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春間近、でも頭春は来ないで欲しい
#268 ようやくというか、平穏?なのデス
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SIDEシアン
‥‥‥日も暮れ、王城前では人々が集まっていた。
その手に握りしめているのは賭け事などに関する紙であり、今か今かと結果を待ちわびている。
そう、ついに選挙が行われ、各王子・王女たちに投票がなされたのだ。
今の国王が退位し、その空いた王座に座るのは誰か。
新たな王を皆は我慢して待ち、その結果を楽しみにする。
「‥‥‥なお、正確な統計なども兼ねるために、シスターズが裏で手伝っていマス」
「まぁ、普通の人間がやるよりも正確に数えられそうだからなぁ…‥ああ、でも発表されるまでは出さなくていいよ。待つこともある意味こういう行事での楽しみだしね」
集計作業が行われている中、僕らは王城内のパーティ会場内にいた。
正装としてワゼが用意した衣服に着替えつつ、ヒルドたちはまだ赤子でもあるがそれでも一緒に来たので子供用の衣服に着替えさせる。
ふわぁっと退屈そうに欠伸をしたが、結果がでたらさっさと帰ったほうがいいかもなぁ。
まだ正式には始まっておらず、結果が出次第きちんと行われ、新たな王へ向けての拍手喝采などの用意がされているようだが…‥‥
「それにしても、あそこの方にいる王子・王女たちから漂う雰囲気が凄まじいな…‥‥切羽詰まっているというか、鬼気迫るというか…‥‥」
ちらりと目をやって見るのは、今回のパーティの主役になりうる王子・王女たち。
この国の第1王子マイーナ・ザ・ボラーン、第2王子ゼルドラ・ザ・ボラーン、第3王子イスカンダル・ザ・ボラーン、第4王子ニーズ・ザ・ボラーン、第5王子ザリック・ザ・ボラーン、第1王女アルティア・ザ・ボラーン…‥‥必死な顔で、投票結果を今か今かと待ちわびているようだ。
無理もない。全員の課題が達成できたと判断されれば、ミスティアの継承権が復活し、彼女が選ばれる可能性があったのに、今回出された課題の状態は思わしくもなく、この様子だと確実にそれはなく、今の彼らしか王位継承権は無いのだから。
「結果は出るから良いとして、被害の方はどうなったのかな?」
「ストーカー・ヤンデレ激争があり、他国の情報が漏れまくり、楽器が砕け、未知のスライムの大量発生など…‥‥ちょっと計算したくないレベルデス」
ワゼにそう言わせるほどって、本当に何をしたんだろうか‥‥やっぱ詳細を聞くのはやめよう。なんか怖い。
何にしても待っていると、ようやく集計が終わったらしい。
「‥‥‥では、結果が出たので、これより発表を行う!!」
隠居を決め、この後に退位を行う予定の現国王がそう宣言し、結果が書かれた紙を手に持った。
周囲からはドラムロールのような音が聞こえ、ダラララララララっと響き渡る。
ダァン!!
「まずは今選挙最下位!!第1王子マイーナ・ザ・ボラーン!!」
「よっしゃあぁぁっ!!」
「ちくしょおぉぉぉ!!」
「一番に逃げられたわね~‥‥‥」
国王の言葉に、第1王子がガッツポーズしながらそう叫ぶ。
「国民からの投票では女性票が多かったのだが、思いのほか男性たちからは選ばれなかったらしい!!」
「‥‥‥いやまぁ、そりゃそうか」
考えてみれば、ストーカーとかいるとはいえ、結構なモテ男みたいなものだからね。そりゃ持てない人とかに恨みは買うだろうなぁ。
「なお、続けて第2王子ゼルドラ・ザ・ボラーンも挙げられておる。コチラは男性票も入ってはいるが‥‥うん、まぁ、人それぞれだから気にしないでおこう!!」
‥‥‥何だろう、その妙な言い方は?
