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第3章 最初で最後の国体
第162話 事件
しおりを挟む翌日。
この日も放課後の練習はギャラリーが沢山。
そしてまたしてもアポ無しの取材。
涼真と慎太郎だけでなく新城、髙木、真田、そして国体メンバー以外では主力の神崎も呼ばれていた。
唐沢「…平井さん、時間です、呼んできてください」
平井「はい」
中澤「ったく…」
(調子狂うぜ)
そして取材組が戻ってくる。
2日連続でゲンナリしている涼真と、ニコニコ顔の慎太郎。そして真田。
新城、髙木、神崎もやや疲れた様子。
武蔵「…おつかれ」
涼真「…おう」
昨日に増して目が死んでいる。
武蔵「大丈夫か?」
涼真「ほとんどバスケと関係ねえこと聞かれた…プライベートにズケズケ踏み込んできやがって…なーにが『答えたくない事は答えなくていい』だよ…答えたくない質問しかしねえじゃねえか」
珍しく愚痴る涼真。
唐沢「…」
慎太郎はと言うと、ギャラリーに手なんて振っている。
女子の一角が黄色い声を上げる。
美保「…」
(今まで見向きもしなかったくせに…ミーハーって怖い)
春香(やばい、美保ちゃんこれは怒ってる時の気配…)
美保からどす黒い何かを感じた春香、戦慄する。
新城「よし、始めるぞ!」
星垓メンバー「「「おう!!!」」」
だが事件はこの日に起こった。
この日もフットワークを経て1対1の練習。
涼真の相手は、なんと新城。
「お!主将対エース!」
「勝つのはどっちだ…?」
マスメディアの一角からそんな声が。
涼真(アホか)
新城(ここでの勝ち負けに意味なんてないだろうに…)
だが、2人とも真剣。
新城がオフェンス、涼真がディフェンス。
ダム!!!
新城が仕掛ける。
その瞬間
パシャパシャッ!!!
新城「!?」
突如複数枚のフラッシュ。
フラッシュの閃光が目に入った新城、目を瞑ってしまいボールコントロールが乱れる。
そしてそれは、ディフェンスしていた涼真も同様だった。
涼真、突然プレイをやめる。
新城「おい?」
涼真、ツカツカとギャラリーでカメラを構えるカメラマンの元へ。
涼真「マスメディアってのはこうも節操がないもんなんですか」
「!?」
声を掛けられたカメラマンはその場に固まる。
涼真「バスケの競技の時はフラッシュ撮影は禁止ですよ?そんな事も知らないで取材に来たんですか?」
カメラマン「そ、それは…ほら普段バスケの取材なんて来ないから知らなくて。次から気をつけるよ」
涼真「…」
涼真、無言でコートへと戻ろうとする。
だが
「別に練習なんだし…高校の体育館は市や県の体育館と比べて暗いんだしフラッシュ位仕方ないじゃないか」
「そんな目くじら立てる事かなぁ」
こんな事を言い出す他のマスメディアがいたのだ。
涼真「…今なんと?」
「たかが練習で目くじら立てる事じゃないって。多少環境が変わった位で騒いでたら全国でも勝てないよ?」
「高校生が少し上手いからってプロにでもなったつもりかな?」
更にこんな言葉が飛び出してきた。
「あの父親にしてこの子ありか…」
ブチッ…
涼真「てめえ!!!もういっぺん言ってみろ!!!」
慎太郎「やば…」
(あの温厚な涼真がキレた…)
武蔵「とりあえず涼真を止めんぞ」
慎太郎、武蔵、そしてそれを聞いていた大樹と3人がかりで涼真を後ろから抱き留め抑える。
それでも尚涼真は、カメラマン達に食ってかかろうとする。
唐沢「涼真君、やめなさい」
その言葉でようやく涼真は力を抜き引き下がる。
カメラマン「まったく…唐沢先生はどういう教育をしているんです」
唐沢「その事については申し訳ありません、この通りです」
唐沢、頭を下げる。
ギャラリーの在校生やマスメディアはこの騒動にザワついている。
唐沢「ですがあなた方の今の発言は頂けませんね。こちらは非を謝罪しました、次はあなた方の番です」
カメラマン「は?」
唐沢「事前の私へのアポイントメントも無しに勝手に選手を連れ込み、練習時間を削らせて強引に取材をする記者」
ギク!
