黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

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学園1年目

78話

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・・・・・・謹慎決定という事で、それ用の部屋へとルースは部屋を移すことになった。

 その部屋は、男子寮の奥の方にあり、過去はただの倉庫だったらしい。

 でも、いつしか何かしらやらかした男子たちが送られ、謹慎部屋として変化したそうな。



 その部屋の中は案外広い。

 だがしかし、あるのはベッドに机、学習用の時点などがあるタンスなど、本当に必要最低限なものしか入れることができないそうだ。

 まぁ、そこまでルースには困ることはなかったが。


 今回の謹慎は、実はたいした罰ではない。

 でも、ルースやタキの情報を探る輩から身を隠すために与えられた…‥‥いわば隠れ場所となるのは間違いないだろう。

「でも、本当に二人とも一緒に来ることはなかったんじゃないか?一応、男子寮でもあるんだが・・・・」
「いえいえいえ、監視も大事な事だからいるのよ。特に、その女狐も一緒なら何かあってもおかしくないからね!」
「まぁ、不純異性交遊なんてことにはならないように見張るのも、良いことだとは思うよ。私は留学生でもあるためこのような部屋に来るのは本当はいけないことなのかもしれないが、事情を知っている一人でもあるがゆえに、きちんと見なければいけないからな」

 ルースの問いかけにエルゼは堂々と、レリアは少しごまかすようにそう答えた。


―――――デモ、タキヲアノママニシテ良イノ?

 ふと、ポケットから顔を出したバトが指さした先を見れば、天井からミノムシのごとく吊るされたタキの姿があった。

【あまり良くない状態じゃよ・・・・・ううっ、力が抜けてしまうのぅ・・・・】
「・・・・・なんかいろいろとお札のようなものを貼って簀巻きにしているけど、あれって何だろうか?」
「エルモア先生に聞いてみたところ、モンスター用のマジックアイテムらしいわよ」
「とは言っても市販に出回るような者ではなく、エルモア先生が自ら作り上げた封印の札だそうで、それもタキを相手に絞ってのものらしい」
―――――妖精ニ影響ハ無イ環境ニ優シイ札ダッテ。


 なんというか、ある意味一番哀れなのはタキだろう。

 人型の状態でミノムシの刑のようなもんだからね・・・・・・かと言って、勝手に下ろすことは許されていないようだ。

 案とか抜け出そうとしているようだけど、思いっきりミノムシのダンスにしか見えない。しかも、尻尾が綺麗な飾りとなってミノムシがサンバを踊っているようにしか見えない。

「下ろせばその分、ルース君の貞操が危ないのよ。だからああやって完封しないとね」
「そうそう、きちんとした理由がなければそもそも男女が同室などないのだ」

 エルゼとレリアの説明には納得できるが、どこかごまかした顔になっていないか?


「そういえば、トイレや風呂は可能だよな?」
「そのあたりは寮内にあるのなら自由に使用可能らしいわ。謹慎といっても、要は単純な引き籠りにされる事らしいのよね」
「まぁ、一歩も外へ出ないようにすれば自然とその情報も集まらないからな」



・・・・・・現状、ルースの周辺を探っているような者たちがいるらしい。

 フェイカーだったり、その力に目を付けた馬鹿たちだったりと様々居るようで、陰謀が渦巻いているのだとか。

「1か月の謹慎で、そういうやつらが離れるものだろうか?」
「・・・・・そのあたりは何ともいえないわね」
「しつこい奴は本当にしつこいからなぁ。‥‥‥帝国にいたときだって、ストーカーのような奴にあったし」
「え?レリアはストーカー被害に遭っていたのか」
「とは言っても、見つけ次第ふっ飛ばしたがな。切らないように木刀を常備して、出てきた・見つけた瞬間にかっ飛ばせば綺麗に飛んで言ったよ。今はもう見かけないし、首をゴキッとしたことで効果があったのかな」

 レリア、まともだと思っていなのにやらかしていたよ。

 普通そう言うのは捕まえて引き渡したりとかするはずなのに、自分からふっ飛ばすって・・・・・


 少しルースの中で、レリアに対する「常識人」の評価が下がったような気がした。

―――――マトモ、減ッタ。

 ぽつりとバトがそう口に漏らしたが、ルースは肯定して反論はしないのであった。

 その時、タキがトイレに行きたくなって非常事態に陥っていたのだが、気が付くまであと数分かかったのは別のお話である。

【のじゃあぁぁぁぁ!!誰か、誰か我の存在に気が付くのじゃぁぁぁぁぁ!!】








 ちょうどその頃、都市メルドランから離れた戦場では、グレイモ王国側がルンブル王国側に対して優勢となっていた。

 なぜならば、ルンブル王国側が持っていた秘密兵器が暴走し、兵士たちにダメージを与えて士気が駄々下がりし、混乱しガタガタになっていた状態だったので攻めやすかったのだ。


 おかげで一時は不利になっていたグレイモ王国側は士気が向上し、新たな秘密兵器が来る前に勢いづいて押し返しまくり、元の境界線からさらに奥へと攻め込めていたのだ。

 しかも、この時期になるとそろそろ完全な真冬となり、ルンブル王国側からの供給は見込めなくなるため、ルンブル王国の兵士たちは敗戦が濃厚だと見え、指揮官たちも同様の判断を下していた。


 ゆえに、そろそろ撤退を決めようとした時に、ルンブル王国の王城から指揮官たちにある命令が下った。


『秘密兵器を再投入する予定だが、交渉に時間がかかり時期は未定。それでも戦線を維持し続け、国のために働け』


 要約するとそのような内容であり、しかもところどころに現場を知らないような高圧的な態度で書かれていた文があったため、指揮官たちは激怒。

 もう敗戦が濃厚なので撤退する予定なのに、まだ本国では秘密兵器を投入して逆転を狙っているようだ。

 でも、その肝心の兵器が交渉によって手に入れたものらしく、再び手に入れるには時間がかかってしまうそうなのだ。

 それではもはや間に合わず、このままでは確実に被害はでかくなるのに・・・・上層部は全く見ていないのだ。

 そもそも、その秘密兵器が暴走したからこそ優劣が変わり、再び暴走しない保証もない。


 ここでまだまともな判断力を持っていた指揮官たちはキレた。

「・・・・・もう上の者たちには命令されても意味はない!!戦ごとに長けない無能がいたら何もかもダメになってしまう!!」
「そもそもこんな戦争を起こすこと自体が馬鹿だったんだ!!秘密兵器の力に溺れていたが、アレの暴走のおかげで目が覚めた!!」
「撤退だ!!今すぐ戦場から退き帰還する!!そして、処分を下すかもしれないのでその前に戦場に出ずに見るだけの無能たちを吊し上げに向かうぞぉぉぉぉぉお!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」」」

 指揮官たちの号令に、兵士たちも同意して声を上げる。

 そして、そうと決まれば動くは早く、またたく間に戦場からルンブル王国軍は引き上げてしまったのだった。


 そのあまりにも早い撤退ぶりにグレイモ王国軍は罠かもしれないと警戒をしたのだが、誰もいなくなって放棄された陣に残されたその命令書を見て納得した。

 ああ、これなら自分達でもキレてしまうなと。

 
 かくして、グレイモ王国とルンブル王国の戦争はここにあっけなく終わってしまった。

 正確には交渉や賠償金要求などをしていないために終戦とはならず、休戦に近い状態だが‥‥‥これ以上先へ進んでも真冬の厳しさをグレイモ王国側も知っていたので、撤退して交渉の機会を待つことにしたのであった‥‥‥
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