英雄の条件

渡辺 佐倉

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エピローグ

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悪辣非道な王様とお妃様の手から国を救い出した将軍と伴侶のお二人は国家を安定させようと尽力されている。


そんな噂を聞きながらレオニードは酒屋で酒を購入していた。

「それが、そのお妃様っていうのがまた傾国という言葉を絵にしたような人だったらしい。
男だったって話だけど、それはそれは美しかったって話だ。」

そう、兄さんと同じ銀髪だったらしい。

「まあ、兄さんは美人っていうのとは少し違うって感じですが。」

酒屋の主人が豪快に笑う。

「そんなことないよな? リュウ。」

レオニードは振り返って連れの男に話しかける。
リュウと声をかけられた男、劉祜はレオニードをみて微笑む。

劉祜は皇帝であった時と髪形も服装も何もかも違っている。
レオニードも軍人だったころの恰好と、刈り上げた髪形に戻っている。
誰も二人を暴虐王とその伴侶だとは思わない。

「そんな事よりも……。
この山に魔獣がいるって聞いたんだけど。」

劉祜が気軽な雰囲気で酒屋に話しかける。
酒屋は少し驚いてそれから返事をした。

「ああ。でもここ数日のことだ。
兄さんたち旅の人だろう? よくそんな事知ってなさんな。」

昨日、薪集めにいった爺さんが、山の東側で魔獣を見て慌てて逃げて来たって話だ。

レオニードと劉祜が顔を見合わせる。
それから、お互いにニヤリと笑った。

「ありがとな。
それじゃあ、行きますか。」

レオニードが劉祜に話しかける。
恰好はごく軽装に見える。

山に入るのさえ危うく見える格好のレオニードに酒屋がぎょっとしている。

「ちょっと、待て、待ちなさい。
あんた等じゃ魔獣の餌だ。」
「大丈夫さ。一応元専門家だから。」

それにこの格好は暗殺のためのものだから。という言葉をレオニードは飲み込む。

酒屋を出た二人はすでに買ってあった食糧を背負って、これから向かう山を見渡した。

「王様をやめたことに後悔はありませんか?」
「やり残したことが無いって言ったら嘘になるけど、今はやらなきゃならない事もあるしね。」

君に貰った命だ。大切に使わせてもらうよ。
劉祜の身代わりになったことは事実だが命を渡したという程の事ではない。
事実レオニードも生きているのだ。

いたたまれない様な、少し困った様な、けれど今この人が隣にいてくれることが嬉しいという気持ちが大きい。

レオニードは本当のところ、別にこの人の為であれば命はくれてやれるという感覚だった。

さすがに二人きりの旅路という訳ではない。
けれど――


「であれば、俺も命尽き果てるまでお供しよう。」

レオニードは劉祜を見た。
劉祜は困った様に笑った後「俺も愛してるよ。」と言った。

愛の告白をしたつもりは無かったけれど、要はそういう事なのだろう。

二人で顔を見合わせて笑顔を浮かべた。

“暴虐王”はいなくなった。
ただ一組の番の姿だけがそこにあった。

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