「男性票も入っているなら、そんな言い方もしなくてもいいような‥‥‥」
「ああ、どうやら男性は男性でも、そっちの道の方のようデス」
ワゼの言葉で何となく察した。うん、そりゃ人気あるならその手の人とかに人気も出るか‥‥‥
「続けては、第5王子ザリック・ザ・ボラーン!!歌唱力が向上し、100人中13人程度ぐらいまで気絶させる状態になったことが評価された!!」
「あぶねぇぇぇぇ!!」
「ちっ」
…‥‥13人ぐらいの気絶でも、それはそれで酷いような気がする。
だがしかし、本人は喜んでいるし、周囲の他の人達も何やらほっとした顔をしているところを見ると、以前はもっとひどかったのだろうか?
「そしてついでに第1王女アルティア・ザ・ボラーンがなった!!出来上がったものについての審議が物凄くなされていたが、辛うじて課題達成しかけているという事で判断された!!」
謎の物体Xから続く、Y、Z、SSS、DX、EX、H、GOD‥‥‥‥その他諸々多数の何かしらが産まれたが、なんとか上達してはいるという評価になったらしい。
「けっこう材料としては良い物ばかりデス。下手に扱うと容器が溶けますので、扱いは慎重にしないといけませんがネ」
「溶けるって、何で?」
それってもはや殺人兵器になるような気がするのだが。いや、そもそも料理で何で溶けるの?
考えたら負けなような気がするので、気を取り直して続けての発表に耳を傾ける。
ここまで来ると、残っているのは第3王子イスカンダル・ザ・ボラーンと第4王子ニーズ・ザ・ボラーン‥‥‥間者と仲良くなる王子たちだ。
このどちらかが王になるのだろう。まぁ、仲良くなりすぎて国を樹立しようとする働きが出て、どちらがなっても王になるのは避けられなさそうだが。
「それでは、最終的に王になるものを発表しよう‥‥‥‥」
ダラララララララっとドラムロールのような音が再び鳴り、場を盛り上げていく。
人々はごくりと唾を飲み込み、その発表の時を待つ。
「ん?あれ、待てよ?」
っと、そこでふと僕はある事に気が付いた。
今回のこの発表、国民の投票によるもので、課題達成を確認しつつ、王を決めるのだが…‥‥ここまで聞くと、誰も何かしらのやらかしはあるとは言え‥‥‥選ばれていないわけではない。
ある意味課題達成を認められつつ、進んでいる状態なのだが…‥‥
―――――――――――――――
‥‥‥なお、第2王女ミスティア・ザ・ボラーンは魔王の元へ嫁ぎ、王位継承権は消滅状態である。ゆえに、今選挙において彼女が王位を戴けるわけではない。…‥‥が、今回に限り、これらの課題を各自が完璧にこなしたと評価された場合、彼女の王位継承権も復活させ、第2回選挙をすぐに開催し、その結果によって王を決める。
――――――――――――――
「‥‥‥いや、『完璧』でもないか」
選挙前の発表の中にあった、この文章。
思い出してみたが、この様子だと誰もが一応課題達成しているとはいえ、「完璧」の部分が抜け落ちているので、その心配はないはずだ。
そう考えていると、ドラムが鳴りやみ、国王の口が開く。
「さぁ、一気に言うのであれば…‥‥第3王子イスカンダル・ザ・ボラーンと第4王子ニーズ・ザ・ボラーン!!両者とも同票!!」
まさかの残り二人の王子が同票となっていた。
ならば、後はこの二人で押し付け合い、決め合うのか?
そう会場中の全員が考えていたが…‥‥続けての国王は言った。
「だがしかし、両者ともとある国を興すことが決定し、その国の王座に両者とも就くことになってしまった!!ゆえに、この二人はこの国の王にはなれない!!」
「あ、そっちが先に出来ちゃったのか」
「一応、国家としては認められるようデス」
どうも先にその新国家が樹立されてしまったらしく、第3,4王子たちはその国の王にされてしまったらしい。
というか、共同経営的なもので、王と名がつけどもさほど変わりはないのだとか。
まぁ、そうなるとこの王子たちの次‥‥‥第1王女辺りが即位するのかな?
