拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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何をやらかしてくれるのでしょうか

#136 メインは食されるのデス

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SIDE第2皇子こと馬鹿殿下ゴジャールと、その愉快な取りまきたち

「ううっぐぅ…‥‥」
「ごっふぅ……」

 ふらふらとしながらも、馬鹿殿下とその愉快な取りまきたちは目を覚ました。


「な、なんだあの電撃は…‥‥いや、それよりも、ここはどこだ?」

 気絶する前のことを思い出しつつ、すぐに今の状況を馬鹿殿下は気が付く。


 彼らが気絶した時は、馬車が近くにありつつ、路上であったはずだ。

 だがしかし、どういう訳か彼らが起きた時には、何故かベッドに寝かされていた。

・・・ふかふかなベッドではなく、木と皮だけの、いや、むしろベンチのようなものである、

 誰かが運んで寝かせたのかもしれないが、いるのは見知らぬ建物の中。
 
 しかも、真夜中なのか辺りは薄暗く、辛うじて月明りらしいものが窓から差し込むだけである。

「うっ、慣れないものというか、硬すぎて体が痛い」
「ぐ……確かにな。未来の帝王たる余を、このような簡素過ぎるものに寝かせるとは何事だ!!」

 叫びつつも、その相手はいない。

 誰が彼らをここへ連れ込んだのかはわからず、この場にいるのは馬鹿殿下とその取りまきたちだけ。


 どうしたものかと話し合い、取りまきの一人が提案した。


「では、ゴジャール様はこの部屋にいてください。この家の探索は我々が行います」
「ああ!!頼むぞ!!」

 この状況などの情報を得るために、取りまきたちはゴジャールからいったん離れ、この建物の中に散開した。


「ふふふ、余だけは報告を待っていればいいのだ!!うん、最初からこうすればよかったな!!」

 わざわざ自ら私兵を捜しに行かずとも、最初から取りまきたちを向かわせるだけでよかった。

 そうすれば、あのような電撃?と思わしき攻撃を受けず、このような怪しげな場所へ来ることもなかったはずなのだ。

 言っても仕方がない事だが、今は取りまきたちからの報告を待てばいいだけ…‥‥そのはずであった。



「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
「ぬわんだぁ!?」

 突然聞こえた悲鳴に、思わず驚愕する馬鹿殿下。

 つい先ほど見たばかりの取りまきの声を聞き間違えるわけもなく、何事かと叫ぼうとして‥‥


「ひんぐぇぇぇぇぇっ!?」
「ちょべらっぱぁぁぁぁぁぁ!?」

「また続けてか!?」

「ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「ぐわああああああああああああああ!!」
「やめろぉぉぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇぇ!!」

「ひとでなしぃぃぃ!!おにぃ、悪魔、馬鹿ゴジャール様ぁぁぁぁ!!」
「あ、ちょっとちょっとそれはまじでだめ!!やめやめ、っぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「もげたぁぁぁっ!!もげ、もげ、ぐえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


