黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

文字の大きさ
6 / 339
始まりの章

5話

しおりを挟む
‥‥‥叡智の儀式から2日後、予定通りにルースの会得した金色に輝く魔導書グリモワールの力を調べるために、わざわざその手の研究機関から派遣されてきた調査官がバルスト村にやって来た。


「どうも初めましてでござる。拙者このたび貴殿の魔導書グリモワールを調査するために派遣されました、ゴザリアン=デールンでござる」

 明らかに口調がいろいろ混じっていておかしいが、見た目がまともな金髪の好青年というなんともへんてこな調査官であった。

 ござるって語尾忍者っぽいけど…‥なんか違う。少し理由を聞くと、かなり極東の地域にそのような語尾を付けている一族がいるそうで、ゴザリアンさんはその一族のかなり離れた末裔なのだとか。

 気さくなようでいい人だけど、違和感がものすごいなぁ。

 そして、実はこのバルスト村の出身でもあるそうなので、実は帰郷でもあるようだった。





 ルースの金色の魔導書グリモワールの力は未知数なので、万が一のために村から少し離れた場所にある平野にて実験してみることにした。

 この場にいるのは、ルース、調査官のゴザリアンさん、いつの間にかいたエルゼに…‥


「なんでここに公爵様がいらっしゃるんでしょうかね?」
「くっくっくっく、決まっておるだろう小僧!!村の領主も務めている儂が、その村民の力を見るのに何の違和感を持つのだろうか!!」


 そう堂々と、胸を張ってエルゼの父親でもあるカイゼル=バルモ=ミストラル公爵は答えたのであった。


‥‥‥どう見ても、面白そうなことだからなと顔に書いてあるようにしか見えない。

 昔から元気ではきはきとしている公爵は、その圧倒的な威圧感というか存在感がどこかこう、暑苦しくてルースは苦手なのである。


「がんばってールース君ー!」

 手を振って応援するエルゼは、念のために魔導書グリモワールを使用できるようにしているようだ。

 万が一にでも暴走でもして、悲惨な事が起こらないように拘束できるようにでもしているのだろう。

 ただ、なんとなくそうなっても良いなと考えていそうでちょっと怖い。


「さてと、では早速でござるが何か魔導書グリモワールで力を使用してみるでござる。使用方法はわかっているでござるな?」
「はい、きちんと理解しています」

 叡智の儀式の際に、顕現した己の魔導書グリモワールを触れることによって、その使い方を自動的に覚えることができるので、使用しようと思えばいつでもどこでも可能なのだ。

 しかしルースの場合、触れた際に莫大な情報の洪水というべきものに呑まれたために、実はまだ全部を理解しておらず、使える力は半分にも満たないのである。

‥‥‥全部理解できるまでに時間はかかるようだけど、それでも現時点で頭の中でわかっているものにはとんでもないものが混じっているので、それは抑えておこう。


「では、とりあえずまずは基本からやってみるでござるよ」

 そうゴザリアンさんが言ったので、ルースは魔導書グリモワールの力を使用するために、少し身構えた。

「まずは『魔導書グリモワール顕現』」

 そうつぶやくと、ルースの目の前に黄金の魔導書グリモワールが出現する。


 魔導書グリモワールは普段体の中にあるようで、今の『魔導書グリモワール顕現』と言葉に出すだけで、目の前に出現し、その内容を見ることができるのだ。

 その事によって、魔導書グリモワールを使用できる状態になるらしい。

 使用後は『顕現』を『収納』と言い換えれば元に戻るのである。



 なお、慣れればいちいち言わなくても自由に出し入れできるようだし、少し力が落ちるそうだが出さなくても使用できるようである。

 とりあえず、今はまだ初心者なので基本からきちんとしていかねばならない。


「ふむ‥‥‥確かに金色に輝いているでござるね‥‥‥報告通り、黄金の魔導書グリモワールと言って差し支えないでござるな」

 ルースの魔導書グリモワールを観察し、ゴザリアンはそうつぶやいた。



 
 しばしの観察後、ここからが本番である。

「では、その力をまずは、自身で一番安全そうなものから使用してみるでござるよ」

 そうゴザリアンさんは言った。

 魔導書グリモワールによって使用方法はわかっているので、どれがどの程度のものなのかは理解できている。

 人によって同じ物でも差が出たりするそうだが、まずは安全なモノから確認だ。

「そうですね‥‥‥じゃあ、この魔法かな?『ライトミスト』」
「「「へ?」」」

 ルースの言葉に、その場にいた他の3人がきょとんとした瞬間、辺りに変化が起きた。


 キラキラと光る霧が発生し、昼間だけどまるで金粉が飛び交って黄金の霧に包まれているような状態になったのである。


「ちょっ!?何でござるかこれ!?」
「綺麗‥‥‥流石ルース君!!」
「なんというか、いきなり何かやらかしたな」

 とりあえず、色々と反応が違うようなのでルースは今使った魔法を説明した。


「今のは『ライトミスト』という魔法で、基本的にあたりをキラキラさせてしまうだけの魔法です。ちなみに、どうやら光魔法と水魔法が混じっているようで、これを使うと肌がつやつやになるようですよ?」