「そのうえ、ここで重大発表がある!!」
「ん?」
「繰り上がっての王位継承となれば、この選挙結果では第1王女がなるはずであったが……王配となるべき婚約者が、実は他国の王太子に繰り上がってしまったという情報が入った!!ゆえに、そちらに嫁ぐことになり、この国を治められない!!」
「なんですと!?」
「じゃあどうなるんだ!?」
「そして第5王子!!こうなればこちらが王になるはずであったが…‥‥歌唱力に関して音楽家たちがやる気を出してしまい、ここに10年以上の音楽への道の旅路に出る事が決定した!!」
「うわ、マジか」
「10年以上‥‥‥帰ってきて王位に就こうにも、時間かかり過ぎますわね」
まさかの王になれない事態が続出し、残るのは第1,2王子となった。
となれば、この二人にしかなれないであろうと思われていたが‥‥‥‥ここで、さらなる事態が起きてしまった。
「そうなれば、次期王は第1,2王子のどちらかである!!ならばこそ、選‥‥‥‥」
次期王になるのは、どちらなのか。決定したことを国王は叫ぼうとして、言葉を途切れさせた。
何事かと思ってみれば、その目は王子たちの方へ向けられており、別の事を叫ぼうと口が動いていた。
そして、その方向へ会場中の全員が目を向けて見れば‥‥‥その王子たちの後方に土煙が上がっていた。
心なしか地面が振動しているようであり、だんだんその煙と共に近づいてくる。
なにやら騒がしい声も多く聞こえ、近づいてきたものの正体を見れば…‥‥‥
「ふぉぉぉぉぉ!!どちらが王に就いても良いですわぁぁぁ!!」
「むしろ、両方とも潔くなればいいですわぁぁぁぁ!!」
「いえ、あの人は私だけのもの!!ここでなくなってともに逝きましょう!!」
「王になりたくなければ、一緒にあの世へ向かいましょぉぉぉおぅ!!」
怒涛の貴婦人たちというべきか、女性たちというべきか、何と言うか‥‥‥
どうやら王子たちが課題で何とか口説いたストーカー&ヤンデレ軍団(多少男性確認)。
彼女達は発表を聞いているうちに居ても経ってもいられなくなり、この瞬間に動き出したようである。
‥‥‥よく、ゲームとか漫画などでハーレムものを考える人はいるだろうが、この大ハーレムのような状態を喜べる人はいるだろうか?いや、あの殺伐しまくりの軍団に喜べるような人はないだろう。
「に、逃げろぉぉぉぉぉ!!」
誰が叫んだのかは知らないが、会場で叫ばれると同時に、阿鼻叫喚の逃走劇が始まった。
「とんだとばっちりというか、まだ決まり切ってないのになんでこうなるの!?」
【ひぇぇぇぇぇぇ!!なんか怖いですよ!!】
「兄様方、本気で何をやらかしたのですかぁぁ!!」
僕らも巻き込まれないように、全速力でその場を逃げ出す。
「うーむ、シスターズで警備をしてましたが、突破されたようデス。怒涛の乙女心は止めようがなかったのでしょうカ…‥‥」
【ふみゅ~♪】
「みー♪」
ワゼがそうつぶやきつつ、この闘争が何となく刺激になって楽しいのか、ヒルドとオルトリンデは嬉しそうな声を上げる。
大物になるというべきか、図太いというべきか…‥‥ううむ、我が娘ながらちょっと複雑。
何にしてもこの日、王が決まる事は無かった。
第1,2王子たちはその波にのまれてしまい、そのまま会場から攫われてしまう。
そして、後日、正式に改めての決定が行われたのだが‥‥‥‥当然というか、わかってしまう事というか‥‥
「‥‥‥各王子・王女たち、いづれも王位継承不可能。よって、残された第2王女ミスティア・ザ・ボラーンに継承権発生‥‥‥か」
「ひどい結末ですわよ!?」
まさかの彼女に王位継承権が復活するという、不測の事態が生じてしまうのであった‥‥‥ああ、何も起こらなければ、あの王子たちが王になっていたのかもしれないのにな。
【というか、第1,2王子たち行方不明扱いになりましたわね】
「流石に私たちでも、探れないようデス」
―――――――――――――――――――――
SIDEカルパッチョ商国の第1,2王子
…‥‥パーティで起きた、珍事件。
結果として、どうやら第2王女の王位継承権が復活したらしいという情報を、カルパッチョ商国の王子たちは手に入れていた。
