黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

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2年目の夏の章

121話

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…‥‥馬車で旅して2日後、昼頃にルースたちはモーガス帝国に入り、帝国の中心にある帝都とやらに到着した。

 軍事力もかなり高い帝国だが、近年は軍事よりも政治・学業方面を重視して、国民の質とその生活水準の向上を図っているらしく、グレイモ王国よりも発展しているようである。

 石畳の街道などは王国にもあるが、中には王国では見たことがないような素材で作られている専用道路など、技術レベルは数段も上のようであった。

(……コンクリートとか、アスファルトなどに似ているけど、やっぱりちょっと違うな)

 道路の表層を見ながら、前世の知識にもあるような数々の素材を思いついたのだが、それらとも変わっているようであった。

 似たようなものであれども、世界が異なればやはり同じようなものを再現するのは難しいのだろう。

 いや、再現ではなく、純粋に発明されたがゆえにできた独創性がその違いを際立たせているのかもしれない。ルース同様に、前世の知識とかがるような人が早々いるわけでもないとも思えたからである。




 それでも王国を上回る発展ぶりにルースたちは驚愕した。

「やっぱり、こういう所が本当の都市として思えるなぁ‥‥‥」
「帝国、やっぱりとんでもないわね」
「ふふふふ、そうだろう?」

 ルースたちの感想に、自国が褒められたようでうれしいのかレリアがどこか鼻高げに声に出す。

 
 なお、環境破壊具合もすさまじそうだと思っていたが、意外なことに空気は綺麗で、そのあたりは王国と大差はない。

 まぁ、移動手段がマジックアイテムもあるとはいえ、基本的に馬車や徒歩、魔法が一般的な世界だ。

 化石燃料をバンバン使うような事もなく、大気汚染などもないのだろう。


…‥‥ただし、気になる点が一つあった。


「以前さ、あのなんだっけ……ほら、あのタイタニアを代理にした馬鹿屑阿保貴族がいたよな?ああいう輩は帝国にはいないのか?」

 あまり考えたくもないが、腐った輩が帝国にいないのか気になったのである。

「ああ、その事なら大丈夫だ。そもそも、この国がそういう輩を放置すると思うか?」
「‥‥‥思わないな」
「発覚してから動き出すことが多いけれども、帝国ではその前に捕縛もしくは身分剥奪を行っているのかしら?」
「その通り。この国は軍事的になり上がった国でもあるからこそ、集団意識が高い。ゆえに、統率を乱すような輩はしっかりと見張りつつ、その人間性を確認しているんだよ。だからこそ、汚職とかも少なく、そうそう騒ぎになるような事はないんだよね」

 自慢げに言うレリアだが、その言葉に気になる点があった。

「『少なく』ってことは0ではないのか」
「まぁ、そこは残念ながら完璧じゃないんだよね」

 ルースの言葉にいたいところをつかれたような顔をしつつ、それでも隠さずに堂々と言ったレリア。

 まぁ、アリの巣にはどう減らしても怠けアリが出来るのと同様に、そのあたりも完全ではないのだろう。

 それでも王国よりも汚職を行う人がおらず、きちんとした政治などが行われているようである。



 ちなみに、野心が強い輩とかはいるようで、そういった輩はどれだけ自分が役に立ってみせるのかを表現するために積極的に動くので放置に近いらしい。

 反乱を起こそうとしたらアウトだが、基本的に悪さできるような人たちはいないそうである。


…‥‥というか、軍事的に領土を広げたゆえに、脳筋な人の方が多いそうで、とりあえず良いことをして目立って出世しようと考える人ばかりだとか。

 脳筋だらけの国って、それはそれでどうなのだろうか…‥‥



 

 そうこうしているうちに、馬車はこの国の王城前へ到着した。

 ルースとエルゼは観光目的で来ているが、一応、この国の王族でもあるレリアの客人扱い。

 ゆえに、一旦…‥‥

「皇帝に挨拶するって、別にその必要もないような……」
「まぁ、そのあたりはすまないな」

 溜息を吐きながらつぶやくルースの言葉に、苦笑いを浮かべるレリア。

 客人として、とりあえず皇帝に会って面識を持っておいたほうが良いとレリアが言うので、とりあえずしぶしぶと従う。

 
 まぁ、レリアの父親でもあるし、友人として挨拶ぐらいは‥‥ん?

「あれ?そういえば父親が皇帝ってことはさ、その母親は?」
「‥‥‥まぁ、そのなんだ。父上もとい皇帝陛下は良いけど、あまり母上の事は詮索しないでくれ」

 ルースがふと抱いた疑問を口にすると、レリアがものすごく微妙な表情になった。


(……あれ?何か藪蛇だったか?)
(んー、確かこの国の皇帝は愛妻家で有名だったはずよね。だから特に身分とかでの問題はなかったと思うけど‥・・・)

 その様子からルースとエルゼはひそひそと話しあったが、結論として詮索をしないほうが良いだろうということになった。

 人の家族に口を出すのは野暮だし、面倒ごとに巻き込まれても厄介である。


 まぁ、身分の低さとかの問題は無さそうだし、実力主義的な感じがするこの国ならそうぎすぎすした問題ではないだろう。

 まさかとは思うが、皇帝陛下を尻に引くような恐妻だったとかいうわけもないだろうし、聞かなくてもいいかもしれない。


 そう思いつつも、ルースたちは皇帝に挨拶するために、謁見室へと向かうのであった。








 ちょうど同時刻、王城の端の方にある訓練上にて、訓練をしていた兵士たちがいたが、その場にいた者たちは皆顔を青ざめさせていた。


「ぎぇあぁぁぁぁぁぁ!?」
「ひぎぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「お助けぇぇぇぇぇぇ!!」

 悲鳴が上がり、その相手に向かって全力を出しても宙を舞ったりする兵士たちの光景に、皆腰を抜かしたり怯えたりしていたのだ。

「ふぅ、まだまだ足りないというか、もっと骨のある方が良いわね。久し振りに夫を引きずり出してサンドバック、げふんげふん、対戦相手になってもらおうかしら」
「る、ルーレア皇妃様、そろそろ職務にもどられてはどうでし、」
「対戦相手になるかしら?」
「いえいえいえ!?なんでもないです!!」

 兵士の一人が声をかけたが、さえぎって告げられた彼女の言葉に、慌てて後ずさりして逃げた。


 その場に立っていたのは、全身真っ赤な装飾が施された鎧を着た女性であり、まだまだやる気十分そうな表情であった。

「そういえば、そろそろ娘は帰って来たかしらね」

 ふと、何かを思い出したようにつぶやいた彼女の言葉に、兵士が素早く反応した。

「そ、そのとおりでございます!!先ほど門前から交代してものが、皇妃様の娘様の帰還を確認していたことを、報告し忘れていました!」
「あらあら!いけない子よねぇ。‥‥‥そうね、帰ってきているなら、時間的には夫の方へ挨拶している頃合いね。ちょうどいいし、ちょっとここから出るわね」

 そう言い残し、彼女は素早くその場から去っていった。

 去った後、兵士たちは皆ほっと安堵の息を吐いた。

「ああよかった…‥‥ようやく平和が訪れた」
「嵐の後って、こんなにも平和なんだなぁ‥‥‥」

 でも、この後も気が抜けないので、兵士たちはすばやく上官へ向けて早退届けを提出しに向かうのであった‥‥‥
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