転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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2章 学園初等部~

2-2 真剣に挑むからこそ

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…‥‥新入生、入学早々学力検査のための一斉テスト。

 とはいっても物凄く難しいわけではなく、きちんと入学前に得られる程度の基礎知識が試されていると言っていいだろう。

 ただ、言うのであれば帝国の歴史なんてものは触れることはなく、前日に得た教科書から一夜漬けに近いのだが…‥‥

「…‥‥偉人100人を一字一句間違えずにって‥‥‥あ、これ『超難しい』って書いてある」

 入学生にとって難しいと判断される問題の左上には、解けなくても大丈夫だから焦らないようにしっかりと注意書きが書かれている。

 それはありがたいのだが…‥‥この歴史の問題がほとんど難しすぎる。一夜漬け、駄目絶対ってやつだなこれ。

 何にしても、全部解き終えた頃合いには、テストが行われていた教室内は死屍累々の惨状が広がっていた。


‥‥‥生徒全員、このテストに殺されたかのようだ。予定表は配布されているので、あることは分かっていたとはいえ、それでもかなり厳しかったのだから無理はない。

 まぁ、やろうと思えば薬を利用して記憶力増強などでどうにかするという事も可能だった。

 けれども、それは流石にズルになるだろうし、そんなことをしたら後で大変そうだし、使わなかったけどね。自分のためにもならないし、バレたら留年になりそうだし、そんなことはしたくはない。


 全員ぐったりとしているが、テスト結果は3時間ほどで採点されて出されるらしい。

 あの問題量に対してそんなに素早い採点ができるのかと、この学園の教師陣の力に感心してしまう。


 何にしても今は、テストのせいで疲れた生徒たちのために休み時間となるようで、結果が貼りだされるまで寮に戻ることもできるらしく、部屋に残してきたハクロのあの柔らかい蜘蛛の体で癒されるために戻るのであった。

…‥‥精神も疲れるからなぁ。どこの世界でもテストは精神を削る道具になるのか。


「って訳で、疲れたよハクロ…‥‥」
【キュルルルゥ】

 ぽむぽむっと、疲れた僕を慰めてくれるかのように彼女が自分の蜘蛛部分を叩き、誘導してくれる。

 今は小さくなる薬で枕サイズになっているので、ちょうどいい枕になるのだが、これはこれですさまじい安心感。

 表面はもふもこっとしているのに、奥の体がしっかりとしているからか反発感もあり、うっかり夜まで眠りそうだ。

 とはいえ、発表の時間もあるので、寝過ごすこともできないし…‥‥気を付けないとね。









‥‥‥ハクロのふわもこぶりに癒しまくられている丁度その頃。

 新入生たちが受けたテストを、教員たちがいっせいに採点を行っていた。

 普通に記述式の問題であれば、採点自体には各自の判断が入ってしまい、時間はかかりやすい。

 だがしかし、今回は記述よりも記号を多めにとっていたのでそのあたりは問題なくスムーズに進み、次々に新入生たちの点数が出されては記録されていく。

「ふむ、歴史の方は散々な生徒が多いな…‥無理もないだろう」
「我が国の歴史って長いですからね。予測は出来ていましたが‥‥‥」
「それでも、他教科の方は中々差が出るというか、家庭環境の違いが見えて面白いが…‥‥流石に酷いのもあるな」
「十分に勉強時間は確保できる家庭のはずなのに、していない者がいるようです。確保できないはずの家なのに、中々の高得点な者もいるようですね」
「結局は、本人の努力次第っていったところだろうが…‥‥それでも、大体出てきたな」

 ある程度出てきた結果をずらっと並べ、その点数の違いに教師たちは注目する。

 どの生徒たちもまじめに勉強しているようで、していない生徒が浮き彫りになりやすい。

 できる環境のはずなのにできていなかったり、出来ない環境のはずなのにできていたりと、生徒たちの努力の成果がまざまざと見せつけられる。

「にしても、これだけの数を採点できたが‥‥‥テスト前に話題になっていた家の子息たちの結果もあるな」
「いくつかはこの様子だと、数カ次第では家の存続が危ぶまれるが‥‥‥っと、ヘルズ男爵家の子息のも‥‥‥ほぅ、これはこれは意外だな」
「何がだ?」
「あの家の長男次男の問題児ぶりに、三男はどうなのかと内心危ぶんでいたが‥‥‥見ろ。これはむしろ兄たち以上にいい点数を取っているようだ」

 結果の内、ヘルズ男爵家からの‥‥‥アルスのテスト結果に教師たちは目を付ける。

「ふむ、長男、次男両方の入学当初のテスト結果と比べると、明かに高いな」
「歴史の方は量が量だけに、流石に散々なようだが…‥‥それでも、他が高い」
「点数の高さを見るに、しっかり勉強をしているようだな。とは言え‥‥‥」

 テストの点数が高くても、それが人格などにそのままつながるわけではない。

 たとえ高得点を取るような人でも、相手を見下すような輩もおり、そのあたりの判断はしっかりと自身の眼で見なければわからないのだ。


「これ以上は、帝国の間諜や我々の眼で直接見極める以外には分からぬか…‥‥」




‥‥‥そう、生徒一人一人に、国が目を向けていないわけではない。

 学園という場だからこそ、大勢の人が集まる環境に対して、国はそこまで干渉せずともある程度は生徒たちを把握する。

 というのも、過去に他国の教育機関では、たった一人の問題児によって最悪の事態を引き起こしたという例も存在しており、見逃さないようにしているのだ。

 ゆえに、実は教員たちもある程度知っているのだが、帝国の間諜がこっそりと宿舎に潜り込み、生徒たちを調べているのである。

 その最悪の事態が起こらぬように、目を光らせながら。

 長い歴史を持つからこそ、そういう事態をある程度予測し、事前に防ぐために。

 そして、その間諜たちは今も目を光らせ、こっそりと気が付かれないように一人一人の部屋を見て回り、各自の過ごす様子を観察していたのだが…‥‥




(…‥‥なんだ、アレ?)

‥‥‥その間諜は運が良かったのか、悪かったのかはわからない。
 
 ただ言えるのは、その生徒がこっそり寮内に生き物を持ち込んでいたことであろう。

 いや、猫とか犬とかを持ち込むのはまだよくて、自分で世話ができるのであれば、手続きをきちんとするようにそっと促すぐらいはするのだが‥‥‥

【キュルル!!】
「っと、もうそろそろ結果発表の時間か‥‥‥それじゃ、また後でね」
【キュルル♪】

 目の前で起きているのは、今回の新入生たちの中で目を付けていた一人の少年。

 そして彼の言葉に返答するかのように頷いているのは…‥‥見たこともない美女のようだが、体が小さいし蜘蛛の体も付いている何かしらの生物。

(モンスター‥‥‥なのだろうが、あんなのは見たことも聞いたこともないのだが。え?これどう報告しろと?)

 生徒の一人がモンスターを学園寮に持ち込んできていた、というのはまだ良い。

 モンスターでも人を襲わない類であれば、それはそれできちんとした手続きがあるのだから。

 でも、今目にしているはモンスターの類なのだろうが‥‥‥見たこともないような類ゆえに、どう報告するべきなのかが分からない。

 報告書を作成すべきなのだろうが、一体どう報告すればいいのかと間諜は一人、頭を悩ませるのであった。

 馬鹿正直に美女蜘蛛チビモンスターがいましたと言ったら、どう反応されるのかもわからない…‥‥

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