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3章 学園中等部~
3-49 想いあい、愛し合い
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【‥‥‥キュル‥もう、翌日?】
部屋の中の明かりはなくとも、外の明かりが届いて昼間の明るさとなり、ぱちりと目を開け、ハクロはそうつぶやいた。
寝る前の事を思い出しつつ‥‥‥確か、丸一日完全爆睡をさせる薬を飲んだはずだったが、先に目が覚めてしまったようだ。
目の前を見れば、寝る前に手を握りあったアルスの顔があり、その手はまだ離されていない。
すぅすぅっと寝息を立てている彼の顔を見ていると、このまま待っていてもいいかもしれないと思う。
【ふふふ、アルスの手、温かい…‥‥もうちょっと、欲しいかも】
起こさないように気を付けつつ、そっとアルスの身体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。
抱き枕のようでありつつも、枕ではないアルスの身体。
普段は枕扱いなことが多い自分ではあるが、立場を変えてみるのも中々面白い。
【アルス、アルス、私の腕の中…‥‥うん、良い】
抱きしめつつ足のような食指を絡め、アルスの身体を確かめる。
自分に密着させ、すりすりと擦り寄っても熟睡している様子。
【大好きなアルス、傍にいる、至福♪】
どんなに居心地のいい場所があったとしても、アルスの側に勝るものはない。
そう思いながらアルスを抱きしめている中で…‥‥ふと、彼女は自身の体のある感覚に気が付いた。
【至福♪幸せ♪アルスの‥‥‥キュル?あれ、昨日脱皮したばかりなのに‥‥?】
自分の体の違和感と言うか、ムズッと来る感覚。
不定期とは言え、一度来たらしばらくはないはずの脱皮の気配を彼女は感じ取った。
【‥‥‥キュル、脱ぐけど、アルス、離すのも‥‥‥】
脱皮するのであれば、今すぐにでも全部を脱ぎ去るのが良いのだが、せっかくアルスを抱きしめている状態。
すぐに抱きしめ直せばいいのだが、それでも離すのはかなり惜しいのだ。
それでもさっさと素早くやればいいかと結論付け、そっとアルスをベッドの方に置き、脱皮の準備をし始める。
寝間着を脱ぎ捨て、下着も脱ぎ、産まれたてのような姿になる。
正確に言えば子蜘蛛だった時が産まれたてなのだが…‥‥まぁ、そんなところにツッコミを入れる意味もあるまい。
【んっ】
ぐっと体に力を入れると、ぴしりと皮に線が入って破ける音が背中からしてきた。
蝶の羽化のように、自分の古い抜け殻を脱ぎ捨てるために動き‥‥‥そこでとあることに気が付いた。
【キュル?背中、なんか引っかかる?】
人間でいう所の肩甲骨のあたりに、ほんのわずかなでっぱりがあった。
触ってみると、硬くもないのだが柔らかくもなく、何とも言えない不思議な感触。
とは言え、サイズ的にはゴマ粒程度であり、目立つものでもないだろう。
こうやって脱ぎ捨てる時に、皮にひっかかってようやく気が付く程度であり、特に悪いものでも無さそうだ。
【‥‥‥まぁ、気にしなくても、良いかも。そんな事よりも、アルスに早く、くっ付き直したい】
そんなに気にするものでもないし、この程度なら次の脱皮時には無くなっているかもしれない。
そのため、特に報告することもないと思い、さっさと脱皮をし終えて皮を隅へやり、アルスを抱きしめ直すのであった…‥‥
‥‥‥だが、ここで一つ忘れていたことがあった。
いつもならば脱皮後には衣服を着直しているのだが、この時はさっさと脱ぎ棄ててアルスにくっ付きたい気持ちでいっぱいだった。
ゆえに、一糸まとわぬ姿の状態なままであり、自然とくっ付いていたので…‥‥
「ふわぁ‥‥あ、もう一日たって‥‥‥って!?ハクロ、服着てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
【キュル?あ、忘れてた】
目覚めて早々、素っ裸なハクロに抱き着かれていた事実に気が付き、アルスの叫び声が研究所中に響き渡るのであった‥‥‥‥
「ははははははは!!そのぐらい堂々とせぬのかのぅ?告白し合っているのに、今さら相手の裸を見て驚く奴がいるかのぅ?」
