クラス転移で一人だけ地味スキル【回避】が無能だと判断され理不尽にも追放された男の復讐劇

Leiren Storathijs

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第1章 解放

第2話 追放

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 さて、人物紹介を終えた所で今、僕が生きている状況を再確認しよう。
 要約して言えば、僕はクラスごとを異世界に転移されたが、無能だから追放された。以上。それで更には牢屋にぶち込まれている訳だが……僕はわざわざ脱獄なんて考えないね。
 僕の知る物語ではクラスのメンバーに相当な恨みを持った主人公は無理矢理にでも牢屋を脱獄し、復讐の為に突き進む。
 なんて馬鹿な事はけっして僕ならやらないね。無駄な罪を重ねるくらいなら許して貰えるまで待つ方がよっぽどマシさ。

◆◇◆◇三日後◆◇◆◇

 薄暗い部屋、冷たい床、静かな鉄格子。んー思わず笑みが溢れてしまいそうだ。まるで本当の囚人のような扱いで、気持ちは暗くなり、身体の感覚もおかしくなってくる……精神も擦り減ってくるね。
 でも漸く僕の判決は決まったようだ。看守が僕の牢屋に近づいてきたよ。

「おい囚人! いや無能か。てめぇの判決は漸く決まった。喜べ。てめぇは我らの国の判決により、これ以上なんの役にも立たない雑魚を牢屋に置く必要も無いとして、国外追放することにした。
 わかるか? 国外は戦えない雑魚にとっては地獄のような魔物が跋扈する世界。てめえは、処刑する価値すらないんだよ。国外に追放されて、魔物達に貪り殺されるのがお似合いだってことだぁ……」

「それはありがたいね。そろそろこんな暗い部屋にいることに気が狂いそうだったんだ。いやはや外の魔物という存在はどんなものか大体検討は付くけど……外の空気より美味いものは無い。さぁ、早く連れてってくれないか?」

 ふう、たった三日の期間だったけど、十分牢屋の気分は味わえた。次は外の空気か楽しみだなぁ……。

「舐めてんのかゴラァ!? 雑魚が! さっさと出て行けぇ!」

「がはっ!? 痛いなぁ。処刑する価値も無いのに殴る程の価値はあるんだねえ。まぁ、この痛みも生きている証拠になるからね。地獄のような生活から目が覚めたよ。ありがとっ」

「早く出て行け……俺がてめえを殺しちまいそうだ……あと十秒以内に俺の視界から消えろ……」

「ふふっ、わかった。ここで調子に乗って殺されたくは無いからね。君の僅かな優しさを取ってここはおいとまさせていただくよ。じゃあねえ」

 転移した瞬間から王宮という屋内だったからね。外の空気はこれが初めてだ。さぁ、どんな世界が僕を待っているのだろう。

◆◇◆◇王国の外◆◇◆◇

 涼しい風、青い空、視界一杯に広がる草原。あぁ、こんな長閑な公園のような光景は僕の生きていた国ではなかなか見ないぞ。しかもこの広さ。ピクニックには丁度いい。
 だがそんな呑気も許されないのが流石異世界物語と言ったところか。今、僕の目の前には看守が言っていたような『魔物』がいる。

 ふむ。形は狼型のようだ。犬とはまた少し違う。こんなに禍々しくて鋭い牙を生やした狼は僕の知る狼より更なる恐怖を感じる。
 どうしてこんなに落ち着いているかって? 何をどう見ればそう思うんだ? 今、僕はこれでも腰が抜けそうになるくらい怯えているんだよ? 正に此処から一歩も動けないほどに怖い。
 でもね。そんなの下らないんだよ。怖いから? 怯えるから? 意味が分からないから? だからどうした? それで何故体を動かさないのか。それが僕は理解出来ないね。
 感情とはあくまでも心の動きを模した言葉に過ぎない。いくらそんな事を思っても身体までそれを影響させる必要は無いだろう。
 よって僕は……動ける。

 さて、腹を空かした魔物を相手に僕はどうするべきか。 まさか戦うなんて考える馬鹿は居ないよね? 異世界物語の主人公は何故か初めて対峙したモンスターと出会えば剣や拳を持って戦おうとする。そして勝つ。
 いやいや、本当に狼や獣と出会った場合、例え手に武器を持っていても威嚇は出来ても倒そうと考える人間は少数派だろう。
 そういう状況に慣れている人種もいるからね。あくまでも少数派だ。居ないとは言わないさ。

 さて僕の考察はこれまでにしよう。うーん熊にあった場合は"目を絶対に逸らさないようにゆっくりゆっくり後ずさる"これが正しい対処法だと聞く。しかし、狼にそれが通用するだろうか。それも此処は僕の知る世界じゃない。そんな知識も役に立つかどうか。

 そろーり、そろーり、僕は狼の目を見据えながらゆっくり後ろへ下がり続ける。

「そう、その調子だ。ふう……も、もういいかな? どこまで寄ってくる気だい?」

 あぁ、やっぱり駄目なようだ。この狼、僕の後ずさる歩幅に合わせて近づいてくるんだけど。どうやらとても僕のことを食べたいようだ。
 つまり僕の選択肢はこれにて消えた。さぁ、死のう。
 僕は腕を広げて狼を受け入れる姿勢に入った。完全無防備状態だ。さぁ、何処からでも喰らうが良い。

 幸運はそう思うままには起きないが、不運は自分から行動すればいくらでもよって来るものだ。不運を呼び寄せることはいくらでも出来る。
 逆に不運を幸運だと思うことも自由だ。

 無警戒状態に入った狼は僕の思うとおりに飛びかかってきた。あぁ、狼に食い殺されるってどれだけ痛いことなんだろう。

「グルルル……グルアァァァッ!!」

 時が止まった。いや、とても遅いがゆっくり動いているようだ。
 あぁ、これが僕の固有能力【回避】ということか。
 【回避】は少し戦える人なら誰でも持っていると聞いた。なんということだろうか。戦える人はみんなこんな景色が見えているというのかな? これが本当に無能なのか?
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