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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~
編集 ver.4.2-97 告白するのは、その身の上で
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「…結局、無事に説明がついてよかったけど、入院かぁ」
「腕と足が撃たれて、それでも命があるだけ良かったとは思うよ」
病院のベッドに寝かされて、手足を包帯で撒かれている状態で春がそうつぶやけば、見舞いに来たミントがリンゴをむきながら返答をした。
…謎の集団に襲われた後、僕らは無事になんとか警察への説明を乗り切り、どうにかこうにか怪しまれることはなかった。
馬鹿正直にミーちゃんがブチギレた結果、凄惨な状態になりましたと口にすることはせず…色々と考えられる限りのごまかしをもって乗り切ることはできた。
襲ってきたやつらの社会的な地位などは、ほぼ失われただろうが。
昼間から薬物をやって現実が分からなくなって、ヤクザの事務所に突撃して銃を奪い、あちこちでパーになっている頭で撃ちまくってきた危険集団というところで落ち着いたのである、
まぁ、何かしらの目的を持った集団なのは間違いないだろうが…こうなればもう、僕らを狙うこともできないだろう。
今、彼らはぎりぎりのところで命をつなぎながらも、この後は厳しい聴取が待ち受けているだろうが…
「まともに話すことはできないだろうね。大事な部分が損傷しただろうし、できたとしてもそもそもの目的が、まともな人間相手ならばどう考えても頭のおかしい奴らの妄言にしか思えないだろう」
「前者、何をやって…いや、聞かないほうが良いか」
何か今、恐ろしいようなことをミーちゃんが言ったような気がしたが、自業自得だろうし、ガチの銃弾で撃ってきたやつらを憐れむようなこともない。
そんなことよりも、気になるのは後者の方で…
「…それで、ミーちゃん。今は元の色に戻っているけど、あの真っ赤な姿は何だったの?あいつらの目的も、言葉はわからなかったけど…ほぼ、ミーちゃんを狙っていたようだし、何かあるの?」
「…」
リンゴの皮だけをむいたつもりが一本麺にしてしまい、改めて2個目のリンゴに取り掛かっていたミーちゃんの手が、その質問をした瞬間に止まった。
既にあの姿を見せており、奴らに対して振るった力も十分出している。
ミーちゃんなのは変わりなかったんだろうけれども…アレは明らかに、人ではないような雰囲気を纏っていたように思えた。
警察へ説明中もあえて話すことはなく、このままもしかするとどこかに消えてしまうんじゃないかと不安に思うところもあったが、こうやって病院に見舞いに来てくれた時点で、彼女のほうも説明する気はあるのだろう。
その中身が何であれ…説明を待つと、ミーちゃんは口を開き始めた。
「---まぁ、隠すのは無理かなと思ったし、ちゃんと説明をするよ、春。とりあえず、頭のおかしい奴らの妄言じゃないってことを、信じてもらうほうが先かな」
事件に巻き込まれた身のせいか、入院している部屋は個室であり、周囲に他の人はいない。
廊下を医師や看護師、他の入院患者が歩いているだろうが、入ってくる気配がないか確認して、ミーちゃんは自分の色合いをまた、あの深紅の髪と目の色に切り替えた。
「ふぅ、こっちのほうが自然な感じがして楽に話しやすいし…それじゃ、説明しようか。春、私は…人じゃないんだよ」
「いやまぁ、あの凄惨な光景を見たら人間のやるようなものじゃないから、もうわかるけど」
「そういうことじゃなくて…人間じゃなくて、吸血鬼。その中でもかなりやばい類の『真祖』と呼ばれるものなんだよね」
「『真祖』?…それって何なの?」
吸血鬼はまだなんとなくわかるが、真祖とやらは何なのか。
かくかくしかじかとミーちゃんに説明してもらうと、どうやらただの吸血鬼ではないらしい。
よくある吸血鬼の弱点…『日光で灰になる』、『流水を渡れない』、『聖水で焼ける』…等々のメジャーな弱点がかなりあるが、『真祖』という存在はそれらが意味をなさない。
日中も普通に出歩き、流れるプールだろうと滝だろうと逆らって泳ぎ、聖水は…
「ピリピリする程度で、ちょっとだけ、効くかも?でも、本物の聖水ってなかなかお目にかかれないんだよね」
「それはそれで、あちこち大問題になりそう」