「驚かされるんだけど!!忘れて欲しくないけど、僕は男の子だからね!?」
「忘れるわけがないじゃろう。むしろ儂としては、ハクロがモンスターだという事実の方を、忘れそうにはなるのじゃがなぁ…‥‥蜘蛛の身体があるとは言え、孫娘のように思えてしまうのじゃ」
‥‥‥アルスたちが研究所で過ごしていた丁度その頃。
王城の中庭にて、正妃はとある報告を聞いていた。
「あらあら、クロストが久しぶりに帰ってくるのね」
「ええ、そうでございます正妃様。第3皇子クロスト・フォン・エルスタン様が帰郷してくるという連絡がありました」
エルスタン帝国の皇子たちの中で、少し変わり者だとされる第3皇子クロスト。
皇帝の地位に関しては興味を持たず、継承権に関しては希薄ではあるが、その代わりに研究意欲が高い人物。
特に、モンスターに関しての研究分野にも興味を持っており、モンスター研究所のドマドン所長とも、学会の中で顔を合わせることが多い。
とは言え、モンスターはモンスターでも、ハクロのような人の姿を得たものに関してではなく、彼の研究分野は主にスライム。
そのため現在は、見聞を広めるための留学ついでにスライムに関しての研究が盛んなとある国の研究機関に入っていたのだが…‥‥久しぶりに帰郷してくるらしい。
「でも、何の用事かしらね?」
「何でも、スライムの研究の中で気になることが出て来たそうでして…‥‥我が国の研究所の方に寄る前に、こちらの方へ来るそうです」
親元へ帰るのはついでであり、本命は所長と議論を交わすことらしい。
研究熱心と言うべきか、研究馬鹿と言うべきか…‥‥ツッコミどころがあれども、ちゃんと無事に帰ってくるのであれば問題はない。
「なら、来たらすぐに連絡を出しなさい。ああ、それと今はハクロちゃんたちも研究所の方にいるのだし、そちらの方でも顔を合わせることになるのかしらねぇ?」
第1皇子、皇女は既に見知っているので、第3皇子ともこれで顔を合わせることになるのかもしれない。
第2皇子に関しては、ちょっと複雑な事情があるので、出会う事も当分先だろうが…‥‥皇帝一家の面子に少しづつ見知っていくだろう。
何にしても、ついでとはいえ可愛い我が子の帰郷は嬉しいものであり、正妃はその帰郷の日が待ち遠しくなるのであった…‥‥
部屋の中の明かりはなくとも、外の明かりが届いて昼間の明るさとなり、ぱちりと目を開け、ハクロはそうつぶやいた。
寝る前の事を思い出しつつ‥‥‥確か、丸一日完全爆睡をさせる薬を飲んだはずだったが、先に目が覚めてしまったようだ。
目の前を見れば、寝る前に手を握りあったアルスの顔があり、その手はまだ離されていない。
すぅすぅっと寝息を立てている彼の顔を見ていると、このまま待っていてもいいかもしれないと思う。
【ふふふ、アルスの手、温かい…‥‥もうちょっと、欲しいかも】
起こさないように気を付けつつ、そっとアルスの身体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。
抱き枕のようでありつつも、枕ではないアルスの身体。
普段は枕扱いなことが多い自分ではあるが、立場を変えてみるのも中々面白い。
【アルス、アルス、私の腕の中…‥‥うん、良い】
抱きしめつつ足のような食指を絡め、アルスの身体を確かめる。
自分に密着させ、すりすりと擦り寄っても熟睡している様子。
【大好きなアルス、傍にいる、至福♪】
どんなに居心地のいい場所があったとしても、アルスの側に勝るものはない。
そう思いながらアルスを抱きしめている中で…‥‥ふと、彼女は自身の体のある感覚に気が付いた。
【至福♪幸せ♪アルスの‥‥‥キュル?あれ、昨日脱皮したばかりなのに‥‥?】
自分の体の違和感と言うか、ムズッと来る感覚。
不定期とは言え、一度来たらしばらくはないはずの脱皮の気配を彼女は感じ取った。
【‥‥‥キュル、脱ぐけど、アルス、離すのも‥‥‥】
脱皮するのであれば、今すぐにでも全部を脱ぎ去るのが良いのだが、せっかくアルスを抱きしめている状態。
すぐに抱きしめ直せばいいのだが、それでも離すのはかなり惜しいのだ。
それでもさっさと素早くやればいいかと結論付け、そっとアルスをベッドの方に置き、脱皮の準備をし始める。
寝間着を脱ぎ捨て、下着も脱ぎ、産まれたてのような姿になる。
