ダンジョン配信ですよ、我が主 ~いや、貴女が配信したほうが良いような~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
2 / 69
チャンネル1 レッツ、配信スタート!

第一話 配信開始と騒動の幕開け

しおりを挟む
―――ダンジョン…それは、夢も希望も、その他様々な可能性を含んだ場所でもあり、同時に危険もある異世界と言っても良い場所。

 しかし、それでも人々は一攫千金を狙う者や、未知を求めたり、あるいは強敵と巡り合って己を高めようとするなど入り込む者は後を絶たない。

 

 それゆえに、国々は一つの手を取った。

 その方法が…





「…配信活動による公開で、非常事態での迅速な救助や、モンスターが大量発生して湧き出てくるスタンピードの予兆確認、危険すぎるマジックアイテムの確認やその確保などの目的で、配信者と言う一つの活動形態が出来たとのことです。さて、これから始めてその配信者となって、初級ダンジョンへ挑む皆さま、ご理解を頂けましたでしょうか」
「「「はーい!」」」

 元気よく返答をするが、集っているのは年齢も性別もバラバラなものたち。


 そう、本日はとあるダンジョン…危険度の低さでランク付けされ、もっとも安全性の高い初級として位置づけられたダンジョンに彼らは訪れており…そして、俺、異土灯夜いどとうやもまた、新人の配信者として参加していた。




「さてと、それじゃ配信の準備を…このカメラで…」

 初心者用の機材を確認し、ダンジョン内でしっかりと配信ができる体制を整え、周囲を確認する。

 学生の身でありながらも、小遣いも多少は欲しくなるもので…配信者となって、手に入れる手段は良いだろう。

 まぁ、それでも欲をかきすぎずにと言うか、かくことはできないというべきか…


「はいはい、それじゃやっていきますよ、灯夜チャンネル~…って言っても、うん、まぁ、わかっていたな」

 初めての配信と言うことで無名のため、ダンジョン配信が溢れているこの世の中、視聴者が0ナノは珍しくもない。

 特にここ、初級に当てはめられたダンジョンは得られる情報量もほぼ無く、注目度は皆無に等しいだろう。



「それでも、初心者がやるには手ごろだし、配信の形式をこれから模索していけばいいから気にしなくていいか」

 情報量が無いとはいえ、配信で入ってくるお金が0かと言えば実はそうでもない。

 いや、むしろダンジョンだからこそ、わずかなものだとしても稼ぐ手段はある。



カツカツカツン!!
「地道に、つるはしで掘って…ああ、出てきた出てきた。鉱石が」


 ダンジョンの不思議な特性として、出土してくるものが確実にあるモノ。

 安い値段の金属の鉱石だろうが、資源であることには間違いはなく、ダンジョンを運営する配信者ギルドの買取へもっていけば、微々たる量だとしてもお金は得られる。

 今はまだ少なくても、塵も積もれば山となる…地道に稼げるのならば、それで良い。

 無理をし過ぎて、命を落とすような真似は…母から聞いた、のようなことだけは避ければいいのだ。







カツカツカツン!
コツコツカッツゥン!!

「…それにしても、配信が本当に見られていないのだけは、ちょっと心に来るものもあるけど…それでも一応は、監査は入っているのか」

 視聴者が0な表示のままだが、これもまた誰も見ていないというわけではない。

 きちんと犯罪を隠れて行っていないかなどの監視目的もあるため、警察…もとい、ダンジョンが誕生した時に法改正で生まれた部署が録画もしており、後でしっかりと確認されることもあるようだ。

「何にせよ、そろそろいったん終わったほうが良いか‥?バケツ一杯分になったし…」

 世の中、どんなものでも収納できるマジックバックと言うアイテムや、誰かと組んで荷物持ちのサポーターをやってもらう人などもいるようだが、初日で初心者のソロの自分では、そんなものは何もない。

 それでもあとちょっとだけ掘ってから、換金して帰ろうかと思っていた…その時だった。


カツカツカツンッ、ゴリッツ!!
「ん?」

 今何か、掘った感触がおかしかった。

 異土はそう思い、おかしな音がした場所を見れば…何か、鉱石とは別のものが埋まっていた。

「何だ、これ?…黒い、箱?」

 掘り出してみれば、ちょっとした携帯ゲーム機サイズの真っ黒な箱が出てきた。

 表面には何か幾何学模様のようなものが入っており、うっすらと線に沿って光が走っている気がする。

「まさか、マジックアイテムとかいうものでは…いや、でも何だ、これ?」

 現在の科学では再現できない、魔法のような代物…ダンジョンで生み出されているという存在、マジックアイテム。

 先ほど考えたマジックバックもそうだが、中には空を自由に飛ぶことが出来たり、あるいは酒が湧き出たり、はたまたは金銀財宝が生み出し続けられる宝箱など、一部は市場価値を大混乱させた前例もあって、取り扱いが慎重になるものだ。

 だがしかし、基本的に高性能なものはより高難易度ダンジョンでしか出土せず、こんな初級のダンジョンで出てきたとかいう話もない。


「まぁ、わからないならギルドへ提出すればいいか。未知の金属なら、それはそれでこれよりは大きく稼げるはず…」
ちくっ
「っ、痛っ!?」

 自分にとって必要のないモノであれば、そのまま提出してしまえばいい。

 そう考えていた時、異土の指先に何かが一瞬、刺さったような痛みが生じた。


「え、何?針でも生えて、」
【---血液採取完了、認証コード確定。主人登録コード発効、許可。---起動】
ガゴンッ!!
「は?」


 何か聞こえてきたかと思えば、ぽんっと黒い箱が飛び跳ね、開き始める。

 ガシャガゴンッっと音を立てて、あっという間に目の前で開封され…箱が失われ、出てきたのは何をどうしてその中に入っていたのかと言うサイズのものが…いや、人のようなものが出てきた。


