255 / 480
青年期 191
しおりを挟む
…それから一週間後。
ロマズスル辺境伯からの増援である5000人の兵が戦場に到着し、そのおかげでライツを少し押し戻せたようだ。
「…二万二千の伯爵と一万八千のライツか…増援のおかげで一時的に盛り返したようだけど、さて…」
俺は北の国境付近での戦況が書かれた報告書を見ながら呟き、今後の展開を頭の中で予測した。
その二日後。
今度は南の国境付近にソバルツが攻めて来た…と思えば、その翌日には西の国境付近にドードルが。
…幸いな事にソバルツもドードルも兵の数が約5000ほどらしいのでただの嫌がらせの意味合いが強い牽制だろう。
ーーーーー
「団長、若とお嬢が来てるぞ」
「あ、ほんと?」
「兄さん久しぶり」
「お兄様お久しぶりです」
俺が自室で報告書を読んでいるとドアがノックされ、団員がドアを開けて報告してきた…と思えば直ぐに弟と妹が入って来る。
「最近は兄さんも忙しそうだね」
「そうか?そうでもないぞ」
「でも来る度に書類仕事をされていますし…」
机の上に書類を置くと弟が笑って労うような感じで言うので否定的に返すと妹は俺が忙しそうに見える理由を話す。
「ああ、コレは暇だから。ただの暇つぶしとして領地とかの報告を確認してるだけで、事務作業でも書類仕事でもなんでもない」
「…確認だけでも立派な仕事だと思うけど…まあ兄さんがそう言うなら」
「そう言えば、あのヴェリュー領の方は豊かで税収が多いとか聞きましたけど…本当なのですか?」
俺の返答に弟は微妙な顔で呟くも受け入れるように言うと妹が確認してきた。
「マジマジ。俺や代行達が特に何もしなくても元から余裕で黒字になってたぐらいには金山レベルの領地だったな」
「へー、そうなんだ」
「どうりで周りの人達が羨ましがってたわけですね…」
俺が肯定して高い評価を下すと弟は意外そうに言い、妹は納得したように呟く。
「まあ今は税収を黒字ギリギリにまで減税してその分教育や福祉関連に回してるから俺の手元には雀の涙程度にしか入って来ないが」
「…ガウ領やローズナー領もほとんど兄さんの手元にお金は入って来ないんでしょ?父様から聞いたけど」
俺の笑いながらの内情の暴露に弟が微妙な顔のまま確認するように返す。
「俺には毎週の魔石マネーがあるからな。だから他の人が領地を奪うと大変な事になる」
「…ウィロー伯爵の事ですね。追い詰めたのも没落寸前で救ったのもお兄様が…って噂なので、学内でのお兄様の評判はとんでもない事になってます事よ」
俺が肯定しながらボケるように言うと妹も微妙な顔で返し、ため息を吐きながら俺の評判について言及する。
「ははは。俺は関係の無い赤の他人にどう思われてようが気にしないからどうでもいい」
「まあ兄さんはそういうのは全く気にしないよね」
「お兄様ですものね」
俺の笑いながらの流すような発言に弟も妹も慣れて理解してるかのように笑う。
「でも流石にお前らにケチが付く感じになると対処しないといけなくなるか…」
「大丈夫だよ、兄さんは既に『子爵』で『当主』なんだから。跡継ぎの僕らとは立場が全然違うし」
「家族であってもお兄様は独立した貴族なので、例え謂れのないデマによる悪評が広まったとしても私達には影響は一切ありません」
俺自身の事ならば気にはしないが、家族にまで事が及ぶとあれば話は別なので…対処や対策を考えながら呟くと弟と妹がフォローするように返した。
「だといいんだが」
「あ。そういえば…今思い出したんだけど…」
俺が警戒するように言うと弟が雰囲気を変えようとしてか話を切り替えるように言い出す。
「なんだ?」「なにかありました?」
「ほら、昔兄さんが『特別クラスの生徒がダンジョンで攻撃魔法に頼らない戦い方をするのはなんでだ?』って言ってたじゃん?」
「あ。そういやそうだな…今の今まですっかり忘れてたわ…」
俺と妹の問いに弟が昔の俺の疑問を持ち出してきて、俺は今更になって思い出して呟く。
「アレ、戦場での戦いを見越しての訓練なんだって」
「あー…!なるほど!」
「まあ、攻撃魔法ばかり使ってると隙が大きくなる上に継戦に問題が出て来るから先に進めなくなる…っていう問題点を解消する意味合いもあるらしいんだけど」
「確かに。そういう事か…」
弟の説明を聞いて俺は納得しながら呟き、数年越しに疑問が解けてスッキリしたような気持ちになる。
「…どういうことですの?」
「戦場で乱戦になると攻撃魔法とかは隙が大きい上に味方も巻き込む可能性も出てくるから使えなくてな」
「なるほど。でもそれなら乱戦になる前に使うか、乱戦にしなければ良いのでは?」
不思議そうに尋ねる妹に俺が体験談を交えて説明すると納得した後に更に疑問を聞く。
「その通り。でも陣形の先頭は基本的に凄腕の弓兵と魔法使いが居て、相手が魔法を使おうとすれば矢で射抜かれる事になるワケだ」
「威力出そうと詠唱するなら集中しないといけないし、無詠唱だと威力や届く範囲が半分以下になるでしょ?」
「あ…!」
「集団戦や戦争で攻撃魔法を使うと相手に大打撃を与えられる代わりに、使える条件がかなり限られてるんだよ。当然自分も相手もお互いに警戒するから結局は白兵戦での乱戦の勝負になる」
「…なるほど…!そうだったんですね…!」
俺と弟がなるべく知識の無い妹にも分かり易いように説明すると妹は理解したように立ち上がって驚くような反応をした。