幾人かの記者が動きを止める。
唐沢「目などの五感の感覚が大事なバスケットボールにおいて、それを考慮せずにフラッシュを焚いて平然としているどころか正当化するカメラマン」
カメラマン「…」
唐沢「あまつさえ、それを注意されて逆ギレの如く自らを正当化するだけでなく、選手のプライドを傷つける貴方」
唐沢、続ける。
唐沢「そして…」
唐沢、慎太郎や幾人かの選手の方を向く。
唐沢「我々はまだ全国においてたまたま結果を残しただけなのに、天狗になり調子に乗る一部の選手」
慎太郎「う…」
唐沢「はっきり言いましょう。あなた方のした事は練習の妨害行為に他ならない。私はこの部活動の責任者として、あなた方の立ち退きを要求します。それが受け入れられるまで練習は再開しません」
新城「ちょ…」
新城、言いかけてやめる。
唐沢の言うことに間違いはなく、且つ必要な事であると理解したからだ。
マスメディア達は絶句する。
だが、その場から動く者はいない。
尚も食い下がる取材陣。
唐沢「…聞いていただけないのなら仕方ありません、皆さん、今日の練習はここで終わりです。帰りましょう」
唐沢、ため息の後に告げる。
こうしてこの日は異様な雰囲気の中練習が中止された。
-そしてロッカールームにて-
涼真「お疲れっす」
涼真、着替えもそこそこに早々に部室を去り帰宅。
翔太「…にしても涼真、あんな感情を露わにするタイプだっけ」
政史「確かに…」
賢「てか『あの親にしてこの子あり』って…」
武蔵「…」
真田「北条…北条…もしかして」
神崎「慎太郎、何か知らない?」
慎太郎「…知ってますけど…プライバシーに関わるので」
新城「ま、そこは涼真が自分から話してくれんのを待つしかないだろ」
髙木「とりあえず明日からはアポイントメント無しの取材禁止、部活動時間はバスケ部関係者以外ギャラリーや体育館への出入り禁止になったからな。練習もちゃんとできるだろ」
真田「…先生に指摘された通り…調子に乗ってたかもしれないです…そこは反省しねえと」
慎太郎「…」
そして翌日の練習前。
この日はギャラリーはがらんとしている。
涼真はいつもと変わらず早めに来て自主練習。
神崎「心配することもなかったかな。いつも通りだ」
政史「そういや慎太郎、結局デート誘われたのはどしたん?」
慎太郎「ああ、あれなら断ったよ。大会近いし時間が惜しいって言ったら引き下がってくれた」
翔太「なーんだ」
(せっかく尾行しようと思ったのに)
美保「……」
遠くで聞き耳をたてていた美保、人知れずホッとした表情に。
臼井「春香ちゃん…今の見た?」
春香「見ました…!これは確定ですかね!」
この2人にはバレていたが。
新城「よし!集合!」
練習前に恒例の円陣を組む。
涼真「新城さん、ちょっといいすか?」
新城「ん?なんだ?」
涼真、その場で頭を下げる。
涼真「昨日は癇癪を起こしてすみませんでした。今日からまた以前にも増して真剣に練習させてもらいます」
一同「…」
誰も声を出さない。
(お前は悪くないのに…)
(律儀な奴だ…けど)
(それが俺達の北条涼真だよな)
新城「…お前の気持ちはわかった。謝罪を受け入れよう。あまり長く話しても意味無いしこの話はこれで終わりな。
さあ!今日も気合入れてけよ!」
星垓メンバー「「「おう!!!!」」」
その頃、某編集部では
山下「よろしくね、中嶋君」
中嶋「中嶋です。こちらこそよろしくお願いします」
国体の取材に向け、顔合わせをする2人の記者。
中嶋「山下さんはバスケットボールにあまり詳しくないとお聞きしますけど」
山下「ええ、そうなんです。なので色々解説お願いしますね。こないだもインターハイで村上さんに散々…」
中嶋「微力ながら力になれれば幸いです」
山下「さて…国体に向けて優勝候補の県の主力を担う高校の取材をしたいのだけど…近場だと星垓かしら」
中嶋「ああ、あの北条ジュニアのいる所ですね」
山下「ジュニア…?」
中嶋「ああ、北条涼真はですね、元日本代表にして元プロバスケットボール選手、今は亡き北条壱馬氏の息子ですよ」
山下「ええ!?」
(知らなかった…)
……To be continued
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