どうでもいいですけどね

志位斗 茂家波

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後編 ある馬鹿王子は最後まで理解できず……

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「なぜだ、なぜこうなってしまった…‥‥」



 王城にて、眼下に広がる民衆達を見ながら、ベジタリー王国の新国王になったナバルカスはそうつぶやいた。




…‥数年前、まだナバルカスが王子だった時に、ある男爵令嬢と恋仲になった。

 その男爵令嬢といるのはとても楽しく、遊び惚けるのはこれほどまでの快楽を得るのかと思ったほどであった。

 だが、その男爵令嬢と結婚したくとも、王子にはすでに婚約者がいた。


 公爵家の令嬢ミラージュであり、彼女がいる限り、この男爵令嬢と結ばれることはできないと、彼は思ったのである。


 
 正直なところ、ミラージュ令嬢を正妃として、男爵令嬢の方を側室に向かえるという手段もあったのだが‥‥‥その男爵令嬢が自分を正妃にしてほしいと言われたので、彼はその足りない馬鹿な頭を使って、ミラージュ令嬢を、彼が作った虚偽の罪で断罪して、自身を正当化して婚約破棄をしようと目論んだのである。






 ただ、結果としては思いのほかあっさりとミラージュは婚約破棄を受け入れ、断罪をする前に去ってしまった。

 まぁ、手間が省けたし、楽ができたのだから別に良いかとナバルカス王子は思っていたのだが…‥‥彼は知らなかった。


 いや、知っていたはずなのだが、とうの昔から足りない頭の彼は忘れていたのである。



 婚約者という繋がりを得たときから、彼は王子としての勉強や職務を放棄し、ミラージュに押し付けていたという事を‥‥‥‥





‥‥‥その結果、ミラージュ令嬢が勘当された翌日から、急激にナバルカス王子には大量の仕事が舞い込んできた。


 彼は自分を物凄く有能な人物だとうぬぼれていたが、その成績は最下位。

 婚約者であったミラージュ令嬢がフォローしていたにすぎず、ナバルカス自身はとんでもない無能の屑野郎だったのだ。


 仕事をこなしているつもりでも、ダメだしされまくり、修正されまくり、そしてどんどん王子としての仕事が膨らんでいく。


 サボろうとしても、血走った目の侍女やその他騎士たちによって押さえつけられ、机に向かわされ、毎日毎日とんでもない量の仕事をするしかなくなったのだ。


 ノイローゼになりそうなほどだったが…‥‥ある日、急に彼の父親である国王が退位することを公表し、即座にナバルカス王子は即位して、ベジタリー王国の新国王になった。


 元国王となった父親はどこかへ消えたが、これで王子の時の仕事が無くなるとナバルカスは喜び…‥‥そして、現実を見てしまった。



 国王の仕事量の方が、明らかに王子時代よりも多いという事に。








 とりあえず、彼はその仕事の山を処分することにした。


 ただ、自ら取り組んだというよりも…‥‥こなすのではなく、物理的になかったことにしたのである。



 もともと予定されていただけなので、処分してなかったことにしても、新たにやり直せば問題がないだろうと思ってやったのだが‥‥‥‥これは非常に悪手であった。


 もともとこの仕事は「予定」されていたもの。

 ゆえに、確かになかったことにすればよかったのかもしれないが…‥‥それはつまり、今までミラージュ令嬢や、ここまでなんとか仕事を消化した父の仕事を踏み倒すことになった。




 ダムの建設が予定されていた地では中止となってしまい、農場を広げるつもりだった場所では荒野が広がり始め、予定されていた商売用の土地が得られなくなった商人たちは国から出ていく。

 その他にもどんどん予定通りであったはずの事がことごとく無くなって、その度にこの国にもたらされるはずであった利益も消え失せていき、一気にベジタリー王国は貧しい国と移り変わった。


 ならばどうすればいいと思い、新国王のナバルカスは様々な政策案を出して実行したが…‥‥無能にもほどがあった。


「お金がない、どうしましょう陛下?」
「ならば金をある所から搾り取れば良い!!無い所からでも、生かすギリギリまで取り立てれば良い!!」

「今年は豊作のようです」
「良し、今まで以上に搾り取って行け!!無駄の無いように利用するのだ!」

「隣国との友好条約の更新ですが」
「そんないらん国との友好条約なんぞ捨ててしまえ!戦争を仕掛け、わが国の領地とするのだ!」

「親が逃げ、孤児が増えております!!」
「なら女の子だけ保護しろ!!将来はここに来させるのだ!!」


‥‥‥などと、清々しいほどの大馬鹿屑野郎ぶりを発揮し、たった数年の間に国はボロボロになってしまった。


 隣国に戦争を仕掛ければズタボロになる程負け、国内の商業は消えうえ、荒れ果てた土地ばかりとなり、何もかも失っていく人が多くなった。


 王族以外の貴族たちは仕事に追われ過ぎて過労で倒れ、かつてミラージュ令嬢がいたリアーゼ公爵家に至っては領民たちが反乱を起こし、当主は二度と帰らぬ人となった。




 そして今日、国民たちが一斉に決起し、王城へ押しかけてきたのである。


…‥‥すべてはこの馬鹿国王、いや、稀代の大馬鹿ド屑野郎ナバルカスの手によって、起きた悲劇であり、この屑野郎を倒さなければ気が晴れないという理由で。




 とはいえ、この稀代の大馬鹿ド屑阿保野郎とて、己の命が惜しい。




 民衆が城門を突破し、流れ込んできた時に、彼は王族用に作られている隠し通路へ逃げた。


 婚約を破棄してまで正妃にした元男爵令嬢や、その他彼のごますり役として等でついていた臣下たちも置き去りに、必死に逃げに逃げて逃げまくる。


 それはもう、国王としての体裁も…‥‥いや、元々なかったのでそこは変わらない。




 あるとすれば、ただ一人の稀代のキングオブ大馬鹿ド屑阿呆マヌケ野郎の姿しかなかったのである。



 ただひたすらに、この世の悪いものだけを詰めたような愚者は走って逃げる。

 宛もなく、そしてその最後の裁きを受ける場所へ、自ら気が付かずに進んでいたのだが…‥‥何にせよ、気が付いたときにはもう遅いという事だけは、確実に言えるのであった。


 馬鹿に付ける薬はないというように、この愚者には何も成せることはないであろう…‥‥
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