黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

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迷いの冬で章

187話

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……路地裏の入り口とも言うべきところで、欲深き者たちが争いをしている中、ルースたちは奥へ奥へと進んでいた。


 魔法を解除して影から出て歩いてみたが…‥‥進むたびに負傷者が増えてきているのは気のせいだろうか?


「おおお……た、助けてくれぇ……」
「ぐふっ、ほ、骨がぁ‥‥‥」
「あ、ありえないだろ……げぼう」



「‥‥‥骨折、全身打撲、(R18グロ)とか、進むたびに惨劇が起きたように見えるのはなぜかな?」
「王女様達が、色々撃退しーているんだーろうけれども‥‥‥」

 死屍累々の山を見て、ルースとバルション学園長は思わずそうつぶやいた。

 おそらくは、路地裏入り口で争っている輩たちのように、女帝コンビがこの国の行方不明になっている王女たちだと察して、無理やりにでも連れて行こうとしたり、もしくはより悪いことを考えていた奴らなのだろうが‥‥‥これはひどい。

 今、保護に向かっているはずなのだが‥‥‥保護する対象を襲撃者たちに修正した方が良いような気がしてきた。


「と言うか、王女たちって加減を知らないのかな?」
「一応、あーれでも箱入り娘でーあるからね。とりあーえず徹底的にやーってお終いって感じかしら」

 まぁ、原因としては箱入りと言うよりも、ルーレア皇妃の教えを受けたという話だし、あの人のやり方をまねてしまったのだとしたら……このような惨劇を産むのも何処か納得ができるだろう。

「‥‥‥保護する必要性があるのかな?」


 少々疑問を抱いたが、とにもかくにもこれ以上犠牲者を出さないためにもルースたちは足を急いだ。









ドゴゥ!!バキィッ!!メゴスッ!!ぶちぃっ!!ゴリゴリゴリゴリ!!

「いやーっ!!もう何でこんなに襲ってくる人が多いのですかあぁぁぁ!!」
「お姉さまに手を出すような輩が、なんでこうも懲りずに湧き出ているの!!」

 丁度その頃、路地の奥の方で王女たち…‥‥路地裏では女帝コンビ「アイアンクイーン」と「トラウマ製造機クイーン」と呼ばれているルルリアとアルミアはそう叫びつつも、先ほどから襲い掛かって来た不審者たちを撃退していた。

 悲鳴を上げているのだが‥‥‥上げたいのは襲い掛かって来たはずの不審者たちの方であろう。

 彼らは王女たちがこの路地裏にいることを突き止め、それぞれの主や雇い主から攫ってくるように言われていたり、もしくは捕縛して色々と良からぬことに使うためになどというもくてきがあったのだが‥‥‥見事に返り討ちにあっているのであった。


 ある者は骨を折られ、またある者は地面に植えられ、そのまたある者は別の襲撃者と顔面からぶつけ合わされ、撃沈しているのである。

 楽な相手だと思っていたはずが……とんだ化け物じみた実力の王女たちに襲撃者たちは恐怖を覚えた。

 一応、息の根は止められていないとはいえ‥‥‥今後、トラウマを抱えてしまってこの仕事に漬けなくなったり、女性恐怖症になってしまうかもしれない。

 だが、一応彼らにはそれぞれの目的があるために引き下がるわけにもいかず、本当ならば襲撃者たち同士でも敵なのだが、ここは手を組んで粉骨玉砕されまくっているのであった。


「相手の質が高いのであれば、こちらは物量で押せ―――――!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!やったるでぇぇぇぇ!!」
「誰があの王女たちを手に入れらるかはわからんが、今はただ協力して抑え込めぇぇ!!」
「「「「ふぁぁぁぁいとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 やる気を出し、ひたすらに王女たちを無力化しようとする襲撃者たち。



 中には正面突破は無理だと思い、眠り薬や毒矢を放つ者もいたのだが‥‥‥‥王女たちは適当にぶちのめした襲撃者たちを拾っては体を使って仰いだり、盾にして毒矢を防いだりなど、臨機応変に対応してしまう。



