拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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森での生活

#11 部品が足りなかったのデス

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SIDEシアン
 
 現在、僕はどうすべきか考えていた。

 いや、稼ぐ手段として「魔法屋」なるものになる事は決め、馬車が出来たらそれの登録ができる場所へ向かいたいとかは思っていたけれどさ……


「でもワゼ、その部分って本当に木とか、ワゼの再生するメイド服の布じゃ代用ができないのか?」
「ええ、ちょっと計算外でシタ。私のメイド服の布の自己再生能力で、点検時の手間を省けたりすると思っていたのですが、これがどうも……」

 うーんと、ワゼにしては珍しく首をひねっていたので尋ねて見ると、馬車の一部の構成部品にどうも代用できそうなものがないらしい。

 その部分はできれば布製が良いそうなのだが、ワゼのメイド服を一部切り取って使用しても、少々強度不足なのだとか。

「一応、汚れ防止、再生機能、防火、防水、防爆などはあるのですが、普段は普通に着用している物なので、ちょっと強度面は弱かったようデス」
「それってメイド服なのかどうなのか色々ツッコミを入れたいんだけど……」

 過剰すぎる機能があるよね?まぁ、ワゼの事だからもうツッコミを放棄したほうが良さそうだが‥‥‥というか、防爆って何?何と戦うメイド服になっているんだろうか?



 とにもかくにも、その部分を完成させればあとは細かい調整できちんと使用可能になるそうだが、底がうまいこと行かないがゆえに、馬車の制作作業は止まってしまった。

「とはいえ、普通の布では意味がありませんし……難しい問題デス」

 ワゼにしては珍しく、本気で悩んだ声を出しているから、どうにかしたいけれども、僕にはその手の知識がないからなぁ‥‥‥

「フェンリルの毛皮ってあったよね?あれはダメなのかな?」
「ダメデス。ちょっと厚みがあるので、防寒具向きなのですが、馬車の部品には向いていまセン」

 となると、現状お手上げに近いのだろう。


「ここまでできているのに、その部分ができないから未完成ってなんか悲しいな」
「‥‥‥いえ、未完成にはさせまセン。ご主人様に期待を抱かせて、裏切るような真似をするのはメイドの矜持として許せないことなのデス!!どうにかして完成させてみせマス!!」

 ぐっとこぶしを握り締め、力説するワゼ。

 燃えているように見え、そしてなにか絶対にやらかすような予感を僕はしたのであった。

 あ、これもしかしていらないスイッチ入れちゃった?ワゼの本気スイッチかもしれないけれども、絶対にやばいことをしでかしそうなんだけど。


「でも、いくらワゼでもそれは無理じゃないかな?布と言えばシルクとかあるけれども、蚕とかはこの辺で見たことがないし……」
「そう言われても、何としてでもやらなければ‥‥‥‥ン?ちょっと待ってくださいご主人様」
「何?」
「蚕って何ですか?」

 ああ、そう言えばこの世界って前世とは違う世界のようだし、蚕の存在があるかどうかわからないんだったな。

 ワゼが知らないの無理は無さそうかも。

「えっとね、ある虫の幼虫で、繭になったところで色々と加工して糸を取り出して、そこから布にするやつだったかな?」

 そんなに詳しくないし、素人知識のあやふやなものだが、ワゼにどのようなものなのか教えた。

……でも、ちょっとこの時の僕を後で殴りたくなった。こんな知識をワゼに与えたら、どうなるか分かっていたかもしれないのになぁ…‥‥

「ふむ、虫の繭からデスカ。…‥‥なるほど、糸を生み出すものも確かに利用できますネ」


 実行力があり、盗賊を軽々と潰し、フェンリルすら凌駕したワゼ。

 そんなワゼの実力を、僕は少々甘く見ていたかもしれないと、翌日後悔するのであった…‥‥


――――――――――――――――――
SIDE???


「わざわざ召喚させてもらいましたが‥‥‥不都合でしたか?」

 ある部屋の中で、丸々とした男性に対して、小さな少女が尋ねた。

「いやいやいや、何もない!!むしろ好都合だっだでぶ!!」

 ぐっと脂ぎった指を立て、その男性は愉快そうに笑って言った。



……そう、この異世界とやらに召喚された状況は、この男性にとってはものすごく都合がよかった。

 前々から異世界転生とか異世界召喚などに興味があったと言うのもあるが、この世界に来る前……召喚される前の、元居た世界では、非常に不味いことになっていたのだ。

 この男性、事業に手を出しまくって見て、世界で一番優秀な社長とか、裕福な大富豪になるという漠然とした夢があったのだが、その手に関する才能が悲しいレベルで無く、ことごとく失敗し、親に隠れて莫大な借金をしていたのである。

 そのため、実は彼の弟にも黙ってその持って居た金をばれないようにとっていたという事もあるのだが‥‥‥とにもかくにも手当たり次第にやってみては失敗し、そのできなかった怒りで暴飲暴食、怠惰にニートをしていた結果、今のどすこい関取体形になった。

