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何度も
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「好きです」
声の主である真崎を見る。
「それで?」
最初に好きと言われて告白を断ってから、もう何度同じことを言われたのか真崎は覚えていない。
最初、告白されたときは高校の卒業式で、顔を真っ赤にしながら先輩である自分に告白する姿をみて、こみ上げるものはあったけれど、断った。
全国大会にも出る強豪サッカー部の人間が、何のとりえもない先輩の男に告白をしてもどうにもならないと思ったからだ。
学校も四月からは別々になる。
そんな中で思い出にするための告白を受けても仕方がないと思ったからだ。
二回目の告白は、部活の事で相談があると呼び出された時だった。
二人きりでファミレスで飯を食べて、それから最近の部活での様子を話されて、人間関係って難しいとぶうぶう言う真崎を眺めて、それから来週のオフの日にサッカーシューズを買いに行くのに付き合うことが決まった、その帰り道だった。
「おれ、先輩の事好きですよ」
卒業式で全部終わりになったと真崎が思ったから誘われたのだと思った。
けれど、それは違ったらしく、相変わらず少しだけ上ずった声で言われる。
「ありがとう。だけど、ごめん……」
「それは、男同士だからですか?」
「違う……」
そうなんだけど、そうじゃない。
男同士であることは真崎の枷になるだろうから断ったのは事実だけど、男同士だから彼の事を嫌だと思っている訳じゃない。
「あーよかった!
じゃあ性転換については考えなくていいって事ですね」
「俺に性転換予定はない」
普通に言い返したつもりなのに真崎は少しびっくりした顔でこちらを見てくる。
「ホルモン剤なんて、一発でドーピングに引っかかるだろ」
何故そんな驚いた顔をしているのか意味が理解できずそう伝えると。
「いや、まあ、そうなんですけど、そうじゃなくて」
と真崎はもごもごと言っていた。
三回目の告白は、シューズを買いに行ったとき、じゃなかった。
それから何回か部活の相談にのったりオフの日に出かけたりしていたけれど、そういう話はお互いにしなかった。
ただ、一度だけ写真を一緒に撮って欲しいと言われた。
インターハイの少し前の事だったと思う。
告白と違って断る理由が見つからなかった。だから一枚だけ真崎のスマホを使って写真を撮った。
三回目の告白はインターハイで彼が優勝した日の夜、電話でされた。
こっちが「おー、テレビで見た。おめでとう」と言った言葉にかぶせる様に、「すきです」と言われて、次につなげる言葉がみつからなかった。
「スカウトきてるんだろ。
これから活躍するスポーツマンが何を言ってるんだよ」
そんな風にしか返せなくて、それでも次の瞬間真崎はなにも無かったみたいに「次のオフ、お祝いしてくださいよ」と言われて集合場所と時間を決めてしまった。
真崎以外の後輩とこんなに頻繁にあってはいないし、優勝のお祝いだってしていない。
自分で心のどこかでちゃんと分かっている筈なのに、ダラダラと今と同じ関係を祈ってしまう。
十回目の告白は、彼がプロリーグのチームに入団したという報告の後だった。
「好きです。付き合ってください」
「プロスポーツ選手がスキャンダルは駄目だろ?」
「男同士で付き合うのがスキャンダルですか?」
ゆっくりと宅飲みがしたいと言った真崎に合わせて作った料理がテーブルに並んでいる。
上手く答えられなくて、無言で作ったつまみに箸をのばす。
いけない事だとは思っていないけれど、真崎に煩わしいことが降りかかるのが嫌だった。
なにも、俺じゃなくてもいいじゃないか。
真崎に釣りあう人と幸せになった方がいい。
「どっちにしろ新しい生活で忙しくて、それどころじゃないだろ」
自分にのみ用意されたアルコールを一気に流し込みながら言う。
真崎は飲酒はしない。コンディションを整えるためにあらゆることをやっているのだと俺は知っている。
その人間のコンディションを乱す存在に自分がなりたいとは思えなかった。
◆
真崎は今日も、俺に向かってもう何度目か分からない告白をする
真崎はプロのサッカー選手で、オリンピック代表にも選ばれていた。
「海外移籍狙ってるんだろ?」
「まあ、来期からは海外かもですねえ」
「なら……」
「一緒に来てもらってもいいですし、遠恋も楽しいですよ」
大学の時、一時留学してたじゃないですか。
真崎が懐かしい話をする。
「現役のスポーツ選手に同性の恋人がいるとっていうのも、海外のチームじゃ意味ないですよね」
真崎は一言一言噛んで含む様に言う。
「そろそろ、付き合えない言い訳尽きてくれましたか?」
真崎はこちらを見て双眸を下げる。
彼の頬は相変わらず少しだけ赤くて、この告白が嘘じゃないと物語っている。
「多分、井上さんがどうしようと、俺はもう一生あなたの事が好きです」
だから、諦めてそろそろ恋人って肩書受け入れてくれませんか?
