追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波

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前編 追放ですか、そうですか

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「メディ、君には悪いが、どうかこのパーティを出て行ってくれないか?」
「え?」

 冒険者ギルド内にて、今日の依頼の達成報告を終え、これから宿屋へ向かおうとしたところで……私が所属していた冒険者パーティ『リールコン』のリーダであるマルスに、そう告げられた。

「えっと‥‥‥それはどうしてですか?」

 私は薬師としてこのパーティ内の補助として、回復ポーションや魔力回復ポーションなどの薬品や、パワーアップさせるポーションなどを作製して貢献していたつもりなのだが・・・・・



「それはだな、君に頼らなくてもポーションは他の薬屋でも買えるし、そもそもこのパーティは戦闘面で速攻で動くようにしているからこそ、君が足手まといになるのだよ」
「そうよそうよ、貴女のような薬だけの薬師がいると大変なのよ!」
「足も遅いし、本当にイライラさせらるのよね!」
「そういうわけで、皆意見が一致しているの!」

……マルスの言葉を補足するように、パーティメンバーであった者たちが次々と言ってくる。

 今日まで仲良く出来ていたと思っていたのに……私は役立たずだったのでしょうか。

「そしてもう一つ言うのであれば……お前の容姿もある」
「え?」
「‥‥‥‥お前のような見た目だけが幼女の奴だと、歩くロリコンとか、幼女誘拐班とか、ロリニストなどと言われるんだよこの俺様がぁぁぁ!!」
 
 それはどうにもならない問題なのだが‥‥‥‥一応、理論上ではモデル体型になれる薬を作る事が出来たりするのだが、このパーティではどうあがこうが手に入らないような材料があるので、作成できていないのだ。

 フェンリルの爪、アラクネの糸とか……絶対無理だよね。









 何にせよ、そういう訳で私は今のパーティから追放されてしまった。

 と言うか、考えてみれば他の仲間たちも女の子でハーレムパーティだったような・・・・・ああ、私がマルスを狙っていると、他の仲間たちに思われていたのだろうか?

 残念ながら、彼は私の好みではない。

 好みだとすれば‥‥‥いや、まだ分からない。私は薬師道一つだもの。

 とはいえ、パーティを追放されてしまったものは仕方がない。





 ついでに、このまま冒険者として活動していたら、またあのパーティに出くわす可能性が無いとは言い切れないので、この機会に私の冒険者としての登録も消す手続きも行った。

 ギルドからはできればやめてほしくないというような内容の手紙も来たが、私はその意思を貫き通す。

 何にせよ、無事に冒険者登録も消去して、二度とあのパーティに遭わないように私は船に乗って別の国へ向かうのであった…‥‥




―――――――――――――――――――

……一方、メディが無事に他国へ向かっていたころ、彼女が所属していたパーティがいたギルドでは、あちこちで溜息が吐かれていた。


「ああ、メディちゃんがいなくなったのか……できれば冒険者の登録を続けてほしかったんだけどなぁ」
「仕方がないわよ、あのパーティ全員一致で彼女の追いだすことを決定したという事情があるのならば、もう二度と会いたくもなくなるでしょうし、どこか別の地へ旅立つのも無理はないわ」

 はぁっと溜息を吐く冒険者に対して、受付嬢たちも同意するようにうんうんと頷く。


「それにね、実は彼女ってただの薬師じゃないのよねぇ・・・・・」
「ああ、美容液だったかしら?疲れている私たちにと言って、ただでくれたのよね」
「お肌がすべすべになったし、できればまだ欲しかったのだけれども、ギルドに縛りつけられないからねぇ……」

 実はメディはギルドの女性たちに人気があった。

 見た目が幼そうな少女という事で、愛でたくなったり、妹のように感じる人がいたり、彼女の優しい心で癒されたり、何か問題があれば薬を手持ちの材料で調合して、渡してくれたりしたのだ。

 そのため、できるだけこのギルドに居た全員は彼女が冒険者をやめて、何処かへ行ってしまうのはやめてほしかったのだが…‥‥残念ながら、彼女の意志を変えることはできなかった。


「それにしても、彼女を追いだすなんて何を考えているのかしら」
「そうよね、彼女の作った補助薬で今の強さになっているとは知らないのかしらね?」
「え?どういうことだい?」

 受付嬢たちの会話を聞き、まだこのギルドに登録して間もない新人冒険者が尋ねてきた。

「ああ、彼女って実は強化できるポーションを作る事が出来てね、彼女が戦闘時に皆に渡してくれるのよ」
「スッキリ、のど越しさわやかで甘いくておいしいのよねぇ」
「それだと依存しやすくなって、成長できないんじゃ?」

 その話しを聞き、別の冒険者が問いかける。

 そんな強化するポーションに頼ってしまう状態では、色々と不味いのではないかと思えたのだ。

「それなんだけど、彼女はきちんと考えて、飲ませないようにして鍛錬させている時があったのよ」
「薬の力には頼らず…‥‥と、考えていたようだけどね。残念ながらあの馬鹿たちは分かっていなくて、彼女が造った分をちょろまかしていたのは既に周知の事実なんだよ」
「まぁ、それもギルドの暗部、ごほん、今の機密事項だったけれども、そういう類の者たちが調べる事があってね、彼女がギルドへ卸そうとしていた時に、数本ほどこっそりあの馬鹿共は抜き取っていたのさ」
「はぁ!?それは犯罪行為ですよね!」
「ええ、でもその時はまだ咎めなかったのよ。一応、パーティの仲間たちでもあったし、ここで迂闊に動けば彼女に身に何かあってもおかしくてね‥‥‥」

 ふぅっと疲れたような溜息を吐きながら、ギルド職員たちは手を動かし始める。

 そしていつの間にか、メディが所属していたパーティの者たちを完全に馬鹿呼ばわりしていた。

「…‥‥けれどね、今はもう考えなくても良いわね。彼女は追いだされ、あのパーティは事実上見放されたも同然」
「当り前のように使っていた薬も、彼女から抜き取っていたという犯罪行為だという事を忘れているし、ストックもすぐに切れるはずね」
「それに、回復ポーションなども買えばいいと思っているのでしょうけれども、皆の妹のように想えていたあの子のために、この辺り一帯の薬屋は売らないか、もしくは法外な料金を取るでしょうね」
「ふふふふふ…‥‥メディがいたからこそ、あのパーティは今までやれていたでしょうし、負傷しても彼女が造ったポーションがあった。そもそも、彼女自身自覚していないようだけれども、かなり質のいいものを作っていたから、あの回復量のものを入手することは非常に大変なはずよねぇ……」


 ギルド内での不気味な笑みに、新人冒険者たちなどは顔を引きつらせ、ベテランは結末が見えてしまう。

 ああ、あのパーティ終わったなと‥‥‥‥‥

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