「‥‥‥となると、次期王、いや、この場合は女王はその王女で決定という事か」
「そういう事になるな‥‥‥人気もあるようだし、問題はないという判断らしい」
普段は仲たがいをしつつも、今だけは父の死の隠蔽工作を行っている王子たち。
手に入れた情報を共有し、話し合っていた。
「で、即位式は改めて2日後になるようだ。各国の王たちも参加するようで、元から選挙前に来ていたからこそ、問題はないようだ」
「まぁ、当然出るのだが…‥‥王女か‥」
「‥‥何をやろうとしているのか、なんかわかるぞ」
「くくく‥‥‥お前も、同じことを考えているのだろう?」
互いに不気味な笑みを浮かべ、王子たちは企み始める。
元々、王位継承権争いをしている彼らは、目の前の相手を確実に蹴落としたかった。
だが、今回のボラーン王国でのこの騒動は都合がいい事に気が付いた。
仮に、自分が王になれなかったとしても‥‥‥保険をかけられるかもしれないという事に。
そう、この新しく即位する王女‥‥‥いや、女王というべきものに取り入れば、もしかすると婚姻できるかもしれないのだ。
「だが、この王女は既に誰かに嫁いでいるらしいからな‥まぁ、出ていなかったという事は、その相手もたいしたことあるまい」
「こちらが申し込んでも、文句はないだろうなぁ…‥‥」
いやらしい笑みを浮かべつつ、語り合う王子たち。
第3王子の存在は抜け落ちているようなのだが、そんなことはどうでもいい。
今はただ、自分たちの企みが成功するだろうと思うだけなのであった‥‥‥‥‥
‥‥‥日も暮れ、王城前では人々が集まっていた。
その手に握りしめているのは賭け事などに関する紙であり、今か今かと結果を待ちわびている。
そう、ついに選挙が行われ、各王子・王女たちに投票がなされたのだ。
今の国王が退位し、その空いた王座に座るのは誰か。
新たな王を皆は我慢して待ち、その結果を楽しみにする。
「‥‥‥なお、正確な統計なども兼ねるために、シスターズが裏で手伝っていマス」
「まぁ、普通の人間がやるよりも正確に数えられそうだからなぁ…‥ああ、でも発表されるまでは出さなくていいよ。待つこともある意味こういう行事での楽しみだしね」
集計作業が行われている中、僕らは王城内のパーティ会場内にいた。
正装としてワゼが用意した衣服に着替えつつ、ヒルドたちはまだ赤子でもあるがそれでも一緒に来たので子供用の衣服に着替えさせる。
ふわぁっと退屈そうに欠伸をしたが、結果がでたらさっさと帰ったほうがいいかもなぁ。
まだ正式には始まっておらず、結果が出次第きちんと行われ、新たな王へ向けての拍手喝采などの用意がされているようだが…‥‥
「それにしても、あそこの方にいる王子・王女たちから漂う雰囲気が凄まじいな…‥‥切羽詰まっているというか、鬼気迫るというか…‥‥」
ちらりと目をやって見るのは、今回のパーティの主役になりうる王子・王女たち。
この国の第1王子マイーナ・ザ・ボラーン、第2王子ゼルドラ・ザ・ボラーン、第3王子イスカンダル・ザ・ボラーン、第4王子ニーズ・ザ・ボラーン、第5王子ザリック・ザ・ボラーン、第1王女アルティア・ザ・ボラーン…‥‥必死な顔で、投票結果を今か今かと待ちわびているようだ。
無理もない。全員の課題が達成できたと判断されれば、ミスティアの継承権が復活し、彼女が選ばれる可能性があったのに、今回出された課題の状態は思わしくもなく、この様子だと確実にそれはなく、今の彼らしか王位継承権は無いのだから。
「結果は出るから良いとして、被害の方はどうなったのかな?」
「ストーカー・ヤンデレ激争があり、他国の情報が漏れまくり、楽器が砕け、未知のスライムの大量発生など…‥‥ちょっと計算したくないレベルデス」
ワゼにそう言わせるほどって、本当に何をしたんだろうか‥‥やっぱ詳細を聞くのはやめよう。なんか怖い。
何にしても待っていると、ようやく集計が終わったらしい。
「‥‥‥では、結果が出たので、これより発表を行う!!」
隠居を決め、この後に退位を行う予定の現国王がそう宣言し、結果が書かれた紙を手に持った。
周囲からはドラムロールのような音が聞こえ、ダラララララララっと響き渡る。
ダァン!!