その声は今まで聞いたどんな言葉よりも甘くて、耳がそわそわとした。
「そうだな、もう限界なのかもな」
ギクリと固まった真崎を見つめてそれから「俺もずっと好きだったよ」と返した。
喜ぶと思った真崎は一瞬息を詰まらせて、瞳からボロボロと涙をこぼしてる。
「お、おい!?」
ふられた時にすら見せなかった涙に慌てて声をかけると、涙をぬぐいながら真崎は「嬉しすぎて、感情が昂ってしまいました」と言って泣き笑いの表情を浮かべた。
その濡れた瞼にそっと手をのばす。
真崎は避けなかった。
瞼についた涙をぬぐって「でも、少しだけ残念だよな」と言った。
瞳に疑問符が浮かんでいるような真崎を見て「だってもう告白してくれないんだろ?」と言うと、彼はふはっと声を立てて笑った。
「会うたびに愛してるって、伝えられる関係なのに何を言ってるんですか」
真崎は甘やかに笑ってそれから俺の手を取ってその指にそっとキスを落とした。
声の主である真崎を見る。
「それで?」
最初に好きと言われて告白を断ってから、もう何度同じことを言われたのか真崎は覚えていない。
最初、告白されたときは高校の卒業式で、顔を真っ赤にしながら先輩である自分に告白する姿をみて、こみ上げるものはあったけれど、断った。
全国大会にも出る強豪サッカー部の人間が、何のとりえもない先輩の男に告白をしてもどうにもならないと思ったからだ。
学校も四月からは別々になる。
そんな中で思い出にするための告白を受けても仕方がないと思ったからだ。
二回目の告白は、部活の事で相談があると呼び出された時だった。
二人きりでファミレスで飯を食べて、それから最近の部活での様子を話されて、人間関係って難しいとぶうぶう言う真崎を眺めて、それから来週のオフの日にサッカーシューズを買いに行くのに付き合うことが決まった、その帰り道だった。
「おれ、先輩の事好きですよ」
卒業式で全部終わりになったと真崎が思ったから誘われたのだと思った。
けれど、それは違ったらしく、相変わらず少しだけ上ずった声で言われる。
「ありがとう。だけど、ごめん……」
「それは、男同士だからですか?」
「違う……」
そうなんだけど、そうじゃない。
男同士であることは真崎の枷になるだろうから断ったのは事実だけど、男同士だから彼の事を嫌だと思っている訳じゃない。
「あーよかった!
