黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

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迷いの冬で章

190話

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……ルースたちが王城へ向かっているその真後ろ、気が付かれないほどの距離を空けつつ、エルゼ達は追跡をしていた。

【久しぶりに呼ばれたと思ったら……】
【追跡って、何を考えているんでありますか】
「良いからこっそり追って!!」
「それでいて、気が付かれないようにかつ、余裕をもって追跡できるようにな!」

 なかなか難しい注文を受けつつ、彼女達の召喚魔法によって呼ばれた火竜とシーサーペントの二体は顔を見合わせつつ溜息を吐いた。
 
 個人的には、それぞれできれば存分に暴れるようなことをしたいし、そうでなくとも誇りを持って使用されたい。

 だがしかし、元々追跡に向いていないような体の大きさや力を持つがゆえに、このような事をさせられるのは嫌なのだが…‥‥そうは言えない雰囲気をエルゼ達が持っていたので、大人しく従うことにしたのであった。


 一応、それぞれタキと同等ほどの力を持つのだが…‥‥げに恐ろしきは乙女の嫉妬から出てくる威圧である。

 モンスターと言えども、直感的に逆らっては不味いものだと理解したので、黙って追跡を行うのであった。‥‥‥少々複雑だが、乙女の戦いに口を出すほど厄介なものは分かるのである。

 なお、世界を滅ぼせるだけのモンスターたちの中には、色恋沙汰で滅ぼし者がいるという話があったので、どれだけ恐ろしい事なのかよく知っていたと言うのもあった。



「にしても、あの二人……盗聴してみたけれども、この国の王女だったとは驚きよね」
「そう言えば、国同士の付き合いで見たことがあったが‥‥‥母が意気揚々と武術を教えていたという話があったな。道理で母と似たような武術の心得にある雰囲気を持つのだな」
――――――何ニセヨ、今ハマダ油断デキナイヨ。

 バトのその言葉に対して、エルゼとレリアは同意して頷きつつ、追跡を続ける。

 エルゼの長年のストーカー技術によって、大体の現状の把握はできたのだが‥‥‥‥それと同時に、ある不安があった。

 それは‥‥‥自分たちがそうであるように、ルースがある事をやらかす可能性であり、下手をすればとんでもなく厄介なことになるのは間違いない事でもある。


 とにもかくにも、それを防ぐために彼女たちは警戒するのだが‥‥‥なんとなく、嫌な予感しかせず、乙女の勘の警報が鳴り響いているのであった。









……一方、都市メルドランから出発して十分が経過し、ようやくルースたちは王城がある首都へ到達していた。

 抑えつつ、安全性を高めていた走りだったとはいえ、タキたちの速度は早く、大体の予想通りの到着である。


 とりあえず、一旦タキたちの召喚を解除して送還しつつ、ルースたちは都市内へ入った。

 このまま王城へ目指せばいいのだが‥‥‥一つの問題があった。


「そう言えば、王女様達が家出した話が広まったんだっけ?となれば、王城があるこの都市内でも既に相当知れ渡っていますよね?」
「そーれが大問題よね。王女が帰還できるだーけならばいいのだけれども、彼女達を探し回っている者たちもいーるだろうし、ややこしいことになりかーねないのよ」

 このまま王女たちを連れ帰っても……争奪戦が起きたりする可能性があるのだ。

 
 メルドランでの路地裏前の見にくき争いのように、いや、それ以上にひどい者になる可能性を考えると、普通に王女たちを正面から王城へ連れていくのは悪手であろう。

 となれば、どうすればいいのだろうか?


「ここはやーっぱり、変装……よりも、透明化できる魔法を使うわーね」
「透明化ですか?」
「なんですのそれ?」
「光の屈折を利用するの?」

 バルション学園長の言葉に、ルースたちはきょとんとしつつも、その魔法を使うことに賛成した。

 姿を隠してしまえば面倒事を回避できると考えたからである。

……一応、王城内への不法侵入もできそうなものだが、それは色々とやってはいけないことなので、説明も可能なバルション学園長だけは透明化せずに、ルースたちのみ透明化した。

 
「‥‥これってさ、本当に透明になっているのかな?」
「正確に言えば、光を曲げて見せるので、透明になったという表現が正しいのかどうかわからないの」
「うーん、説明されてもよくわからないわね」
「ごちーゃごーちゃ言わない。さっさと向かうわーよ」

 バルション学園長に従い、王城へ向かってルースたちは歩き始めた。



……この時はまだ、王女を帰せばもう終わりだとルースは思っていた。

 だがしかし、まだまだ面倒ごとが起きることを、ルースはわからなかったのであった…‥‥
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