拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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その素質の片鱗

#91 一夜の宿デス

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SIDEシアン

「ふわぁ‥‥‥‥」

 ふと、目を覚ませばもう夕暮時になっていた。

「あれ?結構昼寝しちゃったかな?」

 周囲を見れば、海岸に来ていた海水浴客もだいぶ減っており、そろそろ帰還すべき時なのだろう。

 とは言え、今日すぐに帰るのではなく、明日にでも帰還すればいいと僕は思った。


「っと、ハクロの背中だったか…‥‥」

 今さら気が付いたが、どうやらハクロの蜘蛛の部分の背中に、僕は寝ていたようだ。

 ちょっと糸の支えもあったし、どうやら彼女は僕を起こさないように陸地に戻って座り込み、一緒に寝てくれたようだ。

【すぅ……すぅ……】

 見れば、ハクロはまだ寝ているようで、寝息を立てながら前の方に倒れかかっているような状態であった。

 一応、こちらの方も完全に倒れるのを防ぐためなのか支柱が立てられ、そこに彼女が糸で上半身を結び付けているが…‥‥夕焼けの色も相まって、なんか艶めかしいようにも思える。

「ハクロ、そろそろ起きなよ。もうすぐ夜だから、さっさと宿に戻ろう」

 このまま寝かせてあげたいような気がしたが、流石に夜の海岸にとどまるのは色々と不味い。

 この世界には普通にモンスターもいるし、土地勘のないこの場所だと少々危険性があるかもしれないのだ。

 そう思い、彼女をゆすって起こそうとした。

「ほら、ハクロ起きて」
【むにゅぅ……くぴぃ…‥‥】
「けっこう深く寝ているな…‥‥」

 ぐっすりというか、遊び疲れたというのもあったのか、中々深い眠りのようだ。

 寝すぎると夜眠れなくなるから、今のうちに起こしておきたいが‥‥‥‥

「あ、ワゼいるか?」
「お呼びですか、ご主人様」

 口に出してみれば、素早くワゼが背後に立っていた。

…‥‥さっきまでいなかったようなはずだが、どこからか見張りでもしていたのかな?

 まぁ、それは置いておくとして、今はハクロを起こすためにも…‥‥

「ワゼ、ハクロを起こしたいんだけど、できるだけ優しく出来ないかな?」
「優しくデスカ?簡単デス」

 そうワゼがつぶやいたかと思うと、ミニワゼシスターズのフンフを読んできた。

「フンフ、アンモニア水スプレーをこの間購入していましたヨネ?」
「ファ!」
「ん?ちょっと待って、それって…‥‥」

 ちょっと嫌な予感が。というか、それって優しい起こし方にはならないんじゃ…‥‥

「では、ハクロさんにどうゾ」
「ファー!!」

 何をしようとしたのか僕は理解したが、止める前にフンフが素早くどこかにしまっていた小さなスプレーを取り出し、むにゃむにゃと寝ているハクロの鼻へぷしゅっと吹きかけた。

 次の瞬間。


【------------っ#%#&'&$%#$"&&!?】

 ばちっと目を開き、ハクロが勢いよく跳ね起きる。

 素早く僕は背中から飛び降り、彼女から離れると、ハクロはそのまま全身をのたうち回らせた。

【ぴっぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!何ですかこの臭いはぁぁぁぁぁっ!!】

「‥‥‥おお、物凄く効果抜群ですネ」
「鬼か!?」

…‥‥アンモニア水は、気付け薬として知られている。

 この世界でもたまに冒険者や魔法屋で緊急時にはね起きれるように市販されているようだが、そんなものをまともに喰らえばどうなるか。

 それは今まさに、目の前で砂浜を転がりまくり、苦しみまくっているハクロの姿が回答を導き出していたのであった…‥‥そう言えば、蜘蛛って匂いに敏感という話もあるが、アラクネもおそらく匂いに敏感ではなかろうか?

 いや、アンモニアは「匂い」というよりも「臭い」で、強烈な刺激臭だからちょっと意味合い的には違うかもしれない。

「というかフンフ、何でそんなものを買っていたの?」
「ファファファー!」
「え?最近アルバスに出てきた店の中で、面白そうな店で購入した?」
「ファー!」
「使用目的は、不審者が出た際、目的を吐かせるために、寝かせないストレスを与える用?」

…‥‥なんだろう、間違っていないような、何かを間違えているような使用方法のような‥‥‥深く考えても時間の無駄か。

「あ、しかもこれ通常の規定品では無いデス。20倍ほど濃くなってマス」
「ファファ!」
「なるほど、独自改良デスカ。中々考えてますネ」
「ファ!」
「20倍ね…‥‥いや、そりゃハクロも悶絶して苦しむよね!?」

 匂いに敏感云々関係なかった。致死量だった。

 というか、これのどこが優しい起こしかたなのだろうか?

