ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

NANiMO

文字の大きさ
9 / 53
家主の距離が近すぎる

しおりを挟む
「きみのことはヘンリーと呼んだ方がいい? それとも、ハイネ?」
「まあどちらでもいいけど……できれば、ヘンリーの方が好きかな」

今更な質問に答えながら、エレベーターはぐんぐん下に降りる。
正午を回ったところだ。トーマス一押しのレストランでランチをとるために、部屋を出たところである。

左隣の圧迫感。エレベーターにはオレとトーマスしか乗っていないのに、狭く感じるのはトーマスの身長や肩幅のせいである。オレの身長が高くないことも相まって、並ぶと兄弟に見えなくもない。

「会社でもきみはヘンリーだった?」
「いや、会社ではハイネだったよ。ヘンリーって呼ばれる方が稀かな。父方の祖父母に会いにイギリスへ行った時くらいだ」
「ヘンリーのお父様はイギリス人なんだね」
「そう。父がUK出身で母が日本出身。オレの生まれは日本。幼い頃は向こうで生活してたけど、母の希望で日本に来たんだ。えっと……日本で言う小学校3年生くらいの時に」

懐かしい話だ。もう何年も戻っていない。オレが大学生になって入寮してから母は父と同じ家で暮らしたし、まとまった休暇がとれなかったから両親にすら会えていない。
そのうえ、現在仕事を辞めて、ネットで知り合った友達の家に居候させてもらっているなんて、とんだ親不孝者だ。

「そうなのか。どうりで……」
「変でしょう? 目の色も顔つきもさ」
「そうじゃない。きみの英語はイギリス訛りだから」
「あ、あぁ……そう。ごめん、卑屈なことを言って。責める意図はなかったんだ」
「私は気にしてないよ。きみ自身が気にしていることなら、敏感になるのは仕方ないことさ」

トーマスの快活な笑みにほっとすると同時に、痛烈な皮肉に聞こえて、口ごもる。
昔は今ほど国際化が進んでいなかったこと、通っていた日本の小学校が地方の田舎だったこと。これらの要因により、日本なんだか外国なんだか、どっちつかずの見た目はいじられがちだった。ハイネなんてキラキラネームもあり、当時はいじられるどころかいじめられていたし。
だから本当は、ハイネって名前は好きじゃない。


なんやかんやと話しながら。
纏っている服はもちろん、雰囲気も見た目も華やかなトーマスが気に入っているレストランなんて、さぞお高くてオシャレな店なのだろうなと、持っている中で一番見て呉れが良い服を引っ張り出したオレは不安に駆られながら後を追った……のだが。

「レストラン……?」
「そうだよ。いい店だよね。見た目がさ、『IH0P』を思い出すんだ。懐かしくて」

店の看板を見上げるトーマスはなんだか感動しているようだ。おそらく、郷愁に感じ入っているのだろうと思う。
だがしかし、オレが見上げているのはまごうことなき『ジョナサソ』の看板。言わずもがな、ファミリーレストランだ。

レストランには変わりないけれど、拍子抜けというか、暖簾に腕押しというやつだろうか。
一体どんなグレードの店に連れていかれるのかと身構えていた身としては安心できるのだが……。

「こういう店にも来るんだね」
「私をなんだと思っているんだい? ここは誰と来てもサイコーにピッタリな店じゃないか。そうだろう?」
「そうなんだ……オレはあんまり来たことがないから」

カノジョに振られた時、以来だよ。

「ヘンリー、何を頼む? 私は決まっているよ」
「あ……オレはサラダにする。この、コールスロー……」
「なんだって? それは主食じゃないだろう。草食動物なのか?」
「あー……食欲がなくって」
「それなら、仕方ないな。わかったよ」

席について、すぐさまさらされる視線の暴力。
トーマスは背が高い。金髪だし、パッと見てもネイティブだってわかるから、同時にオレにも視線が刺さるもので、とにかく、居心地が悪い。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

虐げられた氷の聖子は隣国の野獣皇帝に執着(愛)されすぎて溶かされる

たら昆布
BL
暴君皇帝×薄幸の聖子

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...