ロマズスル辺境伯からの増援である5000人の兵が戦場に到着し、そのおかげでライツを少し押し戻せたようだ。
「…二万二千の伯爵と一万八千のライツか…増援のおかげで一時的に盛り返したようだけど、さて…」
俺は北の国境付近での戦況が書かれた報告書を見ながら呟き、今後の展開を頭の中で予測した。
その二日後。
今度は南の国境付近にソバルツが攻めて来た…と思えば、その翌日には西の国境付近にドードルが。
…幸いな事にソバルツもドードルも兵の数が約5000ほどらしいのでただの嫌がらせの意味合いが強い牽制だろう。
ーーーーー
「団長、若とお嬢が来てるぞ」
「あ、ほんと?」
「兄さん久しぶり」
「お兄様お久しぶりです」
俺が自室で報告書を読んでいるとドアがノックされ、団員がドアを開けて報告してきた…と思えば直ぐに弟と妹が入って来る。
「最近は兄さんも忙しそうだね」
「そうか?そうでもないぞ」
「でも来る度に書類仕事をされていますし…」
机の上に書類を置くと弟が笑って労うような感じで言うので否定的に返すと妹は俺が忙しそうに見える理由を話す。
「ああ、コレは暇だから。ただの暇つぶしとして領地とかの報告を確認してるだけで、事務作業でも書類仕事でもなんでもない」
「…確認だけでも立派な仕事だと思うけど…まあ兄さんがそう言うなら」
「そう言えば、あのヴェリュー領の方は豊かで税収が多いとか聞きましたけど…本当なのですか?」
俺の返答に弟は微妙な顔で呟くも受け入れるように言うと妹が確認してきた。
「マジマジ。俺や代行達が特に何もしなくても元から余裕で黒字になってたぐらいには金山レベルの領地だったな」
「へー、そうなんだ」
「どうりで周りの人達が羨ましがってたわけですね…」
俺が肯定して高い評価を下すと弟は意外そうに言い、妹は納得したように呟く。
「まあ今は税収を黒字ギリギリにまで減税してその分教育や福祉関連に回してるから俺の手元には雀の涙程度にしか入って来ないが」
「…ガウ領やローズナー領もほとんど兄さんの手元にお金は入って来ないんでしょ?父様から聞いたけど」
俺の笑いながらの内情の暴露に弟が微妙な顔のまま確認するように返す。
「俺には毎週の魔石マネーがあるからな。だから他の人が領地を奪うと大変な事になる」
「…ウィロー伯爵の事ですね。追い詰めたのも没落寸前で救ったのもお兄様が…って噂なので、学内でのお兄様の評判はとんでもない事になってます事よ」
俺が肯定しながらボケるように言うと妹も微妙な顔で返し、ため息を吐きながら俺の評判について言及する。
「ははは。俺は関係の無い赤の他人にどう思われてようが気にしないからどうでもいい」
「まあ兄さんはそういうのは全く気にしないよね」
「お兄様ですものね」
俺の笑いながらの流すような発言に弟も妹も慣れて理解してるかのように笑う。
「でも流石にお前らにケチが付く感じになると対処しないといけなくなるか…」
「大丈夫だよ、兄さんは既に『子爵』で『当主』なんだから。跡継ぎの僕らとは立場が全然違うし」
「家族であってもお兄様は独立した貴族なので、例え謂れのないデマによる悪評が広まったとしても私達には影響は一切ありません」
俺自身の事ならば気にはしないが、家族にまで事が及ぶとあれば話は別なので…対処や対策を考えながら呟くと弟と妹がフォローするように返した。
「だといいんだが」
「あ。そういえば…今思い出したんだけど…」
俺が警戒するように言うと弟が雰囲気を変えようとしてか話を切り替えるように言い出す。
「なんだ?」「なにかありました?」
「ほら、昔兄さんが『特別クラスの生徒がダンジョンで攻撃魔法に頼らない戦い方をするのはなんでだ?』って言ってたじゃん?」
「あ。そういやそうだな…今の今まですっかり忘れてたわ…」
俺と妹の問いに弟が昔の俺の疑問を持ち出してきて、俺は今更になって思い出して呟く。
「アレ、戦場での戦いを見越しての訓練なんだって」
「あー…!なるほど!」
「まあ、攻撃魔法ばかり使ってると隙が大きくなる上に継戦に問題が出て来るから先に進めなくなる…っていう問題点を解消する意味合いもあるらしいんだけど」
「確かに。そういう事か…」
弟の説明を聞いて俺は納得しながら呟き、数年越しに疑問が解けてスッキリしたような気持ちになる。
「…どういうことですの?」
「戦場で乱戦になると攻撃魔法とかは隙が大きい上に味方も巻き込む可能性も出てくるから使えなくてな」
「なるほど。でもそれなら乱戦になる前に使うか、乱戦にしなければ良いのでは?」
不思議そうに尋ねる妹に俺が体験談を交えて説明すると納得した後に更に疑問を聞く。
「その通り。でも陣形の先頭は基本的に凄腕の弓兵と魔法使いが居て、相手が魔法を使おうとすれば矢で射抜かれる事になるワケだ」
「威力出そうと詠唱するなら集中しないといけないし、無詠唱だと威力や届く範囲が半分以下になるでしょ?」
「あ…!」
「集団戦や戦争で攻撃魔法を使うと相手に大打撃を与えられる代わりに、使える条件がかなり限られてるんだよ。当然自分も相手もお互いに警戒するから結局は白兵戦での乱戦の勝負になる」
「…なるほど…!そうだったんですね…!」
俺と弟がなるべく知識の無い妹にも分かり易いように説明すると妹は理解したように立ち上がって驚くような反応をした。
107
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる