拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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寒さ到来面倒事も到来するな

#193 彼女が眠る中なのデス

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……それは今から、数百年前の話。

 そこは昔、人っ子誰一人住まない極寒の大地。

 何もかも凍り付き、雪が深く積り、樹氷なども連なる中、そこに一人の少女がある日住み着いた。



 彼女は雪の精霊と、氷龍の子。人の姿を持ちつつ、この凍てつく大地を支配するべく、生まれた者。

 凍った大地に少しは住まえる場所を作り上げ、少しづつ形を作っていった。



 氷の城を立て、その周囲に雪の家、氷の家などを建て、アイスゴーレムたちを作り上げて動かしていく。

 いつしか、彼女の住まう極寒の大地には、人々が住み始める。

 何も、希望を持ってなどではなく、人生の終着点として来た者や、その噂を聞いて尋ねてきた者、氷を南方へ輸送して儲けようとする者など、様々な思惑が入り混じり、一つの国が創り上げられていく。


 そして、気が付けば彼女は雪の女王と呼ばれるようになり、その地を治める者として名を広めた。






 極寒の地ゆえに、得るものはそう多くなく、されども興味本位で近付く者たちもいる。

 欲望を持ってきた者たちもいたが、悪党などでなければ放置するが、悪党であればそれこそ極寒以上の地獄を彼女は見せた。



 そしてある日、その時が来た。


 彼女の氷の力の異常性から、氷龍の力を読み取り、それを利用しようと企む者。

 今までに何度も来たことがあるが、その時に来たのは…‥‥当時、魔王と呼ばれていた存在。

 自身の力をより求めようと彼女に接近し、話を持ち掛けるが…‥‥雪の女王は、その話を断った。


 いわく、単純に気持ち悪い。力を求めるだけの変態、等々の文句を出し、魔王は激怒し、配下の者たちを従えて侵略を開始してきた。

 けれども、地力では雪の女王の方がわずかに上回り、魔王たちは攻めきれない。

 その極寒の寒さに強い者たちも少なく、当時の魔王たちの戦力では押し切れなかったのだ。


……だが、できないのであれば、できるようにすれば良い。

 そう考えた魔王へ、その配下の者が発案した。

 それこそが、雪の女王へ呪いをかける事。

 今倒せぬのであれば、封じてしまえば良い。

 呪いで弱体化させ、記憶も奪い、そのうえはるか未来にまでやってしまえば、そこで簡単に潰せるはずだ。

 前者2つだけで良いような気もしなくはないが、目覚めた時に絶望を与えるのであればこれだけの事をすればいい。

 そう考え、魔王は呪いをかけ‥‥‥雪の女王は封じられ、姿を消した。

 あとは、この地には残る意味もないので魔王たちは引き上げ、そこは再び荒れ果てた極寒の大地へと戻ったのであった‥‥‥




―――――――――――――――――
SIDEロール?リザ?

「…‥‥はた迷惑すぎるにょ」

……移りかわる過去を見て、ロールはそうつぶやいた。

 今、自分は解呪されているはずなのだが…‥‥どういう訳か、この真っ暗な空間にいつの間にか一人でいたのだ。

 そして、目の前で何かが上映されたかと思えば…‥‥自分の封じられるまでの記録であった。


 それを見て、ロールは悟る。

 これは、雪の女王リザとしての記憶だと。

 解呪され、その記憶を見せられているのだろうけれども‥‥‥‥何と言うか、魔王超迷惑人。


「で、それで今に至るってわけなのかにょ……?」
「‥‥‥そう言う事に、なるでありんす」
「っ!!」

 突然聞こえてきた声に、ロールは慌てて振り向く。

 見ればそこには、ロールではない何者かが存在していた。



 全体的に青色なのは、ロールと同様。

 だが、その姿は…‥‥彼女を成長させた姿、いや、雪の女王そのものである。

「‥‥‥雪の女王!?」
「何を驚くでありんすか。お主もわらわでありんすよね?」

 個人的には、その語尾にツッコミを入れたいと思ったロールであったが、それを言えば何かブーメランのように返ってくる気がして、黙り込む。


「ま、とりあえず気を楽にしてそこに座るでありんす」

 そう言うと、雪の女王は手をかざし、小さな氷の椅子を作ってロールに渡した。




 とりあえず、お言葉に甘えて彼女はその椅子に座らせてもらうと、相手も雪の玉座のようなものをつくり、そこに座った。

 ここがどこなのか、色々と聞きたいことは置いておいて、出された茶を飲む。


「…‥‥さてと、とりあえずもういろいろと分かっているでありんすな、妾」
「‥‥‥話し方がおかしい人としか思えないにょ」
「ぐっ」

 ロールの指摘に対し、その女性…‥‥雪の女王は痛いところを突かれたかのようなリアクションを取った。
 

「しかたがないでありんすよ…‥‥雪の女王としてふるまっている中、変に何かをやらかせば色々と面倒だし、とりあえず畏怖される存在みたいな感じで…‥‥と練習していたら、いつの間にかこうなっていたでありんすからね」
「それのどこが畏怖できる存在にょ?どう考えても色々拗らせた変人にしか見えないにょ」
「ぐふっ!!」

 その指摘に、心が痛いのか血反吐を吐くように倒れる雪の女王。

「おおぅ……呪いを受け、幼体化している妾の言葉とは言え、心に来るでありんすなぁ…‥‥」
「なんか疲れているにょ?」
「大人は色々と、疲れるものでありんすよ…‥‥」