 もはやこの王女たちを捕らえるのは不可能かと、だんだん襲撃者たちが思いはじめていたが‥‥‥一方で、王女たちも限界が近かった。

 いくら無茶苦茶強くなっていても、所詮は王城に住まうか弱き(?))王族の少女たちである。

 体力的にきつくなってきて、骨を折れずにひびだけ入れたり、もみじおろしにしようとしても大根おろしのようになったりと、徐々にその攻撃が弱まってきた。


「ぜぇ、ぜぇ・・・・・も、もう限界が近いですわ」
「お姉さま頑張るですの!!敵もあとちょっとでいなくなるの!!」

 息を切らし始めたルルリアに対して、アルミアは鼓舞するように声をかける。

「諦めたときが試合終了だと、どこかの人が言っていたの!」
「どこかの人って誰ですか!?」

 思わずツッコミを入れるルルリア。

 その拍子に、隙が生まれ‥‥‥


ドスッ
「っ!?」

 油断したその隙に、防げなかった小さな矢がルルリアに刺さった。
 
 流石に命を奪うことが目的ではないようで、当たったのは足であったが‥‥‥その激痛にルルリアは思わず膝をつく。

「お姉さま!?」

 姉であるルルリアの負傷に気が付き、アルミアは振り向くが、その目に映るのは、襲撃者たちがルルリアを取り囲んでいた瞬間であった。

「だ、だめなのぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ルルリアの危機に動きたいが、今相手にしている者たちのせいですぐに動けず間に合わない。

 叫び声をあげ、アルミアが涙を流した…‥‥その時であった。





「『召喚タキ&ヴィーラ』!!すぐにけちらせぇぇぇ!!」

 声が響き、何かがズンッという音と共に出現する。

【了解なのじゃ!!】
【なんか久シぶリだけど、やってヤるよ!】

 大きなモンスターが2体、姿を現し、襲撃者たちをまとめて薙ぎ払う。


「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 宙を舞う襲撃者達を見て、ルルリアとアルミアはあっけに取られた。

 何が起きたのかすぐにはわからず、しばし硬直し、そして気が付く。

「る、ルースさん!」
「転生者仲間の人なの!?」

 その大きなモンスターたちの間から姿を現したのは、数日前にこの路地裏で出くわした人物。

 だが、その数日前の姿とは異なり、金色の本のような物を傍に浮かべ、そこにはもう一人別の人物が立っていた。

「ば、バルション学園長さん!?」
「が、学園長なの!?」

 王女として、それなりに出くわしたこともあるグリモワール学園の学園長のバルションが立っていたことに二人は気が付いた。

 それと同時に、その姿を見て先ほどの本のような物体の正体が魔導書グリモワールである事にも気が付く。



 とにもかくにも、今のこの瞬間、襲撃者たちの大半がふっ飛ばされ、周囲には人が少ない。


「なんでもいいから二人とも、早くタキたちに乗れ!」

 大きなモンスターの内、一体の背中に乗った人物……ルースの言葉に、状況を把握したルルリアとアルミアは迷わずにもう一体のモンスターの方の背中に乗った。


「タキ、ヴィーラ!さっさとこの場から逃亡だ!」
【あと2,3人ほどふっ飛ばしたかったが…‥‥まぁ良いじゃろう。しっかりつかまるのじゃ召喚主殿!】
【どうせナらこッちの背に乗ッてほシかったかな……まぁ良いか。コっちはこっチでツかまってね】

 声が聞こえたと同時に、一瞬の浮遊感を覚え‥‥‥次の瞬間、すごい風圧が襲った。

「うわぁぁぁぁぁ!?」
「は、早すぎるですのぉぉぉぉ!!」

 必死になって今乗っているモンスターの背中につかまりつつ、何とか路地裏から出ていくのであった…‥‥
 
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