黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

文字の大きさ
39 / 339
学園1年目

35話

しおりを挟む
‥‥‥ついに夏休みがやって来た。

 グリモワール学園では、終業式が行われ、夏休みの開始の宣言がバルション学園長によって行われた。


「夏休みだーからと言って、遊び惚けーるのはいーけません!!きちーんと宿題をこなし、自身の魔導書グリモワールの扱いをみなおーし、そーして他人と差をつーけるチャンスでもあーるのです!!」

 割とまともなことをバルション学園長が言っていたので、皆は意外に思ったのだが…‥‥


「でーも、もーしもやり切れずに、もしくーは忘れーていた場合は‥‥‥‥ちょっとバキッと、コホンコホン、罰としーて超痛い目にあってもーらいまーす!!」

‥‥‥やっぱりいつものバルション学園長であった。

 ごまかしていたけど、「バキッと」ってなんだ。「超痛い目」ってなんだ。


 恐怖心をしっかりと忘れないように皆の心に刻まれつつも、この学園の前学期は終了し、あとは皆それぞれ自由解散となる。

 馬車に乗って故郷を目指す人もいれば、中には貴族の子息とかもいるので屋敷に戻って報告しに行く人もいるそうだ。


 そんな中、ルースはエルゼとスアーンと共に、校門前にて集合していた。

 それぞれの荷物は手ぶらだが、これはとある実験を行ったから問題ない。

「じゃ、タキを呼ぶぞ」
「正直言って、あの女狐に頼るのは嫌だけど…‥‥ルース君がたぶらかされるのももっと嫌だし、きちんと一緒に行くから準備は良いわ」
「俺っちはエルゼ様のストッパーだけどな‥‥‥」

 まだタキに対して女の子としての対抗意識があるのか黒い笑みを浮かべたエルゼに対して、はぁっとすでにあきらめの境地に達したスアーンの言葉から、一応準備はいいことをルースは感じた。

「『召喚タキ!』」



 タキを呼びだし、その場に巨大な九尾の狐のような姿のタキが出現する。

【よし、もうその召喚主殿の故郷であるバルスト村へ向かえばいいのじゃな?】
「ああ、頼むぞ」

 事前に説明しており、向かう経路も確認し、いつでもいける状態。

 タキの背中にルースたちは搭乗し、しっかりとしがみつく。

 すると、タキは器用に毛の中に埋めてあったロープを尻尾で取り出して、ルースたちをしっかりと己の体に結び付けた。

【これで落ちる心配もないじゃろうし、いつでも全速力でいけるのじゃ!】

 流石にしがみつくだけでも大変なので、こうやって固定していったほうが楽なのではないかと皆で話し合い決めた結果である。


「よし…‥‥それじゃタキ、発進!!」
【了解!!】

 ロープの具合をしっかりと確認し、ルースが合図をすると同時に一気にタキは加速した。


ゴゥッツ!!

「うおっ、やっぱ体に結構くるな‥‥‥」

 加速時のGの大きさに、体に負担がかかったが、慣れれば後はどうという事もない。

「ちょっと押されるような気がしたけど、まだまだ平気ね!…‥‥って、ルース君、下僕一号が速攻で落ちたわね」
「あ」

…‥‥ルースとエルゼの場合、普段から学園長の無茶苦茶な訓練を受けているせいか、かなり鍛えられていたようだ。

 だがしかし、スアーンは受けておらず、この中では唯一の常識人のようなものであり…‥‥急激なGの負荷によって、白目をむいて気絶していた。

 

 事前に本当に乗る気かと聞き、早く帰れるのならいいと彼が言っていたのをルースは思い出す。

 だがしかし、思いと体は一致しなかったようで、スアーンはその後、村につくまでずっと気絶し続けたのであった…‥‥
















…‥‥ルースたちが学園から出発し、バルスト村に向かい始めた丁度その頃、村ではあることが起きていた。

「おかしいべ、どうも何かがおかしいべ」
「あら?どうしたのかしらゴエモーンさん」

 村にある店からの帰り道、ルースの母である母のアバウト=ラルフは、知り合いの農家のゴエモーンがぶつぶつつぶやいているのを見て、話しかけた。

「おお、アバウトさんかべ。どうしたもこうも、ちょっとした摩訶不思議な事が起きているのだべさ」
「摩訶不思議な事?」
「おらの畑‥‥‥いや、村の畑全体なのだが、どうも異常成長しているのだべさ」

 話によると、飢饉とか不作になるようなものではないのだが…‥‥何かがおかしいらしい。

「まるで、作物が巨大化しているかのようになっているのだべさ」
「ふーん‥‥‥それは確かにおかしいわね」

 その話しを聞き、アバウトは眉をひそめた。

「‥‥‥不作とかの類ではなく、異常成長か」


 とりあえず様子見をしたほうが良いのじゃないかなとアバウトはゴエモーンにそう言い、その場を後にした。

 家に戻り、買ってきたものを整理しつつ、アバウトは考える。

「利益になりそうなものだけど…‥‥そんな異常成長って普通ありえないわね。何かが働きかけているのかしら」

 そうつぶやき、アバウトはふとあることを思いつく。

「そうだわ、こういう時はアレに頼みましょうかね」


 ナイスアイディアと言わんばかりに、彼女はその頼む相手へ手紙を書き始めた。

 届くのに時間はかかるであろうが、こういう時にはすぐさま来てくれるであろう彼女の知り合い。

 村の皆にも、そして彼女の息子であるルースにも秘密にしてはいるが、彼女はその手の知り合いがいた。

‥‥‥いったいどのような知り合いか、そしてなぜそんな者がいるのかは、彼女とその知り合いの枠組みにいる者たちしか知らないが、とにもかくにもアバウトはその以上について調べてもらうために、今は手紙を書くのであった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...