 ロールの言葉に、物凄く重い溜息を吐き、雪の女王は気を取り直した。

「こほん、さてまずは本題に入るでありんすが…‥‥今がどうなっているのか、わかるでありんすか?」
「んー……解呪されているはず?」
「正解でありんす。本来であれば、この呪いが解け、妾が表に出るはずだったのでありんすが‥‥‥まぁ、これを見るでありんす」

 そう言い、雪の女王が手をかざすと、先ほどの記憶の風景とはまた異なる物が映っていた。


「‥‥‥!?」
「ま、驚くのも無理はないでありんすね。何しろ、暴走を引き当てて暴れているでありんすからねぇ」

 その光景は、雪の女王としての姿を持ちつつ、暴れまわる自分の姿。

 そしてそれを抑えようと、シアンたちが動き、戦っている。

「これは、ほんのちょっと前の出来事でありんす」
「こ、これどうなったにょ!?」
「結果として、妾の負けでありんす。暴走していても分かる、あの絶望の味は…‥‥うぇっぶ」

 何かを思い出し、その吐き気も戻って来たのか手を抑える雪の女王。

 それだけで、何があったのか大体の事をロールは察し、追求しないことにした。



「とにもかくにも、これで妾が負け、暴走が止まったのはいいのでありんすが…‥‥その止めたもののせいで、いまちょっと面倒な事になったでありんす」
「というと?」
「魔力の暴走の反動で、身体が気絶し、幼体化したでありんす。さらに…‥‥本来であれば、お主はこのまま眠っている人格にされるはずが、こうやって起きてしまったのでありんすよ」

 いわく、元々解呪された時点で雪の女王は雪の女王としての本来の人格が目覚め、ロールとしての人格は眠るはずであった。

 だが、魔力暴走や激マズな物のせいで色々と変わり、逆に…‥‥


「‥‥‥妾の方が消えてしまうでありんすよ」
「あ‥‥‥」

 そこでロールは気が付いた。

 目の前の雪の女王の体が、だんだん足元から消え始めていること二。

 こうして、会話をしている時間も…‥‥多分、無かったのだろう。

「まぁ、それはそれでいいでありんすよ。どうせ相当な年月が経過し、当時の者たちもいないし、妾がいたところで、何もない。であれば、このまま消えて、普通にお主に任せても良かったのでありんすが‥‥‥」

 そう言いながら、消えゆく体を起こし、ロールの方へ雪の女王は歩み始める。


「残念ながら、妾、子供いない。というか、生涯独身だったのでありんす」

 家族もなく、極寒の大地を民たちと共に生きてきたが、考えて見れば彼女には誰もそばにいなかったのだ。

 ただその大地を守護し、魔王とも戦い、極寒の地をどうにかしようとしても…‥‥結局、彼女は一人だった。

「でも、幼体となったお主は違う。妾であって妾ではないお主なら…‥‥迎えてくれる者たちもいるでありんすよね?」

 そう言いながら、雪の女王が手をかざすと、そこには眠っている彼女達の体があり、その傍には心配そうな目で見るシアンとハクロの姿があった。

「まぁ、あの男の方はかつての魔王以上の力を持ちながらにして、その心は違うというのが色々と驚くべきでありんすが…‥放置もできぬし、お主に妾の記憶から学んでもらって、万が一の相手にもなるようにしようと思ったのでありんす」

 つまり、普通に目覚めさせるよりも、雪の女王としての力のふるまい方や、その生きていた時の経験を託そうとしているのだと、ロールは理解した。

「っと、もうそろそろ時間でありんすな…‥‥」

 気が付けば、雪の女王の姿はもうほとんど消えている。

 聞こえるのは、その声だけになっていた。

「ま、待つにょ!!そんなことをいわれても、どうすればいいにょ!?」
「簡単な事でありんす。ここへ来て、過ごしてきたことをすればいいのでありんす。たまにあの魔王が暴走しかけた時とかには出来るだけ抑えてもらう事もしてもらいつつ…‥‥妾にはなかった、家族を学んでほしいのでありんす」

 その言葉にロールはふと自身の目に涙が流れてきたことに気が付く。

 家族‥‥‥言われてみれば、雪の女王にはそのようなものはない。

 それを学んでほしいと、ロールを我が子のように想って彼女は言っているのだろうか。

「ああ、ちょうど幼体自体も解呪できているし、きちんと成長は可能でありんす。ゆえに、育っていく様子も届けられるし、温かさを知る事が出来るでありんす。良かったでありんすねぇ‥‥‥‥家族を知る機会があって」

 家族を持たず、雪の女王として過ごしてきた彼女にとっては、未来あるロールは羨ましくも思え…‥‥自分の娘のように想え、その将来を良き者にしたいのだ。

「それじゃ、もう話せないでありんすし……消えゆく妾はここで口を閉じるでありんす」


 そう最後に聞こえ、後には何も残らない空間。

 一人残されたロールは、しばらくあっけにとられつつ…‥‥いつの間にか流れていた涙を止ませ、ふき取った。

「‥‥‥うん、わかったにょ。ロール、家族を知るにょ!!だから、雪の女王リザ、いや、私‥‥‥‥その知り得なかったことを、精いっぱい頑張って学ぶにょ!!」

 ぐっとこぶしを握り、そう宣言するロール。



……そして、気が付けば彼女は目を覚まし、傍で見ていたシアンたちがその様子に気が付くのであった‥‥‥‥




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