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有宮ハイネの暴走
④
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「……ってわけなんだ」
「詐欺か、もしくは端からお前の妄想か」
「きみに話したオレが馬鹿だった!」
椎崎とランチに来たオレは、テラス席で向かい合って昼食を摂っている。肴になるのはオレの今までの話。
気分が落ち込んでいる時オレを救ってくれたアメリカ人の男の家に転がり込んだこと(もちろん死のうとしたことは伏せて)。そのアメリカ人男性とパートナーになったこと。そして、現在進行形で恋人関係について悩んでいること!
黙って聞いていた椎崎が話し終えて開口一番言ったことが、これである。詐欺、もしくは妄想。
「お前が恋愛下手だってことは知ってる。いかにもって顔してる。だから俺はそれよりお前がゲイだったことにびっくりしてる」
「ゲイじゃない。彼が好きなんだ。落ち込んでる時、無償で支えてくれる人が現れたら、恋愛だろうと親愛だろうと、とにかく好きにならないわけがないだろ!」
「相手が詐欺師でも?」
小馬鹿にしたり揶揄ったりしているというには真剣な顔をしている椎崎にオレは肩を落とす。考えてみれば今の話ではオレとトーマスの関係性の全てを把握して吟味することなんて不可能なのだ。
「『死のうとしていた人』を『とっさに善意で』助けた」と、「『気を落としている人』を『救った』」ではうさん臭さが違う。しかし「実は死のうとしていたんだけど、橋から飛び降りようとしているところを助けてもらって……」なんて言うのは重過ぎる。
それに、オレとトーマスが実はSNS上でやり取りをしていた『友達』だったことも伏せている。自分がクリエイターとして収入を得ていることを明かすくらいなら引きニートだと思われた方がマシだ。
こういった話の核となる大部分を隠しているおかげで、椎崎にとってトーマスはオレに恩を着せて怪しい仕事をオレに手伝わせている怪しい外国人になってしまったわけだ。
「かいつまんで話したけど、とにかく、詐欺師じゃない……彼はいい人なんだ。本当に。それだけは信じてほしい」
「そんなに言うなら、その男が本当にいいやつだと仮定して、何をそんなに思い悩んでるっていうんだよ?」
「さっきも言ったけど、彼はいい人なんだ。いい人過ぎて……不安になる」
椎崎は首を傾げる。
「具体的には?」
「彼のいい人エピソードなんて頭がおかしくなりそうなほどあるよ。オレが惨めな気持ちになるくらいにね。そんな彼と、オレと、釣り合わないって感じるんだよ……彼はオレにはもったいない人だから、彼を満足させ続けることがオレにできるとは思えないんだ」
「はあ……」
「き、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。お前のくだらないお悩みを真摯に聞いてやってるよ」
「くだらないお悩み!? 人が真剣に悩んでるっていうのに! そうだよな、きみにとってはくだらないだろうな。他人事なんだから。オレだって理解し合えるとも思ってなかったし、何の期待もしてないよ!」
「うるさいなあ、まあ聞けよ。お前がいくら考えたって、現実は変わらないだろ? だったらせいぜい現状を楽しむことだろ。幸せってそういうもんだ」
幸せ。
永遠に続く幸せなんて存在しない。だからこそ現状を楽しむ。
それで、幸せの効力が切れたら? つらい現実と向き合って、彼に捨てられる自分も受け入れなきゃいけないってことか?
「オレには無理だ……」
「俺もそう思うね。お前は誰かに自分のことを相談するのは向いてない。『無理』の一言で片付けて終わりのお前にかける言葉なんか、誰も持ってないぜ」
椎崎の言う通りだ。オレは誰かに相談するなんてこと向いてないし、相談に乗ってもらう資格すらない。相手の言う言葉が全部耳触りの良い理想論に聞こえて仕方ない。
こうすればいい、ああすればいい……オレには無理だ。卑屈な無限ループが始まって、納得する終わりを迎えられない。
口ばかりで行動しない。なにかを変える勇気がない。自分でもわかっている。だから椎崎の無礼な言葉に反論できない。椎崎は上辺だけじゃない自分の意見をはっきり言ってくれるから。
「きみはいいやつだよな……」
「なんだよ気持ち悪いな! ま、俺だってお前のそういうとこが長所だと思うぜ」
「詐欺か、もしくは端からお前の妄想か」
「きみに話したオレが馬鹿だった!」
椎崎とランチに来たオレは、テラス席で向かい合って昼食を摂っている。肴になるのはオレの今までの話。
気分が落ち込んでいる時オレを救ってくれたアメリカ人の男の家に転がり込んだこと(もちろん死のうとしたことは伏せて)。そのアメリカ人男性とパートナーになったこと。そして、現在進行形で恋人関係について悩んでいること!