 電撃とかで起こすような事が無いように、考えたはずなのに‥‥‥ああ、そうか、それらに比べれば優しい方なのか。


【ああああああ!‥‥‥がくっ…‥‥】

 悶えに悶え、力尽きたのかそのまま彼女は気絶したのであった…‥‥

 ごめんハクロ。本気でごめん。









…‥‥気絶したハクロをミニワゼたちによって運ばせ、僕らは宿に入った。

 海岸近くの町にあるので、窓から見ようと思えば海岸がここからでも見えるだろう。


 とは言え、ハクロは海岸を転げまわったせいで少し汚れて、このままベッドで寝かせるわけにもいかないだろう。

「ワゼ、ミニワゼシスターズ、皆でハクロを洗ってやってくれないかな?」
「了解デス」

 彼女達の手によって、ハクロはえっさほいさっと運ばれていった。


 一応、僕の方も宿の風呂に入っておくかな…‥‥


―――――――――――――――――
SIDEハクロ

ごしごし……

【ん、ん…‥‥ふわ?】

 気絶からハクロが目を覚ますと、そこは気絶前までいた海岸ではなかった。

【‥‥‥浴場ですか?】
「そうデス」


 ふとつぶやけば、彼女の横にいたワゼがそう答える。

 見れば、身体中でミニワゼたちがハクロの体を洗っており、泡まみれになっていた。

【いや、自分一人でも洗えますが‥‥‥ってあれ?そもそも何故いつの間にここへ?】

 物凄い激臭で目が覚め、再び気絶したところまでならばハクロは覚えていたが、どこをどうしてここへ来たのかが分からない。

 ひとまず泡を洗い落としてから、ワゼたちにハクロは事情を聞いた。


【ふむふむなるほど‥‥‥って、結局ワゼさん、いえ、この場合あの臭いをかがせたフンフの責任じゃないですかぁぁぁ!!】


 ツッコミを入れつつ、フンフを探して縛り上げるハクロ。

 幸いと言うか、今この浴場には他の客はいないようなので、少しばかり声を荒げても問題は無い。

「ファー!!ファ、ファ!!」
【え?アンモニア水を使ったが、ワゼさんの問いかけに対応した結果だから、自分は無罪?】
「ファ!」
【ご主人様がワゼさんへ命令して、伝言的にやったから?‥‥‥‥言い訳にはなりませんよ!!というかワゼさんも結局同罪ですってばぁぁぁ!!糸で、縛って】
「そうはいきまセン」
【へっ?】

 ワゼの方にもハクロは糸を伸ばしたが、捕らえたのは何もない空間。

 気が付けば糸を奪われ、ハクロはフンフ共々天井に吊るされていた。

【あれぇ!?何で糸の主導権がワゼさんに!?】
「この程度、メイドならば造作もないのデス。フンフ、貴女の方も油断しなければ、返り討ちはできたはずですヨ?」
「ファ~」

 ワゼの言葉に、フンフは目をそらす。

 一応、ミニワゼシスターズはワゼの劣化とは言え、それ相応の能力はあり、本来であればこの程度なら大丈夫であったが‥‥‥ちょっとばかりフンフは油断していたらしい。

「ファ!」
「お、縄抜け出来ましたネ」

 ちょっと気合いを入れ、フンフが縄抜けを見事にし、ミニワゼたちも拍手を送る。

「まぁ、それはそうとして‥‥‥縛ろうとしてきたのはちょっとばかりダメですネ」
【ひっ!?】

 ワゼたちに目を向けられ、吊るされているハクロはびくっと体を震わせた。

 いやな予感が物凄く感じ取れたのである。


「まぁ、私達がやらかしたと言えば確かに悪かったですが…‥それでも、手を出された以上、正当防衛と言う言葉がありますからネ」
【いや、でも、そちらの方がやり過ぎなのですが】
「問答無用デス。ああ、そうです、ついにやれば‥‥‥」
【え?ちょっと待ってください、何でしょうかその手の動きと言うか、いや、ミニワゼたちも……き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!】

 悲鳴が上がったが、ハクロの助けとなるような者はその場にはいなかったのであった…‥‥





「お、ハクロ起きて風呂から‥‥‥って、どうしたの?なんか真っ赤だけど‥‥‥」
【大丈夫デス大丈夫デス大丈夫デス大丈夫デス大丈夫デス大丈夫デス大丈夫デス大丈夫デス…‥‥】

「‥‥‥ワゼ?ハクロが何かワゼみたいな口調でぶつぶつ言って部屋の角に座りこんだけれども、風呂場で何があったの?」
「別に何も無かったのデス。ハクロさんが風呂場で起き、皆で無事に入浴しただけなのデス」
「じゃあ何で目をそらすんだよ。ついでに、フンフが何やらやり遂げた顔になっているけれども、何をやったの?」
「ファ~ファ」
「世の中には知らなくても良い事がある?‥‥‥本当に何をやったんだ?」



――――――――――――――――――――――――――――――――
SIDE???


……深夜、皆が寝静まるその頃、沖合ではある事が起きていた。

 この海岸の沖合では、今クラーケンの幼体が出ており、その討伐のために向かった冒険者たちがいたのだが…‥‥

「ぐわあぁぁぁぁ!!」
「うっそだろおい!!幼体だけじゃねぇぇぇぇ!!」
「しかもこれは、ここにいる奴らだけじゃ無理だあぁぁぁあ!!」

 信じたくないようなその状況に彼らは叫ぶが、それで好転するわけもない。

 大急ぎで逃走を図るが、彼らが狩ろうと、いや、狩られる立場に変えられ、追ってくる者からは逃れられない。

 そして、その追跡者たちは彼らを追いかけ、どんどん陸地へ近づいてしまう。

 その事に冒険者たちは気が付けばよかったが、今は己の命が大事過ぎて考えられない。


 それが、どれだけの人災になるのか‥‥‥‥それを予想する余裕すらないのであった‥‥‥‥

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