……さらっと馬鹿殿下に対しての本音が混ざったような声もあったが、聞こえてくるのはどれも取りまきたちの悲鳴。

 演技などではなく、本気で恐怖に襲われている声である。


 何が起きておるのか、想像がつかない。

 ただ、彼らのみが味わうような恐怖の声だけが響き渡るだけであり、出くわしてなくともその恐怖は伝播してくるのだ。


 次第にその強が伝わり、がくがくと知らず知らずのうちに馬鹿殿下の足が震えはじめる。




……数分、いや、数時間、どれだけの時間が経ったのかわからない。

 気が付けば、悲鳴はいつの間にか途絶えており、それでいて夜は明けていなかった。

「お、おーい、お前たち!!報告しに来ないかぁぁぁ!!」

 恐怖に震え始めながらも、吹き飛ばすためにいつも以上に叫んで呼びかける馬鹿殿下。

 だがしかし、返答はない。


 聞こえていたはずの悲鳴もなく、響くのはその馬鹿殿下の大声だけ…‥‥ではなかった。


‥‥びちゃぁ、ずるぅ
「ひっ!?」


 何かが滴るような、それでいて引きずるかのような音。

ずべっちゃ、ぐちゃぁ‥‥‥ぬっぷん

 ぎぃっ、ぎしっ、ごりごりごり…‥‥

   かた……かた…‥‥がた、がた…‥‥

 それ以外にも様々な音が聞こえてくるが…‥‥どれも人の出すような音ではない。

 しかも、少しづつ音が大きくなってきており、確実に近づいてきていた。


「ひ、ひぃぃぃぃ!!」

 だんだん近づいてくる謎の音の数々に恐怖を覚え、思わず駆けだす馬鹿殿下。

 部屋から飛び出て、廊下を駆け抜けるがその音はやまない。


べっちゃんべっちゃんべっちゃん!!
がたがたがたがたが!!
「つ、ついてきているだとぅ!?」

 走れば走るほど、後方から迫ってくる音があった。

 よせばいいのに、馬鹿殿下はその正体を確かめるために振り向き、そして後悔をした。


 そこにいたのは、言いようの無い恐怖そのもの。

 何と言えば様々なモノがあるが…‥‥少なくとも、この世にあっていいものとは言えない様な、おぞましきものだらけ。

 それらが一堂に集まって馬鹿殿下を追いかけており、そのうえ数が徐々に増え、脅威が増しているのだ。


「ひんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 死に物狂いで駆け抜ける馬鹿殿下。

 廊下を進めど突き当りはなく、ここまで長かったのか、それとも伸びているのかわからない。

がっ!!
「ぐわっ!?」
 
 何かに躓き、馬鹿殿下は盛大に転がる。

「ぐ、っぐっ…‥‥」

 足をひねったのか、ひどい激痛が襲うが、今はそれどころではない。


 追いかけて来た者たちが、今ので迫ってきているはず…‥‥であった。

「‥‥‥は?」

 だが、その気配はない。

 走ってきた報告を見れば、いつの間にか追いかけてきていたおぞましき者たちが消失していた。

 あれは幻だったのか、いや、そうではないだろう。

 なぜならば‥‥‥



―――ぽんっ

 軽く肩を叩かれ、思わず振り返る馬鹿殿下。

 そして、言葉を失う。

 たった今、後方にいたはずのおぞましき者たちがいつの間にか、取り囲んでいたのだから。

「ひ、ぎやあああああああああああああああああああああああああ!!」









……恐怖で、何もかも出せるものをすべて出し切り、その場で気を失った馬鹿殿下。

 だが、これで終わりではなかった。



 再び目覚めて見れば、まだ夜が明けていない。

 それどころか足の痛みは消え、いつの間にか治っていた。

 いまのは夢だったのか問いかけたかったが、そうはいかなかった。



 いや、夢ではない証拠が目の前に提示されていたので、問いかける意味もなかったのだ。

「あ、あ、ああああああああ」

 恐怖の悲鳴で聞こえていた、取りまきたち。

 彼らが皆、そのおぞましき者たちと共に居たのだから。

 同化しているように、おぞましき者たちと共に、馬鹿殿下を囲んでいたのだから。


 

 再び駆け抜ける馬鹿殿下。

 そして再び気絶し、また同じことが繰り返される。

 逃げては終われ、何もかも、人としての矜持さえも出し切って気絶し、再び繰り返す。

 反撃しようと攻撃を仕掛けて見るも通じるわけもなく、むしろより一層恐怖の度合いが増す。


「だ、だれか、助けてくれえええええええええええええええええ!!」

 建物の外に出て逃げても、気が付けば再び廊下を走っており、意味を成していない。

 逃れようのない恐怖の一夜、いや、終わりの無い絶望の夜は馬鹿殿下を助けない。

 悔いても終わるわけがなく、馬鹿殿下は今夜も駆け抜けていく‥‥‥‥



―――――――――――――――――――――――――
SIDEシアン

「…‥‥やっておいてなんだけどさ、これ、いちいちやるの結構手間だよね」
「ふむ、自動化の面で問題ありますカ」

 その馬鹿殿下と愉快な取りまきたちの惨状を見ながら、僕らはそう語り合っていた。

【というか、彼らの目には何が見えているのでしょうかね?はた目には何もないものを見て、怯えているだけにしか思えませんよ】
「まぁ、見苦しいという感じはするな」
「では、閉じましょウ。ひとまずは、平穏を味合わせてから絶望というのも効果的ですからネ」