一応、あくまでも主要な弱点と言えるようなものがほぼ無効化されているのに等しいだけで、多少の弱点に関して、命に関わることはないとはいえ効くものも存在するらしい。
この間のニンニク臭が駄目だったのもそれが理由らしく、完全に弱点が消えているとは言えない。
だが、それでも吸血鬼の、その上に立つ真祖という立場上、その能力は人を凌駕する。
「吸血鬼の有名どころの蝙蝠とかには変身できないけどね。影からこうやって移動に適した翼をはやすことができるけど、私ってまだまだ生まれたてに等しいレベルの若輩者で、何百、何千年と生きているような同族と比べると、その能力はまだ解放されていないかな」
「でも、人を容易く屠れるほどの強さはあるか…いや、説明を受けても…うーん、真祖って言う割にはこう、損しまくっているようなものしかないような」
「それを言われると、結構へこむ…」
こんなことを言うのもなんだが、真祖としての能力がまだまだ発現していないものが多いそうだが、残されている人よりも凌駕する点が微妙なものが多い。
怪力があるが、流石にまだ重機には負けるし、日光を克服できていても、活動範囲が並みの吸血鬼よりも広いだけ。聖水なんかも本物がなかなかお目にかかれないからこそ浴びる機会もほぼなく、流水に関しては日光同様に活動範囲が広がるだけで…利点と言っていいものが微妙なものしかないだろう。
「しいていうなら、血を適度に吸うだけで、超が付きまくるほどの健康体で過ごせるかなってぐらいかも。人がかかるような病気とかにもかからないし、インフルなどのウイルスにも侵されないし、若い時代が長く続くから老いとも縁がない様なものだし…ある意味、権力者が欲しがるようなものならあるけど、別に権力者ってわけじゃないからね」
「欲しがるようなものだけど、確かにミーちゃんって地位とかに興味なさそうだし意味もないか…あれ?でも逆に言えば欲しがる人がいるってことで、狙われるんじゃ?」
「狙ったところで無意味だよ。真祖の力は容易く譲渡できないし、仮に眷属にできてもほとんどが普通の吸血鬼になって、むしろ人間にはない弱点まみれだからあっという間に滅されちゃうだろうし…けれども、それを理解しない人たちもいるのが困りものかな」
あははっとミーちゃんは苦笑する。
やばい力を持っているならそれを我が物にしようと狙う輩や、そもそも人外なので人に害ある者と決めつけて襲い掛かるような輩など、過去に色々といたらしい。
今回来た襲撃者たちは後者の方で、ミーちゃんを悪しきものとして討伐しようと、他国からわざわざやってきたようだ。
「多分、春のことを私の眷属…吸血鬼になったと勘違いしたのもあるんじゃないかな?外を普通に出歩いていたけど、もしかするとまだ見ぬ真祖だとか、当てのない推測があって、襲ってきたんだよ思うよ」
「うわぁ…どう考えても迷惑極まりない奴らじゃん。何も知れないのに、悪しきものか」
「そこが人の怖いところ。理解しているなら大丈夫だけど、理解できなものって大抵排除対象としてみなして動いちゃうことが多いんだよね…」
「未知のものに恐怖を抱くのはわかるけど、理解する気がなかったのかなぁ。ミーちゃん、確かにガサツでやらかしで何かと未知以上の斜め上の結果をやることもあるけど…」
「さらっとディスってない?」
いえ、気のせいです。
とにもかくにも、そんな理由があったからこそ、あの集団は襲ってきたというわけか。
納得はするのだが…こんなことがするっと受け入れられている自分に、ちょっと驚くところがある。
「眉唾物の話と言いたくなりそうだけど…色々あって慣れたから、受け入れやすいな」
「色々って何があったの?こうやって説明している私も、春が全部受け入れてくれているのか不安だったけど、すごくあっさりしているような…」
「まぁ、色々としか言いようがないことが、あり過ぎたってだけかな」
結構前に、宇宙人とかゲームの中の妖精女王とかが現実に来たこともある。
鏡面ののじゃロリが現実のほう出ていたり、そもそもアルケディア・オンラインのサービスで箱庭やドール、使用人などもあるし…非現実的なことだとしても、現実にあり得るようになるかもしれないと思えるようになると、驚く話でも自然なことになるものだ。
…慣れているってのも問題だとは思うけどね。怖いな、現実へこう、侵食されているような気がしなくもない。
「あれ、そう考えるとそっちの方が怖いな…ミーちゃんが真祖だったという事実よりも、現実のほうが大丈夫なのか不安になってきた」
