ダンジョン配信ですよ、我が主 ~いや、貴女が配信したほうが良いような~

志位斗 茂家波

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チャンネル2 地道に広がる他者との交流

第三十九話 汚物は消滅

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―――『直撃灼熱砲』。

 それは量産型メイドゆえに威力自体はオリジナルに比べてはるかに下がっているものの、対象のみを確実に蒸発させる凶悪な熱線兵器の一種。

 ぶっちゃけ、本来の使い方としてはこびりついて取りにくいカビや、奥の方でこそげ落としにくいぬめりなどに対して使われる…お風呂場などの水場専用のモノだったりはする。




 だがしかし、その熱量がいくら量産化によって下げられていたりしても、出力を変えればより大きなサイズのものにも有効になるわけで…



ピカッ、ジュワアアアアアアアアアア!!
【【【ギノグモオオオオオオオオオ‥‥!!】】】

「うわぁ…断末魔を上げながら、蒸発して逝った消し飛ばされちゃった…」
「えぐい、これはかなりえぐい」

 エリーゼが両手から光を放ち、それが直撃するたびに蒸発していくモンスターたち。

 なすすべもなく、あっという間にその身を魔石すら残さずに灰燼…いや、灰も無く消し飛ばされていく。


【ここまでの相手だと、エネルギー消費が激しいので乱用できないですが‥‥まぁ、十分な対策スペースは取れたので良しとしましょウ】
「空けるどころかドン引きして、キノコに寄生されているのに遠巻きに見られている気しかしないんだけど」
「このメイドのマジックアイテム、ほんっとうにやばいな…」
【流石に、カノン砲に比べても威力が無いので、ダンジョンをぶち抜けないものですけれどネ。少々出力を上げ過ぎたので、蒸発させる際に周辺も高熱化させて、ガラス化した部分もありますガ…】


 対象が大きすぎると効果もかなり減退するようだが、それでも相当えげつないものには間違いない。



【あと少し、これ使うと暑くて…ご主人様、帰還したら先に風呂へ走って良いでしょうカ】
「すっごい汗だくだく…別に良いよ、そのぐらい」
「マジックアイテムが、汗をかく…本当に、マジックアイテムか?」
「まず、こんなやべぇ機能を持っている時点で、ただのマジックアイテムじゃないよな」
【あ、これ普通に排熱機構の一種で、サブ炉心…ブルーコアブロックから湧き出る水を排出しているだけですので、汗とは成分が違いますヨ】

 エリーゼの話によれば、前に見せた賢者の石が入ったレッドコアブロックとは違うサブ炉心から、何かしらの液体が出ているようで、それを利用した発汗作用に似た排熱機構が搭載されているとのこと。

「何かしらの液体‥?水とかじゃなくて、何でそんな表現?」
【レッドコアブロックで変換できるので問題が無いのですが…どうも、エネルギーを産みだす副産物で大量に生み出されてしまうのですが、その成分がカオスなことになっているため、何なのか定義できないのデス】


 とにもかくにも、コレでいったんキノコに憑りつかれた蜘蛛たちの襲撃を、少しは退けることができた。

 けれども、問題が解決したわけではなく…寄生キノコことパラサイトノッコリスの危機が去ったわけではない。

「それでも、あの量が襲ってくるのが怖いな…一糸乱れぬ動きでゾワッとした」
「寄生されて意志が統一されているからな。アレがまだ蜘蛛で良いが…」

 放置しておけば、またあの大軍がぶわっと…悪夢のような光景しかない。

 全員がその光景を想像してしまい、悪寒で身震いしてしまった…その時だった。

【…ん?】
「どうした、サクラ?」
【ふむ…主殿、こっちから声がするぞ】
「え?」


 ふと、耳を動かしてサクラがそう告げてくる。

 彼女の場合、人間ではなくモンスターだからこそ、感じ取れる微妙な音があったようで…どうやら今、ここにいる異土たちとは違う声を感知したようだ。

 そのまま声に誘われるようにして、向かってみれば…そこには、糸の牢獄があった。


「うわっ、めっちゃくちゃ蜘蛛の糸で練りこまれているけど…牢屋になっているな」
「あのモンスターたちの生成物か?だが、ここまでのものとなると…ああ、寄生キノコが指示を出して、獲物の保管庫にしているのもあるのか」

 中身を見れば、ダンジョン内で仕留められたらしい獲物のドロップアイテム関係…主に肉が多い。

 ここで貯蔵して、ゆっくりと後で養分として利用する気だったのだろうか。


 だが、その他にも彼らが仕留めた獲物には…


「うぐぁっ‥ああつ…っ!!人…助け…か」
「っ!!行方不明になっていた配信者ですか!?」

 牢獄をめぐってみれば、そのうちの一室にいたのは、行方不明になっていた配信者たち。

 全員糸で身動きが取れないように縛り上げられており、なおかつキノコがはびこっていたが…まさか…

「…人に寄生できないか、実験をしていたとか」
「その可能性はあり得るな…パラサイトノッコリスがどこかで知恵を付けて、蜘蛛以外にも手を伸ばそうとしているのかもしれん」
「寄生系モンスターは成長するとよりやばいものに転じるという話も有るからなぁ」

 何はともあれ、一番の目的でもあった行方不明者の発見は非常に大きい。

 確認してみれば、行方不明になっていた各配信者…ドゲスチャンネルや、アルガドロンチャンネル、ゴブリニストアチャンネルなどの配信者たちなのも間違いないようだ。



 かくかくしかじかと、弱っていたが話をしてくれた人にも聞けば、どうやら彼らもあの寄生蜘蛛軍団の襲撃に…弱いものを殴っていたら自然と誘い込まれ、一気に強襲されて全滅したところが多いようだ。

「うぐぐっ…それでも、助けが来たのは良い…」
「奴ら、パラサイトノッコリスだが…今回のは、相当頭が切れる、やばいやつだ」
「人間への寄生も模索していたようで…ここで倒れている奴ら以外にもいたが、寄生…その強さが見込める奴らは、その元凶の元へ連れてかれちまった…」
「…流石に全員がここにはそろってなかったのか」

 あってほしくはなかったが、やはり今回のパラサイトノッコリスは普通の者とは違って、より濃厚な悪意を秘めた存在らしい。

 だからこそ、ここは配信者だけではなく、国などにも報告を上げて殲滅を願うしかないだろう。


「全員完全救助とはいかずとも、それでもいま戻せる分は戻したほうが良いな…っと、まだ檻があるけど、こっちにも人が…」
「まてっ!!そこは人じゃねぇ…奴らの仲間のようなのが…!!」
「…え?」

 配信者たちが捕まっていた牢とはまた違う別室に、人影が見えたので近づくか、静止の声をかけられた。

 異土がのぞけば…そこには確かに、人の顔があった。

 しかし、下の方を見れば…蜘蛛のようなものが。


「…『アラクネ』?」

 

…そこにいたのは、一体のアラクネと呼ばれる、モンスターの姿。

 上半身が女性の、下半身に蜘蛛がいる、異形の姿にして残虐非道な性格が多いともいわれている凶悪な種族。

 しかし、檻の中では…全身に茸を生やされつつ、糸で何重にも捕縛されたアラクネがいたのであった…
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