じゃあ性転換については考えなくていいって事ですね」
「俺に性転換予定はない」
普通に言い返したつもりなのに真崎は少しびっくりした顔でこちらを見てくる。
「ホルモン剤なんて、一発でドーピングに引っかかるだろ」
何故そんな驚いた顔をしているのか意味が理解できずそう伝えると。
「いや、まあ、そうなんですけど、そうじゃなくて」
と真崎はもごもごと言っていた。
三回目の告白は、シューズを買いに行ったとき、じゃなかった。
それから何回か部活の相談にのったりオフの日に出かけたりしていたけれど、そういう話はお互いにしなかった。
ただ、一度だけ写真を一緒に撮って欲しいと言われた。
インターハイの少し前の事だったと思う。
告白と違って断る理由が見つからなかった。だから一枚だけ真崎のスマホを使って写真を撮った。
三回目の告白はインターハイで彼が優勝した日の夜、電話でされた。
こっちが「おー、テレビで見た。おめでとう」と言った言葉にかぶせる様に、「すきです」と言われて、次につなげる言葉がみつからなかった。
「スカウトきてるんだろ。
これから活躍するスポーツマンが何を言ってるんだよ」
そんな風にしか返せなくて、それでも次の瞬間真崎はなにも無かったみたいに「次のオフ、お祝いしてくださいよ」と言われて集合場所と時間を決めてしまった。
真崎以外の後輩とこんなに頻繁にあってはいないし、優勝のお祝いだってしていない。
自分で心のどこかでちゃんと分かっている筈なのに、ダラダラと今と同じ関係を祈ってしまう。
十回目の告白は、彼がプロリーグのチームに入団したという報告の後だった。
「好きです。付き合ってください」
「プロスポーツ選手がスキャンダルは駄目だろ?」
「男同士で付き合うのがスキャンダルですか?」
ゆっくりと宅飲みがしたいと言った真崎に合わせて作った料理がテーブルに並んでいる。
上手く答えられなくて、無言で作ったつまみに箸をのばす。
いけない事だとは思っていないけれど、真崎に煩わしいことが降りかかるのが嫌だった。
なにも、俺じゃなくてもいいじゃないか。
真崎に釣りあう人と幸せになった方がいい。
「どっちにしろ新しい生活で忙しくて、それどころじゃないだろ」
自分にのみ用意されたアルコールを一気に流し込みながら言う。
真崎は飲酒はしない。コンディションを整えるためにあらゆることをやっているのだと俺は知っている。
その人間のコンディションを乱す存在に自分がなりたいとは思えなかった。
◆
真崎は今日も、俺に向かってもう何度目か分からない告白をする
真崎はプロのサッカー選手で、オリンピック代表にも選ばれていた。
「海外移籍狙ってるんだろ?」
「まあ、来期からは海外かもですねえ」
「なら……」
「一緒に来てもらってもいいですし、遠恋も楽しいですよ」
大学の時、一時留学してたじゃないですか。
真崎が懐かしい話をする。
「現役のスポーツ選手に同性の恋人がいるとっていうのも、海外のチームじゃ意味ないですよね」
真崎は一言一言噛んで含む様に言う。
「そろそろ、付き合えない言い訳尽きてくれましたか?」
真崎はこちらを見て双眸を下げる。
彼の頬は相変わらず少しだけ赤くて、この告白が嘘じゃないと物語っている。
「多分、井上さんがどうしようと、俺はもう一生あなたの事が好きです」
だから、諦めてそろそろ恋人って肩書受け入れてくれませんか?
その声は今まで聞いたどんな言葉よりも甘くて、耳がそわそわとした。
「そうだな、もう限界なのかもな」
ギクリと固まった真崎を見つめてそれから「俺もずっと好きだったよ」と返した。
喜ぶと思った真崎は一瞬息を詰まらせて、瞳からボロボロと涙をこぼしてる。
「お、おい!?」
ふられた時にすら見せなかった涙に慌てて声をかけると、涙をぬぐいながら真崎は「嬉しすぎて、感情が昂ってしまいました」と言って泣き笑いの表情を浮かべた。
その濡れた瞼にそっと手をのばす。
真崎は避けなかった。
瞼についた涙をぬぐって「でも、少しだけ残念だよな」と言った。
瞳に疑問符が浮かんでいるような真崎を見て「だってもう告白してくれないんだろ?」と言うと、彼はふはっと声を立てて笑った。
「会うたびに愛してるって、伝えられる関係なのに何を言ってるんですか」
真崎は甘やかに笑ってそれから俺の手を取ってその指にそっとキスを落とした。
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