「私よりもそっちの方が不安なの!?話したら春が信じてくれないかもって不安もあったけど…」
「正直言って、ミーちゃんに対して不安を抱くってのはないかな。やることなすこと、斜め上の変な方向へ行くこと以外ではね」
「…」
ジトっとした目で見られたが、言っていることは間違ってないとは思う。
なんにせよ、ミーちゃんが真祖とかいう存在だということは理解できただろう。
「言われ方が気になったけど…でも、得体のしれない化け物みたいに、春に拒絶されたり怖がられなくてよかったかも」
一通り話したところで、安堵の息を吐くようにそう口にするミーちゃん。
まぁ、普通の人ならば信じられなかったり、人間じゃないというだけで警戒をせざるを得ないのかもしれないけれども…
「ミーちゃんはミーちゃんで変わってないなら、それでいいんじゃないかな。少なくとも、僕を守ってくれているしね」
「春…」
そう、ミーちゃんがたとえ人だろうと真祖だろうと、彼女が彼女のままだ。
昔からの付き合いのある従妹であり、変わらないままだろう。
日常の中にほんの少しの非日常が紛れ込んだぐらいでは、関係も変わることはない。
お互いにそう思うと、なんとなく緩やかな空気が流れたようで、穏やかに笑いあうのであった…
「ところでミーちゃんが真祖って知っている人、どれだけいるの?流石に世間一般に知られたら不味そうな情報だとは思うけど」
「大丈夫、結構うまく隠せているよ。ああ、ついでに春になら見せてもいいかも」
「何?ん、これ何かのSNSあぷり?」
「うん、人外コミュニティ専用アプリ『ヒトデナシ』だよ。秘密を知られたらたいてい消すしかないらしいけど、大丈夫な人の情報を共有していたりするから、ここに今春を出しておくね。もしも、うっかり私以外のやばいやつにあって、その場で葬られたら嫌でしょ」
「それは嫌すぎる…しかし、そんなアプリが作られているってことは、もしかして結構いたりするの?」
「そこそこいるかも。それにグループ分けしていたりして、私は真祖というのもあって吸血同好会のグループに入っているよ。ほら、真祖じゃないけど普通の吸血鬼とか、UMA同好会にも所属のチュパさんとかいるんだよね」
…吸血鬼はともかく、チュパってもしやチュパカブラ…あれ、吸血同好会に入れていいくくりなの?
いやまぁ、間違ってないのかもしれないけど、もしかしてこの世の中って見えないところで色々と潜んでいるのだろうか。知らなくていい世界の秘密の一端をちょっとだけ目にした気がするなぁ…
「腕と足が撃たれて、それでも命があるだけ良かったとは思うよ」
病院のベッドに寝かされて、手足を包帯で撒かれている状態で春がそうつぶやけば、見舞いに来たミントがリンゴをむきながら返答をした。
…謎の集団に襲われた後、僕らは無事になんとか警察への説明を乗り切り、どうにかこうにか怪しまれることはなかった。
馬鹿正直にミーちゃんがブチギレた結果、凄惨な状態になりましたと口にすることはせず…色々と考えられる限りのごまかしをもって乗り切ることはできた。
襲ってきたやつらの社会的な地位などは、ほぼ失われただろうが。
昼間から薬物をやって現実が分からなくなって、ヤクザの事務所に突撃して銃を奪い、あちこちでパーになっている頭で撃ちまくってきた危険集団というところで落ち着いたのである、
まぁ、何かしらの目的を持った集団なのは間違いないだろうが…こうなればもう、僕らを狙うこともできないだろう。
今、彼らはぎりぎりのところで命をつなぎながらも、この後は厳しい聴取が待ち受けているだろうが…
「まともに話すことはできないだろうね。大事な部分が損傷しただろうし、できたとしてもそもそもの目的が、まともな人間相手ならばどう考えても頭のおかしい奴らの妄言にしか思えないだろう」
「前者、何をやって…いや、聞かないほうが良いか」
何か今、恐ろしいようなことをミーちゃんが言ったような気がしたが、自業自得だろうし、ガチの銃弾で撃ってきたやつらを憐れむようなこともない。
そんなことよりも、気になるのは後者の方で…
「…それで、ミーちゃん。今は元の色に戻っているけど、あの真っ赤な姿は何だったの?あいつらの目的も、言葉はわからなかったけど…ほぼ、ミーちゃんを狙っていたようだし、何かあるの?」
「…」
リンゴの皮だけをむいたつもりが一本麺にしてしまい、改めて2個目のリンゴに取り掛かっていたミーちゃんの手が、その質問をした瞬間に止まった。
