破滅を逃れようとした、悪役令嬢のお話

志位斗 茂家波

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前編

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‥‥‥悪役令嬢。それは、乙女ゲームや恋愛ゲームなどで、ヒロインの前に立ちふさがる登場人物の役目の一つである。

 そして大概の場合は、悪役令嬢の末路は悲惨な事もが多いのだが、作品によってはヒロインと友情を結んだりして、なんとか良い結末へ導かれることもある。

 だがしかし、わたくしが前世でのその内容を思い出し…‥‥どういう訳か生まれ変わったこの作品の悪役令嬢としての末路を思い出すと、絶望しかなかった。

「全部、破滅一直線しかないですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」




 何をどう狂ってか、わたくしは転生し、その転生先がとあるゲームの悪役令嬢シア。

 ジャンルは恋愛ゲームであり、シアは悪役令嬢として過ごす役目があるのだが…‥‥そのゲームの内容には問題しかなかった。

 そう、恋愛ゲームと言っているのだが、このゲームにはファンによって付けられたもう一つの名前がある。

 それが「完全悪役令嬢破滅ゲーム」という、ひねりも何もない、絶望しか感じられないような名前であろう。

 というのも、この悪役令嬢シアは容姿とか能力とかはまぁまぁいいのだが‥‥‥その末路は必ず破滅へ突き進む。

 ある時は攻略対象の手によって殺害され、ある時は攻略中に不慮の事故に遭って死亡し、またある時は攻略をようやく終えたところまで生き残っておいて、突然切り裂きジャックのごとく関係の無い殺人事件に巻き込まれ被害者となる…‥‥数多くの分岐がありながらも、そのどれもかれもで破滅を向かえてしまうのだ。

 まぁ、そもそもわたくしがいるこの貴族家自体も今の段階でまっくろくろすけであり、ヒロインの登場前に処分されてしまい、結局最後まで出ないというものもあるのだが‥‥‥とにもかくにも、転生前のその記憶を思い出した今、私は絶望しか感じなかった。

 何をやっても、どう突き進んでも、結局破滅の道しかない悪役令嬢シア。

 ヒロインの攻略中以外にも、途中で改心したりすることもあるのだが…‥‥それでもどこかの組織に攫われて、実験台にされて怪物になったり、挙句の果てにはヒロインと間違われて殺害、いじめを受けて自殺などの悲しい末路しか待ってない。

「救いようが無さすぎますわああああああああああ!!」

 その事実を思い出し、わたくしは三日三晩思わず泣いてしまった…‥‥ああ、この話し方は、前世のものでもなく、今世で自然と身に付いたのだが、この時点ですでに悪役令嬢の素質がありそうである。











…‥‥何とか泣き止んだ後、わたくしは考えることにした。

 いかに、どの様な破滅ルートが待ち受けているとはいえ、必ずしも逃れられないという訳ではない。

 そう、今の自分は紛れもなく悪役令嬢シアではあるが、生きた人間。

 ゲームとは違い、他の人達も生きており、感情が存在しており、何もかもがゲーム通りに動くということはないはずだ。

 でも、そんなことに気が付いても結局破滅する転生悪役令嬢破滅ルートというのもあったような気がするので‥‥‥どっちにしろ、わたくし一人では人生詰んだのも同然だろう。

 であれば、どうしたらいいのかと考え…‥‥とある一つの方法を思いついた。

「そうですわ…‥‥魔女になればいいのかも知れませんわね」

 悪役令嬢の悲しき末路の一つだが、恋愛ゲームにはあり勝ちの一つの道がある。

 それが、最終的に婚約者をヒロインにとられるうえに、断罪されるルートではあるのだが‥‥‥そのルートの中に、魔女になるルートが存在しているのだ。

 幸いなことに、この世界には魔法があるそうで、ちょっと使われていたりする。

 なので普通の女性も魔法が使えるので全部が魔女と言いそうだが…‥‥色々と細かい部分を無視して設定を見ると、どうやら悪魔と呼ばれるものと契約を結んだ女性が、魔女と呼ばれるらしい。

 なお、男の場合魔男とか言うなんか今一つな呼び方になるそうだが‥‥‥‥その魔女のルートは、まだ生き延びることができるかもしれない可能性にあるのだ。

 まぁ、悪魔を呼んで魔女になる理由はヒロインを害するためらしく、最終的には悪魔が祓われてしまい、魔女の力を失い処刑されるのだが…‥‥ここで、この悪魔が重要になる。

 祓われる可能性があると言えども、悪魔に何とか事情を話し、生き延びる道があるはずだ。

 本来はもっと年を取ってからだが‥‥‥‥思い立ったが吉日、早く行動に移した方が良いかもしれないと、わたくしは考えた。








 幸いなことに、我が家はまっくろくろすけな不正などもあるようで、その手の類の品々もそれなりにあったりする。

 というか無ければそもそも悪魔を呼びだす発想にもならなかったのだが…‥文句をいう意味はないだろう。




「さてと、これで確実に呼び出せるはずだけれども…‥‥どうなるのかしら?」

 使用人たちには入らせないようにした、屋敷の地下室。

 そこで悪魔を召喚するために、召喚陣やら生贄やらを用意したが…‥‥これで本当に来るのだろうか?

