」
どこが残念なのか……
けれどそんな擽ったい言葉で、角張った俺の心が丸く絆されていく。
「……映るわけないじゃん、イーサン以外なんて」
そう小さく呟き、綻びきった彼の顔に再び口付けを贈った。
>>>
「随分とイーサンに気持が入ってるじゃないか?」
部屋に戻るやいなや、闇からそんな声が聞こえる。
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「まさか。取引材料は多い方が良いだろう、彼はその道具に過ぎない。僕がイーサンの事を好きだと思わせておいたほうが、アオからあれを奪うのも楽だろ? あいつはもう、イーサンの事以外まるで見えていないんだから」
上着をソファに掛けると、闇に向かって腕を伸ばす。直ぐにミルクティーベージュの髪は、這い出た腕に囲われた。
「……君のあんな顔、見るのは俺だけだと思ってたのに。妬けるなぁ」
「ふぅん、嫉妬させられるほどとは。名演技じゃないか」
慰めるよう、肩口に埋まった頭を「よしよし」と撫でる。
「……嫌だよ。……俺以外、愛さないで……アーク」
「当然だよ、レオン。僕には君だけだ」
「それならいいけど……」
重なった唇がゆっくりと離れ、ふと、窓から差し込む青白い月の光に視線を移す。
「……イーサンなんて興味の欠片もない。寧ろ……俺の興味はお前だよ……あお」
歪む表情のまま、縋るように僕に抱き着く彼の背中に、ゆっくりと腕を回した。
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