正確に言えば子蜘蛛だった時が産まれたてなのだが…‥‥まぁ、そんなところにツッコミを入れる意味もあるまい。
【んっ】
ぐっと体に力を入れると、ぴしりと皮に線が入って破ける音が背中からしてきた。
蝶の羽化のように、自分の古い抜け殻を脱ぎ捨てるために動き‥‥‥そこでとあることに気が付いた。
【キュル?背中、なんか引っかかる?】
人間でいう所の肩甲骨のあたりに、ほんのわずかなでっぱりがあった。
触ってみると、硬くもないのだが柔らかくもなく、何とも言えない不思議な感触。
とは言え、サイズ的にはゴマ粒程度であり、目立つものでもないだろう。
こうやって脱ぎ捨てる時に、皮にひっかかってようやく気が付く程度であり、特に悪いものでも無さそうだ。
【‥‥‥まぁ、気にしなくても、良いかも。そんな事よりも、アルスに早く、くっ付き直したい】
そんなに気にするものでもないし、この程度なら次の脱皮時には無くなっているかもしれない。
そのため、特に報告することもないと思い、さっさと脱皮をし終えて皮を隅へやり、アルスを抱きしめ直すのであった…‥‥
‥‥‥だが、ここで一つ忘れていたことがあった。
いつもならば脱皮後には衣服を着直しているのだが、この時はさっさと脱ぎ棄ててアルスにくっ付きたい気持ちでいっぱいだった。
ゆえに、一糸まとわぬ姿の状態なままであり、自然とくっ付いていたので…‥‥
「ふわぁ‥‥あ、もう一日たって‥‥‥って!?ハクロ、服着てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
【キュル?あ、忘れてた】
目覚めて早々、素っ裸なハクロに抱き着かれていた事実に気が付き、アルスの叫び声が研究所中に響き渡るのであった‥‥‥‥
「ははははははは!!そのぐらい堂々とせぬのかのぅ?告白し合っているのに、今さら相手の裸を見て驚く奴がいるかのぅ?」
「驚かされるんだけど!!忘れて欲しくないけど、僕は男の子だからね!?」
「忘れるわけがないじゃろう。むしろ儂としては、ハクロがモンスターだという事実の方を、忘れそうにはなるのじゃがなぁ…‥‥蜘蛛の身体があるとは言え、孫娘のように思えてしまうのじゃ」
‥‥‥アルスたちが研究所で過ごしていた丁度その頃。
王城の中庭にて、正妃はとある報告を聞いていた。
「あらあら、クロストが久しぶりに帰ってくるのね」
「ええ、そうでございます正妃様。第3皇子クロスト・フォン・エルスタン様が帰郷してくるという連絡がありました」
エルスタン帝国の皇子たちの中で、少し変わり者だとされる第3皇子クロスト。
皇帝の地位に関しては興味を持たず、継承権に関しては希薄ではあるが、その代わりに研究意欲が高い人物。
特に、モンスターに関しての研究分野にも興味を持っており、モンスター研究所のドマドン所長とも、学会の中で顔を合わせることが多い。
とは言え、モンスターはモンスターでも、ハクロのような人の姿を得たものに関してではなく、彼の研究分野は主にスライム。
そのため現在は、見聞を広めるための留学ついでにスライムに関しての研究が盛んなとある国の研究機関に入っていたのだが…‥‥久しぶりに帰郷してくるらしい。
「でも、何の用事かしらね?」
「何でも、スライムの研究の中で気になることが出て来たそうでして…‥‥我が国の研究所の方に寄る前に、こちらの方へ来るそうです」
親元へ帰るのはついでであり、本命は所長と議論を交わすことらしい。
研究熱心と言うべきか、研究馬鹿と言うべきか…‥‥ツッコミどころがあれども、ちゃんと無事に帰ってくるのであれば問題はない。
「なら、来たらすぐに連絡を出しなさい。ああ、それと今はハクロちゃんたちも研究所の方にいるのだし、そちらの方でも顔を合わせることになるのかしらねぇ?」
第1皇子、皇女は既に見知っているので、第3皇子ともこれで顔を合わせることになるのかもしれない。
第2皇子に関しては、ちょっと複雑な事情があるので、出会う事も当分先だろうが…‥‥皇帝一家の面子に少しづつ見知っていくだろう。
何にしても、ついでとはいえ可愛い我が子の帰郷は嬉しいものであり、正妃はその帰郷の日が待ち遠しくなるのであった…‥‥
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