【構成完了…フム…アー、アー、サンプリングデータによる、言語修正…なるほど、こうですカ】

 そっと降り立ち、異土の目の前に現れたのは…どう考えても、服装がメイドの女性。


 異土よりも身長は高く…元々小柄なのでそこは気にしないでおきたいが、美しい顔。

 漆黒を基調とした綺麗なメイド服ながらも豊満な双丘が浮き出ており、ロングスカートには何やらポケットがいくつかついており、腰には拳銃のようなものが装着されている。

 髪型は黒のポニーテールだが、耳の部分が人ではなく、ヘッドフォンのようなものになっており、アンテナらしいものが見えるだろう。

 その目は宝石のように赤く、その瞳はしっかりと異土の方を見ている。


「えっと…君は…何?」
【…音声データ認識、血液コード確認…ええ、そうですカ。疑問に思われるのであれば、お答えいたしましょう、ご主人様】
「ご主人様!?何、本当に何なの!?」
【私は、型式M-WAZE-02モデル、登録名称は…名称は…メイショ…アレ?】
「どうしたの?」

 いきなりご主人様呼びされて驚愕させられた異土だったが、何やら目の前のメイドのような彼女の様子がおかしい。

【…えっと、コード再認証、再起動…申し訳ございません、ご主人様。その、私…自分の名前データ、無くなってましタ。すみませんが、完全登録のために、名前をどうか…!!】
ギュゥッ!!
「えええっ…!!」

 説明してもらったが、どうも自分の型式番号とかそのあたりはわかるようだが、個人としての名称のデータが無いらしい。

 どこかで失われたか、はたまたは最初からなかったのか…ここで初めて稼働したのならば後者の可能性が高いが、それでも名前が無いと不都合らしい。


「それじゃ、えっと、君の名前は…そうだな…」

 いきなり名づけをしてほしいと言われても、どうしたものかと異土は悩む。

 何かいい名前を与えたほうが良いのかもしれないが、わかりやすいモノのほうが良いのかもしれない。

 聞こえた型式番号とかがM-WAZE-02ならば、エムやワゼなどがありそうだが…いや、ここは…ダンジョンから出てきたメイドならば…

「…君の名前は『エリーゼ』ってのは、どう?」
【『エリーゼ』…ですカ?】
「ああ、ここはダンジョン…迷宮ともいわれたりするし、ラビリンスと言ったりもするから、その文字と、後は型式がエムの…まぁ、色々とって、合わせて…『エリーゼ』にしたけど…」
【ふむ…ええ、それが良いでしょウ。ありがとうございます、ご主人様。改めまして、私『エリーゼ』は、貴方のメイドとして、お仕えいたしまス。これからどうぞ、よろしくお願いいたしまス】

 名前を気に入ってくれたようで、優しい笑顔になって異土にメイドは…エリーゼがそう口にする。


 






―――この不思議な出会いが、何をもたらすのか。

 まだ、彼らにはわからないのであった。


「…ところで、エリーゼ…君のこと、どう扱おう…ダンジョンから出土したマジックアイテムっぽいというか、それ以上のやばい代物な香りがするんだけど」
【エ、私、何か臭いマスか、ご主人様!?急いで、身を清めてまいりまス!!】
「違う、そういう意味じゃないって!?」

…とりあえず、そこはかとなくポンコツの気配もしなくは無いような…大丈夫なのだろうかと、異土は内心不安になるのであった。
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎町に住んでいたロボット好きの宮本荒人は、交通事故に巻き込まれたことにより異世界に転生する。 転生した先は、古代魔法文明の遺跡を探索する探索者の集団……クランに所属する夫婦の子供、アラン。 ただし、アランには武器や魔法の才能はほとんどなく、努力に努力を重ねてもどうにか平均に届くかどうかといった程度でしかなかった。 だがそんな中、古代魔法文明の遺跡に潜った時に強制的に転移させられた先にあったのは、心核。 使用者の根源とも言うべきものをその身に纏うマジックアイテム。 この世界においては稀少で、同時に極めて強力な武器の一つとして知られているそれを、アランは生き延びるために使う。……だが、何故か身に纏ったのはファンタジー世界なのにロボット!? 剣と魔法のファンタジー世界において、何故か全高十八メートルもある人型機動兵器を手に入れた主人公。 当然そのような特別な存在が放っておかれるはずもなく……? 小説家になろう、カクヨムでも公開しています。

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと
ファンタジー
脱サラしてラーメンのキッチンカーをはじめたアラフォー、平和島剛士は夜の営業先に向けて移動していると霧につつまれて気づけばダンジョンの中に辿りついていた。 最下層攻略を目指していた女性だらけのAランク冒険者パーティ『夜鴉』にラーメンを奢る。 ラーメンを食べた夜鴉のメンバー達はいつも以上の力を発揮して、ダンジョンの最下層を攻略することができた。 このことが噂になり、異世界で空前絶後のラーメンブームが巻き起こるのだった。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

処理中です...