 この悪魔を呼びだすと、設定だとロリコエールという悪魔で、生贄は幼女だが…‥‥うん、他の少女を巻き込むわけにはいかないし、わたくし自身、今はまだ幼女の類に入るはずなので問題はない。ちょっとズレて少女になるけど、なんとかなってほしい。

「さぁ、来てくださいませ…‥‥!!」

 ぐっと両手で拳を握って祈り、悪魔の召喚を心から成功するように願う。

 悪魔との契約には代償が発生するそうだが、生き延びられるのであればなんだっていい。

 破滅の道へわたくしはいきたくもなく、なんとか希望を‥‥‥‥っと願っていると、床に書いた魔法陣が輝き…‥‥煙が噴き上げる。

 そして、その煙が晴れると…‥‥そこには、見たことが無い悪魔が立っていた。


 いや、悪魔だというのだろうか?見た目的には青年にしか見えないだろう。

 銀髪であり、赤目を光らせて、どことなく整った容姿でイケメンの類なのだろうが…‥‥ああ、でもよく見れば角がある。


「‥‥‥呼び出したのは、お前か?」

 周囲を軽く見渡し、冷徹そうな目でこちらを見ながら彼はそう問いかけてきた。

 悪魔ロリコエールの容姿とは違っているようで、何か別の悪魔を呼んでしまった可能性があるが…‥‥今さら後戻りはできない。

「ええ、そうよ」

 ごくりと緊張のあまりつばを飲み込みつつ、わたくしはそう彼に告げた。


 興味を持ったように見つつ、彼は口を開く。

「我が名はゼリアスだが…‥‥分かっているのか?お前が呼びだしたのは、悪魔だ。代償が無ければ願いを叶えないが、その代償を差し出すだけの、望みでもあるのか?」

 悪魔‥‥‥ゼリアスはそう問いかけてきた。

 名前の時点で呼ぼうとしていた悪魔とは違うが、それはそれで好都合。

 ゲームとは違うのであれば、まだ破滅から逃れる手段が残されているのだと実感させてくれるのだから。

「ええ、あるのよ…‥‥お願い!!私を魔女にしてちょうだい!!」
「‥‥‥魔女、か」

 わたくしの返答に対して、ふむと考えこむように顎に手を当てる。

「魔女になって、お前は何がしたいんだ?」
「決まっているわよ!!…‥‥将来の婚約破棄に備えて、ざまぁ見ろと叫ぶためによ!!」
「なんだそりゃ?」

 っと、ここでわたくしの叫んだ言葉に予想外だったのか、彼は目をぱちくりとさせて、驚くようなそぶりを見せるのであった。








‥‥‥カクカクシカジカと、そうなるまでに至った思考や道のりをわたくしは彼に熱弁を振るった。

 こうでもしなければどうしようもなかったとか、本当にこの道しかかなかったとか、悪魔に対してできるだけ気持ちが分かってもらえるように話したところ…‥‥どうやら伝わったらしい。

 そのついでに、本来ゲームで呼び出すはずだった悪魔についての知識も彼は教えてくれたが、どうやら呼び出さないほうが良かった類だったようだ。

 うん、ロなんとかはもう長いしいらない悪魔だったようだが、彼の方がはるかに強大な悪魔のようで‥‥‥あれ?なんか余計にやばい者を呼んでしまったんじゃないかしらと思ってしまったが、それは口に出さないでおきましょう。

「そうか…‥‥まぁ、事情は分かった。とりあえずまとめると、破滅があるし、どうせなら一思いに魔女になってしまって、破滅しかける際に全部を道連れにして終わらせる気なのか」
「そういうわけよ」

 全部を道連れにというか、わたくしだけなんとか助かりたい思いがあるが、それでもどうにもならない可能性もある。

 なので、まずはその道連れの方を最優先に考えておけばいいかもと思い、そう説明した。

 何とか生き延びるためにうごいても、強制力でどうにもならない可能性があるし…‥‥その時のための手段もやっておかなければいけないですものね。

 しばし考えこんだ後、悪魔ゼリアスが口を開いた。

「‥‥ならば、契約を成そう。お前を魔女にはしてやる」
「本当?」
「だが、その代償に‥‥‥‥」


…‥‥その口から出てきた代償は、強大な悪魔にしては予想外なほど軽い物。

 というか、内心もっとヤバい代償を求められるかもしれないと思っていたし…‥‥その程度であれば、断る事もない。

「ええ、それで良いですわ。それで契約を為しましょう」

 そう自信満々に、わたくしは返答をした。

「即答だな」
「当り前よ。破滅の道へ行かないのなら、その程度なんともないわ!!どうせ私がいない時があっても、両親は気にもかけてくれないからね!むしろ後継ぎを増やすために不倫しまくったりして知らない兄弟ができていくだけよ」
「…‥‥お前の周囲、悪魔以上の魑魅魍魎しかいないんじゃないか?」


‥‥‥‥うん、そうとしか言えないかも。

 悪魔に物凄く同情的な目で見られたというか、悪魔以上の悪魔に目を付けられた可哀想な動物を見る目をされたというか‥‥‥‥とにもかくにも、ここにわたくしと彼の契約がなされた。

 取りあえずは、まずは悪魔を味方に付けることには成功したのであった‥‥‥‥

「契約をしたのは良いが、一応、魔女としての勉強も待ち受けているからな?」
「え?何かこう、悪魔と契約して魔女になると、すすーって感じで知識とかが流し込まれるとかはないの?」
「そんなに甘く、魔女がホイホイ作れるわけではない。やろうと思えばできなくもないが、聞くだけで実際にやったら最悪の事態にもなるだろうし、しっかりと身に覚えてもらうからな?」

‥‥‥ついでに、悪魔からの魔女教育も決定するのであった。破滅から逃れるためには何でもやりますけれども、魔女教育って‥‥‥イメージ的にはこう、色々と怪しい類しか思いつかないのですけれども‥‥‥
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