英雄の条件

渡辺 佐倉

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暴虐王の過去3

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「何故開放してやらんちゅー顔しとるな。」

晃に言われるが自分では分からない。

一度生贄として出した娘は穢れているとかいう貴族の常識があるとでも話し出すのかと思った。
何も知らないと見下している目をしているから、そんなところだと思った。

「龍かは知らんけど、この場所の地下では不思議な現象がおこるんや。」

姫君はそれに半分食われてて“そこから”引きはがせなくなっとる。

「なあ、姫さんも奇跡の証をもってるんやろ?」

晃に聞かれてようやく、彼の目的を悟る。
どこまで本当の事だったのかは分からないけれど、晃の興味はレオニードに対してではなく、レオニードの持っている石に対してだと気が付く。


逃げるといっても逃げ場はないし、反撃していいかといえば、無理だ。
今難を逃れられたとしても、後で政治的にどんな扱いを受けるか分からない。

それが自分自身へのことであれば諦めも付くが、咎を負うのが奉公人達だと目も当てられない。
ダン、という大きな音をたてて床に押し倒された時だって、そのまま腕位折ってやる事位できた。

妙に目を爛々とさせた晃がレオニードの事を見下ろしている。

「なあ、姫さんと愛し合えば、奇跡とやらは起きるんか?」

それだけは嫌だと、レオニードは咄嗟に思った。


この国に来るとなった時点で、色々なことを覚悟したし諦めた。
だけどこれだけは、この目の前の男では嫌だと思った。

「何をしている。」

その声は、初めてその言葉を聞いた時よりも低く平坦に聞こえる。
けれど、劉祜の声だと気が付いて、レオニードはホッとしてしまう自分に気が付く。

「反撃していいぞ。皇帝として許そう。」

劉祜が言ったのはそれだけだった。
手を貸そうともしないし、けれど密通を疑う様な素振りも無い。
レオニードにはそれで充分だった。

「悪いな。」

そう言うと次の瞬間、晃の体が吹っ飛ぶ。
すぐに立ち上がったレオニードが尻もちをついた状態の晃を見下ろす。

「一応これでも俺、この国で一番強いって思ってたんやけど……。」

晃に言われるが、そんな事レオニードにとって知ったことではない。

「やはり、超近接戦闘向けに訓練しているんだな。」

劉祜に言われ「どうだろうな。」とレオニードは答える。

「そいつをどうする?」
「殺していいというなら殺すが。」

それが無理なことも、自分の言葉が度を過ぎていることにも気が付いているが止められなかった。

「とんだ、姫君やな……。」

晃はそういうとすぐに体勢を戻す。
この件で自分はどうにかなることは無いと確信している軽口を漏らしながら、晃は「冗談や。奇跡の石とやらを見せてもらおうってだけやった。」と言った。
その後、劉祜の耳元でこの国の言葉を二、三言呟いてそのまま、すたすたと歩いて行ってしまう。

部屋から出る直前で振り返って「姫さん、じゃあまたな。」とだけまるで当たり前の様に言っただけだった。
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