 魔導書グリモワールから得た知識なのだが、なんとなくその効果は理解できる。

 要はお手軽お肌ケアの魔法なのであった。

 ただ、その説明を聞いてゴザリアンさんは驚愕した。

「ちょっと待つでござるよ!?今思いっきり二つの属性の魔法が混じっていると言ったでござるね!?」

 その事実に、どうやら公爵の方も気が付いたようで、驚きつつも笑い声をあげた。

 基本的に光魔法は白色の魔導書グリモワール、水魔法は水色の魔導書グリモワールを手にすることで使用できる代物だ。

 今の『ライトミスト』の魔法は単なるお肌ケアの魔法とはいえ、その二つの属性が複合しているのは驚くべきことなのだとか。

「という事は…‥もしかして、他に扱える力は」
「多分その予想とあっていますよ。どうやらこれ、オリジナルと、複合があるようで‥‥‥というかまぁ、単純にいえばどうやら全色使用可能のようです。まだ最高で2つまでしかできないようですけど」


‥‥‥結論というか、理解できた時点で既に答えは出ていた。

 この金色の魔導書グリモワールは、どうやら赤、青、緑、黄、茶、白、黒の7色の魔導書グリモワールがそれぞれ持つ力を、複合して扱えるようなのだ。

 しかも、理解した内容の中にはどうやら完全にそれとも違う、全く別の力を持っているようだが‥‥‥


「実はまだ、今の複合魔法以外は使えないんですよね」
「それが肝心なところなのに、わからないのでござるかぁ!?」


 最も肝心な、その部分が全く使えないのだ。

 どうやら今の実力ではフルに利用できないので、自動的に制限が掛かってしまうようなのだ。

 その為、完全に知ることができず、がっくりとゴザリアンさんはうつむいた。

「はぁ、せっかく調査しに来たのにその肝心な部分が不明なのは残念でござる。まぁ、複合して扱える時点で規格外そうなのは理解できたでござるよ」


 肝心な部分が会使えないとはいえ、今のところ2つまでだがそれでも異なる力を複合して合う変える時点で相当なものだとか。

「すでに他の魔導書グリモワールを扱える人が2人もいるような状態でござるよ。現時点ではという事で、将来がどうなるのかは拙者にもわかりかねるが、相当なものになりそうでござるな」

 そう言われると本当にとんでもないものを顕現させたのだなと、ルースは改めて思うのであった。








 それから数回ほど異なる魔法などを見せた後、調査官のゴザリアンは一旦この地の領主であるカイゼル公爵と話し合うことになった。

 調査して、その結果を持ち帰れば終わりなようなものだが、ルースの持つ力の規格外さから、少し危機感を覚えたのである。

「複合できるのであれば、組み合わせ次第ではとんでもないことができると拙者は思うのでござる。この結果をただ持ち帰れば、未来あるあの若者を利用しようとする輩が出る可能性があるのでござるよ」
「うむ、何が言いたいのかはよくわかる」


 ルースの持つ魔導書グリモワールの力を見たからこそ、その悪用への危険性にゴザリアンは抱いたのだ。

 ルースが今のところあの摩訶不思議な黄金の魔導書グリモワールの唯一の持ち主だが、もしかしたらこの村に将来的に同じようなものが出るかもしれない。

 そして、その力を求めて他の者たちが村を襲ったり、もしくはこの領地を手に入れようと考える輩がいるかもしれないのだ。


 その可能性に、ゴザリアンは危機感を抱き、カイゼル公爵としてもそのことは避けたかった。

「儂の大事な領民たちを傷つけられるのは困るのでな。親戚伝いに王家の方に連絡をして、ある程度の対処を取ってもらうつもりだ」
「そうしたほうが良いでござる」

 ゴザリアンは調査官であり、別にここまで心配するようなことは本来はない。

 ただ、彼の故郷とも言えるバルスト村に何かあっては困るために、ここはよくわかってくれる公爵に協力をお願いしたのである。

 その日、ルースの力に関しての報告は、先に王家を通してある程度の対処を取ってもらってからという事で、ゴザリアンは帰ったのであった‥‥‥


 
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...