既にあの姿を見せており、奴らに対して振るった力も十分出している。
ミーちゃんなのは変わりなかったんだろうけれども…アレは明らかに、人ではないような雰囲気を纏っていたように思えた。
警察へ説明中もあえて話すことはなく、このままもしかするとどこかに消えてしまうんじゃないかと不安に思うところもあったが、こうやって病院に見舞いに来てくれた時点で、彼女のほうも説明する気はあるのだろう。
その中身が何であれ…説明を待つと、ミーちゃんは口を開き始めた。
「---まぁ、隠すのは無理かなと思ったし、ちゃんと説明をするよ、春。とりあえず、頭のおかしい奴らの妄言じゃないってことを、信じてもらうほうが先かな」
事件に巻き込まれた身のせいか、入院している部屋は個室であり、周囲に他の人はいない。
廊下を医師や看護師、他の入院患者が歩いているだろうが、入ってくる気配がないか確認して、ミーちゃんは自分の色合いをまた、あの深紅の髪と目の色に切り替えた。
「ふぅ、こっちのほうが自然な感じがして楽に話しやすいし…それじゃ、説明しようか。春、私は…人じゃないんだよ」
「いやまぁ、あの凄惨な光景を見たら人間のやるようなものじゃないから、もうわかるけど」
「そういうことじゃなくて…人間じゃなくて、吸血鬼。その中でもかなりやばい類の『真祖』と呼ばれるものなんだよね」
「『真祖』?…それって何なの?」
吸血鬼はまだなんとなくわかるが、真祖とやらは何なのか。
かくかくしかじかとミーちゃんに説明してもらうと、どうやらただの吸血鬼ではないらしい。
よくある吸血鬼の弱点…『日光で灰になる』、『流水を渡れない』、『聖水で焼ける』…等々のメジャーな弱点がかなりあるが、『真祖』という存在はそれらが意味をなさない。
日中も普通に出歩き、流れるプールだろうと滝だろうと逆らって泳ぎ、聖水は…
「ピリピリする程度で、ちょっとだけ、効くかも?でも、本物の聖水ってなかなかお目にかかれないんだよね」
「それはそれで、あちこち大問題になりそう」
一応、あくまでも主要な弱点と言えるようなものがほぼ無効化されているのに等しいだけで、多少の弱点に関して、命に関わることはないとはいえ効くものも存在するらしい。
この間のニンニク臭が駄目だったのもそれが理由らしく、完全に弱点が消えているとは言えない。
だが、それでも吸血鬼の、その上に立つ真祖という立場上、その能力は人を凌駕する。
「吸血鬼の有名どころの蝙蝠とかには変身できないけどね。影からこうやって移動に適した翼をはやすことができるけど、私ってまだまだ生まれたてに等しいレベルの若輩者で、何百、何千年と生きているような同族と比べると、その能力はまだ解放されていないかな」
「でも、人を容易く屠れるほどの強さはあるか…いや、説明を受けても…うーん、真祖って言う割にはこう、損しまくっているようなものしかないような」
「それを言われると、結構へこむ…」
こんなことを言うのもなんだが、真祖としての能力がまだまだ発現していないものが多いそうだが、残されている人よりも凌駕する点が微妙なものが多い。
怪力があるが、流石にまだ重機には負けるし、日光を克服できていても、活動範囲が並みの吸血鬼よりも広いだけ。聖水なんかも本物がなかなかお目にかかれないからこそ浴びる機会もほぼなく、流水に関しては日光同様に活動範囲が広がるだけで…利点と言っていいものが微妙なものしかないだろう。
「しいていうなら、血を適度に吸うだけで、超が付きまくるほどの健康体で過ごせるかなってぐらいかも。人がかかるような病気とかにもかからないし、インフルなどのウイルスにも侵されないし、若い時代が長く続くから老いとも縁がない様なものだし…ある意味、権力者が欲しがるようなものならあるけど、別に権力者ってわけじゃないからね」
「欲しがるようなものだけど、確かにミーちゃんって地位とかに興味なさそうだし意味もないか…あれ?でも逆に言えば欲しがる人がいるってことで、狙われるんじゃ?」
「狙ったところで無意味だよ。真祖の力は容易く譲渡できないし、仮に眷属にできてもほとんどが普通の吸血鬼になって、むしろ人間にはない弱点まみれだからあっという間に滅されちゃうだろうし…けれども、それを理解しない人たちもいるのが困りものかな」
あははっとミーちゃんは苦笑する。
やばい力を持っているならそれを我が物にしようと狙う輩や、そもそも人外なので人に害ある者と決めつけて襲い掛かるような輩など、過去に色々といたらしい。