「まずは今選挙最下位!!第1王子マイーナ・ザ・ボラーン!!」
「よっしゃあぁぁっ!!」
「ちくしょおぉぉぉ!!」
「一番に逃げられたわね~‥‥‥」
国王の言葉に、第1王子がガッツポーズしながらそう叫ぶ。
「国民からの投票では女性票が多かったのだが、思いのほか男性たちからは選ばれなかったらしい!!」
「‥‥‥いやまぁ、そりゃそうか」
考えてみれば、ストーカーとかいるとはいえ、結構なモテ男みたいなものだからね。そりゃ持てない人とかに恨みは買うだろうなぁ。
「なお、続けて第2王子ゼルドラ・ザ・ボラーンも挙げられておる。コチラは男性票も入ってはいるが‥‥うん、まぁ、人それぞれだから気にしないでおこう!!」
‥‥‥何だろう、その妙な言い方は?
「男性票も入っているなら、そんな言い方もしなくてもいいような‥‥‥」
「ああ、どうやら男性は男性でも、そっちの道の方のようデス」
ワゼの言葉で何となく察した。うん、そりゃ人気あるならその手の人とかに人気も出るか‥‥‥
「続けては、第5王子ザリック・ザ・ボラーン!!歌唱力が向上し、100人中13人程度ぐらいまで気絶させる状態になったことが評価された!!」
「あぶねぇぇぇぇ!!」
「ちっ」
…‥‥13人ぐらいの気絶でも、それはそれで酷いような気がする。
だがしかし、本人は喜んでいるし、周囲の他の人達も何やらほっとした顔をしているところを見ると、以前はもっとひどかったのだろうか?
「そしてついでに第1王女アルティア・ザ・ボラーンがなった!!出来上がったものについての審議が物凄くなされていたが、辛うじて課題達成しかけているという事で判断された!!」
謎の物体Xから続く、Y、Z、SSS、DX、EX、H、GOD‥‥‥‥その他諸々多数の何かしらが産まれたが、なんとか上達してはいるという評価になったらしい。
「けっこう材料としては良い物ばかりデス。下手に扱うと容器が溶けますので、扱いは慎重にしないといけませんがネ」
「溶けるって、何で?」
それってもはや殺人兵器になるような気がするのだが。いや、そもそも料理で何で溶けるの?
