ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

NANiMO

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有宮ハイネの暴走

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一歩前進した関係がライフスタイルに影響を与えるのは当然のことだ。

トーマスと寝た日以来、オレたちの距離感は以前にもまして縮まった。特に精神面より物理面で。
ハグしてみたり手をつないでみたり、恋人っぽいことがさらに増えた。もちろん紛うことなき恋人関係のため『恋人っぽい』などという表現はいささか誤解を生む可能性が高い。『恋人ごっこ』ではないことは断言しよう。

なぜわざわざその変化について取り上げたのか? なに問題があるわけでもないというのに。好きな男に触られて嫌なわけがないし、より親密になることは互いの結びつきが強まることと同義で、それが良いことだということも認めよう。
それなら一体何が不満だというのか?

ぜいたくな悩みだが、実のところ、幸せすぎるのだ。

惚気ではなく、切実に目の前の問題としてとらえてほしい。
ボールを投げたら、いつか落ちてくるだろう?
右肩上がりだった株価だっていずれ右肩下がりになるだろう?
坂を上ればいつか下るだろう?
付き合い始めた当初抱いていた美しいフィルターだって、時間が経てば劣化するだろう?
思い出になるだろう?
あの頃はよかったな、と言って現実と比べるだろう?

それが嫌なのだ。

ボールを投げたら落ちてこなくていい。株価が上がり続ければいい(そうなったら投資は崩壊するけど)。ずっと上り坂でいい。
彼がオレに抱いている幻想が幻想として処理されなければいい。今ある現実に永遠の満足感を得て欲しい。
飽きられたくないし、捨てられたくない。だけど、繋ぎとめる方法がわからない。
オレに彼を満足させ続ける恋愛手腕があるわけがない。つまりいずれ彼はオレの元を去るかもしれない。そうなる可能性の方が高い気さえする。

ここ最近、そんなジレンマに侵されている。

幸せになりながら、幸せを感じた瞬間、同じくらい不安と焦燥が牙を剥く。
いつ訪れるとも知らない『終わり』ばかり考えて、『今』に集中できない。
幸福が不幸を引き連れてオレの精神をさいなんでいる。
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