今回来た襲撃者たちは後者の方で、ミーちゃんを悪しきものとして討伐しようと、他国からわざわざやってきたようだ。
「多分、春のことを私の眷属…吸血鬼になったと勘違いしたのもあるんじゃないかな?外を普通に出歩いていたけど、もしかするとまだ見ぬ真祖だとか、当てのない推測があって、襲ってきたんだよ思うよ」
「うわぁ…どう考えても迷惑極まりない奴らじゃん。何も知れないのに、悪しきものか」
「そこが人の怖いところ。理解しているなら大丈夫だけど、理解できなものって大抵排除対象としてみなして動いちゃうことが多いんだよね…」
「未知のものに恐怖を抱くのはわかるけど、理解する気がなかったのかなぁ。ミーちゃん、確かにガサツでやらかしで何かと未知以上の斜め上の結果をやることもあるけど…」
「さらっとディスってない?」
いえ、気のせいです。
とにもかくにも、そんな理由があったからこそ、あの集団は襲ってきたというわけか。
納得はするのだが…こんなことがするっと受け入れられている自分に、ちょっと驚くところがある。
「眉唾物の話と言いたくなりそうだけど…色々あって慣れたから、受け入れやすいな」
「色々って何があったの?こうやって説明している私も、春が全部受け入れてくれているのか不安だったけど、すごくあっさりしているような…」
「まぁ、色々としか言いようがないことが、あり過ぎたってだけかな」
結構前に、宇宙人とかゲームの中の妖精女王とかが現実に来たこともある。
鏡面ののじゃロリが現実のほう出ていたり、そもそもアルケディア・オンラインのサービスで箱庭やドール、使用人などもあるし…非現実的なことだとしても、現実にあり得るようになるかもしれないと思えるようになると、驚く話でも自然なことになるものだ。
…慣れているってのも問題だとは思うけどね。怖いな、現実へこう、侵食されているような気がしなくもない。
「あれ、そう考えるとそっちの方が怖いな…ミーちゃんが真祖だったという事実よりも、現実のほうが大丈夫なのか不安になってきた」
「私よりもそっちの方が不安なの!?話したら春が信じてくれないかもって不安もあったけど…」
「正直言って、ミーちゃんに対して不安を抱くってのはないかな。やることなすこと、斜め上の変な方向へ行くこと以外ではね」
「…」
ジトっとした目で見られたが、言っていることは間違ってないとは思う。
なんにせよ、ミーちゃんが真祖とかいう存在だということは理解できただろう。
「言われ方が気になったけど…でも、得体のしれない化け物みたいに、春に拒絶されたり怖がられなくてよかったかも」
一通り話したところで、安堵の息を吐くようにそう口にするミーちゃん。
まぁ、普通の人ならば信じられなかったり、人間じゃないというだけで警戒をせざるを得ないのかもしれないけれども…
「ミーちゃんはミーちゃんで変わってないなら、それでいいんじゃないかな。少なくとも、僕を守ってくれているしね」
「春…」
そう、ミーちゃんがたとえ人だろうと真祖だろうと、彼女が彼女のままだ。
昔からの付き合いのある従妹であり、変わらないままだろう。
日常の中にほんの少しの非日常が紛れ込んだぐらいでは、関係も変わることはない。
お互いにそう思うと、なんとなく緩やかな空気が流れたようで、穏やかに笑いあうのであった…
「ところでミーちゃんが真祖って知っている人、どれだけいるの?流石に世間一般に知られたら不味そうな情報だとは思うけど」
「大丈夫、結構うまく隠せているよ。ああ、ついでに春になら見せてもいいかも」
「何?ん、これ何かのSNSあぷり?」
「うん、人外コミュニティ専用アプリ『ヒトデナシ』だよ。秘密を知られたらたいてい消すしかないらしいけど、大丈夫な人の情報を共有していたりするから、ここに今春を出しておくね。もしも、うっかり私以外のやばいやつにあって、その場で葬られたら嫌でしょ」
「それは嫌すぎる…しかし、そんなアプリが作られているってことは、もしかして結構いたりするの?」
「そこそこいるかも。それにグループ分けしていたりして、私は真祖というのもあって吸血同好会のグループに入っているよ。ほら、真祖じゃないけど普通の吸血鬼とか、UMA同好会にも所属のチュパさんとかいるんだよね」
…吸血鬼はともかく、チュパってもしやチュパカブラ…あれ、吸血同好会に入れていいくくりなの?
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