子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
409 / 480

青年期 345

しおりを挟む
ーーーーー





「…ん?なんか美味しそうな匂いがすると思ったら…」


分身の俺が夕飯を作ってると『厄災の魔女』と呼ばれてたらしい女が厨房に顔を出す。


「あんた料理も作れるのかい?」

「まあね。食べる?今会議中のお偉いさん達に出す料理だけど、なんか聞いた話では元『代表者』みたいじゃん?」

「じゃあ遠慮なく」


女の意外そうな問いに分身の俺が尋ねると女は皿に盛られてるカルパッチョをつまみ食いするように刺身を素手で食べる。


「…!?これは…!」

「行儀悪いな…育ちを疑われるよ?ちょっとぐらい待ってくれよ」


魔物の魚肉の味に驚く女に分身の俺は呆れたように咎めて別の皿に同じ物を用意した。


「…はい。いくら昔の人間とはいえ、食器ぐらいは使えるでしょ?」

「……コレは何の肉なんだ?今までに食べてきたのとはどれも違う…こんな肉は初めてだ」


分身の俺が馬鹿にしながら釘を刺すと女は睨みながらもフォークを手に取って食べ始め、一気に掻き込むように食べた後に疑問を聞いてくる。


「まあ世界中のほとんどの人がまだ口にした事がないだろうね。マーメイドの魚肉なんて」

「マーメイド…?魔物か!新種か?どういう魔物なんだ?」


分身の俺の返答に女は不思議そうな顔をした後に直ぐに思いついたようで興味を持ったように聞いてきた。


「…どちらかといえば魚系かな?上半身が人間で下半身が魚の特殊ダンジョンにしか出ない魔物」

「…それは『サハギン』とは違うのか?」

「アレは『半魚人』だからなぁ…まあ括りとか分類的には同じかもしれない。武器を使うらしいし肉は落とさないと思うけど」


分身の俺がなるべく分かりやすく簡単に説明すると女は似て非なる魔物を挙げ、分身の俺は微妙な顔をしながら図鑑の情報を思い出して違いを挙げる。


「…魔物の肉か…そんなものがあるなんて初めて知ったけどこんなに美味しかったなんて…」

「当時は知られてなかったの?いくらなんでもハンターや冒険者なら当時でも知ってたはずだけど」

「ダンジョンには良く行ったけど私達は専門ではなかったから」 


意外そうに呟く女に分身の俺が肉を焼きながら聞くと女はそもそもハンターでは無かった事を告げた。


「じゃあ知らないわけだ。コレもあげる」

「…美味しい!肉がこんなに柔らかくなるなんて…!」

「ハチミツとか玉ねぎを使ってちゃんと下拵えしたから。本当はパインも欲しかったんだけど…まあ仕方ない」


普通の肉を調理の技術で柔らかくして焼いたものを出すと女がナイフとフォークで切って食べて喜ぶので分身の俺はちょっと不満に思いながら説明する。


「このステーキならなんとか魔物の肉にも劣らない出来だと思うけど…問題は俺の腕では他の料理だと魔物の肉には勝てない事でねぇ」

「…まだある?」

「…聞いてねぇ…まあいいや。じゃあコレもあげる」


分身の俺が悩みを話すも女は食べるのに夢中で何のリアクションも取らずに次の料理を催促するので、分身の俺はため息を吐いてお椀に鍋物を移して出した。


「…!コレもさっきと同じ魔物の肉?」

「そうそう。魚肉しかないから、生か焼くか煮る料理しか出せない。今は」

「…焼く?」


女は一口食べて確認し、分身の俺が肯定すると不思議そうに聞く。


「『ムニエル』ってのがある。コレ」

「食べる!」

「あ」


皿に盛った料理を見せると『あげる』と言ってないのに女はフォークを刺して勝手に食べる。


「ソレは提供用だったのに…勝手に食べるとか野蛮人かよ」

「隙を見せる方が悪い」


分身の俺が呆れながら責めるも女はニヤリと笑って全然反省してないような様子を見せた。


「…自分の非を認めずに謝れない人間にはデザートはあげられんな。ソレで終わりね、バイバイ」

「ごめんなさい私が悪かったです次からは勝手に食べないから許して」


分身の俺はお仕置きとして食事の締めを抜きにする事を告げて手を振って追い返そうとすると女が早口で謝り始める。


「本当に?」

「本当に」

「じゃあデザートとして…このレアチーズケーキを」

「…ケーキ?今のケーキってこんな…あ、美味しい!」


分身の俺の確認に女が頷いて肯定するのでデザートを皿に移して出すと女は不思議そうに見た後にフォークで一口食べた。


「あとフィナンシェ」

「…!コレも美味しい!」

「で、提供する夕飯は終了」

「…この丸いのはまだある?」


二つ目のデザートを出すと女はレアチーズケーキの二切れ目が残ってるのにフィナンシェを食べて感想を言い、分身の俺が終了を告げるとフィナンシェを指しながら確認してくる。


「余りは全部貰っていいよ」

「いいの?ありがとう!」


形がイマイチで提供に向かない余りものを10個ほど渡すと女が笑顔でお礼を言う。


「ただ、今日中には全部食べて欲しい。焼き菓子とはいえ気温や湿度で安全に食べられる期間が変わるだろうし」

「夜食としていただくから大丈夫。このケーキは?」

「冷蔵出来る場所が無いから諦めて。空間魔法の施された何かを持ってるなら話は別だけど」

「…じゃあ今は諦めるしかない、か…取り戻したらまた作ってちょうだいね。それじゃご馳走様」


分身の俺の注意に女はそう返してレアチーズケーキを指差し、安全性が保証出来ない事を告げると女が諦めたように呟いて直ぐに厨房から出て行った。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...