子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
38 / 480

学生期 弐 6

しおりを挟む
「…遅くなりました!」


昼休憩も残り20分…って時間にお姉さんが急いだように走ってくる。


「数えるの大変だった?」

「…いえ、それは直ぐに終わったのですが…少し町の方へと手紙を出しに行ってましたので戻るのが遅れました」

「…今日も来たんですね」


俺のお姉さんは呼吸を整えながら今の時間になった理由を話し、弟が少し驚きながら意外そうに言う。


「あ、すみません…やっぱりお邪魔ですよね?」

「兄様がそんな意地悪な事を言うはずが無いじゃない。はいコレ、貴女の分よ」

「あ。ありがとうございます!」


お姉さんが気まずそうに言うと妹が否定してローストビーフの盛られた紙皿を渡し、お姉さんは嬉しそうに受け取った。


「…!美味しい!柔らかくて肉の甘みが…!どんな肉を使ったんですか?」

「コレはアラジカの肉だね」

「アラジカ!?そんな最高級の肉を…!?」


お姉さんは肉を一切れ食べると感想を言って材料を尋ねるので俺が教えると固まったかのように驚く。


「この前はグリーズベアーの熊肉で作ったから今回は鹿肉」

「…ぐ、グリーズベアー…ソレも食べたかった…でもコレもとっても美味しい…!」


俺が鹿肉を使った理由を話すとお姉さんは残念そうに呟きながらも幸せそうに食べるので…


「いやー、魔物素材は魔素関係のおかげで寄生虫とか病原菌とか病気とか処理とか…そういう面倒なのを一切気にしなくていいから生でも食べれて最高だね」


俺は前世の記憶からの知識を少し披露しながら魔物素材のありがたみを告げる。


「…でもこんな簡単に取って来れるのは兄さんぐらいじゃない?」

「ええ。お兄様が持ってくるまではお父様もお母様も『こんなのを食べられるのは奇跡に近い』とまで言うぐらいでしたし」


弟が微妙な感じで笑いながら言うと妹も若干呆れたような感じで賛同した。


「…ま、まあ普通は単純に魔物を倒すだけでは手に入らない素材ですからね…」

「たまに兄さんが持たせてくれるから家に帰る度に『お土産は無いのか?』って聞かれるし…」

「私もです。無いと返した時のお父様の落ち込みようといったら…」

「『兄さんに直接頼めば?』って言っても『それはならん』って変な頑固を発揮するんだよね」

「ええ。お父様もそんな意固地にならなくとも良いと思うんですけども」


お姉さんも微妙は感じで賛同すると何故か弟と妹が呆れながら家に帰った時の愚痴を言い出す。


「…おっと、そろそろ僕達は行かなきゃ」


そうこう話してる内に昼休憩も残り10分になり、弟が妹を連れて戻って行く。


「あ。そういえば魔石は全部でどれくらいあったの?1000超えてた?」

「1000個どころか2000超えてましたよ!ゴブリンの魔石だけで254個でしたし…」


スライムが230個でコボルトも…と、お姉さんは俺の問いに目を輝かせながら魔石ごとの個数を教えてくる。


「そ、そんなにあったんだ。一年分って結構溜まるんだな…」

「そりゃ坊ちゃんがこの学校に来るまでは魔法協会が研究で湯水のごとく使用しても在庫は十分に確保出来てる状態でしたからね…」


おかげで供給が止まるや否や大変な事態に陥りまして…と、お姉さんはため息を吐きながら呆れたように魔法協会の考えの甘さを愚痴り出す。


「あー…あの噂ね」

「全く、ホントいい加減にしてほしいものですよ。協会側は魔石を売却『してもらっている』立場なのに…卸売のように当たり前に手に入るモノだと勘違いした協会員達がゼルハイト家とのパイプを壊しにかかりますし」


俺が噂の事を思い出しながら呟くとお姉さんは怒りを思い出したかのように当時の状況を話す。


「あの時、魔法協会側もかなりの大騒ぎだったんですよ?」

「そうなの?」

「ええ、政府と共に噂を消すためにみんな大忙しですよ。秘匿事項を知ってる魔法協会の上層部は総出で…他の国からも来てゼルハイト家へと直接謝罪に行ってますし」

「へー」

「もうとにかくゼルハイト家とのパイプを壊さないように…修復して信頼回復のために大忙しでした。私も橋渡し役で研究時間がどんどん削られましたし」


…なんか意外と大変だったのは言いがかりを付けられた俺の実家だけじゃなく…


お姉さんの話を聞く限り、逆にやらかした側の方が尻拭いやらで更に大変だったようだ。


「そんな状況なら処罰された人って結構重かったんじゃない?」

「だいぶ重い処分が下されましたよ。『また同じ事をしでかす人が出ないように』と、見せしめの意味も込めてますから」

「へー…どんな…あ」


俺が興味本意で聞くとお姉さんは肯定しながら返すので、詳細を聞こうとしたら予鈴のチャイムが鳴る。


「おっとマズイ…じゃ、俺は授業に出てくるから…食べ終わったらその袋に捨てといてね」

「はい。勉強頑張ってください」


俺は急いで火の始末をしてゴミ袋を指差して指示し、校舎へと走った。


「…ふー、セーフ」

「お。珍しいな、お前がこんなギリギリに来るなんて」


なんとかもう一度のチャイムが鳴る前に教室に着くとドアの近くの席の男子生徒が意外そうに聞いてくる。


「ちょっと寝坊して飯の時間が遅れた」

「ははは!どんだけ寝るんだよ!」

「寝る子は育つって言うからな」

「…これから午後の授業を始めます」


俺が適当な嘘をついてボケると他の席の男子生徒が笑うので、俺も笑いながらそう返すと担任が入ってきた。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...