 そう言いながら、ワゼはその箱・・・をぱたりと閉じた。




……閉じられたその箱の中には、ひとつの箱庭が出来ていた。

 今回の作戦、馬鹿殿下に対して徹底的に反撃させないようにと考えて、ワゼが創り出した空間。

 特殊な結界の一種…‥‥その内部に人を閉じこめつつ、外部からも操作可能なものらしい。


 メイドゴーレムが扱える代物なのか、色々と疑問に思えるが、まぁワゼだからという理由であれば、納得できる。

 うん、もう深く考えると色々とダメな奴だと考えたほうが良いのだろう。


 何にしても、この箱には今、馬鹿殿下とその愉快な取りまきたちが閉じ込められており、特殊な毒を噴霧上にして散布することで、物凄い幻覚を見せているそうなのだ。

 わかりやすく言えば、貞○、リ○グ、バ○オハザード、百鬼夜行、その他諸々和洋折衷なホラー要素てんこ盛りな恐怖の館状態なのだとか。

 なお、テストプレイとして襲撃してきた馬鹿殿下の私兵たちに試してもらい、きちんと機能するか確認できた。


 終わった後の彼らの表情は、もはや絶望しかなく。変わり果てまくっていたが‥‥‥とりあえず今は軽く済ませ、僕らに二度と関わらないように忠告しておいた。

 帝国へ帰るよう促し、馬鹿殿下たちの入った箱を渡し、今回の件は馬鹿殿下の暴走だけであったと伝えるように念を押しておく。

 まぁ、後は野となれ山となれ。

 箱を壊したり、馬鹿殿下たちを出せば無事に元の世界に彼らは戻ってくる。

 外部から栄養剤の投与などを行えば生き続けるようだし、そのまま飼育するのも、解放するのも彼ら次第。

 ついでに言うのであれば、箱の中での恐怖で馬鹿殿下の無様すぎる粗相だらけの姿はしっかり記録されており、いざとなればばらまいて社会的抹殺もできるのだ。


 何にしても、最終的な判断は帰国した後に帝王とやらに決まるだろう。

 僕らに手を出せばこのような末路を迎える事を示せるだろうし…‥‥


「ねぇ、ワゼ。結局あの馬鹿殿下がここに来た原因は帝王かな?」
「ええ、間違いないでしょウ。ベルガモット帝国の最高責任者が、バレないように人脈を動かし、自然に誘導した形跡も確認できまシタ」

 そもそもの騒動の元凶は、帝国にあったことをワゼは突き止めた。

 このメイドの前には、隠し事も無意味なのだろうか?

 これが警告となって、できれば僕らの元へ平和を脅かすような輩をよこさないようにしてほしい所である‥‥‥





――――――――――――――――――
SIDE私兵団長デッドラ

……箱を運び、私兵たちは帰国へ向けて帰路についていた。

 中に入っているのは、今もなお恐怖にさらされている馬鹿とその愉快な仲間たち。

 解放しようと思えばすぐに解放できるのだが、私兵たちや指示を出している団長デッドラにもその気はない。

 なぜならば、彼らは自分たちが手を触れてはいけないような存在をに対して攻撃して、その圧倒的な力の差を思い知らされたからだ。

 もともと乗り気ではないのもあったし、命があれどもテストプレイなどと称して恐怖体験を軽く味わされたのもある。


 もはやこの馬鹿たちの命令を聞く責務もなく、帰国した後は帝王の元へこれを差し出すだけだ。

「ああ、これが終わった後は、引退しよう…‥‥」

 これ以上、兵士の立場についていても、下手すると他の皇子、皇女の元へ回される可能性がある。

 そして今回、持ち帰ったこの箱によって警告をしたとしても、やはりちょっかいをかける様な者が出る可能性が高く、そうなれば今度は命を失いかねないのだ。



 そう思いながら、わかりやすく、なおかつ触れないようにというような話をするには、どうしたものかと考えていた‥‥‥‥その時であった。


がっごぉん!!
「うおっ!?」

 突然、上下に大きく揺れたかと思うと、大地に穴が開いた。

 彼らはそこへ落ち、負傷する。


 と、馬鹿殿下が入っていた箱が、今のはずみで手元から転がり、危く解放しかけたが、なんとか閉じたままになっていた。

 ふぅっと安堵の息を吐き、回収しようとしたその瞬間。



ごっつ!!
「‥‥は?」

 突如として、その箱の下の地面が隆起し、いっきに真上に打ち上げられる。

 そして、目で追っていた箱は上空に飛んだかと思いきや、どこからか伸びてきた土の腕のようなものに捕まれ、持ち去られて行ってしまった。


 その一連の動作にあっけにとられつつ、すぐさま回収に動こうと穴から這い上がった時には、既に行方知れずになってしまったのであった…‥‥


「な、なんだ今のは…‥‥それにこの穴は?」
「それを言われても不明です」
「と言うか、これどう説明するんだろうか…‥‥」

 失われた馬鹿殿下入りの箱。

 どう説明したものか考えこみ、デッドラの胃がキリキリと痛み始めるのであった‥‥‥‥




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