クラス転移で一人だけ地味スキル【回避】が無能だと判断され理不尽にも追放された男の復讐劇

Leiren Storathijs

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第1章 解放

第3話 固有能力

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 恐らく発動条件は自動。僕はこれで死ぬと思っていたからね。時が止まって見える能力かぁ。なんでこんな能力が無能呼ばわりされるのだろうか?

 僕はひとまず狼の攻撃を"避ける"ことにした。一歩横へ足をずらしてっと。そして僕が避けたことが分かれば、能力は時間を再生させる。狼は僕の横を通り過ぎた。
 この能力、面白いな。色々試してみようではないか。

「ガウガウッ! ガアァァァッ!!」

 狼君は変わらず御立腹なようすで。また飛び込んで来た。そして時が遅くなる。次は反撃してみようか?
 僕は一歩斜め前へ踏み出す。そして拳を勢い良く振り上げ、拳を狼の腹に減り込ませる。すると、時は通常の速度へと戻る。
 僕の攻撃は入った。

「キャウン!」

 あれ、それほど強く殴ったつもりは無いのだが……んー時が遅くなっている分、僕が通常の速度で動こうとすると、恐らく相手側としては有り得ない速さを実現しているのか。
 低速の状態で通常の速度で動いた場合、時間が通常へ戻った瞬間、僕の動かした身体と拳を振り上げた時のエネルギーは倍となる。って感じかなぁ……。
 だからもし相手を必要以上に怪我をさせたく無いのなら、低速の時は本当に軽く攻撃を当てるつもりで良いんだろう。まぁ、意図せぬ発動だからコントロールも出来ないんだが……ね。

「グ、グルルル……」

「おや? まだ相手をするのかい? やめて置いた方が良い。それ以上僕を襲うなら、僕は君を殺さなくてはならないんだ。いや、そもそもそっちが殺しに掛かっているから……良いのかな? んーでもやっぱり罪悪感が残るんだよなぁ。楽に殺す方法は無いだろうか。本気で殴るとか?」

「ガアアァッ!」

 時が遅くなる。そして僕は次は通常速度と変わらない力で本気で助走を付けてぶん殴ってみる。拳が狼の鼻先にぶつかった瞬間、時間は通常へ戻る。するとその力は読み通りに倍になり、僕の拳には肉を潰し骨を砕く感触が伝わる。
 それも本気の力が二倍になったせいで、予想以上の力が出されてしまった。

 ゲームならドグシャアッ! なんて効果音が鳴っていそうな威力だった。
 そう狼の顔面は原型を無くしてしまった。

「ギャウンッ!?」

「あらあら、ちょっとやり過ぎたかなぁ。てかこれ、武器とかあったらもっと大変なことになりそうだね」

 当然、喧嘩なんて生涯やった事のない僕が本気で殴って例え威力が二倍になった所でこんな力が出る訳が無い。多分、固有能力【回避】の特殊技能なんだろうねぇ。

「あちゃあ、手が汚れちゃったよ。んーこの赤でも無い。黒い体液。完全に野生の動物である事を否定しているね。これが俗に言う魔物の違いなのだろうか」

 さて、魔物を退治して危機を逃れた所で……何をしようか。国外追放だからねえ。此処は別の国を目指すのが無難かなぁ。とりあえずこの国の門番さんに道でも聞いておこうかな。普通に教えてくれるかもわからないが。

「あ、ごめん。此処を離れる前に一つだけ聞きたいんだけど、ここから別の国ってどっちに行ったら良いかな?」

「ひぃっ!? な、何だ。やるのか!? あ? 道? んなら此処から北に向かえばもう一個都市があるからさっさと行きやがれ!」

「はいはい北ね。じゃ、他の勇者君達によろしく言っといてねぇ」

 はぁ、あんなに怯えなくても良いのに。まぁ、目の前で狼の顔面を吹っ飛ばした人がいたらそりゃ怖いか。

◆◇◆◇北へ進行中◆◇◆◇

 北って言われたから門番の指差す方向に歩き続けて何時間が経っただろうか。一時間、二時間、三時間。んーそろそろ陽も沈んできてるし道中でかなり数の狼やその群れを撃退した。
 今日は野宿かなぁ。後お腹も減ったなぁ。何か食料を調達したい所だけど、肉は当然、水なんて近くに川が流れている訳でも無い。それも振り返れば僕がいた王国はもう見えない。いつまでも変わらない景色が方向感覚が狂わせる。本当に僕は北に向かって進んでいるだろうか?

 それから陽は完全に沈み、月が見えた頃になんと救い女神は降りてきた。夜道はとても暗くて本当に感覚が狂ってくるが、なんと目の前に焚き火をしている集団がいるでは無いか! これは交渉する価値がある。食料を少しでも分けてくれないだろうか。

 僕は見つけた焚き火を囲む集団に近づく。遠くから見れば若い男女が三人と言った所か。一人は剣士、一人は大盾、一人は短剣。ゲームで言えば遠距離担当が居ないが、盾持ちがいる分そこそこ良いパーティだろう。

「あーそこの君たち。僕は怪しい者では無い。少し食料を分けてくれないだろうか?」

 僕の声に剣士が気が付いた。

「ん? えーっと先ず貴方は何方でしょうか?」

「おっとこれは済まない。僕の名前はかげり はく。今日王国をちょっとした理由で追放された身さ」

「いやいや国外追放ってちょっとした理由じゃあならないから。みんなどうする?」

 大盾が答えた。

「相手は一人だ。それにそんな悪そうにも見えねえ。ここで三人でボコっても良いがそれも可哀想だろう。どんな理由で国外追放されたのか物凄く気になる所だが、人の理由はそれぞれだからな。とりあえず人助けでもしてやったらどうだ?」

 続いて短剣の女性が答えた。

「良いんじゃない? 私もバルに賛成。見た所敵意も感じないし、例え襲って来ようが私たち三人じゃ相手は武が悪いでしょ」

「そうか! よし、良いですよ。食料だけなんて言わずに一緒にどうですか? なりからして野宿する道具すら無いのでは?」

 あぁ、なんて優しい方たちなのだろうか。悪い人間じゃなくて良かったぁ。

「ありがとう! ならお言葉に甘えさせていただこう。朝からなにも食べていなくてお腹がぺこぺこだったんだ。本当にありがとう」

「良いんですよ。これでも僕たち冒険者ですから。困っている人がいたら助け合うのが普通でしょう」

 冒険者か。僕の知っている物としたら、依頼を受けてお金を稼げるとか。それしか知らないけど……目指す第一候補にしても良いかなぁ。
 お金はどの世界にいっても命の次に大事だからね。
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