考えたら負けなような気がするので、気を取り直して続けての発表に耳を傾ける。
ここまで来ると、残っているのは第3王子イスカンダル・ザ・ボラーンと第4王子ニーズ・ザ・ボラーン‥‥‥間者と仲良くなる王子たちだ。
このどちらかが王になるのだろう。まぁ、仲良くなりすぎて国を樹立しようとする働きが出て、どちらがなっても王になるのは避けられなさそうだが。
「それでは、最終的に王になるものを発表しよう‥‥‥‥」
ダラララララララっとドラムロールのような音が再び鳴り、場を盛り上げていく。
人々はごくりと唾を飲み込み、その発表の時を待つ。
「ん?あれ、待てよ?」
っと、そこでふと僕はある事に気が付いた。
今回のこの発表、国民の投票によるもので、課題達成を確認しつつ、王を決めるのだが…‥‥ここまで聞くと、誰も何かしらのやらかしはあるとは言え‥‥‥選ばれていないわけではない。
ある意味課題達成を認められつつ、進んでいる状態なのだが…‥‥
―――――――――――――――
‥‥‥なお、第2王女ミスティア・ザ・ボラーンは魔王の元へ嫁ぎ、王位継承権は消滅状態である。ゆえに、今選挙において彼女が王位を戴けるわけではない。…‥‥が、今回に限り、これらの課題を各自が完璧にこなしたと評価された場合、彼女の王位継承権も復活させ、第2回選挙をすぐに開催し、その結果によって王を決める。
――――――――――――――
「‥‥‥いや、『完璧』でもないか」
選挙前の発表の中にあった、この文章。
思い出してみたが、この様子だと誰もが一応課題達成しているとはいえ、「完璧」の部分が抜け落ちているので、その心配はないはずだ。
そう考えていると、ドラムが鳴りやみ、国王の口が開く。
「さぁ、一気に言うのであれば…‥‥第3王子イスカンダル・ザ・ボラーンと第4王子ニーズ・ザ・ボラーン!!両者とも同票!!」
まさかの残り二人の王子が同票となっていた。
ならば、後はこの二人で押し付け合い、決め合うのか?
そう会場中の全員が考えていたが…‥‥続けての国王は言った。
「だがしかし、両者ともとある国を興すことが決定し、その国の王座に両者とも就くことになってしまった!!ゆえに、この二人はこの国の王にはなれない!!」
「あ、そっちが先に出来ちゃったのか」
「一応、国家としては認められるようデス」
どうも先にその新国家が樹立されてしまったらしく、第3,4王子たちはその国の王にされてしまったらしい。
というか、共同経営的なもので、王と名がつけどもさほど変わりはないのだとか。
まぁ、そうなるとこの王子たちの次‥‥‥第1王女辺りが即位するのかな?
「そのうえ、ここで重大発表がある!!」
「ん?」
「繰り上がっての王位継承となれば、この選挙結果では第1王女がなるはずであったが……王配となるべき婚約者が、実は他国の王太子に繰り上がってしまったという情報が入った!!ゆえに、そちらに嫁ぐことになり、この国を治められない!!」
「なんですと!?」
「じゃあどうなるんだ!?」
「そして第5王子!!こうなればこちらが王になるはずであったが…‥‥歌唱力に関して音楽家たちがやる気を出してしまい、ここに10年以上の音楽への道の旅路に出る事が決定した!!」
「うわ、マジか」
「10年以上‥‥‥帰ってきて王位に就こうにも、時間かかり過ぎますわね」
まさかの王になれない事態が続出し、残るのは第1,2王子となった。
となれば、この二人にしかなれないであろうと思われていたが‥‥‥‥ここで、さらなる事態が起きてしまった。
「そうなれば、次期王は第1,2王子のどちらかである!!ならばこそ、選‥‥‥‥」
次期王になるのは、どちらなのか。決定したことを国王は叫ぼうとして、言葉を途切れさせた。
何事かと思ってみれば、その目は王子たちの方へ向けられており、別の事を叫ぼうと口が動いていた。
そして、その方向へ会場中の全員が目を向けて見れば‥‥‥その王子たちの後方に土煙が上がっていた。
心なしか地面が振動しているようであり、だんだんその煙と共に近づいてくる。
なにやら騒がしい声も多く聞こえ、近づいてきたものの正体を見れば…‥‥‥
「ふぉぉぉぉぉ!!どちらが王に就いても良いですわぁぁぁ!!」
「むしろ、両方とも潔くなればいいですわぁぁぁぁ!!」