 いやまぁ、相撲などに興味を持って力士になっていれば、それはそれで成功したかもしれないほどであったが…‥‥いや、その丸々と無駄な贅肉だけの身体では生き残れなかっただろう。

 

 そんなでぶでぶっとしたある日、同居していた彼の両親が何やら揉めていた。


 どうも互に不倫をしていることが発覚した上に、救いようのないことに貢ぎ合って借金を大量に抱えていたようなのだ。

 隠していたようなのだが、それがどちらも相手の財産をあてにしていたこともあり、それによって大喧嘩をしたのである。

 まさに血で血を洗う戦争というか、社会の中にある醜さを詰めこんだ夫婦喧嘩。

 流石にこのデブ饅頭な男性は止めようとしたが、その前に彼の隠れ金づるもとい、この家族の中では非常にまともだった弟が先に動き…‥‥父に殴り倒された挙句、激高していた母が包丁を投げ、心臓のあたりに刺さったのだ。

 最悪な事態に、慌ててどうにかしようと彼は動いたが…‥‥怠惰な生活、暴飲暴食によって肥え太っていた身体の足が悲鳴を上げ、こけて、転がって、すでに虫の息であった弟を圧死させてしまったのであった。

 自らの肉体で、ぶちゅっと潰れる音を聞いたときに顔を青ざめさせ、両親たちもようやく気が付いたのか、青色を通り越して白い顔になっていた。


……醜い夫婦喧嘩の末に、まともであった子供が殺されてしまった。

 そう世間が捕えるのは間違いなく、非常に不味い事態である。

 そこで、彼らは一旦喧嘩もやめて、バレないように処理を行った。

 潰されてしまった弟を丁寧に包装し、父親はそれを載せてどこかに遺棄した。

 母親は世間にバレないように、ご近所などには、彼は旅に行ったなどといってごまかすような噂を流した。

 そして彼は、弟を潰したことがバレると世間的に不味すぎるので、母親に同行して噂に協力した。


 そして殺害の原因になった包丁や、体液が付いた衣服も処分し、これで何もかも隠蔽できたと思っていたのだが…‥‥




「警察だ!!」

 …‥‥どうやら父親が遺棄した死体が発見され、どう考えても自殺ではなく他殺な遺体の状況に、警察が動いたらしい。

 逮捕状を持って踏み込まれた時は休日で、ようやく隠蔽し終えた安堵の次に、あの夫婦喧嘩の続きを両親はしようとしており、3人ともそろった状態。

 このままではまずいと思った瞬間…‥‥母親が素早く動いた。

 懲りずに持って来た包丁で、警察間にめがけて振り回し、強行突破して逃亡したのである。

 そしてついでに父親と彼もどさくさに紛れて逃げていたところで…‥‥急に彼は意識を失い、今に至ったのである。


 あのままでは逮捕は間違いなかっただろうし、将来が暗いものであったかもしれないが、異世界となれば追ってくることができないであろう。


「なるほど、不都合ではなかったのですね。ついでにお聞きしますが、帰りたいとも思っていないですか?」
「全然思っていないなぁ!」

 ぐっと指を立て、彼は歓喜の笑みを浮かべた。

「では、ご理解を頂けましたようですし、なぜ召喚したのかについての理由についてですが…‥あ、すいません、その事についてはまた後でお話いたしましょう。どうやら食事ができたようです」

 そう少女が話すと、部屋の扉が開き、次から次へとごちそうが運ばれ始めた。

「う”わぉ!!すごいおいしそうでぶ!!」
「さぁ、どうぞ召し上がってください」

 にこにこと笑う少女の言葉が言い終わる前に、彼はその食事に手を付け始めた。

 それはそれは、物凄くおいしいとしか言いようがなく、まさに天に上るかのような極上の味で、彼は食べるのを辞めなかった。

 何か用事があるといって、少女が部屋から出ていった後も、むしゃむしゃと夢中になって、満腹になるまで貪り食うのであった。




「‥‥‥ふぅ、どうやら食欲には忠実なようね」

 部屋から出た後、少女は同僚に彼の印象について話し始める。

「なるほど、性欲とかに対しての手段もあったけれども、食欲ならば簡単ね。食事に例の薬を混ぜ込みまくっているし、すぐに効果がみられるはずだわ」

 その同僚が笑いながら放した言葉に、少女も笑みを浮かべる。


……今はまだ、彼は気が付いていなかった。

 ここでの召喚は、実は異世界の腐った屑限定のみにされていたことを。

 その中でも、見た目や食感などを考えて呼び出されたという事を。

 ゆえに、彼の両親も対象ではあったが、おいしそうかどうかで彼が選ばれたことを。


 そして、もう間もなく、どうして呼び出されたかという事を彼は知るのだが‥‥‥‥知った時には、既に遅かったのであった。
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