黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

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精霊の章

171話

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 フェイカ―の幹部と名乗るボルスターの捕縛も終了し、都市へ帰還するルースたち。

 今はぎっちりと拘束しているとはいえ、やはり油断できないので‥‥‥‥



「‥‥‥さすがにあれから脱出するのは無理そうでアルな」
「まぁ、これだけやれば大丈夫だと思うけれども、念には念を入れたかったからね」

 ボルスターを入れた箱を見ながらつぶやいたミュルに、ルースはそう答えた。



 今、ボルスターが入っている箱は一見するとただの黒い塊である。

 だがしかし、実はこれは複合魔法によって生み出された監獄のようなものなのだ。

 闇、土、木の3属性複合魔法『ブラックボックス』。

 これは対象を木の枠で囲い、土の壁で四方を防ぎ、後は闇で包むという、言葉にするだけであれば何の変哲もない拘束の魔法。


 だが、実はさらに内部では別の効果が起きているのだ。

 木の部分から値が出て対象者に取り付いて適度に体力を吸い取り、盛り上がった土で手足を固定されて時々蒸れないようにうにゅうっと動かし、闇から精神的に黙らせるようにさせようさせるということをしているのである。

…‥‥分かりやすく言えば、暴れられないように拘束・体力減少・鬱状態にしている。


 とにもかくにも、フェイカー側から奪還しに来る可能性も兼ねて周囲を警戒しながら、来た道をルースたちは辿って都市へ向かっていた。




 なお、道中で都市の方でのごたごたを終えたらしいエルゼ達が来たのだが‥‥‥その周囲が何もなくなっていたことに、ツッコミを入れることをルースは放棄した。

 なにがあったのかは大体予想が付くが、ここはあえて言わない方が得策であろう。




 何にせよ、無事に都市までたどり着き、学園長の報告し、捕縛した幹部はしかるべきところへ引き渡された。


 これからあの幹部は組織に関する情報を引き出すために、色々とされるだろうが‥‥‥‥同情する意味もない。


 と言うか、今回の事をきっかけに、ルースはフェイカ―を本気で潰すことにした。

 いちいちやって来られるのも面倒だし、あとくされの無いようにしたい。

 あと、顔も見たことが無い父の仇でもあるようだし…‥‥心を徹底的に折るほど蹂躙してやるほうが良いのだろう。











…‥‥都市へ帰還したその日の晩、ルースは自室でベッドに入りながら考えていた。

 反魔導書グリモワール組織フェイカー。ミュルの話によれば、元々は昔、この国の者達によって実験台にされた人たちが集まり、復讐をするために生まれたもの。


 でも、今回の件も通して感じたのだが、もしかすると、いや、もしかしなくとも組織は復讐を根幹から無くしているのではないだろうか。

 復讐をするのは、どうしてもその繰り返しになるので何処かで止めたくもなるが…‥‥無いとなれば、その組織はどこへ向かうのか。


 国に色々影響を与え、潰し、征服し、そして世界を手中に収めるとかならば、まだわかる。
 
 いや、分かりたくもないが、人間の欲望って限りないことが多いので、そうなる可能性も無きにしも非ずだ。



 だが、そこでとどまらない場合……より予想のつかない相手が組織にいた場合、どうなるのだろうか?

 世界征服を目論んだとして、仮に成功したとしても長続きしないことはどこの世界でも同じだろう。

 ならば‥‥‥フェイカーの行きつく先はどこへ向かっているのか。

 


 ふと思ったその疑問に、ルースは考え始めて止まらなくなる。

 結局、翌朝まで眠らずに考えてしまうのであった…‥‥‥












―――――そして、その疑問の先にあるフェイカーは今、ある場所にその幹部たちが集まっていた。


「よし、ようやくあの出世欲丸出し大馬鹿野郎は消えたか」
「組織について白状しようにも、あいつはどうせ、詳しいことはそこまで知っていないもんね」
「ああ、切り捨てるためにわざわざ失敗作のみを渡してあったからな。全部が成功作だと思って、作戦の不備が全くないと思っていたに違いないだろう」


 その幹部たちは、ようやく組織から不要なものを切り捨てることができたと、笑って会話していた。

 組織とて一枚岩ではない。ならば、不要なものを切り捨てるのみ。



 そう、実は今回の事件、全てこの幹部たちが手を組んで、ボルスターを組織から切り離すためだけに行われたのだ。

 あのボルスターはこの幹部たちに踊らされて、自ら滅亡したに過ぎないのである。


「さてさて、色々と済んだことですし、そろそろ組織内も活発に動かさないとね」
「とはいえ、まだ混乱しているし……収めるのにはもう少しかかるかもな」
「別に良いだろう。万全の態勢で挑まなければ安心できぬし、あと少しの間だけ、国に平穏を味合わせるのも良いだろうな」


 平穏に慣れさせたところで、組織は動くつもりである。

 そこから陥れられる混乱に、国はそうやすやすと対処できないだろうし……何よりも、万全の態勢でいかなければ再び壊滅の危機になる可能があるのだ。



「それでは、しばらくの間は本格的な準備を行い‥‥‥そうですね、大体年明けには一気に活動を始めましょうか」
「冬の間、じっと耐えて‥‥‥春になったらぼーん!!っとやればいいんだろう?」
「まぁ、期間としては大したものではない」

 それぞれで話し合い、組織の方針を固める幹部たち。

 これでこの集まりも一旦閉会かと思われた‥‥‥その時であった。



「ん?」
「どうしたんだい?何かいぶかしげな顔をして?」
「いえ、何かこう、変な感じがしましてね」
「‥‥‥言われてみれば、何か妙な感覚があったな」

 ふと、幹部たちは何かを感じたような気がして、動きを止める。

 だが、特に何もなく……ただ単に気のせいかと思い、何もなかったかのように片づけ、それぞれの持ち場へと彼らは帰った。



 だがしかし、彼らは気が付かなかった。

 この組織がいくら非人道的な実験もしているとはいえ、幹部である自分達にはそう何かされるわけではないと慢心していたのもあったのかもしれない。

 この時に何が起きたのか気が付き、対応していればよかったのだが…‥‥彼らが気が付いたときには、もう遅かった。

 全てが崩壊の道へ向かう動きは、既に始まっていたのである…‥‥‥

 
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