「いえ、あの人は私だけのもの!!ここでなくなってともに逝きましょう!!」
「王になりたくなければ、一緒にあの世へ向かいましょぉぉぉおぅ!!」
怒涛の貴婦人たちというべきか、女性たちというべきか、何と言うか‥‥‥
どうやら王子たちが課題で何とか口説いたストーカー&ヤンデレ軍団(多少男性確認)。
彼女達は発表を聞いているうちに居ても経ってもいられなくなり、この瞬間に動き出したようである。
‥‥‥よく、ゲームとか漫画などでハーレムものを考える人はいるだろうが、この大ハーレムのような状態を喜べる人はいるだろうか?いや、あの殺伐しまくりの軍団に喜べるような人はないだろう。
「に、逃げろぉぉぉぉぉ!!」
誰が叫んだのかは知らないが、会場で叫ばれると同時に、阿鼻叫喚の逃走劇が始まった。
「とんだとばっちりというか、まだ決まり切ってないのになんでこうなるの!?」
【ひぇぇぇぇぇぇ!!なんか怖いですよ!!】
「兄様方、本気で何をやらかしたのですかぁぁ!!」
僕らも巻き込まれないように、全速力でその場を逃げ出す。
「うーむ、シスターズで警備をしてましたが、突破されたようデス。怒涛の乙女心は止めようがなかったのでしょうカ…‥‥」
【ふみゅ~♪】
「みー♪」
ワゼがそうつぶやきつつ、この闘争が何となく刺激になって楽しいのか、ヒルドとオルトリンデは嬉しそうな声を上げる。
大物になるというべきか、図太いというべきか…‥‥ううむ、我が娘ながらちょっと複雑。
何にしてもこの日、王が決まる事は無かった。
第1,2王子たちはその波にのまれてしまい、そのまま会場から攫われてしまう。
そして、後日、正式に改めての決定が行われたのだが‥‥‥‥当然というか、わかってしまう事というか‥‥
「‥‥‥各王子・王女たち、いづれも王位継承不可能。よって、残された第2王女ミスティア・ザ・ボラーンに継承権発生‥‥‥か」
「ひどい結末ですわよ!?」
まさかの彼女に王位継承権が復活するという、不測の事態が生じてしまうのであった‥‥‥ああ、何も起こらなければ、あの王子たちが王になっていたのかもしれないのにな。
【というか、第1,2王子たち行方不明扱いになりましたわね】
「流石に私たちでも、探れないようデス」
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SIDEカルパッチョ商国の第1,2王子
…‥‥パーティで起きた、珍事件。
結果として、どうやら第2王女の王位継承権が復活したらしいという情報を、カルパッチョ商国の王子たちは手に入れていた。
「‥‥‥となると、次期王、いや、この場合は女王はその王女で決定という事か」
「そういう事になるな‥‥‥人気もあるようだし、問題はないという判断らしい」
普段は仲たがいをしつつも、今だけは父の死の隠蔽工作を行っている王子たち。
手に入れた情報を共有し、話し合っていた。
「で、即位式は改めて2日後になるようだ。各国の王たちも参加するようで、元から選挙前に来ていたからこそ、問題はないようだ」
「まぁ、当然出るのだが…‥‥王女か‥」
「‥‥何をやろうとしているのか、なんかわかるぞ」
「くくく‥‥‥お前も、同じことを考えているのだろう?」
互いに不気味な笑みを浮かべ、王子たちは企み始める。
元々、王位継承権争いをしている彼らは、目の前の相手を確実に蹴落としたかった。
だが、今回のボラーン王国でのこの騒動は都合がいい事に気が付いた。
仮に、自分が王になれなかったとしても‥‥‥保険をかけられるかもしれないという事に。
そう、この新しく即位する王女‥‥‥いや、女王というべきものに取り入れば、もしかすると婚姻できるかもしれないのだ。
「だが、この王女は既に誰かに嫁いでいるらしいからな‥まぁ、出ていなかったという事は、その相手もたいしたことあるまい」
「こちらが申し込んでも、文句はないだろうなぁ…‥‥」
いやらしい笑みを浮かべつつ、語り合う王子たち。
第3王子の存在は抜け落ちているようなのだが、そんなことはどうでもいい。
今はただ、自分たちの企みが成功するだろうと思うだけなのであった‥‥‥‥‥
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