黙って聞いていた椎崎が話し終えて開口一番言ったことが、これである。詐欺、もしくは妄想。
「お前が恋愛下手だってことは知ってる。いかにもって顔してる。だから俺はそれよりお前がゲイだったことにびっくりしてる」
「ゲイじゃない。彼が好きなんだ。落ち込んでる時、無償で支えてくれる人が現れたら、恋愛だろうと親愛だろうと、とにかく好きにならないわけがないだろ!」
「相手が詐欺師でも?」
小馬鹿にしたり揶揄ったりしているというには真剣な顔をしている椎崎にオレは肩を落とす。考えてみれば今の話ではオレとトーマスの関係性の全てを把握して吟味することなんて不可能なのだ。
「『死のうとしていた人』を『とっさに善意で』助けた」と、「『気を落としている人』を『救った』」ではうさん臭さが違う。しかし「実は死のうとしていたんだけど、橋から飛び降りようとしているところを助けてもらって……」なんて言うのは重過ぎる。
それに、オレとトーマスが実はSNS上でやり取りをしていた『友達』だったことも伏せている。自分がクリエイターとして収入を得ていることを明かすくらいなら引きニートだと思われた方がマシだ。
こういった話の核となる大部分を隠しているおかげで、椎崎にとってトーマスはオレに恩を着せて怪しい仕事をオレに手伝わせている怪しい外国人になってしまったわけだ。
「かいつまんで話したけど、とにかく、詐欺師じゃない……彼はいい人なんだ。本当に。それだけは信じてほしい」
「そんなに言うなら、その男が本当にいいやつだと仮定して、何をそんなに思い悩んでるっていうんだよ?」
「さっきも言ったけど、彼はいい人なんだ。いい人過ぎて……不安になる」
椎崎は首を傾げる。
「具体的には?」
「彼のいい人エピソードなんて頭がおかしくなりそうなほどあるよ。オレが惨めな気持ちになるくらいにね。そんな彼と、オレと、釣り合わないって感じるんだよ……彼はオレにはもったいない人だから、彼を満足させ続けることがオレにできるとは思えないんだ」
「はあ……」
「き、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。お前のくだらないお悩みを真摯に聞いてやってるよ」
「くだらないお悩み!? 人が真剣に悩んでるっていうのに! そうだよな、きみにとってはくだらないだろうな。他人事なんだから。オレだって理解し合えるとも思ってなかったし、何の期待もしてないよ!」
「うるさいなあ、まあ聞けよ。お前がいくら考えたって、現実は変わらないだろ? だったらせいぜい現状を楽しむことだろ。幸せってそういうもんだ」
幸せ。
永遠に続く幸せなんて存在しない。だからこそ現状を楽しむ。
それで、幸せの効力が切れたら? つらい現実と向き合って、彼に捨てられる自分も受け入れなきゃいけないってことか?
「オレには無理だ……」
「俺もそう思うね。お前は誰かに自分のことを相談するのは向いてない。『無理』の一言で片付けて終わりのお前にかける言葉なんか、誰も持ってないぜ」
椎崎の言う通りだ。オレは誰かに相談するなんてこと向いてないし、相談に乗ってもらう資格すらない。相手の言う言葉が全部耳触りの良い理想論に聞こえて仕方ない。
こうすればいい、ああすればいい……オレには無理だ。卑屈な無限ループが始まって、納得する終わりを迎えられない。
口ばかりで行動しない。なにかを変える勇気がない。自分でもわかっている。だから椎崎の無礼な言葉に反論できない。椎崎は上辺だけじゃない自分の意見をはっきり言ってくれるから。
「きみはいいやつだよな……」
「なんだよ気持ち悪いな! ま、俺だってお前のそういうとこが長所だと思うぜ」
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